今回は平成21年度 電力科目 A問題11、地中ケーブルの誘電体損を計算する問題です。平成27年度A問題10(送電の計算20)と同じ公式 Wd=3ωCEp²tanδ を、別の数値で計算します。
公式はWd=3ωCEp²tanδ(3線合計、Ep=相電圧、C=1線の静電容量、tanδ=誘電正接)。相電圧を使う(線間33kV÷√3)ことと、単位換算(μF、%)に注意すれば確実に取れます。
平成21年度 電力科目 A問題11:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成21年度 第三種電気主任技術者試験」電力科目 A問題11
電験3種 電力科目 【送電の計算】 平成21年度 A問題11
電圧33〔kV〕、周波数60〔Hz〕、こう長2〔km〕の交流三相3線式地中電線路がある。ケーブルの心線1線当たりの静電容量が0.24〔μF/km〕、誘電正接が0.03〔%〕であるとき、このケーブルの心線3線合計の誘電体損〔W〕の値として、最も近いのは次のうちどれか。
(1)9.4 (2)19.7 (3)29.5 (4)59.1 (5)177 W

答えは(4):59.1 W
誘電体損の式に数値を入れます。
① 静電容量を全長分にする
★
② 角周波数を出す
★
③ 代入する
★答え
誘電正接の単位に注意します——0.03%は3×10⁻⁴です。
%のまま代入すると、100倍ずれます——最もよくある間違い。
なぜ3が消えるのか
| 段階 | 式 | 考えること |
| ★①1相分 | \( W_1=\omega C E^2\tan\delta \) | ★E は相電圧 |
| ★②3相分 | \( W_d=3\omega C E^2\tan\delta \) | ★3線あるので3倍 |
| ★③線間電圧で表す | \( E=\dfrac{V}{\sqrt{3}} \) | ★★2乗すると V²/3 |
| ★④まとめる | \( W_d=\omega C V^2\tan\delta \) | ★★3が約分されて消える |
1相分を3倍しますが、相電圧を2乗すると3で割られます——だから約分されるのです。
電力損失や送電電力の式と、同じ構図です——三相の式ではよく起きる。
だから線間電圧をそのまま使えます——相電圧に直す必要がないのです。
C は1線当たりの静電容量です——3倍する必要はありません。
誘電体損が意味するもの
| 性質 | 内容 |
| ★何に比例するか | ★★周波数・静電容量・電圧の2乗・誘電正接 |
| ★電流との関係 | ★★無関係(無負荷でも生じる) |
| ★発生場所 | ★★絶縁体の中 |
| ★対策 | ★★誘電率と誘電正接の小さい材料を選ぶ |
電圧がかかっているだけで生じます——電流とは無関係です。
だから無負荷でも発熱し続けます——常時の損失になります。
電圧の2乗で効くので、超高圧ほど大きくなります——だから材料選びが重要なのです。
架橋ポリエチレンが選ばれるのも、この理由——誘電率も誘電正接も小さいから。
⚠️ よくある間違い
tanδ を0.03のまま代入する——0.03%なので3×10⁻⁴です。100倍ずれます。
静電容量を全長分にし忘れる——0.24 μF/km × 2 km=0.48 μF。
相電圧に直してしまう——線間電圧のまま使えます(3が約分される)。
3倍してしまう——すでに3線分の式です。
周波数を50 Hz と思い込む——本問は60 Hzになります。
⏱️ 本番での進め方
①★Wd=ωCV²tanδ(線間電圧、1線当たりのC)。
②★tanδ が%なら10⁻²倍して代入する。
③★静電容量は必ず全長分にする。
④★誘電体損は電流と無関係で無負荷でも生じる。
💡 覚え方
「ωCV²tanδ、3は要らない」——約分されて消えます。%を小数に直すのを忘れない——0.03%=3×10⁻⁴です。
誘電体損の性質は平成25年度 A問題10(地中送電:地中電線の損失)にあります。
誘電正接の単位に気をつける
最もよくある間違いがここです。
| 表記 | 小数に直すと | 誤ると |
| ★0.03% | ★★3×10⁻⁴ | ★★0.03で計算すると100倍 |
| ★0.1% | ★★1×10⁻³ | ★同じく100倍 |
| ★tanδ=0.0003 | ★★そのまま | ★%表記でなければ変換不要 |
%と書いてあれば、100で割ります——0.03%=0.0003です。
100倍ずれると、選択肢に該当する値がなくなります——そこで気づけることも。
誘電正接は、ふつう10⁻³〜10⁻⁴ の桁です——桁の感覚を持っておくと確かめられます。
問題文の表記をそのまま使わないこと——単位を確かめる習慣が要ります。
誘電体損が問題になる場面
どんなときに効いてくるのでしょうか。
| 条件 | 誘電体損 | 理由 |
| ★超高圧のケーブル | ★★大きい | ★★電圧の2乗で効く |
| ★長いケーブル | ★★大きい | ★★静電容量が増える |
| ★架空送電線 | ★★ほぼゼロ | ★★空気は誘電損がない |
| ★直流送電 | ★★ゼロ | ★★ω=0 |
ケーブルでこそ問題になります——固体絶縁体があるからです。
架空送電線では、空気が絶縁体なので生じません——誘電正接がほぼゼロだから。
直流なら周波数がゼロなので、やはり生じません——ωC が消えるのです。
だから直流ケーブルは長距離に向く——充電電流も誘電体損もないのです。
誘電体損の桁を見積もる
計算前に、おおよその値を予想できます。
| 段階 | 概算 | 桁 |
| ★ωC | ★★377×0.48×10⁻⁶ | ★約1.8×10⁻⁴ |
| ★V² | ★★(33×10³)² | ★約1.1×10⁹ |
| ★ωCV² | ★★掛け合わせる | ★約2×10⁵ |
| ★×tanδ | ★★2×10⁵×3×10⁻⁴ | ★★約60 W |
桁だけ追えば、59.1に近い値が出ます——選択肢を絞れるのです。
選択肢が9.4、19.7、29.5、59.1、177と離れています——概算で十分です。
もし%を直し忘れれば、5910 W という桁になります——選択肢にないので気づけるのです。
桁の感覚を持っておくことが、検算になります。
直流なら誘電体損は生じない
式のωがゼロになるからです。
| 方式 | ω | 誘電体損 | 充電電流 |
| ★交流 | ★★2πf | ★★生じる | ★★流れる |
| ★直流 | ★★ゼロ | ★★生じない | ★★流れない |
直流では電圧が一定なので、分極が繰り返されません——だから発熱しないのです。
充電電流も同じ理由でゼロになります——電荷が動かないから。
だから長い海底ケーブルは直流しか選べません——2つの損失がまとめて消えるのです。
1つの式から、直流送電の利点まで読み取れます。
まとめ
| 相電圧 | Ep=33000/√3=19053V |
| 静電容量 | C=0.24μ×2=0.48μF |
| 誘電正接 | tanδ=0.03%=0.0003 |
| 公式 | Wd=3ωCEp²tanδ |
| 計算 | 3×377×0.48e-6×19053²×0.0003=59.1W |
| 答え | (4) |
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