今回は平成18年度 理論科目 B問題18を解説します。エミッタ接地トランジスタ増幅回路(電流帰還バイアス)について、(a)交流等価回路の等価抵抗R1・R2、(b)電圧増幅度を求める問題です。
コンデンサのインピーダンスを無視できる交流では、入力側のバイアス抵抗はRA∥RB、出力側の負荷はRC∥RLの並列合成になります。エミッタ抵抗REはバイパスコンデンサで交流的に短絡され、電圧増幅度はAv=hfe·(RC∥RL)/hieです。
平成18年度 理論科目 B問題18:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成18年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 B問題18
電験3種 理論科目 【電子理論(電子回路)】 平成18年度 B問題18
エミッタ接地トランジスタ増幅回路(図1)とその交流等価回路(図2)について、次の(a)及び(b)に答えよ。バイアスは分圧抵抗RA・RB、コレクタ抵抗RC、エミッタ抵抗RE、負荷抵抗RLからなり、コンデンサC1・C2・C3のインピーダンスは無視できるものとする。
(a) 図1のエミッタ接地増幅回路の交流等価回路(図2)における等価抵抗R1(入力側)とR2(出力側)の式の組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、コンデンサのインピーダンスは無視できるものとする。
R1 R2 (1) RARB/(RA+RB) RCRL/(RC+RL) (2) RBRE/(RB+RE) RARC/(RA+RC) (3) RBRE/(RB+RE) RCRL/(RC+RL) (4) RARC/(RA+RC) RERL/(RE+RL) (5) RARB/(RA+RB) RERL/(RE+RL) (b) RA=100kΩ、RB=25kΩ、RC=8kΩ、RE=2.2kΩ、RL=15kΩ、hie=6kΩ、hfe=140とするとき、電圧増幅度|Av|の値として最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)15.7 (2)82 (3)122 (4)447 (5)753
解説①:交流等価回路への置き換え

交流等価回路では直流電源を交流接地にし、インピーダンスを無視できるコンデンサを短絡します。C3がREをバイパスするため、入力側はRAとRB、出力側はRCとRLの並列合成になります。これをhパラメータ等価回路へ適用して電圧増幅度を求めます。
解説②:R1とR2を並列合成する

入力側:\(R_A\) の上端は \(V_{CC}\)、\(R_B\) の下端は接地。交流的には \(V_{CC}\) も接地と同じなので、両方ともベースと接地の間に入る=並列です。
出力側:\(R_C\) の上端は \(V_{CC}\)(=交流接地)、\(R_L\) は結合コンデンサ \(C_2\) を通してコレクタにつながる。やはり両方ともコレクタと接地の間=並列です。
(2)(3)は \(R_B\) と \(R_E\) の並列としていますが、\(R_E\) は \(C_3\) で短絡されて存在しません。(4)(5)は出力側に \(R_E\) を入れており、同じ理由で誤りです。
解説③:電圧増幅度を求める

