今回は平成18年度 理論科目 A問題14を解説します。2個の固定コイル(A・C)と1個の可動コイル(B)からなる計器の測定原理(計器の種類・使用回路・端子接続)に関する空欄を埋める問題です。
固定コイルと可動コイルの2つのコイルに電流を流し、その積に比例するトルクで動く計器は電流力計形。電流の向きが両コイルで同時に反転するため、交流でも一定方向のトルクが得られ、交流・直流両用で電力測定に使われます。
平成18年度 理論科目 A問題14:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成18年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題14
電験3種 理論科目 【電気及び電子計測】 平成18年度 A問題14
2個の固定コイル(A・C)と1個の可動コイル(B)で構成される計器について、その測定原理、種類(ア)、使用回路(イ)、及び電流コイル・電圧コイルの端子接続方法(ウ)を答える。この計器を電力計として用いる。
計器の種類(ア)、使用回路(イ)、端子接続方法(ウ)の組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (1) 電流力計形 交流及び直流 固定=電流(直列)・可動=電圧(並列) (2) 誘導形 交流専用 固定=電圧(並列)・可動=電流(直列) (3) 可動鉄片形 交流及び直流 固定=電流(直列)・可動=電圧(並列) (4) 電流力計形 交流専用 固定=電圧(並列)・可動=電流(直列) (5) 誘導形 交流及び直流 固定=電圧(並列)・可動=電流(直列)
出題のポイント:コイルが3つあれば電流力計形
固定コイル2個+可動コイル1個という構成は、電流力計形の特徴です。2つの電流の【積】に比例した力で動く——だから電力(電圧×電流)が測れます。
積に比例するので、交流で両方の電流が同時に反転しても力の向きは変わりません。だから交流でも直流でも使えます——(イ)は「交流及び直流」です。

解説:3つの空欄を順に埋める
(ア) 計器の種類 → 電流力計形
固定コイルが2個で可動コイルが1個——2つの磁界の相互作用で力が生じる構造です。永久磁石を使わないのが可動コイル形との決定的な違いです。
誘導形は円板と回転磁界を使う構造、可動鉄片形はコイル1個と鉄片——どちらもコイルが3個という構成にはなりません。
(イ) 使用回路 → 交流及び直流
力が2つの電流の【積】に比例します。交流では両方の電流が同時に反転するので、マイナス×マイナスでプラス——力の向きは変わりません。
だから交流でも針は一定方向に振れます。直流ならもちろんそのまま——交直両用です。
(ウ) 端子接続 → 固定コイル=電流(直列)、可動コイル=電圧(並列)
固定コイルは太い線を巻けるので、大きな負荷電流を流す電流コイルに向いています。負荷と直列につなぎます。
可動コイルは細い線しか使えず、しかも動くので電流を大きくできません。だから直列抵抗をつけて電圧コイルとし、負荷と並列につなぎます。
誤答の正体:種類さえ決まれば一気に絞れる
| 選択肢 | (ア) | (イ) | (ウ) | 判定 |
| (1) | 電流力計形 | 交流及び直流 | 固定=電流・可動=電圧 | ◎ 正解 |
| (2) | 誘導形 | 交流専用 | 固定=電圧・可動=電流 | (ア)が誤り |
| (3) | 可動鉄片形 | 交流及び直流 | 固定=電流・可動=電圧 | (ア)が誤り |
| (4) | 電流力計形 | 交流専用 | 固定=電圧・可動=電流 | (イ)(ウ)が誤り |
| (5) | 誘導形 | 交流及び直流 | 固定=電圧・可動=電流 | 3つとも誤り |
(ア)が「電流力計形」と決まれば、残るのは(1)と(4)だけです。あとは(イ)が交直両用か交流専用か——積に比例するから交直両用で(1)に決まります。
誘導形が交流専用なのは、回転磁界を作るのに交流が必要だからです。直流では磁界が変化せず、渦電流も生じません。
⚠️ よくある間違い
固定コイルと可動コイルの役割を逆にするのが典型的な誤りです。「大きな電流は動かない側(固定)に流す」——可動部分に太い線をつなぐと、その線の張力で針の動きが妨げられます。
