今回は平成24年度 電力科目 A問題12、フェランチ効果の誤り選択問題です。令和4年度上期A問題9(地中送電8)の類題で、今回は「電流の位相」の向きが狙われています。
フェランチ効果の主役は進み電流:軽負荷時に対地静電容量の充電電流(進み)が支配的になり、受電端電圧が送電端より上がる。電流が遅れているときは普通の電圧降下(受電端が低い)——「遅れている場合に生じる」は現象の向きが逆です。
平成24年度 電力科目 A問題12:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成24年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題12
電験3種 電力科目 【地中送電】 平成24年度 A問題12
送配電線路のフェランチ効果に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 受電端電圧の方が送電端電圧より高くなる現象である。
(2) 線路電流が大きい場合より著しく小さい場合に生じることが多い。
(3) 架空送配電線路の負荷側に地中送配電線路が接続されている場合に生じる可能性が高くなる。
(4) 線路電流の位相が電圧に対して遅れている場合に生じることが多い。
(5) 送配電線路のこう長が短い場合より長い場合に生じることが多い。

誤りは(4):電流は進んでいる
「線路電流の位相が電圧に対して遅れている場合」——逆です。
| 電流の位相 | 原因 | X sinθ | 受電端電圧 |
| ★遅れ | ★誘導性の負荷(モータなど) | ★★正 | ★★下がる |
| ★進み | ★★線路の静電容量 | ★★負 | ★★上がる |
遅れ電流は電圧を下げる向きに働きます——ふだんの電圧降下がそれです。
進み電流は逆に、電圧を上げる向きに働きます——それがフェランチ。
だから「遅れている場合」では起きません——むしろ電圧が下がることになります。
(4)だけが向きを逆に書いています——他の4つは正しいのです。
フェランチが起きる4つの条件
| 条件 | 起きやすい | 起きにくい | 理由 |
| ★負荷 | ★★軽負荷・無負荷 | ★★重負荷 | ★★負荷の遅れ電流が線路の進み電流を打ち消す |
| ★こう長 | ★★長い | ★短い | ★長いほど静電容量が大きい |
| ★線路の種類 | ★★ケーブル(地中線) | ★架空線 | ★★静電容量が数十倍 |
| ★電流の位相 | ★★進み | ★★遅れ | ★進み電流が電圧を押し上げる |
(1)(2)(5)は、この表のとおり——いずれも正しい記述です。
(2)の「線路電流が著しく小さい場合」が軽負荷のこと——言い換えられているだけ。
(5)の「こう長が長い場合」も表のとおり——静電容量が大きくなるから。
4つの条件が、どれも「進み電流が大きくなる」ことを指しています——言い方を変えているだけなのです。
(3) 地中線がつながると起きやすい
| ★架空送電線 | ★地中送電線(ケーブル) | |
| ★導体と大地の距離 | ★★数メートル〜数十メートル | ★★数ミリ(絶縁体の厚さ) |
| ★静電容量 | ★小さい | ★★数十倍 |
| ★充電電流 | ★小さい | ★★きわめて大きい |
ケーブルでは、導体と遮へい層が数ミリしか離れていません——だから静電容量が桁違いに大きいのです。
しかも絶縁体の誘電率は空気より大きい——それも容量を増やす方向です。
だから地中線がつながっていると、充電電流が大きくなります——フェランチが起きやすいことになります。
都市部では地中線が多いので、この備えが要ります——(3)が指摘するとおりです。
⚠️ よくある間違い
(4)の「遅れている場合」を見落とす——フェランチは進み電流の現象です。この1語だけで誤りと分かります。
(2)の「線路電流が著しく小さい」を疑ってしまう——軽負荷の言い換えです。
(3)の地中線を疑ってしまう——静電容量が数十倍なので起きやすくなります。
(5)の「こう長が長い」を疑ってしまう——静電容量が大きくなるので正しい。
4つの条件は、どれも「進み電流が大きい」の言い換え——そう気づけば見通せます。
⏱️ 本番での進め方
①★フェランチでは線路電流は電圧より進んでいる。
②★軽負荷・長距離・ケーブルで起きやすい。
③★C=εS/d なのでケーブルは静電容量が数十倍。
④4つの条件はすべて「進み電流が大きい」の言い換え。
💡 覚え方
