電気及び電子計測36【電験3種 理論】可動コイル形(平均値)と可動鉄片形(実効値)電流計の指示の違いを理解する!平成21年度 A問題14 完全解説

電験3種 理論科目 電気及び電子計測 平成21年度 A問題14 平均値と実効値!2つの電流計で指示はどう違う?

今回は平成21年度 理論科目 A問題14を解説します。可動コイル形直流電流計A1と可動鉄片形交流電流計A2を、直流回路(図1)と交流回路(図2)につないだときの指示値を比較する問題です。

可動コイル形は電流の平均値に応答し、可動鉄片形は実効値に応答します。直流では平均値=実効値ですが、正弦波交流では平均値が0になる点がポイントです。

目次

平成21年度 理論科目 A問題14:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 理論科目 電気及び電子計測 平成21年度 A問題14 問題文
平成21年度 理論科目 A問題14 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成21年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題14

電験3種 理論科目 【電気及び電子計測】 平成21年度 A問題14

 可動コイル形直流電流計A1と可動鉄片形交流電流計A2の2台の電流計がある。図1のようにA1とA2を抵抗100Ωと電圧10Vの直流電源の回路に接続したとき、A1の指示は100mA、A2の指示は(ア)mAであった。また、図2のように周波数50Hz・電圧100Vの交流電源と抵抗500ΩにA1とA2を接続したとき、A1の指示は(イ)mA、A2の指示は200mAであった。ただし、A1とA2の内部抵抗はどちらも無視できるものであった。

空白箇所(ア)及び(イ)に当てはまる最も近い値[mA]の組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(ア)(イ)
(1)00
(2)141282
(3)1000
(4)0141
(5)100141
図1 直流回路(10V・100Ω) 図2 交流回路(100V・50Hz・500Ω)にA1・A2を接続(問題図)
図1 直流回路(10V・100Ω) 図2 交流回路(100V・50Hz・500Ω)にA1・A2を接続(問題図)

出題のポイント:可動コイル形は交流で「0」を指す

可動コイル形は平均値を指示します正弦波交流の平均値はゼロ——だから交流回路につないでも針は振れません。これが(イ)=0 の理由です。

可動鉄片形は交流でも直流でも使えますだから直流回路につないだ(ア)は、A1 と同じ 100 mA——2つの計器の性質の違いがそのまま答えです。

2つの計器の性質
$$\text{可動コイル形:平均値を指示}\ \Rightarrow\ \text{正弦波交流では}\ 0$$$$\text{可動鉄片形:実効値を指示}\ \Rightarrow\ \text{交流・直流のどちらも測れる}$$

可動コイル形は永久磁石を使うので、電流の向きが変わると力の向きも変わり、平均するとゼロになります。

解説:2つの回路を順に見る

図1:直流 10 V・100 Ω の回路

$$I=\frac{10}{100}=0.1\ \mathrm{A}=100\ \mathrm{mA}$$
❶ 回路の電流
オームの法則
$$A_1\ (\text{可動コイル形})=100\ \mathrm{mA}$$
❷ 直流だから素直に指示
問題文どおり
$$A_2\ (\text{可動鉄片形})=100\ \mathrm{mA}$$
❸ (ア) 交流も直流も測れる
直流でも同じ値

図2:交流 100 V・50 Hz・500 Ω の回路

$$I=\frac{100}{500}=0.2\ \mathrm{A}=200\ \mathrm{mA}\ (\text{実効値})$$
❹ 回路の電流
交流の電圧・電流は実効値表示
$$A_2\ (\text{可動鉄片形})=200\ \mathrm{mA}$$
❺ 実効値を指示
問題文どおり
$$A_1\ (\text{可動コイル形})=0\ \mathrm{mA}$$
❻ (イ) 平均値はゼロ
正の半周期と負の半周期が打ち消す
答え(ア)\(100\ \mathrm{mA}\)、(イ)\(0\ \mathrm{mA}\) → 選択肢(3)

可動コイル形の針が「振れない」のは壊れているからではありません50 Hz では針が追従できず、正負の力が打ち消し合って中央で止まる——物理的に正しい動作です。

誤答の正体:141 という数字の罠

選択肢(ア)(イ)判定
(1)00(ア)が誤り——可動鉄片形は直流も測れる
(2)141282両方とも最大値(\(\times\sqrt2\))にしている
(3)1000◎ 正解
(4)01412つの計器の性質を逆にした
(5)100141(イ)を \(100\times\sqrt2\) としている

141 は \(100\times\sqrt2\)=最大値です。「実効値と最大値の関係」を知っている人ほど、つい選んでしまう数字——作問者が用意した罠です。

そもそも \(A_1\) は交流を測れません最大値も実効値も指示しない、ただの 0——「測れない」という答えがあることを覚えておいてください

⚠️ よくある間違い
可動鉄片形が直流も測れることを見落とすと(1)(4)に落ちます。鉄片は磁界に吸い寄せられるだけなので、磁界の向きが変わっても吸引力の向きは変わりません——だから交流でも直流でも動きます

