今回は令和2年度 電力科目 A問題11、架空送電と比較した地中送電の特徴の誤り選択問題です。建設費・気象・線路定数・損失・絶縁回復と、地中送電の総まとめ的な良問です。
決め手は絶縁回復の違い:架空送電の気中フラッシオーバはアークが消えれば空気の絶縁が自然回復し再閉路できる(架空送電20)。一方、地中ケーブルの固体絶縁体は一度破壊されると回復せず、修理・張り替えが必要。記述はこれを完全に逆転させています。
誤りは(5):自然回復するのは架空線のほう
「地中送電線路では自然に絶縁回復して再送電できる」——正反対です。
| ★架空送電線路 | ★地中送電線路 | |
| ★絶縁物 | ★★空気(気体) | ★★架橋ポリエチレンなど(固体) |
| ★放電したあと | ★★空気が入れ替わり回復する | ★★穴が残り回復しない |
| ★再送電 | ★★再閉路で数秒 | ★★交換するまで不可 |
| ★事故の性質 | ★多くは一時的 | ★★ほとんどが永久事故 |
気体は放電しても、電気が切れれば元に戻ります——これを自己回復性といいます。
固体は一度壊れると、その穴が残ります——導電性の通り道ができてしまうのです。
だから地中線では再閉路が意味を持ちません——むしろ被害を広げることになります。
問題文は架空線と地中線を入れ替えて書いています——そこが誤りです。
令和2年度 電力科目 A問題11:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和2年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題11
電験3種 電力科目 【地中送電】 令和2年度 A問題11
我が国における架空送電線路と比較した地中送電線路の特徴に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 地中送電線路は、同じ送電容量の架空送電線路と比較して建設費が高いが、都市部においては保安や景観などの点から地中送電線路が採用される傾向にある。
(2) 地中送電線路は、架空送電線路と比較して気象現象に起因した事故が少なく、近傍の通信線に与える静電誘導、電磁誘導の影響も少ない。
(3) 地中送電線路は、同じ送電電圧の架空送電線路と比較して、作用インダクタンスは小さく、作用静電容量が大きいため、充電電流が大きくなる。
(4) 地中送電線路の電力損失では、誘電体損とシース損を考慮するが、コロナ損は考慮しない。一方、架空送電線路の電力損失では、コロナ損を考慮するが、誘電体損とシース損は考慮しない。
(5) 絶縁破壊事故が発生した場合、架空送電線路では自然に絶縁回復することは稀であるが、地中送電線路では自然に絶縁回復して再送電できる場合が多い。

架空線と地中線を比べる
| 項目 | ★架空送電線路 | ★地中送電線路 |
| ★建設費 | ★安い | ★★10〜20倍 |
| ★用地 | ★鉄塔と線下が要る | ★★道路の下で済む |
| ★気象の影響 | ★★雷・風・雪を受ける | ★★ほとんど受けない |
| ★誘導障害 | ★★通信線に影響する | ★★遮へい層があるので少ない |
| ★作用インダクタンス | ★★大きい | ★★小さい |
| ★作用静電容量 | ★★小さい | ★★数十倍 |
| ★送電容量 | ★★大きい | ★★熱の制約で小さい |
(1)〜(4)は、この表のとおりの記述です——いずれも正しい。
(3)のインダクタンスと静電容量は、どちらも導体間の距離で決まります——ケーブルは数ミリしか離れていません。
近いほど静電容量は大きく、インダクタンスは小さい——いつも逆に動くのです。
だから充電電流が大きくなり、フェランチも起きやすい——そこまでつながっています。
(4) 損失の種類が違う
| 損失 | ★架空送電線路 | ★地中送電線路 | 理由 |
| ★抵抗損 | ★★あり | ★★あり | ★どちらも導体に電流が流れる |
| ★コロナ損 | ★★あり | ★★なし | ★★空気中でないと放電しない |
| ★誘電体損 | ★★なし | ★★あり | ★★空気は誘電体損がほぼゼロ |
| ★シース損 | ★★なし | ★★あり | ★★金属シースがあるのはケーブルだけ |
絶縁物が空気か固体かで、損失の種類が変わります——それが根本の理由です。
空気は誘電体としての損失がほとんどありません——だから架空線には誘電体損がない。
その代わり、表面で放電するとコロナ損が生じます——ケーブルは絶縁体に包まれているので起きません。
シースは金属の覆いなので、ケーブルにしかありません——だからシース損も地中線だけです。
⚠️ よくある間違い