「進みで上がる、遅れで下がる」——向きを1つ覚えれば足ります。地中線は距離が数ミリなので静電容量が桁違い——だからフェランチが起きやすいのです。
★フェランチは3回出題されています——平成19年度 A問題9(地中送電:フェランチ現象)の空欄補充、本問、そして令和4年度上期 A問題9(地中送電:フェランチ効果)です。
受電端を開放したときが最大
(2)の「線路電流が著しく小さい場合」の極限を考えます。
| 状態 | 負荷電流 | 合計の電流 | 電圧上昇 |
| ★通常運転 | ★大きい | ★遅れ | ★★起きない |
| ★軽負荷 | ★小さい | ★★進み | ★★起きる |
| ★★受電端開放 | ★★ゼロ | ★★充電電流だけ | ★★最大になる |
受電端を開けば、負荷電流はゼロです——残るのは充電電流だけになります。
だから電圧上昇が最も大きくなります——打ち消すものが何もないから。
工事後に線路へ電圧をかけるときが、まさにこの状態——だから順序に注意します。
先に分路リアクトルを入れておくのが実務——あとから入れるのでは遅いのです。
(5) こう長が効く2つの経路
長いと、なぜ起きやすいのでしょうか。
| 量 | こう長との関係 | 効き方 |
| ★静電容量 C | ★★比例して増える | ★★充電電流が増える |
| ★リアクタンス X | ★★比例して増える | ★★同じ電流でも電圧上昇が大きい |
電圧上昇は、電流とリアクタンスの積で決まります——その両方が長さに比例するのです。
だからこう長の2乗に近い形で効いてきます——倍の長さなら4倍近く。
短い線路ではまず問題になりません——どちらも小さいからです。
だから(5)は正しい記述——理由まで理解しておくと応用が利くのです。
フェランチが起きる時間帯
1日の中で、いつ問題になるのでしょうか。
| 時間帯 | 負荷 | 電圧の傾向 | 対処 |
| ★昼のピーク | ★重い | ★★下がる | ★★コンデンサを入れる |
| ★夕方 | ★中程度 | ★安定 | ★調整不要 |
| ★深夜 | ★★軽い | ★★上がる | ★★リアクトルを入れる |
工場が止まり、照明も消える深夜が最も軽負荷です——そこでフェランチが現れるのです。
だから夜になると設備を切り替えます——コンデンサを外し、リアクトルを入れる。
連休中は数日にわたって軽負荷が続きます——絶縁が長時間さらされることになります。
電気事業法では100 V 系で101±6 V と定められています——その範囲に収める運用です。
地中線が増えると何が変わるか
(3)の指摘が、実務では重みを増しています。
| 時代 | 地中線の割合 | フェランチへの備え |
| ★かつて | ★都心の一部だけ | ★限られた場所で対応 |
| ★★現在 | ★★都市部で広く地中化が進む | ★★分路リアクトルの設置が増える |
景観や防災のため、無電柱化が進められています——そのぶん静電容量が増えるのです。
系統全体の充電容量が大きくなります——軽負荷時の電圧上昇が起きやすい。
だから調相設備の計画も変わってきます——リアクトルの比重が増すのです。
(3)は単なる知識ではなく、実際の課題を指しています。
フェランチと自己励磁を区別する
どちらも進み電流が絡むので、混同されがちです。
| ★フェランチ効果 | ★自己励磁現象 | |
| ★起きる場所 | ★★送配電線路の受電端 | ★★発電機の端子 |
| ★状況 | ★★軽負荷・長距離 | ★★無負荷の発電機に長い線路をつなぐ |
| ★何が起きるか | ★★受電端電圧が送電端より高くなる | ★★励磁しなくても電圧が立ち上がる |
| ★対策 | ★★分路リアクトル | ★発電機の容量を大きくする |
自己励磁は、発電機の残留磁気から始まります——進み電流が磁束を強める向きに働くのです。
電圧が上がればさらに進み電流が増えます——正のはたらきかけが続いて暴走する。
フェランチは線路の現象、自己励磁は発電機の現象——起きる場所で区別できます。
問題文は「送配電線路の」と書いています——だからフェランチです。
まとめ
| 誤り | (4) フェランチ効果は進み電流で生じる(遅れは逆) |
| 現象 | 受電端電圧>送電端電圧(1) |
| 条件 | 電流が著しく小さい(軽負荷)(2)・こう長長い(5) |
| ケーブル | 負荷側に地中系統→C増→発生しやすい(3) |
| 答え | (4) |
▼あわせて解きたい関連問題
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