今回は平成27年度 電力科目 A問題10、地中ケーブルの誘電体損を計算する問題です。地中送電18で学んだ誘電体損の定義 Wd=ωCV²tanδ を、実際の数値で計算します。
公式はWd(1線)=ωCEp²tanδ(Ep=相電圧、C=1線の静電容量、tanδ=誘電正接)。3線合計なので3倍。ミスしやすいのは相電圧を使う(線間電圧66kVを√3で割る)ことと、単位(μF、%)の換算です。
平成27年度 電力科目 A問題10:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成27年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題10
電験3種 電力科目 【送電の計算】 平成27年度 A問題10
電圧66kV、周波数50Hz、こう長5kmの交流三相3線式地中電線路がある。ケーブルの心線1線当たりの静電容量が0.43μF/km、誘電正接が0.03%であるとき、このケーブル心線3線合計の誘電体損の値〔W〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)141 (2)294 (3)883 (4)1324 (5)2648 W

答えは(3):883 W
★全長分にする
★
★答え
手順は前問とまったく同じです——数値が変わっただけ。
電圧が2倍になれば、損失は4倍になります——2乗で効くから。
だから66 kV では、33 kV の4倍以上になります——静電容量も長さも増えているのです。
各項がどれだけ効くか
| 量 | 効き方 | 2倍にすると |
| ★周波数 f | ★比例 | ★2倍 |
| ★静電容量 C | ★比例 | ★2倍 |
| ★★線間電圧 V | ★★2乗に比例 | ★★4倍 |
| ★誘電正接 tanδ | ★比例 | ★2倍 |
電圧だけが2乗で効きます——だから超高圧ほど問題になるのです。
こう長は静電容量を通して効きます——長いほど損失も増えるのです。
周波数は系統で決まるので変えられません——60 Hz のほうがやや大きいことになります。
変えられるのは誘電正接だけ——だから材料の選択が対策になるのです。
前問との比較で確かめる
| 項目 | 平成21年度 | 本問(平成27年度) | 比 |
| ★電圧 | ★33 kV | ★66 kV | ★★4倍(2乗) |
| ★周波数 | ★60 Hz | ★50 Hz | ★0.83倍 |
| ★静電容量 | ★0.24×2=0.48 μF | ★0.43×5=2.15 μF | ★★4.48倍 |
| ★誘電体損 | ★59.1 W | ★883 W | ★★14.9倍 |
★実際の比と一致
各項の比を掛け合わせると、答えの比になります——式が積の形だからです。
だから1問解けば、もう1問は比で確かめられます——検算にも使えるのです。
電圧の4倍が最も効いています——2乗で効くから。
同じ形の問題が繰り返し出るので、手順を固めておきます。
⚠️ よくある間違い
tanδ を0.03のまま代入する——0.03%なので3×10⁻⁴です。
静電容量を全長分にし忘れる——0.43 μF/km × 5 km=2.15 μF。
周波数を60 Hz と思い込む——本問は50 Hzです。
3倍してしまう——すでに3線分の式になっています。
電圧を相電圧に直す——線間電圧のまま使えます。
⏱️ 本番での進め方
①★Wd=ωCV²tanδ。手順は毎回同じ。
②★静電容量は必ず全長分にする。
③★tanδ が%なら10⁻²倍する。
④★電圧だけが2乗で効く。
💡 覚え方
「全長のC、線間のV、%は小数に」——この3点で間違いが防げます。各項の比を掛ければ答えの比になる——検算に使えます。
同じ形の問題が平成21年度 A問題11(送電の計算:誘電体損)にあります。
計算の手順を固める
毎回同じ順序で進めれば、間違えません。
| 段階 | 行うこと | 注意点 |
| ★① | ★静電容量を全長分にする | ★★μF/km × km |
| ★② | ★角周波数を出す | ★★2πf(50か60か確認) |
| ★③ | ★誘電正接を小数に直す | ★★%なら100で割る |
| ★④ | ★線間電圧のまま代入する | ★★相電圧に直さない |
この4点を確かめれば、あとは掛け算だけです——手順が決まっているのです。
とりわけ①と③でつまずきやすい——単位の変換だから。
④は三相の式で3が約分されるからこそ——導き方を知っていれば迷いません。
同じ形の問題が繰り返し出ます——手順を体で覚えておくとよいでしょう。
誘電体損が許容電流を下げる
絶縁体自身の発熱が、導体を温めます。
| 段階 | 起きること |
| ① | ★交流電圧により絶縁体が発熱する |
| ★② | ★★導体の熱と足し合わさる |
| ★③ | ★★導体温度が上限に早く達する |
| ★④ | ★★流せる電流が減る |
誘電体損は電流と無関係に生じます——電圧がかかっているだけで発熱するのです。
その分だけ、導体が使える温度の余地が減ります——だから許容電流が下がるのです。
66 kV で883 W なら、無視できない大きさ——5 km で1 kW 近いのです。
超高圧ほど効いてくるので、材料選びが重要になります。
ケーブルの3つの損失を並べる
誘電体損は、そのうちの1つです。
| 損失 | 何で決まるか | 無負荷でも生じるか |
| ★抵抗損 | ★★電流の2乗 | ★★生じない |
| ★シース損 | ★★導体電流が誘導する電流 | ★★生じない |
| ★誘電体損 | ★★電圧の2乗 | ★★生じる |
誘電体損だけが、電圧で決まります——だから無負荷でも生じるのです。
抵抗損とシース損は、電流がなければゼロ——負荷がかかって初めて生じるのです。
だから深夜など軽負荷のときは、誘電体損だけが残ります——常時の損失になります。
3つを合わせてケーブルの損失——それぞれ対策が違うのです。
材料で誘電体損が変わる
tanδ は材料の性質です。
| 絶縁体 | 比誘電率 | 誘電正接 | 誘電体損 |
| ★油浸紙(OF) | ★★3.5前後 | ★★大きい | ★★大きい |
| ★架橋ポリエチレン(CV) | ★★2.3前後 | ★★小さい | ★★小さい |
誘電体損は誘電率と誘電正接の積に比例します——どちらもCVのほうが小さいのです。
だからCVケーブルのほうが損失が小さい——2つの効果が重なるから。
静電容量も小さいので、充電電流も減ります——一石二鳥です。
超高圧ほど電圧の2乗で効くので、材料選びが決定的になります。
こう長が効いてくる
静電容量を通して、長さが損失を決めます。
| こう長 | 静電容量 | 誘電体損 |
| ★1 km | ★0.43 μF | ★177 W |
| ★★5 km | ★★2.15 μF | ★★883 W |
| ★10 km | ★4.30 μF | ★1766 W |
こう長に比例して増えます——静電容量が長さに比例するから。
10 km なら1.8 kW 近くになります——常時発生し続けるのです。
年間では1万5千kWh を超えます——無視できない量になります。
だから長い地中線ほど、材料の選択が重要になります。
まとめ
| 相電圧 | Ep=66000/√3=38105V |
| 静電容量 | C=0.43μ×5=2.15μF |
| 誘電正接 | tanδ=0.03%=0.0003 |
| 公式 | Wd=3ωCEp²tanδ |
| 計算 | 3×314.2×2.15e-6×38105²×0.0003=883W |
| 答え | (3) |
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