送電の計算20【電験3種 電力】誘電体損Wd=3ωCE²tanδ!相電圧で883W 平成27年度 A問題10 完全解説

電験3種 電力科目 送電の計算 平成27年度 A問題10 誘電体損は相電圧で計算!答えは883W

今回は平成27年度 電力科目 A問題10、地中ケーブルの誘電体損を計算する問題です。地中送電18で学んだ誘電体損の定義 Wd=ωCV²tanδ を、実際の数値で計算します。

公式はWd(1線)=ωCEp²tanδ(Ep=相電圧、C=1線の静電容量、tanδ=誘電正接)。3線合計なので3倍。ミスしやすいのは相電圧を使う(線間電圧66kVを√3で割る)ことと、単位(μF、%)の換算です。

目次

平成27年度 電力科目 A問題10:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 電力科目 送電の計算 平成27年度 A問題10 問題文
平成27年度 電力科目 A問題10 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成27年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題10

電験3種 電力科目 【送電の計算】 平成27年度 A問題10

 電圧66kV、周波数50Hz、こう長5kmの交流三相3線式地中電線路がある。ケーブルの心線1線当たりの静電容量が0.43μF/km、誘電正接が0.03%であるとき、このケーブル心線3線合計の誘電体損の値〔W〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)141 (2)294 (3)883 (4)1324 (5)2648 W

答え3線合計の誘電体損は約 883 Wです。

答えは(3):883 W

誘電体損(3線合計)
\( W_d=\omega C V^2\tan\delta \)

C:1線当たりの静電容量(全長分) V:線間電圧

\( C=0.43\times 5=2.15\ \mu\mathrm{F} \)
0.43 μF/km × 5 km
★全長分にする
\( \omega=2\pi\times 50\fallingdotseq 314\ \mathrm{rad/s} \)
50 Hz
\( W_d=314\times 2.15\times 10^{-6}\times(66\times 10^3)^2\times 3\times 10^{-4} \)
代入する
\( =314\times 2.15\times 10^{-6}\times 4.356\times 10^9\times 3\times 10^{-4} \)
66²=4356
\( =314\times 9365\times 3\times 10^{-4} \)
整理する
\( \fallingdotseq\ 883\ \mathrm{W} \)
計算して
★答え

手順は前問とまったく同じです——数値が変わっただけ

電圧が2倍になれば、損失は4倍になります——2乗で効くから。

だから66 kV では、33 kV の4倍以上になります——静電容量も長さも増えているのです。

各項がどれだけ効くか

効き方2倍にすると
★周波数 f★比例★2倍
★静電容量 C★比例★2倍
★★線間電圧 V★★2乗に比例★★4倍
★誘電正接 tanδ★比例★2倍

電圧だけが2乗で効きます——だから超高圧ほど問題になるのです。

こう長は静電容量を通して効きます——長いほど損失も増えるのです。

周波数は系統で決まるので変えられません——60 Hz のほうがやや大きいことになります。

変えられるのは誘電正接だけ——だから材料の選択が対策になるのです。

前問との比較で確かめる

項目平成21年度本問(平成27年度)
★電圧★33 kV★66 kV★★4倍(2乗)
★周波数★60 Hz★50 Hz★0.83倍
★静電容量★0.24×2=0.48 μF★0.43×5=2.15 μF★★4.48倍
★誘電体損★59.1 W★883 W★★14.9倍
\( 4\times 0.83\times 4.48\fallingdotseq 14.9 \)
3つの比を掛け合わせる
★実際の比と一致

各項の比を掛け合わせると、答えの比になります——式が積の形だからです。

だから1問解けば、もう1問は比で確かめられます——検算にも使えるのです。

電圧の4倍が最も効いています——2乗で効くから。

同じ形の問題が繰り返し出るので、手順を固めておきます

⚠️ よくある間違い
tanδ を0.03のまま代入する——0.03%なので3×10⁻⁴です。
静電容量を全長分にし忘れる——0.43 μF/km × 5 km=2.15 μF
周波数を60 Hz と思い込む——本問は50 Hzです。
3倍してしまう——すでに3線分の式になっています。
電圧を相電圧に直す——線間電圧のまま使えます

