電子回路39【電験3種 理論】演算増幅器の特徴(利得・入力/出力インピーダンス・直流増幅)の誤りを判定する!平成19年度 A問題12 完全解説

電験3種 理論科目 電子理論(電子回路) 平成19年度 A問題12 理想オペアンプの条件!誤っている記述はどれ?

今回は平成19年度 理論科目 A問題12を解説します。演算増幅器(オペアンプ)に関する記述のうち、誤っているものを選ぶ問題です。

オペアンプは利得(増幅度)が非常に大きく、入力インピーダンスが大きく、出力インピーダンスが小さいのが特徴です。正相(非反転)・逆相(反転)の2つの入力端子を持ち、直流を含む信号を増幅できます。

目次

平成19年度 理論科目 A問題12:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 理論科目 電子回路 平成19年度 A問題12 問題文
平成19年度 理論科目 A問題12 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成19年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題12

電験3種 理論科目 【電子理論(電子回路)】 平成19年度 A問題12

 演算増幅器に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)利得が非常に大きい。
(2)入力インピーダンスが非常に大きい。
(3)出力インピーダンスが非常に小さい。
(4)正相入力端子と逆相入力端子がある。
(5)直流入力では使用できない。

解説①:理想オペアンプの基本を整理する

GPT Image 2で作成した理想オペアンプの基本特性図
理想条件は利得無限大、入力インピーダンス無限大、出力インピーダンスゼロです。

理想オペアンプは開ループ利得が非常に大きく、入力インピーダンスが非常に大きく、出力インピーダンスが非常に小さい差動増幅器です。正相・逆相の2入力を持ち、直流結合なので0 Hzの直流から増幅できます。したがって誤りは(5)です。

解説②:オペアンプが直流も増幅できる理由

GPT Image 2で作成したオペアンプの直流増幅と交流結合の比較図
直流結合のオペアンプは0 Hzの直流から増幅できます。
選択肢内容判定根拠
(1)利得が非常に大きい開ループ利得は \(10^{5}\sim10^{6}\)(100〜120 dB)
(2)入力インピーダンスが非常に大きい\(\mathrm{M\Omega}\) 以上。入力に電流が流れ込まない
(3)出力インピーダンスが非常に小さい数十 Ω。負荷を駆動できる
(4)正相入力端子と逆相入力端子がある非反転入力(+)と反転入力(−)
(5)直流入力では使用できない×直流から使える(★誤り)

オペアンプは「直流結合の増幅器」です。入力と出力の間にコンデンサがないので、周波数ゼロ(直流)から増幅できます。

だからセンサの微小な直流電圧を増幅できるのです。温度・圧力・ひずみ——ゆっくり変化する信号を扱う計測回路には欠かせません

答え誤っているのは「直流入力では使用できない」 → 選択肢(5)

解説③:5つの記述を選択肢と照合する

GPT Image 2で作成したオペアンプ5記述の選択肢照合表
誤っているのは「直流入力では使用できない」の選択肢(5)です。

コンデンサで結合した増幅器なら直流が通りませんその知識をオペアンプに当てはめてしまうのが誤りの正体です。

直流結合(オペアンプ)交流結合(コンデンサ結合)
結合方法直結コンデンサを挟む
直流増幅できる通らない
低域特性周波数ゼロまで低い周波数で減衰
用途計測・演算・制御オーディオ・高周波

交流結合には利点もあります直流成分(オフセット)が次の段に伝わらない——段間の動作点が干渉しないので設計が楽です。

オペアンプは直流結合なので、オフセット電圧の管理が重要になります。入力がゼロでも出力がわずかにずれる——高精度の計測では補正が必要です。

⚠️ よくある間違い
「演算」増幅器という名前を思い出してくださいアナログ計算機で加減算・積分を行うために作られた——直流が扱えなければ計算になりません

☝️ ひっかけの作り方:(4)の「正相入力端子」「逆相入力端子」は、「非反転入力」「反転入力」と同じものです。呼び方が違うだけ——用語の言い換えに惑わされないでください

深掘り①:オペアンプの2つの入力端子

オペアンプには2つの入力があり、その差を増幅します。「差動増幅器」と呼ばれる所以です。

オペアンプの基本動作
$$v_o=A(v_+-v_-)$$

\(A\) は開ループ利得(非常に大きい)2つの入力の【差】だけを増幅します。

端子記号別名出力への影響
非反転入力\(+\)正相入力同相で出力(上げれば出力も上がる)
反転入力\(-\)逆相入力逆相で出力(上げれば出力は下がる)

