今回は平成22年度 電力科目 A問題9、計器用変成器のうち変流器(CT)の取扱いを問う空欄補充問題です。「CTの二次側は絶対に開放してはならない」という鉄板知識で、令和6年度下期A問題7など繰り返し出題される最頻出テーマです。
理屈で覚えるコツ:CTの一次電流は負荷(線路)側で決まるので、二次を開放しても一次電流は流れ続けます。二次電流による打ち消し(減磁作用)が消えるため鉄心が過飽和になり、二次側に大きな電圧・鉄損の過大で焼損に至る——これが開放禁止の理由です。
平成22年度 電力科目 A問題9:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成22年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題9
電験3種 電力科目 【変電】 平成22年度 A問題9
計器用変成器において、変流器の二次端子は、常に(ア)負荷を接続しておかねばならない。特に、一次電流(負荷電流)が流れている状態では、絶対に二次回路を(イ)してはならない。これを誤ると、二次側に大きな(ウ)が発生し(エ)が過大となり、変流器を焼損する恐れがある。また、一次端子のある変流器は、その端子を被測定線路に(オ)に接続する。
上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)、(ウ)、(エ)及び(オ)に当てはまる語句として、正しいものを組み合わせたのは次のうちどれか。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 高インピーダンス 開 放 電 圧 銅 損 並 列 (2) 低インピーダンス 短 絡 誘導電流 銅 損 並 列 (3) 高インピーダンス 短 絡 電 圧 鉄 損 直 列 (4) 高インピーダンス 短 絡 誘導電流 銅 損 直 列 (5) 低インピーダンス 開 放 電 圧 鉄 損 直 列

(ア)(イ) 変流器の二次は短絡が原則
変圧器とは正反対の扱い——ここが最も間違えやすい点です。
| ★変流器(CT) | ★計器用変圧器(VT) | |
| ★二次の常態 | ★低インピーダンス負荷(ほぼ短絡) | ★高インピーダンス負荷(ほぼ開放) |
| ★禁止事項 | ★二次開放 | ★二次短絡 |
| ★取り外すとき | ★二次を短絡してから | ★二次を開放してから |
| ★一次の接続 | ★線路に直列 | ★線路に並列 |
すべてが逆になっています——対にして覚えるのが確実です。
だから(ア)は低インピーダンス、(イ)は開放——「開放してはならない」という文になります。
(ウ)(エ) なぜ二次開放が危険なのか
一次電流は、線路の電流そのもの——二次側の都合で変わりません。
| 順 | 起きること |
| ① | ★一次電流は線路で決まり、変えられない |
| ★② | ★二次を開放すると、打ち消す起磁力がなくなる |
| ★③ | ★一次電流のすべてが励磁電流になる |
| ★④ | ★鉄心の磁束が飽和するほど増える |
| ★⑤ | ★二次端子に高電圧が誘起する(数千 V) |
| ★⑥ | ★鉄損が過大となり、鉄心が焼損する |
ふだんは、一次の起磁力を二次の起磁力が打ち消しています——だから鉄心の磁束は小さいのです。
二次を開くと、その打ち消しが消える——磁束が一気に増えます。
磁束が飽和すると、波形が方形波に近くなります——切り替わりが急なので dφ/dt が跳ね上がるのです。
だから(ウ)は電圧——「誘導電流」ではありません。
そして磁束が過大なので鉄損が増える——だから(エ)は鉄損です。
銅損は電流の2乗に比例しますが、二次電流はゼロ——銅損はむしろ減ります。
(オ) 一次は線路に直列
電流を測るのだから、直列に入れます。
| 測るもの | 接続 | 理由 |
| ★電流(CT・電流計) | ★直列 | ★同じ電流を通す必要がある |
| ★電圧(VT・電圧計) | ★並列 | ★同じ電圧をかける必要がある |
電流計を並列に入れれば、そこが短絡になります——直列でなければ測れないのです。
貫通形の変流器なら、線路をそのまま通します——これも実質的に直列です。
⚠️ よくある間違い
(ア)を「高インピーダンス」としてしまう——選択肢(1)(3)(4)がそれです。変圧器の感覚で考えると、こちらに引き寄せられます。
(イ)を「短絡」としてしまう——選択肢(2)(3)(4)。CTは短絡が安全、開放が危険です。
(ウ)を「誘導電流」としてしまう——選択肢(2)(4)。開放しているので電流は流れません。発生するのは電圧です。
(エ)を「銅損」としてしまう——選択肢(1)(2)(4)。二次電流がゼロなので銅損は減ります。増えるのは鉄損。
(オ)を「並列」としてしまう——選択肢(1)(2)。電流を測るので直列です。
