今回は平成19年度 電力科目 A問題9、受電端電圧が送電端電圧より高くなる現象——フェランチ現象の空欄補充問題です。cb8(R04上)・cb20(H24)で鍛えた5要素が、そのまま空欄になって登場します。
埋めるべき5点:こう長が長くなるほど発生しやすい/原因は線路の静電容量/流れるのは進み電流/現象の名前はフェランチ/対策は分路リアクトル。「軽負荷・進み・長距離・ケーブル系・分路リアクトル」の黄金セットです。
平成19年度 電力科目 A問題9:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成19年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題9
電験3種 電力科目 【地中送電】 平成19年度 A問題9
交流送電線における受電端電圧が送電端電圧より高くなる現象の名称や特徴に関する記述の空欄(ア)〜(オ)に当てはまる語句の組合せを選ぶ問題である(正解の組合せ:(ア)長く・(イ)静電容量・(ウ)進み・(エ)フェランチ・(オ)分路リアクトル)。
交流送電線において、受電端電圧が送電端電圧より高くなる現象に関する空欄補充問題。夜間などの軽負荷時、こう長が(ア)なるほど、線路の(イ)の影響により(ウ)電流が流れ、受電端電圧が送電端電圧より高くなる。この現象を(エ)現象といい、防止には(オ)の接続が効果的である——という趣旨の文章の空欄(ア)〜(オ)に当てはまる組合せを選ぶ。
※選択肢は5つの組合せ表(原文の表は省略。正解の組合せは下記解説を参照)。

答えは(4):長く・静電容量・進み・フェランチ・分路リアクトル
| 空欄 | 入る語 | 理由 |
| ★(ア) | ★★長く | ★長いほど静電容量が大きい |
| ★(イ) | ★★静電容量 | ★電線と大地の間に生じる |
| ★(ウ) | ★★進み | ★容量性の電流は進む |
| ★(エ) | ★★フェランチ | ★この現象の名前 |
| ★(オ) | ★★分路リアクトル | ★進み電流を打ち消す |
5つの空欄が、1本の筋道でつながっています——長い→静電容量が大きい→進み電流→電圧上昇。
だからどれか1つ分かれば、他も決まります——ばらばらに覚える必要はないのです。
(オ)にコンデンサを選べば、進み電流をさらに増やします——逆効果になります。
進み電流で電圧が上がるしくみ
★受電端のほうが高い
| 負荷 | 流れる電流 | X sinθ | 受電端電圧 |
| ★重負荷(昼) | ★★遅れ電流 | ★正 | ★★送電端より低い |
| ★軽負荷(夜) | ★★進み電流 | ★★負 | ★★送電端より高い |
ふだんは負荷の遅れ電流が、線路の進み電流を上回ります——だから電圧が下がるのです。
夜間に負荷が減ると、その関係が逆転します——線路の充電電流だけが残るから。
こう長が長いほど静電容量が大きく、充電電流も大きい——だから(ア)は「長く」です。
ケーブルでは特に顕著——静電容量が架空線の数十倍だからです。
(オ) 分路リアクトルという答え
| 設備 | 流す電流 | 電圧への効果 | 使う場面 |
| ★分路リアクトル | ★★遅れ電流 | ★★下げる | ★★軽負荷時 |
| ★電力用コンデンサ | ★★進み電流 | ★★上げる | ★★重負荷時 |
進み電流が原因なら、遅れ電流をぶつけて打ち消します——それが分路リアクトルです。
コンデンサを入れれば、進み電流がさらに増えます——電圧がもっと上がってしまうのです。
「重いときはC、軽いときはL」——この対応で覚えられます。
時間帯に応じて入り切りするのが、日々の運用——電圧を範囲内に保つためです。
⚠️ よくある間違い
(エ)を自己励磁としてしまう——自己励磁は無負荷の発電機が進み電流で電圧を確立してしまう別の現象です。
送電線の電圧上昇はフェランチ現象——名前が違います。
(オ)に電力用コンデンサを選んでしまう——進み電流をさらに増やすので逆効果。
(ア)を「短く」としてしまう——長いほど静電容量が大きいのです。
(ウ)を「遅れ」としてしまう——容量性の電流は電圧より進みます。
5つの語が一本の筋道でつながっている——1つ決まれば他も決まるのです。
⏱️ 本番での進め方
①★フェランチ5点セット=長く・静電容量・進み・フェランチ・分路リアクトル。
②★軽負荷ほど、こう長が長いほど起きやすい。
③★重負荷にはC、軽負荷にはL。
④自己励磁は発電機の別現象。混同しない。
💡 覚え方
「重C軽L」——重負荷にはコンデンサ、軽負荷にはリアクトル。フェランチは軽負荷の現象なのでL——これだけで(オ)が決まります。
