今回は平成20年度 電力科目 A問題11、地中電線路の絶縁劣化診断方法として関係ないものを選ぶ問題です。「劣化を診断する方法」と「故障点を探す方法」の区別がそのまま答えになります。
絶縁劣化診断の4本柱:直流漏れ電流法・誘電正接法(tanδ測定)・絶縁抵抗法・絶縁油中ガス分析法——いずれも「壊れる前に劣化の兆候をつかむ」検査。一方マーレーループ法は事故が起きた後に故障点の位置を標定する方法(cb3・cb21)で、劣化診断ではありません。
平成20年度 電力科目 A問題11:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題11
電験3種 電力科目 【地中送電】 平成20年度 A問題11
地中電線路の絶縁劣化診断方法として、関係ないものは次のうちどれか。
(1)直流漏れ電流法 (2)誘電正接法 (3)絶縁抵抗法 (4)マーレーループ法 (5)絶縁油中ガス分析法

関係ないのは(4):マーレーループ法は故障点を探す方法
診断ではなく、壊れたあとに位置を探す方法です。
| ★絶縁劣化診断 | ★故障点標定 | |
| ★いつ行うか | ★★壊れる前(予防保全) | ★★壊れたあと |
| ★何を知るか | ★★劣化の程度 | ★★故障点の位置 |
| ★代表例 | ★直流漏れ電流法・誘電正接法など | ★★マーレーループ法・パルスレーダ法 |
診断は「まだ使えるか」を調べるもの——取り替える時期を決めるためです。
標定は「どこで壊れたか」を探すもの——掘り返す場所を決めるため。
目的がまったく違います——だから「関係ないもの」になります。
どちらも地中線で重要な技術ですが、使う場面が別——そこを見分けます。
絶縁劣化診断の主な方法
| 方法 | 測るもの | 分かること |
| ★絶縁抵抗法 | ★直流電圧をかけたときの抵抗 | ★★全体的な劣化の程度 |
| ★直流漏れ電流法 | ★直流高電圧での漏れ電流の変化 | ★★局部的な欠陥の有無 |
| ★誘電正接法 | ★交流での tanδ | ★★絶縁体全体の吸湿・劣化 |
| ★部分放電測定 | ★微小な放電のパルス | ★ボイドや異物の存在 |
| ★絶縁油中ガス分析法 | ★油に溶けたガスの種類と量 | ★OFケーブルの内部異常 |
絶縁抵抗法は最も手軽ですが、大まかにしか分かりません——まず最初に行う試験です。
直流漏れ電流法は、電圧を上げながら電流の変化を見ます——急に増えれば欠陥があるのです。
誘電正接は、絶縁体がどれだけ発熱するかを表す量——吸湿すると大きくなります。
絶縁油中ガス分析法は、OFケーブルに使えます——油を使っているからです。
(2) 誘電正接という量
| 絶縁体の状態 | tanδ | 意味 |
| ★健全 | ★★小さい | ★ほぼ容量分だけの電流 |
| ★吸湿・劣化 | ★★大きい | ★★抵抗分の電流が増える |
完全な絶縁体なら、電流は電圧より90度進みます——純粋な容量だから。
劣化すると、わずかに抵抗分が混じります——その比が tanδです。
δ は90度からのずれの角度——だから誘電損失角といいます。
この値が大きいほど、絶縁体が発熱します——劣化がさらに進む悪循環になります。
⚠️ よくある間違い
(4)のマーレーループ法を「ケーブルの試験だから」と関係あると判断する——目的が違います。故障点の位置を探す方法です。
診断は壊れる前、標定は壊れたあと——時期がまったく違います。
(1)の直流漏れ電流法を選んでしまう——代表的な診断法です。
(2)の誘電正接法を選んでしまう——tanδ で劣化を見ます。
(5)の絶縁油中ガス分析法を選んでしまう——OFケーブルに使える診断法です。
「診断」か「標定」かを見分ける——それだけで解けます。
⏱️ 本番での進め方
①★マーレーループ法は故障点標定であって診断ではない。
②★診断は壊れる前、標定は壊れたあと。
③★tanδは抵抗分と容量分の電流の比。
④★絶縁油中ガス分析はOFケーブルに使える。
💡 覚え方
「診断は健康診断、標定は事故現場」——目的も時期も違います。マーレーループは事故のあとに使う——だから診断の仲間ではありません。
