電子回路42【電験3種 理論】エミッタ接地増幅回路の交流等価回路と電圧増幅度を求める!平成18年度 B問題18 完全解説

電験3種 理論科目 電子理論(電子回路) 平成18年度 B問題18 交流等価回路に書き換える!電圧増幅度は何倍?

今回は平成18年度 理論科目 B問題18を解説します。エミッタ接地トランジスタ増幅回路(電流帰還バイアス)について、(a)交流等価回路の等価抵抗R1・R2、(b)電圧増幅度を求める問題です。

コンデンサのインピーダンスを無視できる交流では、入力側のバイアス抵抗はRA∥RB、出力側の負荷はRC∥RLの並列合成になります。エミッタ抵抗REはバイパスコンデンサで交流的に短絡され、電圧増幅度はAv=hfe·(RC∥RL)/hieです。

目次

平成18年度 理論科目 B問題18:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 理論科目 電子回路 平成18年度 B問題18 問題文
平成18年度 理論科目 B問題18 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成18年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 B問題18

電験3種 理論科目 【電子理論(電子回路)】 平成18年度 B問題18

 エミッタ接地トランジスタ増幅回路(図1)とその交流等価回路(図2)について、次の(a)及び(b)に答えよ。バイアスは分圧抵抗RA・RB、コレクタ抵抗RC、エミッタ抵抗RE、負荷抵抗RLからなり、コンデンサC1・C2・C3のインピーダンスは無視できるものとする。

(a) 図1のエミッタ接地増幅回路の交流等価回路(図2)における等価抵抗R1(入力側)とR2(出力側)の式の組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、コンデンサのインピーダンスは無視できるものとする。

R1R2
(1)RARB/(RA+RB)RCRL/(RC+RL)
(2)RBRE/(RB+RE)RARC/(RA+RC)
(3)RBRE/(RB+RE)RCRL/(RC+RL)
(4)RARC/(RA+RC)RERL/(RE+RL)
(5)RARB/(RA+RB)RERL/(RE+RL)

(b) RA=100kΩ、RB=25kΩ、RC=8kΩ、RE=2.2kΩ、RL=15kΩ、hie=6kΩ、hfe=140とするとき、電圧増幅度|Av|の値として最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)15.7 (2)82 (3)122 (4)447 (5)753

解説①:交流等価回路への置き換え

GPT Image 2で作成したエミッタ接地増幅回路の交流等価回路への置換図
電源を交流接地、コンデンサを短絡に置き換えます。

交流等価回路では直流電源を交流接地にし、インピーダンスを無視できるコンデンサを短絡します。C3がREをバイパスするため、入力側はRAとRB、出力側はRCとRLの並列合成になります。これをhパラメータ等価回路へ適用して電圧増幅度を求めます。

解説②:R1とR2を並列合成する

GPT Image 2で作成した入力側R1と出力側R2の並列合成図
R1はRAとRB、R2はRCとRLの並列合成です。

入力側\(R_A\) の上端は \(V_{CC}\)、\(R_B\) の下端は接地交流的には \(V_{CC}\) も接地と同じなので、両方ともベースと接地の間に入る=並列です。

出力側\(R_C\) の上端は \(V_{CC}\)(=交流接地)、\(R_L\) は結合コンデンサ \(C_2\) を通してコレクタにつながるやはり両方ともコレクタと接地の間=並列です。

答え(a) \(R_1=\dfrac{R_AR_B}{R_A+R_B}\)、\(R_2=\dfrac{R_CR_L}{R_C+R_L}\) → 選択肢(1)

(2)(3)は \(R_B\) と \(R_E\) の並列としていますが、\(R_E\) は \(C_3\) で短絡されて存在しません(4)(5)は出力側に \(R_E\) を入れており、同じ理由で誤りです。

解説③:電圧増幅度を求める

GPT Image 2で作成したhパラメータから電圧増幅度122を導く図
hfe、hie、R2から電圧増幅度の大きさ122を求めます。
$$R_2=\frac{R_CR_L}{R_C+R_L}=\frac{8\times15}{8+15}=\frac{120}{23}\fallingdotseq5.22\ \mathrm{k\Omega}$$
❶ 出力側の並列合成
単位は kΩ のままでよい
$$i_b=\frac{v_i}{h_{ie}},\qquad i_c=h_{fe}i_b$$
❷ h パラメータ
入力抵抗 \(h_{ie}\) と電流増幅率 \(h_{fe}\)
$$v_o=-h_{fe}i_bR_2$$
❸ 出力電圧
マイナスは逆相を表す
$$|A_v|=\frac{h_{fe}R_2}{h_{ie}}=\frac{140\times5.22}{6}\fallingdotseq122$$
❹ 電圧増幅度
答え(b) \(|A_v|\fallingdotseq122\) → 選択肢(3)

入力側の \(R_1=20\ \mathrm{k\Omega}\) は電圧増幅度には効きません\(R_1\) が効くのは「入力インピーダンス」を聞かれたとき——与えられた数値を全部使う必要はないのです。

