地中送電19【電験3種 電力】直流に充電電流は流れない!ケーブル送電の切り札 平成24年度 A問題9 完全解説

電験3種 電力科目 地中送電 平成24年度 A問題9 直流なら充電電流はゼロ!ケーブル送電の切り札

今回は平成24年度 電力科目 A問題9直流送電の誤り選択問題です。直流シリーズ(地中送電5・14、架空送電3)の中でも、本問は「充電電流が流れない」という直流最大の長所がそのまま誤り選択肢に使われています。

ケーブルは静電容量が大きく(cb6)、交流では充電電流が流れ続けて送電容量を圧迫し、長距離では補償(分路リアクトル)が必要。直流なら電圧が一定なので定常的な充電電流はゼロ——補償不要で、長距離ケーブル送電(海底ケーブル等)の切り札になります。

目次

平成24年度 電力科目 A問題9:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 地中送電 平成24年度 A問題9 問題文
平成24年度 電力科目 A問題9 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成24年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題9

電験3種 電力科目 【地中送電】 平成24年度 A問題9

 直流送電に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1) 直流送電線は、線路の回路構成をするうえで、交流送電線に比べて導体本数が少なくて済むため、同じ電力を送る場合、送電線路の建設費が安い。

(2) 直流は、変圧器で容易に昇圧や降圧ができない。

(3) 直流送電は、交流送電と同様にケーブル系統での充電電流の補償が必要である。

(4) 直流送電は、短絡容量を増大させることなく異なる交流系統の非同期連系を可能とする。

(5) 直流系統と交流系統の連系点には、交直変換所を設置する必要がある。

答え誤っている記述は (3)です。

誤りは(3):直流に充電電流は流れない

「交流送電と同様にケーブル系統での充電電流の補償が必要」——直流では生じません

★交流ケーブル★直流ケーブル
★電圧★★絶えず変化する★★一定
★電荷の出入り★★充放電を繰り返す★★最初に充電されたら動かない
★充電電流★★長さに比例して増える★★ゼロ
★補償★★分路リアクトルが要る★★不要
充電電流
\( I_c=2\pi f C\,\dfrac{V}{\sqrt{3}}\,\ell \)

f=0 なら Ic=0

式に周波数 f が入っています——直流は f=0 なのでゼロです。

電圧が一定なら、電荷は動きません——だから電流も流れないのです。

誘電体損も同じ理由で生じません——Wd=ωCV²tanδ の ω がゼロだから。

だから長い海底ケーブルは直流しか選べません——それが直流の大きな利点になります。

(1) 導体本数が少なくて済む

方式必要な導体絶縁
★三相交流★★3条★波高値に耐える必要がある
★直流(双極)★★2条★★実効値のままでよい
★直流(単極)★★1条★帰路は大地(電食の問題あり)

三相交流には3本が要ります——直流なら2本で済むのです。

しかも1本あたりの絶縁も軽くて済みます——波高値が実効値と同じだから。

だから鉄塔も小さくでき、線路の建設費が下がります——それが(1)の意味です。

ただし両端の変換所が高いので、短距離では逆転します——だから長距離向きになります。

(4) 短絡容量を増やさない連系

連系のしかた事故電流短絡容量遮断器
★交流で連系★★相手側からも流れ込む★★増える★★取り替えが要る場合がある
★直流で連系★★変換器が間で遮る★★増えない★★そのまま使える

交流でつなぐと、2つの系統が電気的に一体になります——短絡電流も合算されるのです。

遮断器の遮断容量が足りなくなれば、取り替えが必要です——莫大な費用がかかる

直流でつなげば、事故電流は行き来しません——変換器が間に入っているから。

だから既設の設備のまま連系できます——非同期連系とあわせて大きな利点です。

⚠️ よくある間違い
(3)を「ケーブルなら同じだろう」と考える——交流か直流かで根本的に違います直流に充電電流はありません
Ic=2πfC(V/√3)ℓ の f がゼロ——だから電流も生じないのです。
(1)の導体本数を疑ってしまう——三相3条に対して直流は2条
(2)の変圧器を疑ってしまう——磁束が変化しないので使えません
(4)の短絡容量を疑ってしまう——増やさずに連系できます
「交流と同様に」という言い方を疑う——直流の利点はまさにそこが違う点です。

⏱️ 本番での進め方
①★直流ケーブルに充電電流は流れない(f=0)。
②★誘電体損も同じ理由で生じない。
③★三相3条に対して直流は2条で済む。
④★短絡容量を増やさずに非同期連系ができる。

