今回は令和5年度上期 電力科目 A問題10、地中送電線路の線路定数の誤り選択問題です。架空送電17(線路定数)で学んだ表皮効果の知識に、ケーブル特有の「L小・C大」の性質が加わります。
ポイントは2つ:①表皮効果・近接効果は交流の実効抵抗を大きくする(電流が偏って断面を有効に使えない)——「小さくなる」は逆。②ケーブルは導体間隔が近く絶縁体の誘電率も高いので、架空線に比べてインダクタンスは小さく・静電容量はかなり大きい。
令和5年度上期 電力科目 A問題10:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度上期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題10
電験3種 電力科目 【地中送電】 令和5年度上期 A問題10
地中送電線路の線路定数に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 架空送電線路の場合と同様、一般に、導体抵抗、インダクタンス、静電容量を考える。
(2) 交流の場合の導体の実効抵抗は、表皮効果及び近接効果のため直流に比べて小さくなる。
(3) 導体抵抗は、温度上昇とともに大きくなる。
(4) インダクタンスは、架空送電線路に比べて小さい。
(5) 静電容量は、架空送電線路に比べてかなり大きい。
出題のポイント:交流抵抗は直流抵抗より大きい

交流では表皮効果と近接効果によって電流分布が偏り、有効断面積が小さくなるため、実効抵抗は直流抵抗より大きくなります。また地中送電線路は架空送電線路と比べ、導体間距離が小さいためインダクタンスは小さく、絶縁体の誘電率も大きいため静電容量はかなり大きくなります。
誤りは(2):実効抵抗は直流より大きくなる
「表皮効果及び近接効果のため直流に比べて小さくなる」——逆です。
| 効果 | 起きること | 実効抵抗 |
| ★表皮効果 | ★★電流が導体の外側に偏る | ★★大きくなる |
| ★近接効果 | ★★隣の導体の磁界で電流分布が偏る | ★★さらに大きくなる |
どちらも、導体の断面を一様に使えなくする現象です——使える断面が減れば抵抗は増える。
表皮効果は、渦電流が中心の電流を打ち消すために起きます——だから外側に押しやられるのです。
近接効果は、隣の導体が作る磁界によるもの——ケーブルは3心が近いので無視できません。
直流ではどちらも生じません——磁束が変化しないから。
だから交流のほうが実効抵抗は大きくなります——数%から十数%です。
交流抵抗と地中ケーブルの線路定数

| ★架空送電線路 | ★地中送電線路 | |
| ★導体間の距離 D | ★★数メートル | ★★数ミリ〜数センチ |
| ★D/r | ★★大きい | ★★小さい |
| ★インダクタンス | ★★大きい | ★★小さい |
| ★静電容量 | ★★小さい | ★★かなり大きい |
同じ D/r が、片方は分母に、片方は分子に入ります——だっていつも逆に動くのです。
ケーブルは導体が数ミリしか離れていません——だから D/r が小さい。
その結果、静電容量が大きくインダクタンスが小さい——(4)(5)はどちらも正しいのです。
絶縁体の誘電率が空気より大きいことも、容量を増やします——だから「かなり大きい」ことになります。
5記述を判定して誤り(2)を選ぶ