(5)を「地中は保護されているから回復しそう」と考える——固体絶縁は回復しません。自然回復するのは空気のほうです。
だから地中線の事故はほとんど永久事故——だから故障点標定が要るのです。
(2)の誘導障害を疑ってしまう——遮へい層があるので少ない。
(3)のインダクタンスと静電容量を疑ってしまう——導体が近いのでこうなります。
(4)の損失を疑ってしまう——絶縁物の違いから説明できます。
2つを入れ替えた記述を探す——比較の問題ではよく使われる型です。
⏱️ 本番での進め方
①★自然回復するのは架空線(空気)。地中線は回復しない。
②★だから地中線の事故はほとんど永久事故。
③★地中線は作用静電容量が大きく作用インダクタンスが小さい。
④★コロナ損は架空線だけ、誘電体損とシース損は地中線だけ。
💡 覚え方
「空気は治る、固体は治らない」——絶縁物の違いがすべてを決めます。損失の種類も、この違いから説明できる——覚えるのではなく導けます。
故障点標定が地中線で要る理由は平成23年度 A問題11(地中送電:マーレーループ法)、3つの損失は平成25年度 A問題10(地中送電:地中電線の損失)にあります。
(1) 建設費が高くても地中化する理由
10倍以上の費用をかけてでも、なぜ埋めるのでしょうか。
| 理由 | 内容 |
| ★用地 | ★★都市部に鉄塔を建てる場所がない |
| ★景観 | ★★電線と電柱がなくなり街並みが整う |
| ★保安 | ★★人が触れる恐れがなく、災害時に倒れない |
| ★防災 | ★★台風や地震で断線しにくい |
用地が確保できないことが、最大の理由です——鉄塔には敷地と線下の空間が要るから。
道路の下なら、新たな用地を買わずに済みます——それが地中化の出発点です。
近年は無電柱化として、防災の面からも進められています——倒れた電柱が道をふさがないから。
だから(1)は正しい記述——保安と景観の両方が挙げられています。
(2) 誘導障害が少ない理由
ケーブルには金属の遮へい層があります。
| 誘導 | ★架空送電線 | ★地中送電線 | 理由 |
| ★静電誘導 | ★★生じる | ★★ほぼゼロ | ★★遮へい層が電気力線を受け止める |
| ★電磁誘導 | ★★生じる | ★★小さい | ★遮へい層の誘導電流が打ち消す |
遮へい層は接地されているので、電位が大地に固定されます——外へ電気力線が出ません。
だから静電誘導はほとんど生じません——完全な静電遮へいです。
電磁誘導も、遮へい層に流れる電流が逆向きの磁界を作ります——架空地線と同じしくみ。
しかも3相が近接しているので、磁界が打ち消し合います——だから外に漏れにくいのです。
(3) 導体間の距離がすべてを決める
作用インダクタンスと作用静電容量の関係を見ましょう。
| ★架空送電線 | ★地中送電線 | |
| ★導体間の距離 D | ★★数メートル | ★★数ミリ〜数センチ |
| ★D/r | ★★大きい | ★★小さい |
| ★作用静電容量 | ★★小さい | ★★大きい |
| ★作用インダクタンス | ★★大きい | ★★小さい |
同じ D/r が、片方は分母に、片方は分子に入ります——だから逆に動くのです。
ケーブルは導体が近いので D/r が小さい——C が大きく、L が小さいことになります。
C が大きければ充電電流も大きい——だから(3)の結論につながるのです。
1つの比が、2つの量を同時に決めています。
地中線の事故が永久事故になる意味
(5)の裏返しとして、運用にどう影響するか見ましょう。
| ★架空送電線路 | ★地中送電線路 | |
| ★再閉路 | ★★有効(成功率が高い) | ★★行わない |
| ★事故後の作業 | ★★点検して復旧 | ★★標定して掘って交換 |
| ★停電時間 | ★★数秒 | ★★数日〜数週間 |
| ★備え | ★事故を減らす(架空地線など) | ★★予備回線を用意する |
再閉路しても直らないので、地中線では行いません——むしろ被害を広げます。
だから停電させないためには、別の回線が要ります——ループ化や予備回線です。
事故を防ぐより、事故に備える考え方になります——架空線とは設計思想が違うのです。
絶縁劣化診断が重視されるのも、同じ理由——壊れる前に取り替えたいから。
まとめ
| 誤り | (5) 自然回復するのは架空。地中ケーブルは回復しない |
| 信頼度 | 地中=気象事故少・誘導障害少(2) |
| 線路定数 | L小・C大→充電電流大(3) |
| 損失の対称 | 地中=誘電体損+シース損/架空=コロナ損(4) |
| 答え | (5) |
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