フェランチ効果は平成30年度 A問題10(架空送電:過電圧)、電圧調整は令和4年度上期 A問題6(架空送電:電圧調整)にもあります。
充電電流の大きさを見積もる
線路の静電容量に、どれくらいの電流が流れるのでしょうか。
| こう長 | 静電容量 | 充電電流 | 影響 |
| ★10 km | ★小さい | ★わずか | ★問題にならない |
| ★100 km | ★10倍 | ★★10倍 | ★★フェランチが現れる |
| ★ケーブル | ★★架空線の数十倍 | ★★きわめて大きい | ★★短くても問題になる |
静電容量はこう長に比例します——だから長いほど充電電流が大きいのです。
周波数にも比例するので、60 Hz のほうがやや大きい。
ケーブルは導体と遮へい層が近いので、容量が桁違い——数十 km でも無視できません。
だから地中線が多い都市部では、この現象への備えが要ります。
フェランチ現象が問題になる場面
実際には、どんなときに起きるのでしょうか。
| 場面 | 状況 | 危険 |
| ★深夜の軽負荷 | ★★工場が止まり負荷が減る | ★機器の絶縁に負担 |
| ★連休中 | ★★長期間にわたり負荷が軽い | ★★継続的に高い電圧 |
| ★送電線の充電時 | ★★受電端を開放したまま加圧する | ★★最も電圧が上がる |
受電端を開放したまま送電線に電圧をかけると、最も顕著です——負荷電流がまったくないから。
だから工事後の充電時には、順序に注意します——先にリアクトルを入れておくのです。
連休中は数日にわたって電圧が高めになります——絶縁が長時間さらされることになります。
短時間なら耐えられても、続けば劣化が進みます——だから調整が要るのです。
(エ) 名前の由来
フェランチという人名から来ています。
| 項目 | 内容 |
| ★由来 | ★英国の技術者フェランチが見いだした |
| ★年代 | ★1890年ごろ、初期の交流送電で観測された |
| ★当時の状況 | ★★ケーブル送電で電圧が上がって驚かれた |
初期の交流送電で、思いがけず観測された現象です——電圧は下がるものと思われていたから。
ケーブルは静電容量が大きいので、早くから現れました——だから発見が早かったのです。
いまでは原因も対策も分かっています——けれども名前だけが残りました。
混同されやすいのが自己励磁現象——こちらは無負荷の発電機が進み電流で電圧を確立してしまう別の話です。
どちらも進み電流が絡むので紛らわしい——起きる場所で区別します。
(オ) 分路リアクトルの置き方
どこに、どれだけ入れるのでしょうか。
| 項目 | 内容 |
| ★置く場所 | ★★変電所の母線または変圧器の三次側 |
| ★容量 | ★線路の充電容量に見合う分 |
| ★運用 | ★★軽負荷時に投入し、重負荷時に切り離す |
| ★調整 | ★複数台を段階的に入り切りする |
入れっぱなしにすると、昼間に電圧が下がりすぎます——だから時間帯で切り替えるのです。
複数台に分けておけば、細かく調整できます——1台ずつ入れていくことになります。
変圧器の三次側に付けることも多い——低い電圧で扱えるので装置が小さくて済む。
電力用コンデンサと同じ場所に並べて置かれます——状況に応じて使い分けるのです。
フェランチと自己励磁を区別する
どちらも進み電流が絡むので、混同されがちです。
| ★フェランチ現象 | ★自己励磁現象 | |
| ★起きる場所 | ★★送電線の受電端 | ★★発電機の端子 |
| ★状況 | ★★軽負荷・長距離 | ★★無負荷の発電機に長い線路をつなぐ |
| ★何が起きるか | ★★受電端電圧が送電端より高くなる | ★★励磁しなくても電圧が立ち上がる |
| ★対策 | ★★分路リアクトル | ★★発電機の容量を大きくする・線路を分割する |
自己励磁は、発電機の残留磁気から始まります——進み電流が磁束を強める向きに働くのです。
すると電圧が上がり、さらに進み電流が増えます——正のはたらきかけが続いて電圧が暴走する。
フェランチは線路の現象、自己励磁は発電機の現象——起きる場所で区別できます。
問題文は「受電端電圧が送電端電圧より高くなる」と書いています——だからフェランチです。
まとめ
| (ア) | 長く(こう長が長いほど発生しやすい) |
| (イ) | 静電容量(充電電流の源) |
| (ウ) | 進み(軽負荷時に支配的) |
| (エ) | フェランチ現象 |
| (オ) | 分路リアクトル(進みQを吸収) |
| 答え | (4) |
▼あわせて解きたい関連問題
・フェランチの誤り選択(地中送電20):【電力】平成24年度 A問題12
・フェランチの類題(地中送電8):【電力】令和4年度上期 A問題9

コメント