今回は平成19年度 理論科目 A問題12を解説します。演算増幅器(オペアンプ)に関する記述のうち、誤っているものを選ぶ問題です。
オペアンプは利得(増幅度)が非常に大きく、入力インピーダンスが大きく、出力インピーダンスが小さいのが特徴です。正相(非反転)・逆相(反転)の2つの入力端子を持ち、直流を含む信号を増幅できます。
平成19年度 理論科目 A問題12:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成19年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題12
電験3種 理論科目 【電子理論(電子回路)】 平成19年度 A問題12
演算増幅器に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)利得が非常に大きい。
(2)入力インピーダンスが非常に大きい。
(3)出力インピーダンスが非常に小さい。
(4)正相入力端子と逆相入力端子がある。
(5)直流入力では使用できない。
解説①:理想オペアンプの基本を整理する

理想オペアンプは開ループ利得が非常に大きく、入力インピーダンスが非常に大きく、出力インピーダンスが非常に小さい差動増幅器です。正相・逆相の2入力を持ち、直流結合なので0 Hzの直流から増幅できます。したがって誤りは(5)です。
解説②:オペアンプが直流も増幅できる理由

| 選択肢 | 内容 | 判定 | 根拠 |
| (1) | 利得が非常に大きい | ○ | 開ループ利得は \(10^{5}\sim10^{6}\)(100〜120 dB) |
| (2) | 入力インピーダンスが非常に大きい | ○ | \(\mathrm{M\Omega}\) 以上。入力に電流が流れ込まない |
| (3) | 出力インピーダンスが非常に小さい | ○ | 数十 Ω。負荷を駆動できる |
| (4) | 正相入力端子と逆相入力端子がある | ○ | 非反転入力(+)と反転入力(−) |
| (5) | 直流入力では使用できない | × | 直流から使える(★誤り) |
オペアンプは「直流結合の増幅器」です。入力と出力の間にコンデンサがないので、周波数ゼロ(直流)から増幅できます。
だからセンサの微小な直流電圧を増幅できるのです。温度・圧力・ひずみ——ゆっくり変化する信号を扱う計測回路には欠かせません。
解説③:5つの記述を選択肢と照合する