💡 覚え方
「fがゼロなら全部ゼロ」——充電電流も誘電体損も ω に比例します「交流と同様に」と書いてあれば疑う——直流の利点はそこが違う点にあるのです。

直流送電は繰り返し出題されています——平成29年度 A問題6地中送電:直流送電系統)、令和7年度下期 A問題11架空送電:直流送電)にもあります。

(2) 変圧器が使えない理由

電磁誘導の原理そのものから来ています

変圧器の誘導起電力
\( e=-N\dfrac{d\Phi}{dt} \)

磁束が変化しなければ電圧は生じない

★交流★直流
★磁束★★絶えず変化する★★一定
★二次側の電圧★★生じる★★生じない
★電圧を変える方法★★変圧器(簡単・高効率)★★交流に戻すしかない

変圧器は、磁束の変化があって初めて働きます——直流では変化しません

だから二次側にはまったく電圧が出ません——原理的に不可能なのです。

これが交流が主流であり続けた最大の理由——送るときは高く、使うときは低くできるから。

直流では、変換器で電圧を作り直すしかありません——だから変換所が高価になるのです。

(5) 交直変換所に置かれるもの

変換器だけでは済みません

設備役目
★変換器★★交流と直流を変換する
★変換用変圧器★変換器に合った電圧にする
★交流フィルタ★★発生した高調波を除く
★調相設備★★他励式が消費する無効電力を補う
★直流リアクトル★直流電流の脈動を平滑にする

付帯設備がいくつも要るので、変換所は大がかりです——だから高価になるのです。

他励式では有効電力の6割ほどの無効電力を消費します——その分の調相設備が必要になります。

自励式なら無効電力も制御でき、フィルタも小さくて済みます——だから近年は自励式が増えています

この費用が、短距離では直流を選べない理由——距離が延びて初めて見合うのです。

直流が有利になる距離

(1)の建設費の話を、距離とあわせて考えます

変換所の費用線路の費用合計
★交流★★安い★★距離に比例して増える★★短距離で有利
★直流★★高い★★増え方が緩やか★★長距離で有利

2本の直線が、あるところで交わります——それが等価距離です。

架空線でおよそ500〜800 km、ケーブルで数十 km——ケーブルのほうがずっと短いのです。

ケーブルは充電電流の問題があるから——だから海底では早く直流が有利になる

導体本数が少なく絶縁も軽いことが、線路費用の差を生みます——それが(1)の内容です。

(4) 非同期連系ができるということ

周波数が違っていてもつなげます

★交流で連系★直流で連系
★周波数★★そろっていなければならない★★違っていてよい
★位相★★同期させる必要がある★★関係ない
★片方の事故★★もう片方に波及する★★波及しない

交流でつなぐには、周波数も位相もそろえる必要があります——同期という条件です。

直流ならその制約がありません——いったん直流にして相手の周波数で作り直すだけ。

日本は東が50 Hz、西が60 Hz に分かれています——だから周波数変換所が必要なのです。

事故が波及しないのも大きな利点——系統を分けたまま電力だけやりとりできます

直流送電の長所と短所をまとめる

本問の5つを、長所と短所に分けておきます

項目内容評価
★導体本数★★三相3条に対して2条で済む★★長所
★充電電流★★ゼロなので補償が不要★★長所
★非同期連系★★短絡容量を増やさずにつなげる★★長所
★変圧器★★使えない★★短所
★交直変換所★★両端に必要で高価★★短所

本問は長所3つと短所2つで構成されています——その1つに誤りが混ぜられたのです。

誤りだったのは、長所を短所として書いた(3)——充電電流の補償が要る、という記述

長所と短所を分けて覚えておけば、入れ替えに気づけます——直流送電の問題では定番の型です。

「交流と同様に」という言い方が手がかり——直流の利点は、そこが違う点にあるのです。

まとめ

誤り(3) 直流に充電電流の補償は不要(流れない)
充電電流i=C·dV/dt——直流では定常的にゼロ
経済性導体2本で線路安(1)⇔変換所高(5)
非同期連系短絡容量を増大させずに可能(4)
答え(3)

▼あわせて解きたい関連問題
・直流送電の遮断困難(地中送電5):【電力】令和5年度下期 A問題11
・自励式・他励式(地中送電14):【電力】平成29年度 A問題6
・ケーブルの充電電流(地中送電6):【電力】令和5年度上期 A問題10

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