今回は平成21年度 理論科目 A問題14を解説します。可動コイル形直流電流計A1と可動鉄片形交流電流計A2を、直流回路(図1)と交流回路(図2)につないだときの指示値を比較する問題です。
可動コイル形は電流の平均値に応答し、可動鉄片形は実効値に応答します。直流では平均値=実効値ですが、正弦波交流では平均値が0になる点がポイントです。
平成21年度 理論科目 A問題14:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成21年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題14
電験3種 理論科目 【電気及び電子計測】 平成21年度 A問題14
可動コイル形直流電流計A1と可動鉄片形交流電流計A2の2台の電流計がある。図1のようにA1とA2を抵抗100Ωと電圧10Vの直流電源の回路に接続したとき、A1の指示は100mA、A2の指示は(ア)mAであった。また、図2のように周波数50Hz・電圧100Vの交流電源と抵抗500ΩにA1とA2を接続したとき、A1の指示は(イ)mA、A2の指示は200mAであった。ただし、A1とA2の内部抵抗はどちらも無視できるものであった。
空白箇所(ア)及び(イ)に当てはまる最も近い値[mA]の組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (1) 0 0 (2) 141 282 (3) 100 0 (4) 0 141 (5) 100 141

出題のポイント:可動コイル形は交流で「0」を指す
可動コイル形は平均値を指示します。正弦波交流の平均値はゼロ——だから交流回路につないでも針は振れません。これが(イ)=0 の理由です。
可動鉄片形は交流でも直流でも使えます。だから直流回路につないだ(ア)は、A1 と同じ 100 mA——2つの計器の性質の違いがそのまま答えです。

解説:2つの回路を順に見る
図1:直流 10 V・100 Ω の回路
オームの法則
問題文どおり
直流でも同じ値
図2:交流 100 V・50 Hz・500 Ω の回路
交流の電圧・電流は実効値表示
問題文どおり
正の半周期と負の半周期が打ち消す
可動コイル形の針が「振れない」のは壊れているからではありません。50 Hz では針が追従できず、正負の力が打ち消し合って中央で止まる——物理的に正しい動作です。
誤答の正体:141 という数字の罠
| 選択肢 | (ア) | (イ) | 判定 |
| (1) | 0 | 0 | (ア)が誤り——可動鉄片形は直流も測れる |
| (2) | 141 | 282 | 両方とも最大値(\(\times\sqrt2\))にしている |
| (3) | 100 | 0 | ◎ 正解 |
| (4) | 0 | 141 | 2つの計器の性質を逆にした |
| (5) | 100 | 141 | (イ)を \(100\times\sqrt2\) としている |
141 は \(100\times\sqrt2\)=最大値です。「実効値と最大値の関係」を知っている人ほど、つい選んでしまう数字——作問者が用意した罠です。
そもそも \(A_1\) は交流を測れません。最大値も実効値も指示しない、ただの 0——「測れない」という答えがあることを覚えておいてください。
⚠️ よくある間違い
可動鉄片形が直流も測れることを見落とすと(1)(4)に落ちます。鉄片は磁界に吸い寄せられるだけなので、磁界の向きが変わっても吸引力の向きは変わりません——だから交流でも直流でも動きます。
深掘り①:なぜ可動コイル形は平均値を指すのか
可動コイル形は、永久磁石の磁界の中に置いたコイルに電流を流し、フレミングの左手の法則で生じる力で針を振らせます。
力は電流に比例します。電流の向きが変われば力の向きも変わる——50 Hz なら1秒間に100回向きが変わり、針は追従できません。