誤答の正体:どの抵抗を使ったかで値が変わる

選択肢どの計算をしたか
(1)15.7\(R_2/\)(何か)——増幅率を掛け忘れた
(2)82\(h_{fe}\) を100などに取り違えた
(3)122◎ \(140\times5.22/6\)
(4)447\(R_2\) の代わりに \(R_1=20\ \mathrm{k\Omega}\) を使った(\(466\) に近い)
(5)753\(R_C\) と \(R_L\) を直列(\(23\ \mathrm{k\Omega}\))にした(\(536\))や、\(h_{ie}\) の取り違え

並列合成 \(5.22\ \mathrm{k\Omega}\) を \(R_C=8\) だけにすると \(140\times8/6=187\)、\(R_L=15\) だけにすると \(350\)——どれも選択肢にありません正しく並列合成した人だけが選択肢に着地します。

⚠️ よくある間違い
\(R_E\) をそのまま残してしまう誤りが多いです。エミッタに並列にコンデンサ(バイパスコンデンサ)が入っていたら、\(R_E\) は交流的に短絡されて消える——逆に、コンデンサが無ければ \(R_E\) が残り、増幅度は \(R_2/R_E\) まで下がります(電流帰還)。

深掘り①:交流等価回路の描き方を手順化する

❶ 直流電源をすべて接地に置き換える——理想電源は内部抵抗0なので、交流的には接地と同じです。

❷ 結合コンデンサ・バイパスコンデンサを短絡(ただの線)にする——「インピーダンスは無視できる」と問題文にあれば必ずこれです。

❸ トランジスタを h パラメータの等価回路に置き換える——入力側は抵抗 \(h_{ie}\)、出力側は電流源 \(h_{fe}i_b\)

❹ 残った抵抗を整理する——片端が接地に落ちた抵抗どうしは並列。これで本問の \(R_1\)・\(R_2\) が出ます。

部品直流等価回路交流等価回路
\(V_{CC}\)電源として存在接地(短絡)
結合コンデンサ開放(直流を遮断)短絡
バイパスコンデンサ開放短絡(\(R_E\) を消す)
抵抗そのままそのまま

深掘り②:h パラメータの意味

\(h_{ie}\) は入力インピーダンス——ベース・エミッタ間に \(v_i\) をかけたとき \(i_b=v_i/h_{ie}\) の電流が流れる、という抵抗です。

\(h_{fe}\) は電流増幅率——\(i_c=h_{fe}i_b\)直流では \(h_{FE}\)(大文字)と書き分けますが、値はだいたい同じです。

だから電圧増幅度は「\(v_i\to i_b\to i_c\to v_o\)」という3段の変換になります。入口で \(h_{ie}\) で割り、真ん中で \(h_{fe}\) を掛け、出口で \(R_2\) を掛ける——これが \(h_{fe}R_2/h_{ie}\) の意味です。

本問の値では \(1\ \mathrm{mV}\) の入力が \(1/6\ \mathrm{\mu A}\) のベース電流になり、\(23\ \mathrm{\mu A}\) のコレクタ電流を経て \(122\ \mathrm{mV}\) の出力になります。数字を追うと式の意味が体に入ります

深掘り③:分圧バイアスと入力インピーダンス

\(R_A\)・\(R_B\) は動作点を決める分圧バイアスです。本問の値なら、ベース電位は \(V_{CC}\times R_B/(R_A+R_B)=V_{CC}/5\) になります。

この方式は温度変化に強いのが長所です。\(R_E\) が入ることで、\(I_C\) が増えるとエミッタ電位が上がり \(V_{BE}\) が減って \(I_B\) を絞る——自動的に動作点を戻す負帰還が働きます。

増幅回路全体の入力インピーダンスは \(R_1\parallel h_{ie}=20\parallel6\fallingdotseq4.6\ \mathrm{k\Omega}\) です。(b)では使いませんが、「入力インピーダンスは」と問われたらこの値になります。

⏱️ 本番での進め方
❶ 交流等価回路は「電源=接地」「コンデンサ=線」——この2つで描ける。
❷ 片端が接地に落ちる抵抗を探す:入力側は \(R_A,R_B\)、出力側は \(R_C,R_L\)。
❸ \(|A_v|=h_{fe}R_2/h_{ie}\)——出力側の並列合成だけを使う。
★与えられた数値を全部使わなくてよい。\(R_1\) と \(R_E\) は(b)では出番なし。

出題履歴:等価回路と電圧増幅度は繰り返し出る

エミッタ接地増幅回路の等価回路と \(|A_v|=h_{fe}R_L’/h_{ie}\) は、電子回路分野の最頻出テーマです。平成28年度A問題13など、同じ式を使う問題が何度も出題されています。

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

まとめ

R1(入力)RA∥RB=100×25/125=20kΩ
R2(出力)RC∥RL=8×15/23≒5.22kΩ
(a)R1=RA∥RB・R2=RC∥RL→(1)
Avhfe·R2/hie=140×5.22k/6k
(b)≒122→(3)

▼あわせて解きたい関連問題
・帰還増幅回路の発振条件(電子回路41):【理論】平成18年度 A問題13

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