⏱️ 本番での進め方
①★Wd=ωCV²tanδ。手順は毎回同じ。
②★静電容量は必ず全長分にする。
③★tanδ が%なら10⁻²倍する。
④★電圧だけが2乗で効く。

💡 覚え方
「全長のC、線間のV、%は小数に」——この3点で間違いが防げます各項の比を掛ければ答えの比になる——検算に使えます

同じ形の問題が平成21年度 A問題11送電の計算:誘電体損)にあります。

計算の手順を固める

毎回同じ順序で進めれば、間違えません

段階行うこと注意点
★①★静電容量を全長分にする★★μF/km × km
★②★角周波数を出す★★2πf(50か60か確認)
★③★誘電正接を小数に直す★★%なら100で割る
★④★線間電圧のまま代入する★★相電圧に直さない

この4点を確かめれば、あとは掛け算だけです——手順が決まっているのです。

とりわけ①と③でつまずきやすい——単位の変換だから。

④は三相の式で3が約分されるからこそ——導き方を知っていれば迷いません

同じ形の問題が繰り返し出ます——手順を体で覚えておくとよいでしょう。

誘電体損が許容電流を下げる

絶縁体自身の発熱が、導体を温めます

段階起きること
★交流電圧により絶縁体が発熱する
★②★★導体の熱と足し合わさる
★③★★導体温度が上限に早く達する
★④★★流せる電流が減る

誘電体損は電流と無関係に生じます——電圧がかかっているだけで発熱するのです。

その分だけ、導体が使える温度の余地が減ります——だから許容電流が下がるのです。

66 kV で883 W なら、無視できない大きさ——5 km で1 kW 近いのです。

超高圧ほど効いてくるので、材料選びが重要になります

ケーブルの3つの損失を並べる

誘電体損は、そのうちの1つです

損失何で決まるか無負荷でも生じるか
★抵抗損★★電流の2乗★★生じない
★シース損★★導体電流が誘導する電流★★生じない
★誘電体損★★電圧の2乗★★生じる

誘電体損だけが、電圧で決まります——だから無負荷でも生じるのです。

抵抗損とシース損は、電流がなければゼロ——負荷がかかって初めて生じるのです。

だから深夜など軽負荷のときは、誘電体損だけが残ります——常時の損失になります。

3つを合わせてケーブルの損失——それぞれ対策が違うのです。

材料で誘電体損が変わる

tanδ は材料の性質です

絶縁体比誘電率誘電正接誘電体損
★油浸紙(OF)★★3.5前後★★大きい★★大きい
★架橋ポリエチレン(CV)★★2.3前後★★小さい★★小さい

誘電体損は誘電率と誘電正接の積に比例します——どちらもCVのほうが小さいのです。

だからCVケーブルのほうが損失が小さい——2つの効果が重なるから。

静電容量も小さいので、充電電流も減ります——一石二鳥です。

超高圧ほど電圧の2乗で効くので、材料選びが決定的になります

こう長が効いてくる

静電容量を通して、長さが損失を決めます

こう長静電容量誘電体損
★1 km★0.43 μF★177 W
★★5 km★★2.15 μF★★883 W
★10 km★4.30 μF★1766 W

こう長に比例して増えます——静電容量が長さに比例するから。

10 km なら1.8 kW 近くになります——常時発生し続けるのです。

年間では1万5千kWh を超えます——無視できない量になります。

だから長い地中線ほど、材料の選択が重要になります

まとめ

相電圧Ep=66000/√3=38105V
静電容量C=0.43μ×5=2.15μF
誘電正接tanδ=0.03%=0.0003
公式Wd=3ωCEp²tanδ
計算3×314.2×2.15e-6×38105²×0.0003=883W
答え(3)

▼あわせて解きたい関連問題
・誘電体損の定義(地中送電18):【電力】平成25年度 A問題10
・ケーブルの静電容量(送電の計算19):【電力】平成29年度 B問題16

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