地中送電4【電験3種 電力】誘電体損が小さいのはCVケーブル!OFの方が小さいは誤り 令和5年度下期 A問題10 完全解説

電験3種 電力科目 地中送電 令和5年度下期 A問題10 誘電体損が小さいのはCV!OFの方が小は誤り

今回は令和5年度下期 電力科目 A問題10、我が国の地中送電線路の総合的な誤り選択問題です。建設費・ケーブルの種類・損失・布設方式・故障点標定と、地中送電の主要テーマが5択に凝縮されています。

決め手は誘電体損の大小。絶縁体の誘電正接tanδは架橋ポリエチレン(CV)が油浸紙(OF)より1桁小さいため、誘電体損もCVの方が小さい。これがCVケーブルが主流になった理由の一つで、「OFの方が小さい」は逆です。

出題のポイント:CVケーブルとOFケーブルの誘電体損

CVケーブルとOFケーブルの絶縁構造と誘電体損を比較する要点図
一般にCVケーブルの架橋ポリエチレンは誘電正接が小さく、OFケーブルより誘電体損が小さくなります。

CVケーブルは架橋ポリエチレンを絶縁体とする固体絶縁ケーブルです。OFケーブルは油浸紙と加圧絶縁油を用い、油通路と給油設備が必要です。一般に誘電体損はCVケーブルの方が小さくなります。

目次

CVケーブルとOFケーブルの構造を比較する

CVケーブルとOFケーブルの断面、絶縁材料、給油設備を比較する解説
CVは架橋ポリエチレンの固体絶縁、OFは油浸紙と加圧絶縁油を用います。

「一般にOFケーブルの方が小さい」——逆です

誘電体損
\( W_d=\omega C V^2\tan\delta \)

誘電率と誘電正接の積に比例する

★OFケーブル(油浸紙)★CVケーブル(架橋ポリエチレン)
★比誘電率★★3.5前後★★2.3前後
★誘電正接★★大きい★★小さい
★誘電体損★★大きい★★小さい

誘電体損は、誘電率と誘電正接の両方に比例します——どちらもCVのほうが小さいのです。

だから誘電体損もCVのほうが小さくなります——2つの効果が重なるから。

これがCVが送電容量の面で有利な理由の一つ——発熱源が少ないのです。

充電電流も小さくて済みます——誘電率が小さいので静電容量も小さいから。

問題文はCVとOFを入れ替えています——そこが誤りです。

令和5年度下期 電力科目 A問題10:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 地中送電 令和5年度下期 A問題10 問題文
令和5年度下期 電力科目 A問題10 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度下期 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題10

電験3種 電力科目 【地中送電】 令和5年度下期 A問題10

 我が国の地中送電線路に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1) 地中送電線路は、電力ケーブルを地中に埋設して送電する方式である。同じ送電容量の架空送電線路と比較して建設費が高いが、都市部においては用地の制約や、保安、景観などの点から地中送電線路が採用される傾向にある。

(2) 主な電力ケーブルには、架橋ポリエチレンを絶縁体としたCVケーブルと、絶縁紙と絶縁油を組み合わせた油浸紙を絶縁体としたOFケーブルがある。OFケーブルには油通路が設けられており、絶縁油の加圧によりボイドの発生を抑制して絶縁強度を確保するための給油設備が必要である。

(3) 電力ケーブルの電力損失において、抵抗損とシース損はケーブルの導体に流れる電流に起因した損失であり、誘電体損は電圧に対して絶縁体に流れる同位相の電流成分に起因した損失である。CVケーブルとOFケーブルの誘電体損では、一般にOFケーブルの方が小さい。

(4) 電力ケーブルの布設方法において、直接埋設式は最も工事費が安く、工期が短いが、ケーブル外傷等の被害のリスクが高く、ケーブル布設後の増設も難しい。一方で、管路式と暗きょ式(洞道式)は、ケーブル外傷等のリスク低減やケーブル布設後の増設にも優れた布設方式である。中でも暗きょ方式は、電力ケーブルの熱放散と保守の面で最も優れた布設方式である。

(5) 地中送電線路で地絡事故や断線事故が発生した際には、故障点位置標定が行われる。故障点位置標定法としては、地絡事故にはパルスレーダ法とマーレーループ法が適用でき、断線事故にはパルスレーダ法と静電容量測定法が適用できる。

答え誤っている記述は (3)です。

誘電体損が小さいのはCVケーブル

抵抗損、シース損、誘電体損とCV・OF比較から選択肢3の誤りを示す解説
OFケーブルの誘電体損の方が小さいとする選択肢(3)が誤りです。
選択肢テーマ要点
★(1)★架空線との比較★建設費は高いが用地・保安・景観で選ばれる
★(2)★ケーブルの種類★OFには油通路と給油設備が要る
★(3)★★損失★★誘電体損はCVのほうが小さい
★(4)★布設方式★暗きょ式が熱放散と保守で最良
★(5)★故障点標定★地絡=パルス+マーレー/断線=パルス+静電容量