2つの入力に同じ電圧を加えると、差がゼロなので出力もゼロです。同相の雑音を打ち消せる——これが差動増幅の大きな利点です。

この性質を「同相除去比(CMRR)」で表します。大きいほど雑音に強い——計測用アンプでは重要な指標です。

深掘り②:イマジナリショート(仮想短絡)

負帰還をかけたオペアンプでは、2つの入力端子の電圧がほぼ等しくなりますこれを「イマジナリショート」と呼び、回路計算の基本になります。

$$v_o=A(v_+-v_-)\ \Rightarrow\ v_+-v_-=\frac{v_o}{A}$$
❶ 式を変形
$$A\to\infty\ \Rightarrow\ v_+-v_-\to0$$
❷ 利得が非常に大きいので
\(v_+\fallingdotseq v_-\)

出力が有限の値をとる限り、入力の差はほぼゼロです。\(v_o=10\ \mathrm{V}\)、\(A=10^{5}\) なら差は \(0.1\ \mathrm{mV}\)——実質ゼロとみなせます

「つながっていないのに同電位」——だから「仮想(イマジナリ)短絡」です。この仮定を使えば、オペアンプ回路の計算が非常に簡単になります。

反転増幅回路なら \(A_v=-R_f/R_1\)非反転増幅回路なら \(A_v=1+R_f/R_1\)——いずれもイマジナリショートから導けます

深掘り③:オペアンプでできる演算

「演算」増幅器の名にふさわしく、さまざまな計算ができます。外付け部品を変えるだけです。

回路外付け部品働き
反転増幅回路抵抗2本\(-R_f/R_1\) 倍
非反転増幅回路抵抗2本\(1+R_f/R_1\) 倍
ボルテージフォロワなし(直結)1倍(バッファ)
加算回路入力ごとに抵抗複数の電圧を足す
積分回路帰還にコンデンサ入力を時間積分
微分回路入力にコンデンサ入力を時間微分

積分・微分ができるからこそ「演算」です。かつてはこれで微分方程式を解くアナログ計算機が作られました——それがオペアンプの語源です。

現在でも制御回路のPID演算などで現役です。比例(P)・積分(I)・微分(D)——すべてオペアンプで実現できます

深掘り④:理想と実際のオペアンプ

試験では理想オペアンプとして扱いますが、実際には限界があります。知っておくと理解が深まります

項目理想実際(一般的な汎用品)
開ループ利得\(\infty\)\(10^{5}\sim10^{6}\)
入力インピーダンス\(\infty\)\(1\ \mathrm{M\Omega}\sim10^{12}\ \Omega\)
出力インピーダンス0数十 Ω
帯域幅\(\infty\)利得帯域幅積で制限
入力オフセット電圧0数 µV〜数 mV

「利得帯域幅積が一定」という制限が実用上は重要です。\(1\ \mathrm{MHz}\) の製品なら、100倍で使うと帯域は \(10\ \mathrm{kHz}\)——増幅度を上げると帯域が狭くなります

電験3種では理想オペアンプで十分です。「利得無限大・入力Z無限大・出力Z ゼロ」——この3つを仮定して計算します。

⏱️ 本番での進め方
❶ オペアンプは直流から使える——「演算」の名は直流演算に由来。
❷ 理想の3条件:利得∞・入力Z∞・出力Z 0——(1)(2)(3)はこの通り。
❸ 正相=非反転(+)、逆相=反転(−)——呼び方が2通りある。
❹ 負帰還時はイマジナリショート——2入力が同電位として計算。

💡 覚え方
「演算増幅器=アナログ計算機の部品」——足し算も積分もできるのです。直流が扱えなければ計算になりません——だから(5)は明らかな誤りです。

出題履歴:オペアンプは電子回路の主役

演算増幅器の性質を問う問題は、ほぼ毎年出題されています。理想の3条件とイマジナリショート——この2つを押さえれば、計算問題にも対応できます。

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

あわせて解いておきたい記事:【理論】令和元年度A問題13(負帰還増幅回路の性質)【理論】令和5年度上期A問題13(コレクタ接地増幅回路)

まとめ

(5)誤り直流入力でも使用できる(直流も増幅)
(1)利得が非常に大きい(正)
(2)(3)入力Z大・出力Z小(正)
(4)正相・逆相の2入力端子(正)
答え(5)

▼あわせて解きたい関連問題
・アナログ変調・復調と振幅変調回路の変調度(電子回路38):【理論】平成20年度 B問題18

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