深掘り①:なぜ電力が測れるのか
直列抵抗で電流に変換
そのまま有効電力
積和の公式を使うと、\(2\sin A\sin B=\cos(A-B)-\cos(A+B)\)。第1項が定数 \(\cos\theta\)、第2項は1周期で平均するとゼロ——残るのが \(VI\cos\theta\) です。
力率が自動的に含まれるのがポイントです。電圧計と電流計の指示を掛けただけでは皮相電力 \(VI\)——有効電力を測るには電力計が要ります。
深掘り②:計器の種類を一覧で
| 種類 | 動作原理 | 使える電源 | 指示する値 | 主な用途 |
| 可動コイル形 | 永久磁石と電流の力 | 直流のみ | 平均値 | 直流電流計・電圧計 |
| 可動鉄片形 | 磁界による鉄片の吸引 | 交流・直流 | 実効値 | 交流電流計・電圧計 |
| 電流力計形 | 2つのコイルの電流の積 | 交流・直流 | 実効値 | 電力計 |
| 整流形 | 整流して可動コイル形へ | 交流 | 平均値×1.11 | 安価な交流計 |
| 誘導形 | 回転磁界による渦電流 | 交流のみ | 実効値 | 電力量計 |
| 静電形 | 電極間の静電力 | 交流・直流 | 実効値 | 高電圧計 |
「積に反応する」のは電流力計形だけです。だから電力計といえば電流力計形——他の計器は電流か電圧の一方しか測れません。
電流力計形は電圧計・電流計としても使えます。2つのコイルに同じ電流を流せば力は電流の二乗に比例——実効値を指示する交直両用計器になります。
深掘り③:電力計の正しいつなぎ方
電力計には4本の端子があります。電流コイルの2端子と電圧コイルの2端子——それぞれ直列・並列につなぎます。
| コイル | つなぎ方 | 求められる性質 | 理由 |
| 電流コイル(固定) | 負荷と直列 | 抵抗が小さい | 電圧降下を作らないため |
| 電圧コイル(可動) | 負荷と並列 | 抵抗が大きい | 電流を取らないため |
「±」印のついた端子を電源側でそろえるのが接続の決まりです。逆にすると針が逆に振れます——二電力計法で「逆振れ」が起きるのはこの原理です。
電圧コイルを負荷側につなぐか電源側につなぐかで、電流コイルの損失を含むか、電圧コイルの損失を含むかが変わります。負荷が大きいなら電圧コイルを負荷側に——電圧降下法と同じ考え方です。
深掘り④:電力計と電力量計の違い
| 電力計 | 電力量計 | |
| 測るもの | 電力 \([\mathrm{W}]\)(そのときの値) | 電力量 \([\mathrm{kW\cdot h}]\)(積算値) |
| 方式 | 電流力計形 | 誘導形 |
| 表示 | 指針の振れ | 円板の回転数を計数 |
| 使える電源 | 交流・直流 | 交流のみ |
| 身近な例 | 実験室の電力計 | 家庭の電力メーター |
電力量計は「電力×時間」を積算します。円板の回転速度が電力に比例し、回転数の合計が電力量——アナログの積分器です。
💡 覚え方
コイル3個(固定2+可動1)=電流力計形=電力計。「積に比例するから交直両用」「太い線は固定側」——この3点で(ア)(イ)(ウ)がすべて決まります。
⏱️ 本番での進め方
❶ コイルの構成で種類を決める:固定2+可動1なら電流力計形。
❷ 積に比例 → 交直両用。
❸ 太い線を流す電流コイルは固定側、細い電圧コイルは可動側。
❹ (ア)が決まれば選択肢は2つに減る——組合せ問題の定石。
出題履歴:電力計の原理は計測の中心テーマ
電流力計形の原理は、二電力計法や力率測定とセットで問われます。令和5年度上期A問題14の二電力計法でも「逆振れ」の理解に必要——原理を押さえておくと応用が利きます。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
まとめ
| (ア)種類 | 電流力計形(固定×可動の積) |
| (イ)使用回路 | 交流及び直流 |
| (ウ)接続 | 固定=電流(直列)・可動=電圧(並列) |
| 原理 | トルク∝電流×電圧∝電力 |
| 答え | (1) |
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