地中送電10【電験3種 電力】許容電流UPには表皮効果の「小さい」導体!大きいは逆 令和3年度 A問題11 完全解説

電験3種 電力科目 地中送電 令和3年度 A問題11 許容電流を増やすには?表皮効果の小さい導体

今回は令和3年度 電力科目 A問題11、電力ケーブルの許容電流を大きくする方法の誤り選択問題です。許容電流は「導体温度を上限以下に保てる電流」なので、発熱を減らすか・熱を逃がしやすくするかの2方向で整理できます。

全選択肢を「発熱減 or 放熱増」で仕分け:熱抵抗小=放熱増(1)、低誘電率・低tanδ=誘電体損減(3)、高抵抗率シース=シース損減(4)、条数減=相互加熱減(5)——すべて正しい。表皮効果が「大きい」導体は実効抵抗が増えて発熱が増えるので逆効果——(2)だけが反対向きです。

目次

令和3年度 電力科目 A問題11:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 地中送電 令和3年度 A問題11 問題文
令和3年度 電力科目 A問題11 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和3年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題11

電験3種 電力科目 【地中送電】 令和3年度 A問題11

 地中送電線路に使用される電力ケーブルの許容電流に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1) 電力ケーブルの絶縁体やシースの熱抵抗、電力ケーブル周囲の熱抵抗といった各部の熱抵抗を小さくすることにより、ケーブル導体の発熱に対する導体温度上昇量を低減することができるため、許容電流を大きくすることができる。

(2) 表皮効果が大きいケーブル導体を採用することにより、導体表面側での電流を流れやすくして導体全体での電気抵抗を低減することができるため、許容電流を大きくすることができる。

(3) 誘電率、誘電正接の小さい絶縁体を採用することにより、絶縁体での発熱の影響を抑制することができるため、許容電流を大きくすることができる。

(4) 電気抵抗率の高い金属シース材を採用することにより、金属シースに流れる電流による発熱の影響を低減することができるため、許容電流を大きくすることができる。

(5) 電力ケーブルの布設条数(回線数)を少なくすることにより、電力ケーブル相互間の発熱の影響を低減することができるため、1条当たりの許容電流を大きくすることができる。

答え誤っている記述は (2)です。

出題のポイント:許容電流は発熱減か放熱増

電力ケーブルの導体損I二乗Rと熱抵抗から発熱を減らすか熱を逃がすと許容電流が大きくなることを示す図
許容電流を大きくする基本は、発熱を減らすか、各部の熱抵抗を小さくして放熱を増やすことです。

電力ケーブルの許容電流を大きくするには、導体や絶縁体などの発熱を減らすか、熱抵抗を小さくして熱を逃がす必要があります。表皮効果が大きいと電流が導体表面へ偏り、使える断面積が減って交流実効抵抗とI²R損が増えるため、許容電流は小さくなります。したがって、表皮効果を大きくすれば抵抗が減るとした(2)が誤りです。

誤りは(2):表皮効果は抵抗を増やす

交流の表皮効果で電流が導体外周へ偏り実効抵抗と発熱が増えて許容電流が小さくなる因果図
表皮効果が大きいほど使える断面積が減り、実効抵抗と発熱が増えるため許容電流は小さくなります。

「表皮効果が大きい導体を採用して電気抵抗を低減する」——逆です

段階表皮効果が起きると
★渦電流が中心の電流を打ち消す
★②★★電流が導体の外側に偏る
★③★★断面の一部しか使えなくなる
★④★★実効抵抗が増える

「表面側で流れやすくなる」というのは正しい——けれども全体では損をしています

中心が使われなくなるので、実質的に細い電線と同じ——だから抵抗が増えるのです。

抵抗が増えれば発熱も増え、許容電流は下がります——結論もまるごと逆になります。

むしろ表皮効果を抑えるために、分割導体などを使います——実務では減らしたい現象です。

許容電流を大きくする4つの道すじ

方向方法本問の選択肢
★熱を逃がしやすくする★★各部の熱抵抗を小さくする★(1)
★誘電体損を減らす★★誘電率と誘電正接の小さい絶縁体★(3)
★シース損を減らす★★電気抵抗率の高いシース材★(4)
★周囲の発熱を減らす★★布設条数を少なくする★(5)

発熱を減らすか、熱を逃がすかの2方向です——4つの選択肢がそれぞれに対応しています。

(3)(4)は発熱を減らす方向——誘電体損とシース損はどちらも発熱源だから。

(1)(5)は熱を逃がしやすくする方向——周囲の条件を良くするのです。

誤りの(2)だけが、抵抗損を増やす方向——まったく逆を向いています

(4) 抵抗率の高いシース材が効く理由

損失原因減らす方法
★シース回路損★★長手方向に流れる電流★★クロスボンド接地・片端接地
★渦電流損★★シース内に生じる渦電流★★電気抵抗率の高い材料・シースを薄くする
シース回路損
\( W_s=\dfrac{E_s^2}{R_s} \)

Es:誘導電圧(一定) Rs:シースの抵抗

シースに誘導される電圧は、導体電流で決まります——シース材を変えても変わりません

その電圧のもとで、抵抗が大きいほど電流は小さくなります——損失も小さくなるのです。

渦電流損も、抵抗率が高いほど小さくなります——どちらも同じ向きです。

だから電気抵抗率の高い材料が有利——(4)は正しい記述になります。

⚠️ よくある間違い
(2)の「表面側で電流を流れやすくして」を正しいと読んでしまう——表面では流れやすくても全体では損です。中心が使われなくなります
使える断面が減れば抵抗は増える——だから許容電流も下がります
(1)の熱抵抗を疑ってしまう——小さくすれば熱が逃げます
(3)の誘電率を疑ってしまう——誘電体損が減ります
(4)の抵抗率を疑ってしまう——シース損が減ります
もっともらしい説明が付いていても、向きを確かめることです。