単位は kΩ のままでよい
入力抵抗 \(h_{ie}\) と電流増幅率 \(h_{fe}\)
マイナスは逆相を表す
入力側の \(R_1=20\ \mathrm{k\Omega}\) は電圧増幅度には効きません。\(R_1\) が効くのは「入力インピーダンス」を聞かれたとき——与えられた数値を全部使う必要はないのです。
誤答の正体:どの抵抗を使ったかで値が変わる
| 選択肢 | 値 | どの計算をしたか |
| (1) | 15.7 | \(R_2/\)(何か)——増幅率を掛け忘れた |
| (2) | 82 | \(h_{fe}\) を100などに取り違えた |
| (3) | 122 | ◎ \(140\times5.22/6\) |
| (4) | 447 | \(R_2\) の代わりに \(R_1=20\ \mathrm{k\Omega}\) を使った(\(466\) に近い) |
| (5) | 753 | \(R_C\) と \(R_L\) を直列(\(23\ \mathrm{k\Omega}\))にした(\(536\))や、\(h_{ie}\) の取り違え |
並列合成 \(5.22\ \mathrm{k\Omega}\) を \(R_C=8\) だけにすると \(140\times8/6=187\)、\(R_L=15\) だけにすると \(350\)——どれも選択肢にありません。正しく並列合成した人だけが選択肢に着地します。
⚠️ よくある間違い
\(R_E\) をそのまま残してしまう誤りが多いです。エミッタに並列にコンデンサ(バイパスコンデンサ)が入っていたら、\(R_E\) は交流的に短絡されて消える——逆に、コンデンサが無ければ \(R_E\) が残り、増幅度は \(R_2/R_E\) まで下がります(電流帰還)。
深掘り①:交流等価回路の描き方を手順化する
❶ 直流電源をすべて接地に置き換える——理想電源は内部抵抗0なので、交流的には接地と同じです。
❷ 結合コンデンサ・バイパスコンデンサを短絡(ただの線)にする——「インピーダンスは無視できる」と問題文にあれば必ずこれです。
❸ トランジスタを h パラメータの等価回路に置き換える——入力側は抵抗 \(h_{ie}\)、出力側は電流源 \(h_{fe}i_b\)。
❹ 残った抵抗を整理する——片端が接地に落ちた抵抗どうしは並列。これで本問の \(R_1\)・\(R_2\) が出ます。
| 部品 | 直流等価回路 | 交流等価回路 |
| \(V_{CC}\) | 電源として存在 | 接地(短絡) |
| 結合コンデンサ | 開放(直流を遮断) | 短絡 |
| バイパスコンデンサ | 開放 | 短絡(\(R_E\) を消す) |
| 抵抗 | そのまま | そのまま |
深掘り②:h パラメータの意味
\(h_{ie}\) は入力インピーダンス——ベース・エミッタ間に \(v_i\) をかけたとき \(i_b=v_i/h_{ie}\) の電流が流れる、という抵抗です。
\(h_{fe}\) は電流増幅率——\(i_c=h_{fe}i_b\)。直流では \(h_{FE}\)(大文字)と書き分けますが、値はだいたい同じです。
だから電圧増幅度は「\(v_i\to i_b\to i_c\to v_o\)」という3段の変換になります。入口で \(h_{ie}\) で割り、真ん中で \(h_{fe}\) を掛け、出口で \(R_2\) を掛ける——これが \(h_{fe}R_2/h_{ie}\) の意味です。
本問の値では \(1\ \mathrm{mV}\) の入力が \(1/6\ \mathrm{\mu A}\) のベース電流になり、\(23\ \mathrm{\mu A}\) のコレクタ電流を経て \(122\ \mathrm{mV}\) の出力になります。数字を追うと式の意味が体に入ります。
深掘り③:分圧バイアスと入力インピーダンス
\(R_A\)・\(R_B\) は動作点を決める分圧バイアスです。本問の値なら、ベース電位は \(V_{CC}\times R_B/(R_A+R_B)=V_{CC}/5\) になります。
この方式は温度変化に強いのが長所です。\(R_E\) が入ることで、\(I_C\) が増えるとエミッタ電位が上がり \(V_{BE}\) が減って \(I_B\) を絞る——自動的に動作点を戻す負帰還が働きます。
増幅回路全体の入力インピーダンスは \(R_1\parallel h_{ie}=20\parallel6\fallingdotseq4.6\ \mathrm{k\Omega}\) です。(b)では使いませんが、「入力インピーダンスは」と問われたらこの値になります。
⏱️ 本番での進め方
❶ 交流等価回路は「電源=接地」「コンデンサ=線」——この2つで描ける。
❷ 片端が接地に落ちる抵抗を探す:入力側は \(R_A,R_B\)、出力側は \(R_C,R_L\)。
❸ \(|A_v|=h_{fe}R_2/h_{ie}\)——出力側の並列合成だけを使う。
★与えられた数値を全部使わなくてよい。\(R_1\) と \(R_E\) は(b)では出番なし。
出題履歴:等価回路と電圧増幅度は繰り返し出る
エミッタ接地増幅回路の等価回路と \(|A_v|=h_{fe}R_L’/h_{ie}\) は、電子回路分野の最頻出テーマです。平成28年度A問題13など、同じ式を使う問題が何度も出題されています。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
まとめ
| R1(入力) | RA∥RB=100×25/125=20kΩ |
| R2(出力) | RC∥RL=8×15/23≒5.22kΩ |
| (a) | R1=RA∥RB・R2=RC∥RL→(1) |
| Av | hfe·R2/hie=140×5.22k/6k |
| (b) | ≒122→(3) |
▼あわせて解きたい関連問題
・帰還増幅回路の発振条件(電子回路41):【理論】平成18年度 A問題13

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