5つの選択肢が、地中送電の5大テーマを網羅しています——この1問で単元の全体が見渡せるのです。

どれも他の年度で単独の問題として出題されています——だから復習に使える

(5)の適用範囲は、正しく書かれています——マーレーループ法は地絡だけです。

(4)の布設方式も、順位が正確——暗きょ式が熱と保守で最良になります。

(3) 損失の分類も確かめる

損失何に起因するか電流の位相
★抵抗損★★導体に流れる電流★—
★シース損★★導体電流が誘導する電流★—
★誘電体損★★印加電圧★★電圧と同位相の成分

抵抗損とシース損は電流で決まります——負荷がなければ生じません

誘電体損は電圧で決まります——無負荷でも生じるのです。

だから問題文が「電流に起因」「電圧に対して」と書き分けています——そこは正確

誤りは、CVとOFの大小関係だけ——分類そのものは正しいのです。

⚠️ よくある間違い
(3)の前半「抵抗損とシース損は電流に起因」を見て正しいと判断する——そこは正しいのです。誤りは最後の一文だけ
誘電率も誘電正接もCVのほうが小さい——だから誘電体損も小さい
(1)の建設費を疑ってしまう——10〜20倍高いが都市部で選ばれます
(2)のOFケーブルを疑ってしまう——油通路と給油設備が必要
(5)の適用範囲を疑ってしまう——正しく書かれています
長い選択肢では、最後の一文まで読む——そこに誤りが置かれることがあります

⏱️ 本番での進め方
①★誘電体損はCVのほうが小さい(誘電率も誘電正接も小さい)。
②★抵抗損とシース損は電流、誘電体損は電圧で決まる。
③★暗きょ式が熱放散と保守で最良。
④★地絡=パルス+マーレー/断線=パルス+静電容量。

💡 覚え方
「CVはOFより誘電率も誘電正接も小さい」——だから誘電体損も小さいのです。本問は地中送電の総まとめ——5つの選択肢で単元全体を復習できます

各テーマの詳しい解説は——令和2年度 A問題11架空線との比較)、平成29年度 A問題10ケーブルの損失)、令和4年度上期 A問題11故障点位置標定)にあります。

(1) 地中化が選ばれる理由

建設費が10倍以上でも、なぜ埋めるのでしょうか

理由内容
★用地の制約★★都市部に鉄塔を建てる場所がない
★保安★★人が触れる恐れがなく災害時に倒れない
★景観★★電線と電柱がなくなり街並みが整う
★気象への強さ★★台風や雷の影響を受けにくい

用地が確保できないことが、最大の理由です——鉄塔には敷地と線下の空間が要るから。

道路の下なら、新たな用地を買わずに済みます——それが地中化の出発点です。

近年は無電柱化として、防災の面からも進められています——倒れた電柱が道をふさがないから。

費用の差を上回る理由があるということ——だから都市部で採用が進みます

(4) 布設方式の順位を確かめる

問題文が挙げる特徴を、表で照らしましょう

項目良いほうから
★工事費の安さ・工期の短さ★★直接埋設式>管路式>暗きょ式
★熱放散★★暗きょ式>直接埋設式>管路式
★増設のしやすさ★★暗きょ式>管路式>直接埋設式
★外傷への強さ★★暗きょ式>管路式>直接埋設式

問題文は「直接埋設式は安いが外傷リスクが高く増設も難しい」と述べています——表のとおりです。

「暗きょ式は熱放散と保守の面で最も優れる」も正しい——空気が対流するから

費用以外は、ほぼ暗きょ式が最良になります——高いだけの価値があるのです。

だから(4)は正確な記述——3方式の性格をよくまとめています

(5) 標定法の適用範囲を確かめる

問題文の組合せが正しいか、原理から見ましょう

方法★地絡★断線理由
★マーレーループ法★★使える★★使えない★★断線すると電流の輪が閉じない
★パルスレーダ法★★使える★★使える★★どちらでもインピーダンスが変化する
★静電容量測定法★★使えない★★使える★★地絡では導体の長さが変わらない

問題文は「地絡=パルス+マーレー、断線=パルス+静電容量」——表と一致します

だから(5)は正しい記述——誤りは(3)だけです。

何を測っているかが分かれば、適用範囲も導けます——覚えるのではなく考えるのです。

パルスレーダ法だけが両方に使える——そこを軸に整理します

(2) OFケーブルの油圧が担うもの

なぜ加圧するのか、あらためて確かめましょう

段階起きること
★負荷が減って導体が冷える
★②★★絶縁油が収縮する
★③★★加圧していないと空隙(ボイド)ができる
★④★★ボイドで部分放電が起き絶縁が壊れる

油は温度で膨張・収縮します——その出入りを給油設備が受け止めるのです。

大気圧以上に保っておけば、空隙ができません——常に油で満たされるから。

空気は誘電率が小さいので電界が集中し、しかも絶縁耐力も低い——だから真っ先に放電するのです。

だから油通路と給油設備が欠かせません——(2)は正確な記述になります。

まとめ

誤り(3) 誘電体損はCVの方が小さい(OFではない)
損失の分類抵抗損・シース損=電流系/誘電体損=電圧系
誘電体損Wd=ωCV²tanδ(課電だけで発生)
標定法地絡=マーレーループ・パルスレーダ/断線=パルスレーダ・静電容量
答え(3)

▼あわせて解きたい関連問題
・CV/OFケーブルの特徴(地中送電2):【電力】令和7年度上期 A問題10
・マーレーループ法(地中送電3):【電力】令和6年度上期 A問題10
・布設3方式(地中送電1):【電力】令和7年度下期 A問題10

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