コンデンサで結合した増幅器なら直流が通りません。その知識をオペアンプに当てはめてしまうのが誤りの正体です。
| 直流結合(オペアンプ) | 交流結合(コンデンサ結合) | |
| 結合方法 | 直結 | コンデンサを挟む |
| 直流 | 増幅できる | 通らない |
| 低域特性 | 周波数ゼロまで | 低い周波数で減衰 |
| 用途 | 計測・演算・制御 | オーディオ・高周波 |
交流結合には利点もあります。直流成分(オフセット)が次の段に伝わらない——段間の動作点が干渉しないので設計が楽です。
オペアンプは直流結合なので、オフセット電圧の管理が重要になります。入力がゼロでも出力がわずかにずれる——高精度の計測では補正が必要です。
⚠️ よくある間違い
「演算」増幅器という名前を思い出してください。アナログ計算機で加減算・積分を行うために作られた——直流が扱えなければ計算になりません。
☝️ ひっかけの作り方:(4)の「正相入力端子」「逆相入力端子」は、「非反転入力」「反転入力」と同じものです。呼び方が違うだけ——用語の言い換えに惑わされないでください。
深掘り①:オペアンプの2つの入力端子
オペアンプには2つの入力があり、その差を増幅します。「差動増幅器」と呼ばれる所以です。
| 端子 | 記号 | 別名 | 出力への影響 |
| 非反転入力 | \(+\) | 正相入力 | 同相で出力(上げれば出力も上がる) |
| 反転入力 | \(-\) | 逆相入力 | 逆相で出力(上げれば出力は下がる) |
2つの入力に同じ電圧を加えると、差がゼロなので出力もゼロです。同相の雑音を打ち消せる——これが差動増幅の大きな利点です。
この性質を「同相除去比(CMRR)」で表します。大きいほど雑音に強い——計測用アンプでは重要な指標です。
深掘り②:イマジナリショート(仮想短絡)
負帰還をかけたオペアンプでは、2つの入力端子の電圧がほぼ等しくなります。これを「イマジナリショート」と呼び、回路計算の基本になります。
\(v_+\fallingdotseq v_-\)
出力が有限の値をとる限り、入力の差はほぼゼロです。\(v_o=10\ \mathrm{V}\)、\(A=10^{5}\) なら差は \(0.1\ \mathrm{mV}\)——実質ゼロとみなせます。
「つながっていないのに同電位」——だから「仮想(イマジナリ)短絡」です。この仮定を使えば、オペアンプ回路の計算が非常に簡単になります。
反転増幅回路なら \(A_v=-R_f/R_1\)、非反転増幅回路なら \(A_v=1+R_f/R_1\)——いずれもイマジナリショートから導けます。
深掘り③:オペアンプでできる演算
「演算」増幅器の名にふさわしく、さまざまな計算ができます。外付け部品を変えるだけです。
| 回路 | 外付け部品 | 働き |
| 反転増幅回路 | 抵抗2本 | \(-R_f/R_1\) 倍 |
| 非反転増幅回路 | 抵抗2本 | \(1+R_f/R_1\) 倍 |
| ボルテージフォロワ | なし(直結) | 1倍(バッファ) |
| 加算回路 | 入力ごとに抵抗 | 複数の電圧を足す |
| 積分回路 | 帰還にコンデンサ | 入力を時間積分 |
| 微分回路 | 入力にコンデンサ | 入力を時間微分 |
積分・微分ができるからこそ「演算」です。かつてはこれで微分方程式を解くアナログ計算機が作られました——それがオペアンプの語源です。
現在でも制御回路のPID演算などで現役です。比例(P)・積分(I)・微分(D)——すべてオペアンプで実現できます。
深掘り④:理想と実際のオペアンプ
試験では理想オペアンプとして扱いますが、実際には限界があります。知っておくと理解が深まります。
| 項目 | 理想 | 実際(一般的な汎用品) |
| 開ループ利得 | \(\infty\) | \(10^{5}\sim10^{6}\) |
| 入力インピーダンス | \(\infty\) | \(1\ \mathrm{M\Omega}\sim10^{12}\ \Omega\) |
| 出力インピーダンス | 0 | 数十 Ω |
| 帯域幅 | \(\infty\) | 利得帯域幅積で制限 |
| 入力オフセット電圧 | 0 | 数 µV〜数 mV |
「利得帯域幅積が一定」という制限が実用上は重要です。\(1\ \mathrm{MHz}\) の製品なら、100倍で使うと帯域は \(10\ \mathrm{kHz}\)——増幅度を上げると帯域が狭くなります。
電験3種では理想オペアンプで十分です。「利得無限大・入力Z無限大・出力Z ゼロ」——この3つを仮定して計算します。
⏱️ 本番での進め方
❶ オペアンプは直流から使える——「演算」の名は直流演算に由来。
❷ 理想の3条件:利得∞・入力Z∞・出力Z 0——(1)(2)(3)はこの通り。
❸ 正相=非反転(+)、逆相=反転(−)——呼び方が2通りある。
❹ 負帰還時はイマジナリショート——2入力が同電位として計算。
💡 覚え方
「演算増幅器=アナログ計算機の部品」——足し算も積分もできるのです。直流が扱えなければ計算になりません——だから(5)は明らかな誤りです。
出題履歴:オペアンプは電子回路の主役
演算増幅器の性質を問う問題は、ほぼ毎年出題されています。理想の3条件とイマジナリショート——この2つを押さえれば、計算問題にも対応できます。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
あわせて解いておきたい記事:【理論】令和元年度A問題13(負帰還増幅回路の性質)/【理論】令和5年度上期A問題13(コレクタ接地増幅回路)
まとめ
| (5)誤り | 直流入力でも使用できる(直流も増幅) |
| (1) | 利得が非常に大きい(正) |
| (2)(3) | 入力Z大・出力Z小(正) |
| (4) | 正相・逆相の2入力端子(正) |
| 答え | (5) |
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