今回は平成20年度 理論科目 A問題14を解説します。最大目盛100mA・階級1.0級(JIS)の単一レンジ電流計で40mAを測定するとき、許される誤差の最大値を求める問題です。
指示計器の「階級(級別)」は、最大目盛(定格値)に対する許容誤差の百分率を表します。誤差は測定値ではなく最大目盛を基準に計算されるのがポイントです。
平成20年度 理論科目 A問題14:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題14
電験3種 理論科目 【電気及び電子計測】 平成20年度 A問題14
最大目盛100mA、階級1.0級(JIS)の単一レンジの電流計がある。この電流計で40mAを測定するとき、許される誤差の最大値を求める。
最大目盛100mA・階級1.0級の電流計で40mAを測定するとき、許される誤差の最大値[mA]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)0.2 (2)0.4 (3)1.0 (4)2.0 (5)4.0 mA
出題のポイント:階級は「最大目盛」に対する百分率
階級(確度)1.0級とは「最大目盛の 1.0 %以内の誤差に収まる」という意味です。測定値に対してではありません——ここが本問のすべてです。
最大目盛が 100 mA なら、許される誤差は \(100\times0.01=1.0\ \mathrm{mA}\)。40 mA を測ろうが 90 mA を測ろうが、誤差の上限は同じ 1.0 mA です。

解説:1行で終わる
最大目盛×階級
「40 mA を測るとき」という条件は、誤差の値そのものには影響しません。この情報は誤答(2)を作るために置かれている——問題文の数字を全部使う必要はないという好例です。
誤答の正体:測定値で計算してしまう
| 選択肢 | 値 | どう計算すると出るか |
| (1) | 0.2 mA | \(40\times0.5\ \%\) など |
| (2) | 0.4 mA | ★測定値 40 mA の 1.0 %——最頻誤答 |
| (3) | 1.0 mA | ◎ 最大目盛 100 mA の 1.0 % |
| (4) | 2.0 mA | 階級を2.0級と読み違えた |
| (5) | 4.0 mA | \(40\times10\ \%\) など桁の誤り |
(2)を選ぶ人が非常に多いと思われます。「1.0級だから測定値の1 %」という思い込み——階級の定義を正確に覚えているかどうかだけの問題です。
⚠️ よくある間違い
階級の基準は「最大目盛(定格値)」です。JIS の階級は 0.2/0.5/1.0/1.5/2.5 級があり、いずれも「最大目盛に対する百分率」と決まっています。
深掘り①:だから「振り切れる手前」で測る
階級の 2.5 倍
階級に近い
使い物にならない
絶対誤差は一定なのに、測定値が小さいほど誤差率が大きくなる——これが「なるべく最大目盛に近いレンジで測る」という鉄則の理由です。
目安は「最大目盛の 1/2 〜 2/3 以上で読む」。それより小さいならレンジを1段下げる——実務でも試験でも共通の原則です。
💡 覚え方
階級=最大目盛に対する %。測定値に対する % ではない。だから小さい値を測ると誤差率が跳ね上がる——この因果関係で覚えてください。
深掘り②:JIS の階級と用途
| 階級 | 許容誤差(最大目盛に対して) | 主な用途 |
| 0.2 級 | ±0.2 % | 標準器・精密測定 |
| 0.5 級 | ±0.5 % | 精密測定・試験用 |
| 1.0 級 | ±1.0 % | 一般の実験室用 |
| 1.5 級 | ±1.5 % | 工業用・配電盤用 |
| 2.5 級 | ±2.5 % | おおよその指示用 |
数字が小さいほど高精度です。0.2 級と 2.5 級では 12 倍以上の差——用途に応じて選びます。
階級は「そのレンジの最大目盛」に対して規定されています。多レンジ計器なら、選んだレンジの最大目盛が基準——本問は「単一レンジ」と明記されているので迷いません。
深掘り③:測定範囲を広げる分流器と倍率器
電流計の範囲を広げるには分流器(シャント)を並列に、電圧計の範囲を広げるには倍率器を直列につなぎます。
\(r_a\) は電流計の内部抵抗
\(r_v\) は電圧計の内部抵抗
どちらも「\(m-1\)」が出てくるのが特徴です。分流器は割り、倍率器は掛ける——並列と直列の違いがそのまま式に表れています。
倍率を上げても階級は変わりませんが、基準となる最大目盛が大きくなるので、許容される絶対誤差も大きくなります。
深掘り④:誤差の表し方いろいろ
| 用語 | 定義 | 式 |
| 絶対誤差 | 測定値と真値の差 | \(\Delta M=M-T\) |
| 誤差率(百分率誤差) | 絶対誤差 ÷ 真値 | \(\varepsilon=\dfrac{\Delta M}{T}\times100\ \%\) |
| 補正 | 真値と測定値の差 | \(\alpha=T-M=-\Delta M\) |
| 補正率 | 補正 ÷ 測定値 | \(\dfrac{\alpha}{M}\times100\ \%\) |
階級は「最大目盛に対する誤差率の上限」という位置づけです。個々の測定での誤差率とは分母が違う——本問はそこを突いています。
ディジタル計器では表し方が変わります。「±(読み値の0.5 % + 2 カウント)」のように、読み値に比例する分と固定分の和で表すのが普通です。
この形式なら、小さい値を測っても誤差率が跳ね上がりません——ディジタル計器がアナログより扱いやすい理由の1つです。
⏱️ 本番での進め方
❶ 「階級」を見たら最大目盛を探す。
❷ 許容誤差=最大目盛×階級/100。1行で終わり。
❸ 測定値は誤差の計算に使わない——誤答を作るための情報。
❹ 誤差【率】を聞かれたら、そこで初めて測定値で割る。
深掘り⑤:計器の内部抵抗が生む誤差
階級とは別に、計器をつないだこと自体が誤差を生みます。電流計は直列に入るので内部抵抗の分だけ電流が減り、電圧計は並列に入るので回路から電流を奪います。
| 計器 | つなぎ方 | 理想の内部抵抗 | 誤差の向き |
| 電流計 | 直列 | 0 Ω | 内部抵抗の分だけ電流が減る |
| 電圧計 | 並列 | \(\infty\) | 並列に入って電圧が下がる |
電流計の内部抵抗は小さいほど良い——直列に入れても回路の抵抗をほとんど増やさないからです。逆に電圧計は大きいほど良い——並列に入れても電流をほとんど取らないから。
本問は「単一レンジ」とだけ書かれており、内部抵抗の話は出てきません。階級だけで決まる問題ですが、実際の測定では内部抵抗の影響も合わせて考える必要があります。
この誤差は系統誤差なので、内部抵抗が分かっていれば計算で補正できます——平成28年度B問題16の電圧降下法では「内部抵抗の影響は無視できる」と断ってあるのは、この補正を省くためです。
出題履歴:階級の定義は繰り返し問われる
「階級は最大目盛に対する百分率」という一点だけを問う出題が、形を変えて何度も登場します。平成28年度B問題16の誤差率とセットで押さえておくと、計測分野の誤差の問題は網羅できます。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
まとめ
| 階級1.0級 | 最大目盛の±1.0% |
| 許容誤差 | (1.0/100)×100mA=1.0mA |
| 基準 | 最大目盛(測定値ではない) |
| 答え | (3) 1.0mA |
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