⏱️ 本番での進め方
①★表皮効果は実効抵抗を増やす。許容電流は下がる。
②★許容電流を増やすのは発熱減と放熱増の2方向。
③★抵抗率の高いシース材はシース損を減らす。
④★布設条数を減らすと1条あたりの許容電流が増える。

💡 覚え方
「使える断面が減れば抵抗は増える」——表皮効果は減らしたい現象です。もっともらしい理由が付いていても向きを確かめる——それがこの型への備えになります。

ケーブルの損失は平成29年度 A問題10地中送電:ケーブルの損失)にあります。

(1) 熱抵抗を小さくする道すじ

導体から周囲まで、熱はいくつもの層を通ります

熱抵抗を下げる方法
★絶縁体★★熱抵抗率の小さい材料を選ぶ
★シース★薄くする・熱を通す材料にする
★防食層★必要最小限の厚さにする
★周囲(土や空気)★★暗きょ式にする・水冷管を布設する

直列につながった熱抵抗の合計で、温度上昇が決まります——どこか1つでも下げれば効きます

最も大きいのは、たいてい周囲の熱抵抗です——土は熱を通しにくいから。

だから布設方式の選択が、容量を大きく左右します——暗きょ式が有利な理由です。

ケーブル自体の改良には限りがあります——周囲の条件のほうが効くのです。

(5) 布設条数が許容電流を下げる

隣のケーブルも熱を出しています

条数周囲の温度1条あたりの許容電流
★1条★上がらない★★100%
★3条★★互いに温め合う★★8割程度
★6条★★さらに上がる★★7割程度

互いに熱を与え合うので、周囲温度が上がります——上がれる余地が減るのです。

これを電流減少係数といいます——条数が増えるほど小さくなる

だから条数を減らせば、1条あたりは多く流せます——(5)が述べるとおりです。

熱がよく逃げる布設方式なら、この影響が小さくて済みます——暗きょ式が多条数に適する理由

(3) 誘電体損が許容電流に効く道すじ

絶縁体自身の発熱も、導体を温めます

誘電体損
\( W_d=\omega C V^2\tan\delta \)

誘電率と誘電正接の積に比例する

段階起きること
★交流電圧により絶縁体が発熱する
★②★★導体の熱と足し合わさる
★③★★導体温度が上限に早く達する
★④★★流せる電流が減る

誘電体損は、電流とは無関係に生じます——電圧がかかっているだけで発熱するのです。

その分だけ、導体が使える温度の余地が減ります——だから許容電流が下がる

誘電率と誘電正接の小さい材料なら、この発熱が減ります——だから許容電流が増えるのです。

超高圧ほど電圧の2乗で効くので、影響が大きくなります

許容電流を左右する周囲の条件

ケーブル自身より、周囲のほうが効くことがあります

条件許容電流への影響
★布設方式★★暗きょ式なら大きくとれる
★土壌の熱抵抗率★★乾いた砂地は熱を通しにくく不利
★埋設深さ★★深いほど熱が逃げにくい
★季節★★夏は土中温度が高く不利

土は熱を通しにくいので、周囲の熱抵抗が最も大きい——そこが律速になるのです。

乾いた土は特に熱を通しません——水分があるほうがよく冷える

深く埋めるほど守られますが、熱は逃げにくくなります——ここでも相反するのです。

だから許容電流は、条件ごとに計算されます——カタログの値そのままではないのです。

表皮効果を抑える導体の工夫

(2)で問われた現象を、減らす側から見ましょう

工夫しくみ使う場面
★分割導体★★導体を複数に分けて実質的に細くする★★大サイズの導体
★素線絶縁導体★★素線どうしを絶縁して渦電流を断つ★★とりわけ大容量
★中空導体★★もともと使われない中心を空ける★軽量化にもなる

表皮効果は、太い導体ほど強く現れます——だから大サイズほど工夫が要るのです。

分割すれば、細い導体の集まりとして振る舞います——中心まで電流が流れることになります。

素線を絶縁すれば、素線間の渦電流も断てます——より徹底した方法です。

いずれも表皮効果を「減らす」ための工夫——増やして得をすることはありません

まとめ

電力ケーブルの許容電流に関する選択肢一から五を発熱減と放熱増で判定し選択肢二を誤りとする表
(1)(3)(4)(5)は許容電流を増やす方向で、表皮効果を大きくする(2)だけが逆方向です。
誤り(2) 表皮効果が大きい導体は抵抗増→許容電流減
発熱を減らす低誘電率・低tanδ(3)/高抵抗率シース(4)
熱を逃がす各部の熱抵抗を小さく(1)
相互加熱条数を減らして1条当たり許容電流増(5)
答え(2)

▼あわせて解きたい関連問題
・表皮効果と実効抵抗(地中送電6):【電力】令和5年度上期 A問題10
・ケーブルの3損失(地中送電4):【電力】令和5年度下期 A問題10
・管路式と多条数の熱(地中送電7):【電力】令和4年度下期 A問題10

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