(ア)と(イ)は連動しています——低インピーダンスだから開放が危険。
⏱️ 本番での進め方
①★CTは二次短絡が安全、二次開放が危険。VTと逆。
②★開放すると打ち消しが消え、磁束が飽和して高電圧。
③★二次電流ゼロなので銅損は減り、鉄損が増える。
④★電流を測るCTは直列、電圧を測るVTは並列。
💡 覚え方
「CTは短絡して外す、VTは開放して外す」——すべてが逆です。二次を開けば磁束を打ち消すものがなくなる——だから飽和して高電圧が出ます。
計器用変成器は平成27年度 A問題10(変電:計器用変成器)にもあります。
変流器の定格と使い方
変流器の二次電流は、規格で決まっています。
| 項目 | 標準値 | 意味 |
| ★二次定格電流 | ★5 A(または1 A) | ★計器はこれを前提に作られる |
| ★変流比 | ★600/5、100/5 など | ★一次定格/二次定格 |
| ★定格負担 | ★15〜40 V·A 程度 | ★二次につないでよい負荷の上限 |
二次を5 A に統一すると、計器を共通化できます——一次が何アンペアでも同じ計器が使えるのです。
負担が大きすぎると、二次電圧が上がって誤差が増える——だから上限が決まっています。
点検時の手順
| 順 | やること | 理由 |
| ★① | ★二次端子を短絡する | ★開放を防ぐため |
| ★② | ★計器や継電器を外す | ★短絡してあるので安全 |
| ★③ | ★作業が終わったら短絡を外す | ★元に戻す |
短絡してから外す——この順序を誤ると危険です。
そのために短絡用の端子が備えられています——試験用端子と呼ばれます。
計器用変圧器の側から見る
変流器と対にして覚えるため、VTも整理しましょう。
| 項目 | 計器用変圧器(VT) |
| ★二次定格電圧 | ★110 V |
| ★接続 | ★線路に並列 |
| ★禁止 | ★二次短絡 |
| ★短絡すると | ★大電流が流れて巻線が焼損する |
| ★保護 | ★一次・二次にヒューズを入れる |
VTは電圧源に近い振る舞いをします——短絡すれば電流が際限なく流れるのです。
CTは電流源に近い振る舞いをします——開放すれば電圧が際限なく上がることになります。
電圧源は短絡が危険、電流源は開放が危険——回路の基本と同じです。
なぜCTが電流源のように振る舞うのか
一次電流が、二次の状態と無関係に決まるからです。
一次側は太い線路そのもの——CTの二次に何をつなごうと、線路の電流は変わりません。
だから二次には、変流比で決まる電流が流れようとする——それを妨げると高電圧が出るのです。
要点をもう一度
5つの空欄が、すべてCTの性質でつながっています。
| 空欄 | 答え | 根拠 |
| (ア) | ★低インピーダンス | ★電流を流す必要がある |
| (イ) | ★開放 | ★開くと磁束が飽和する |
| (ウ) | ★電圧 | ★開いているので電流は流れない |
| (エ) | ★鉄損 | ★磁束が過大だから |
| (オ) | ★直列 | ★電流を測るから |
(ア)と(イ)が決まれば、(ウ)(エ)は自動的に決まります——開放→磁束飽和→高電圧→鉄損増大という流れ。
VTと対にして覚える
CTとVTは、あらゆる点で逆になっています。
CTは電流を測るので直列、二次は短絡が安全——VTは電圧を測るので並列、二次は開放が安全。
片方を覚えれば、もう片方は反転させるだけ——個別に暗記する必要はありません。
零相変流器という応用
変流器の原理を使った、地絡検出のための機器があります。
| ★通常の変流器(CT) | ★零相変流器(ZCT) | |
| ★通す線 | ★1相ずつ | ★3相をまとめて |
| ★測るもの | ★各相の電流 | ★3相の合計(零相電流) |
| ★正常時の出力 | ★負荷電流に比例 | ★ゼロ |
| ★地絡時 | ★変化は小さい | ★地絡電流が現れる |
3相の電流は、正常なら合計がゼロになります——行った電流はすべて戻ってくるからです。
地絡すると、大地へ漏れた分だけ差が出る——それが零相電流です。
だから3相をまとめて1つの鉄心に通せば、地絡だけを検出できる——巧妙な仕掛けだと言えます。
数百アンペアの負荷電流の中から、数百ミリアンペアの漏れを拾える——打ち消しを利用しているからです。
まとめ
| (ア) | 低インピーダンス(電流計=ほぼ短絡) |
| (イ) | 開放(絶対禁止) |
| (ウ) | 電圧(過飽和による大電圧) |
| (エ) | 鉄損(過大→焼損) |
| (オ) | 直列(線路の電流を測る) |
| 答え | (5) |
▼あわせて解きたい関連問題
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