| 温度 | 抵抗(20 ℃ を1とする) |
| ★20 ℃ | ★1.00 |
| ★50 ℃ | ★1.12 |
| ★90 ℃ | ★★1.28 |
金属では、温度が上がると抵抗が増えます——原子の振動が電子の流れを妨げるから。
許容温度の90 ℃ では、常温の約1.3倍——無視できない差です。
抵抗が増えれば発熱も増え、さらに温度が上がります——だから許容電流には余裕を見ます。
絶縁体では逆に、温度が上がると抵抗が下がります——金属とは向きが逆なので注意します。
⚠️ よくある間違い
(2)を「外側だけ使えば抵抗が減りそう」と考える——使える断面が減るので増えます。
表皮効果も近接効果も、抵抗を増やす向きに働きます——直流では生じません。
(1)の線路定数を疑ってしまう——架空線と同じ3つを考えます。
(3)の温度を疑ってしまう——金属は温度が上がると抵抗が増えます。
(4)(5)を疑ってしまう——導体が近いのでこうなります。
「大きくなる」「小さくなる」の向きを確かめる——本問はそれだけで解けます。
⏱️ 本番での進め方
①★表皮効果と近接効果は実効抵抗を大きくする。
②★直流では生じない(磁束が変化しない)。
③★地中線はインダクタンスが小さく静電容量が大きい。
④★金属は温度が上がると抵抗が増える(α≒0.004)。
💡 覚え方
「使える断面が減れば抵抗は増える」——表皮効果も近接効果も同じ向きです。導体が近いとC大・L小——1つの比が2つの量を決めます。
架空線との比較は令和2年度 A問題11(地中送電:架空線との比較)にあります。
表皮効果が起きるしくみ
(2)で問われた現象を、原理から見ましょう。
| 段階 | 起きること |
| ① | ★交流電流が導体内に磁束を作る |
| ★② | ★磁束の変化が渦電流を誘導する |
| ★③ | ★★中心では元の電流を打ち消す向きになる |
| ★④ | ★★電流が外側に偏り、使える断面が減る |
| ★⑤ | ★★実効抵抗が増える |
断面の一部しか使えなくなるので、抵抗が増えます——細い電線にしたのと同じことです。
周波数が高いほど、また導体が太いほど強く現れます——50/60 Hz でも数%の増加があります。
直流では磁束が変化しないので、渦電流が生じません——だから直流抵抗が基準になるのです。
中心を使わないなら空洞でよい——それが中空電線やACSRの発想です。
近接効果という現象
表皮効果と並んで、抵抗を増やす原因です。
| 状況 | 電流分布 | 実効抵抗 |
| ★導体が1本だけ | ★表皮効果だけ | ★やや増える |
| ★★同じ向きの電流が近くにある | ★★互いに遠い側へ偏る | ★★さらに増える |
| ★★逆向きの電流が近くにある | ★★互いに近い側へ偏る | ★★さらに増える |
隣の導体が作る磁界が、電流分布を偏らせます——どちらの向きでも偏るのです。
偏れば使える断面が減り、抵抗が増えます——表皮効果と同じ結果になります。
ケーブルは3心が接するほど近い——だから近接効果が無視できません。
架空線なら数メートル離れているので、影響は小さい——そこが地中線との違いです。
(1) 線路定数として何を考えるか
架空線と同じ枠組みで考えます。
| 定数 | 記号 | 地中線での特徴 |
| ★導体抵抗 | ★R | ★表皮効果と近接効果で交流では増える |
| ★インダクタンス | ★L | ★★導体が近いので小さい |
| ★静電容量 | ★C | ★★導体が近く誘電率も大きいのでかなり大きい |
| ★漏れコンダクタンス | ★G | ★ふつう無視する |
考える量は架空線と同じです——大きさが違うだけ。
だから計算の方法も共通して使えます——(1)が「同様に」と書く理由です。
違いは C が桁違いに大きいこと——そこから充電電流もフェランチも出てきます。
L が小さいのは、電圧降下の面では有利——短距離なら電圧が保ちやすいのです。
線路定数が効いてくる場面
4つの量が、それぞれ何を決めるか見ましょう。
| 定数 | 決めるもの | 地中線での現れ方 |
| ★R | ★抵抗損と発熱 | ★★許容電流を決める |
| ★L | ★電圧降下と安定度 | ★小さいので有利 |
| ★C | ★充電電流とフェランチ | ★★大きいので不利 |
| ★G | ★漏れ電流 | ★ふつう無視する |
R が大きければ発熱し、許容電流が下がります——だから交流の実効抵抗が重要なのです。
L が小さいのは、電圧降下の面では有利——同じ電流でも降下が少ない。
C が大きいのは、充電電流の面で不利——長さに限界が生じるのです。
利点と欠点が、同じ「導体が近い」ことから出ています——1つの構造が両方を生むのです。
まとめ
| 誤り | (2) 実効抵抗は表皮・近接効果で大きくなる |
| 表皮効果 | 電流が表面に偏る→断面有効利用できず |
| 近接効果 | 並行導体の磁界で電流分布が偏る |
| ケーブルのL | 架空線より小さい(D小)(4) |
| ケーブルのC | かなり大きい(D小+高誘電率)(5) |
| 答え | (2) |
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