深掘り①:なぜ可動コイル形は平均値を指すのか

可動コイル形は、永久磁石の磁界の中に置いたコイルに電流を流し、フレミングの左手の法則で生じる力で針を振らせます

力は電流に比例します。電流の向きが変われば力の向きも変わる——50 Hz なら1秒間に100回向きが変わり、針は追従できません

結果として、針は「1周期の平均の力」の位置で静止します。正弦波の平均はゼロなので、針は中央のままです。

直流なら力の向きが一定なので、電流に比例した位置で釣り合います目盛りが等間隔(均等目盛り)になるのも、力が電流に比例するからです。

深掘り②:なぜ可動鉄片形は実効値を指すのか

可動鉄片形は、コイルに電流を流して磁界を作り、その磁界で鉄片を吸引(または反発)させます

鉄片は磁化されてから吸引されるので、電流の向きが変わっても、磁界と磁化の両方が反転して力の向きは変わりません——力は電流の二乗に比例します。

二乗の平均=実効値の二乗ですから、針は実効値に応じた位置で静止します。だから交流でも直流でも、ちゃんと実効値を指すのです。

ただし目盛りは二乗目盛り(不均等)になります。低い側が詰まって読みにくいのが欠点です。

💡 覚え方
力が電流に「比例」→ 平均値を指示(可動コイル形・直流専用)力が電流の「二乗」に比例 → 実効値を指示(可動鉄片形・交直両用)この違いが、交流が測れるかどうかを決めています

深掘り③:指示計器の種類を一覧で

種類動作原理使える電源指示する値主な用途
可動コイル形永久磁石と電流の力直流のみ平均値直流電流計・電圧計
可動鉄片形磁界による鉄片の吸引交流・直流実効値交流電流計・電圧計
電流力計形2つのコイルの電流の積交流・直流実効値電力計
整流形整流して可動コイル形へ交流平均値×1.11安価な交流計
誘導形回転磁界による渦電流交流のみ実効値電力量計
静電形電極間の静電力交流・直流実効値高電圧計

「交流が測れるか」で分けると、可動コイル形だけが仲間外れです。その代わり感度と精度がもっとも高い——直流の精密測定には可動コイル形が使われます。

整流形は「可動コイル形の前に整流器を付けたもの」です。これで交流も測れるようになりますが、指示するのは平均値——正弦波の波形率1.11を掛けて実効値の目盛りを打っています

深掘り④:平均値・実効値・最大値の関係

波形最大値実効値平均値(全波整流)波形率
正弦波\(V_m\)\(V_m/\sqrt2=0.707V_m\)\(2V_m/\pi=0.637V_m\)1.11
方形波\(V_m\)\(V_m\)\(V_m\)1.00
三角波\(V_m\)\(V_m/\sqrt3=0.577V_m\)\(V_m/2=0.5V_m\)1.15

波形率=実効値÷平均値です。正弦波の 1.11 が整流形計器の目盛りに組み込まれています——だから正弦波以外では誤差が出ます

「交流の 100 V」と言えば実効値です。最大値は \(100\sqrt2\fallingdotseq141\ \mathrm{V}\)——本問の選択肢に出てくる 141 はこの関係を使った引っかけです。

深掘り⑤:交流を測る計器の選び方

測りたいもの向いている計器理由
正弦波の交流整流形安価で感度が高い
ひずんだ波形可動鉄片形・熱電形真の実効値を指示する
直流の精密測定可動コイル形感度・精度が最高
高周波熱電形周波数の影響を受けにくい
高電圧静電形電流をほとんど取らない

「真の実効値(True RMS)」を測れるかどうかが、計器選びの分かれ目です。インバータの出力のようなひずんだ波形では、整流形は大きく外れます

⏱️ 本番での進め方
❶ 可動コイル形=直流専用・平均値。交流では 0 を指す。
❷ 可動鉄片形=交直両用・実効値。直流もちゃんと測れる。
❸ 141 は最大値の数字——実効値を聞かれているのに選ばない。
❹ 「測れない=0」という答えもあると知っておく。

出題履歴:計器の種類と性質は計測の必修知識

可動コイル形と可動鉄片形の違いは、計測分野でもっとも問われやすいテーマです。令和7年度下期A問題14では整流形の指示値が問われており、「どの計器が何を指示するか」を押さえておけば連鎖的に解けます

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

まとめ

A1可動コイル形=平均値応答
A2可動鉄片形=実効値応答
(ア)直流100mA→A2=100mA
(イ)交流正弦波→A1=平均0mA
答え(3)

▼あわせて解きたい関連問題
・誘導形電力量計の原理と誤差率(電気及び電子計測35):【理論】平成22年度 B問題16

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

コメント

コメントする

目次