電子回路20【電験3種 理論】NAND ICのパルス回路(CMOSインバータ・マルチバイブレータ)を攻略する!令和元年度 B問題17 完全解説

電験3種 理論科目 電子理論(電子回路) 令和元年度 B問題17 NAND ICでパルスを作る!発振の仕組みを解明!

今回は令和元年度 理論科目 B問題17(選択問題)を解説します。NAND ICを用いたパルス回路について、(a)図1のMOSFET回路と同じ真理値表になるNAND接続、(b)3つのマルチバイブレータ回路の性質を選ぶ問題です。

図1はpチャネルとnチャネルMOSFETによるCMOSインバータ(NOT回路)。NANDゲートは2入力を結ぶか片方を「1」に固定するとNOTとして働きます。マルチバイブレータは非安定(発振)・双安定(記憶)・単安定の区別がポイントです。

目次

令和元年度 理論科目 B問題17:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 理論科目 電子回路 令和元年度 B問題17 問題文
令和元年度 理論科目 B問題17 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和元年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 B問題17

電験3種 理論科目 【電子理論(電子回路)】 令和元年度 B問題17

 NAND ICを用いたパルス回路について、次の(a)及び(b)の問に答えよ。ただし、高電位を「1」、低電位を「0」と表す。

(a) pチャネル及びnチャネルMOSFETを用いて構成された図1の回路と真理値表が同一となるものを、図2のNAND回路の接続(イ)(ロ)(ハ)から選び、全て列挙する。

(b) 図3の三つの回路(ニ)(ホ)(ヘ)はいずれもマルチバイブレータの一種である。連続的にパルスを発生し発振器となる性質I、及び「0」や「1」を記憶しフリップフロップに用いられる性質IIと、各回路を正しく対応づける。

(a) 図1の回路と真理値表が同一となるものを、図2のNAND回路の接続(イ)(ロ)(ハ)から選び、全て列挙したものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1)(イ)
(2)(ロ)
(3)(ハ)
(4)(イ)、(ロ)
(5)(イ)、(ハ)

(b) 図3の(ニ)(ホ)(ヘ)と、性質I(連続的にパルスを発生し発振器になる)・性質II(0や1を記憶しフリップフロップに使う)を正しく対応づけた組合せを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

性質I性質II
(1)(ニ)(ホ)
(2)(ニ)(ヘ)
(3)(ホ)(ニ)
(4)(ホ)(ヘ)
(5)(ヘ)(ホ)
図1 pチャネル・nチャネルMOSFETによる回路 図2 NAND回路の接続(イ)(ロ)(ハ)(問題図)
図1 pチャネル・nチャネルMOSFETによる回路 図2 NAND回路の接続(イ)(ロ)(ハ)(問題図)
図3 NAND ICで構成した3つのマルチバイブレータ(ニ)(ホ)(ヘ)(問題図)
図3 NAND ICで構成した3つのマルチバイブレータ(ニ)(ホ)(ヘ)(問題図)

解説(a):CMOSインバータとNANDの真理値を照合する

GPT Image 2で作成したCMOSインバータとNAND接続の真理値照合
図1と同じNOT動作になるのはNAND接続(イ)と(ハ)です。

図1のCMOS回路はNOT回路です。NANDの(イ)は両入力を結び、(ハ)は片方を1に固定するため、どちらもNOTとなり(a)は(5)です。(ニ)は外部入力なしの非安定マルチバイブレータで連続発振、(ヘ)は双安定で0/1を記憶します。(ホ)は単安定なので、(b)は(2)です。

解説(b):3種類のマルチバイブレータを分類する

GPT Image 2で作成した非安定・単安定・双安定マルチバイブレータの分類
(ニ)は非安定、(ホ)は単安定、(ヘ)は双安定です。
入力 \(A\)図1(CMOSインバータ)(イ) \(\overline{A\cdot A}\)(ロ) \(\overline{A\cdot0}\)(ハ) \(\overline{A\cdot1}\)
01111
10010
判定◎ 一致× 常に1◎ 一致

(ロ)は入力が0でも1でも出力が1のまま——入力が出力に影響しない、意味のない回路になっています。

答え(a) 一致するのは(イ)と(ハ) → 選択肢(5)

CMOSインバータの動作入力が「1」ならnチャネル側が導通して出力は接地(0)、入力が「0」ならpチャネル側が導通して出力は電源(1)——必ずどちらか一方だけがオンになります。

解説(b):マルチバイブレータ3種を見分ける

見分けるポイントは「外部入力の数」と「コンデンサの有無」です。

回路外部入力結合種類性質
(ニ)なし\(C\) と \(R\)非安定(無安定)性質I:連続発振
(ホ)1つ\(C\) と \(R\)単安定どちらでもない
(ヘ)2つ直結(たすき掛け)双安定性質II:フリップフロップ

(ニ)は外部入力がまったくありません——入力がないのに動き続ける=自分で発振するということです。これが非安定マルチバイブレータ

(ヘ)はコンデンサがなく、2つのNANDが互いの出力を入力に戻していますコンデンサがない=時間で勝手に変わらない=状態を保持できる——これがフリップフロップです。

答え(b) 性質I=(ニ)、性質II=(ヘ) → 選択肢(2)

選択肢照合:(ホ)は単安定なので性質I・IIに入らない

GPT Image 2で作成した両設問の全選択肢照合と最終解答
最終解答は(a)(5)、(b)(2)です。

(ホ)は単安定マルチバイブレータで、性質IにもIIにも当てはまりません「入力が1つある=トリガが要る」から発振器ではなく、「コンデンサがある=時間が経つと戻る」から記憶素子でもないのです。