マーレーループ法そのものは平成23年度 A問題11(地中送電:故障点標定)にあります。
(1) 直流漏れ電流法の見方
電圧を上げながら、電流の変化を見ます。
| 電流の変化 | 判定 | 意味 |
| ★時間とともに減っていく | ★★健全 | ★吸収電流が収まっていく |
| ★一定のまま | ★注意 | ★漏れ電流が残っている |
| ★★時間とともに増える | ★★不良 | ★★劣化が進んでいる |
| ★★急に跳ね上がる | ★★重度の不良 | ★★局部的な欠陥がある |
健全なケーブルでは、電流はだんだん減ります——絶縁体が充電され終わるから。
劣化していると、減らずにむしろ増えます——漏れる道ができているのです。
電圧を段階的に上げて、そのつど記録します——変化のしかたで判定するのです。
値そのものより、変化の傾向を見るのが要点——ケーブルごとに絶対値は違うから。
(3) 絶縁抵抗法という基本の試験
最も手軽で、最初に行う試験です。
| 項目 | 内容 |
| ★測り方 | ★★絶縁抵抗計で直流電圧をかけて抵抗を読む |
| ★分かること | ★全体的な絶縁の状態 |
| ★限界 | ★★局部的な欠陥は見つけにくい |
| ★温度の影響 | ★★温度が上がると抵抗が下がる |
絶縁抵抗は温度で大きく変わります——だから測定時の温度を記録します。
同じケーブルでも、夏と冬で値が違います——換算しないと比べられないのです。
小さな欠陥があっても、全体の抵抗はあまり変わりません——だから他の方法と組み合わせます。
それでも簡単なので、日常の点検で使われます——異常があれば詳しい試験へ進むのです。
(5) 絶縁油中ガス分析法が使える相手
油を使っている機器にだけ適用できます。
| 機器 | 油の有無 | ガス分析 |
| ★OFケーブル | ★★絶縁油を充てんしている | ★★使える |
| ★変圧器 | ★★絶縁油に浸っている | ★★使える |
| ★CVケーブル | ★★油を使わない(固体絶縁) | ★★使えない |
内部で異常があると、油が分解してガスが出ます——そのガスが油に溶け込むのです。
ガスの種類から、異常の種類が推測できます——アセチレンならアーク放電など。
油を採取するだけなので、運転を止めずに済みます——それが大きな利点です。
CVケーブルには油がないので使えません——方法と対象が結びついているのです。
診断の結果をどう使うか
測って終わりではありません。
| 判定 | とる措置 |
| ★良 | ★次回まで運転を続ける |
| ★要注意 | ★★点検の間隔を短くする |
| ★不良 | ★★計画的に取り替える |
いきなり壊れるのを避けるのが、診断の目的です——予防保全という考え方。
事故で止まれば、復旧に数日かかります——その間ずっと供給に支障が出るのです。
計画的に取り替えれば、停電を短く抑えられます——夜間や休日に作業できるから。
だから地中線では診断が重要になります——架空線のように再閉路で戻らないのです。
水トリー劣化という現象
CVケーブルの代表的な劣化のしかたです。
| 段階 | 起きること |
| ① | ★絶縁体に微小な水分と不純物が入る |
| ★② | ★★電界によって水が樹枝状に伸びていく |
| ★③ | ★その部分の絶縁が弱くなる |
| ★④ | ★★やがて絶縁破壊に至る |
木の枝のような形に広がるので「トリー」といいます——tree(木)から来た名前です。
年単位でゆっくり進むので、診断で捉えられます——だから定期的に測るのです。
直流漏れ電流法や誘電正接法で兆しが見えます——絶縁抵抗だけでは分かりにくい。
対策は遮水層を設けて水分を入れないこと——いまのケーブルには標準で付いています。
まとめ
| 無関係 | (4) マーレーループ法=故障点位置標定法 |
| 直流漏れ電流法 | 漏れ電流の大きさ・変化で診断 |
| 誘電正接法 | tanδ増=劣化のサイン |
| 絶縁抵抗法 | メガーで手軽に測定 |
| 油中ガス分析 | 絶縁油の分解ガスで内部異常検知 |
| 答え | (4) |
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