選択肢性質I性質II判定
(1)(ニ)(ホ)(ホ)は記憶しない
(2)(ニ)(ヘ)◎ 正解
(3)(ホ)(ニ)両方とも誤り
(4)(ホ)(ヘ)性質Iが誤り
(5)(ヘ)(ホ)両方とも誤り

☝️ ひっかけの作り方:「外部入力がゼロなら発振器」——入力がないのに出力が変化するには、自分で発振するしかないからです。この一言だけで(ニ)=性質Iが確定し、(3)(4)(5)が消えます

⚠️ よくある間違い
(a)で「全て列挙する」を見落として1つだけ選ぶのがもっとも多い失点です。選択肢に(4)(イ)(ロ)と(5)(イ)(ハ)という「2つ組」が用意されているのは、複数が正解であることの合図——問題文の指示を必ず確認してください。

深掘り①:NANDだけですべての論理が作れる

NANDは「万能ゲート」と呼ばれます。NAND1種類だけで NOT・AND・OR・NOR のすべてが作れるからです。

作りたいものNANDでの構成
NOT1個(両入力を短絡 or 片方を1に固定)\(\overline{A\cdot A}=\overline{A}\)
AND2個(NANDの出力をNOT)\(\overline{\overline{A\cdot B}}=A\cdot B\)
OR3個(両入力をNOTしてNAND)\(\overline{\overline{A}\cdot\overline{B}}=A+B\)
NOR4個OR の出力をさらに NOT

ORがNANDで作れるのはド・モルガンの法則のおかげです。\(\overline{\overline{A}\cdot\overline{B}}=A+B\)——「両方のNOTのAND」のNOTが「OR」になります。

1種類のゲートだけで済むと、ICの製造が単純になります実際の論理ICにはNANDやNORが多く用意されているのは、この万能性のためです。

深掘り②:CMOSの構造と長所

CMOS(相補型MOS)は、pチャネルとnチャネルのMOSFETを組にして使います入力が「0」でも「1」でも、どちらか一方だけが導通し、もう一方は必ずオフです。

電源から接地まで貫通する電流が流れない——だから静止時の消費電力がほぼゼロになります。これがCMOSが圧倒的に普及した最大の理由です。

電力を消費するのは、状態が切り替わる瞬間だけです。だから消費電力は動作周波数に比例します——パソコンのCPUが高クロックで発熱する理屈もこれです。

💡 覚え方
CMOS=「必ずどちらか一方だけがオン」貫通電流が流れない → 静止電力ゼロ → 電池動作の機器に最適入力インピーダンスも極めて大きいのがMOSFETの特徴です。

深掘り③:3つのマルチバイブレータを使い分ける

種類安定状態動作外部入力用途
非安定0個勝手に発振し続ける不要クロック・方形波発生
単安定1個トリガで一定時間だけ反転1つパルス幅整形・遅延
双安定2個入力があるまで保持2つ記憶・カウンタ

安定状態の数がそのまま名前になっています——「非(0個)・単(1個)・双(2個)」この対応さえ覚えれば、種類の判別で迷いません

コンデンサの有無が決め手です。コンデンサがある=時間が経つと勝手に戻る(非安定・単安定)、コンデンサがない=ずっと保持(双安定)

深掘り④:フリップフロップが「記憶」になる仕組み

2つのNANDが互いの出力を相手の入力に戻しています片方の出力が「1」なら相手を「0」に固定し、その「0」がまた自分を「1」に保つ——互いに支え合って状態が固定されます。

この状態は電源が入っている限り続きます外から入力を与えて初めてひっくり返る——これが1ビットの記憶です。

フリップフロップを並べればレジスタ、順に並べてクロックを送ればカウンタやシフトレジスタになります。ディジタル回路の記憶素子はすべてここから始まります

⏱️ 本番での進め方
❶ 図1がCMOSインバータ=NOTだと見抜く(ゲート共通・上下が相補)。
❷ NANDでNOTを作る方法は2つ:両入力短絡、片方を1に固定。0に固定は不可。
❸ 「全て列挙」の指示を見落とさない——2つ組の選択肢がある時点で合図。
❹ (b)は「外部入力の数」で3つを判別:0個→非安定、1個→単安定、2個→双安定。

出題履歴:論理回路とマルチバイブレータの複合問題

理論科目のB問題では、論理回路とパルス回路を組み合わせた出題が定期的に登場します。真理値表を自分で書けることと、3種のマルチバイブレータを区別できることの2点で対応できます。

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

★同型問題:【理論】令和7年度下期 B問題18とまったく同じ

この問題は 【理論】令和7年度下期 B問題18 と、図・文章・選択肢まですべて同一です。答えも変わりません——片方を確実に解けるようにしておけば、そのまま得点になります

項目令和元年度 B問題17令和7年度下期 B問題18
(a)同じCMOSインバータと同じNAND接続を全て列挙
(a)の答え同じ(5) (イ)と(ハ)
(b)同じ入力0/1/2個のマルチバイブレータ
(b)の答え同じ(2) 性質Ⅰ=(ニ)、性質Ⅱ=(ヘ)

▼あわせて解きたい同型問題:【理論】令和7年度下期 B問題18

まとめ

図1CMOSインバータ=NOT回路
(a)(イ)両入力短絡・(ハ)片入力1固定→(5)
(ニ)非安定=発振(性質I)
(ヘ)双安定=記憶(性質II)
(b)性質I:(ニ)、性質II:(ヘ)→(2)

▼あわせて解きたい関連問題
・負帰還増幅回路の性質(電子回路19):【理論】令和元年度 A問題13

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