結果として、針は「1周期の平均の力」の位置で静止します。正弦波の平均はゼロなので、針は中央のままです。
直流なら力の向きが一定なので、電流に比例した位置で釣り合います。目盛りが等間隔(均等目盛り)になるのも、力が電流に比例するからです。
深掘り②:なぜ可動鉄片形は実効値を指すのか
可動鉄片形は、コイルに電流を流して磁界を作り、その磁界で鉄片を吸引(または反発)させます。
鉄片は磁化されてから吸引されるので、電流の向きが変わっても、磁界と磁化の両方が反転して力の向きは変わりません——力は電流の二乗に比例します。
二乗の平均=実効値の二乗ですから、針は実効値に応じた位置で静止します。だから交流でも直流でも、ちゃんと実効値を指すのです。
ただし目盛りは二乗目盛り(不均等)になります。低い側が詰まって読みにくいのが欠点です。
💡 覚え方
力が電流に「比例」→ 平均値を指示(可動コイル形・直流専用)、力が電流の「二乗」に比例 → 実効値を指示(可動鉄片形・交直両用)。この違いが、交流が測れるかどうかを決めています。
深掘り③:指示計器の種類を一覧で
| 種類 | 動作原理 | 使える電源 | 指示する値 | 主な用途 |
| 可動コイル形 | 永久磁石と電流の力 | 直流のみ | 平均値 | 直流電流計・電圧計 |
| 可動鉄片形 | 磁界による鉄片の吸引 | 交流・直流 | 実効値 | 交流電流計・電圧計 |
| 電流力計形 | 2つのコイルの電流の積 | 交流・直流 | 実効値 | 電力計 |
| 整流形 | 整流して可動コイル形へ | 交流 | 平均値×1.11 | 安価な交流計 |
| 誘導形 | 回転磁界による渦電流 | 交流のみ | 実効値 | 電力量計 |
| 静電形 | 電極間の静電力 | 交流・直流 | 実効値 | 高電圧計 |
「交流が測れるか」で分けると、可動コイル形だけが仲間外れです。その代わり感度と精度がもっとも高い——直流の精密測定には可動コイル形が使われます。
整流形は「可動コイル形の前に整流器を付けたもの」です。これで交流も測れるようになりますが、指示するのは平均値——正弦波の波形率1.11を掛けて実効値の目盛りを打っています。
深掘り④:平均値・実効値・最大値の関係
| 波形 | 最大値 | 実効値 | 平均値(全波整流) | 波形率 |
| 正弦波 | \(V_m\) | \(V_m/\sqrt2=0.707V_m\) | \(2V_m/\pi=0.637V_m\) | 1.11 |
| 方形波 | \(V_m\) | \(V_m\) | \(V_m\) | 1.00 |
| 三角波 | \(V_m\) | \(V_m/\sqrt3=0.577V_m\) | \(V_m/2=0.5V_m\) | 1.15 |
波形率=実効値÷平均値です。正弦波の 1.11 が整流形計器の目盛りに組み込まれています——だから正弦波以外では誤差が出ます。
「交流の 100 V」と言えば実効値です。最大値は \(100\sqrt2\fallingdotseq141\ \mathrm{V}\)——本問の選択肢に出てくる 141 はこの関係を使った引っかけです。
深掘り⑤:交流を測る計器の選び方
| 測りたいもの | 向いている計器 | 理由 |
| 正弦波の交流 | 整流形 | 安価で感度が高い |
| ひずんだ波形 | 可動鉄片形・熱電形 | 真の実効値を指示する |
| 直流の精密測定 | 可動コイル形 | 感度・精度が最高 |
| 高周波 | 熱電形 | 周波数の影響を受けにくい |
| 高電圧 | 静電形 | 電流をほとんど取らない |
「真の実効値(True RMS)」を測れるかどうかが、計器選びの分かれ目です。インバータの出力のようなひずんだ波形では、整流形は大きく外れます。
⏱️ 本番での進め方
❶ 可動コイル形=直流専用・平均値。交流では 0 を指す。
❷ 可動鉄片形=交直両用・実効値。直流もちゃんと測れる。
❸ 141 は最大値の数字——実効値を聞かれているのに選ばない。
❹ 「測れない=0」という答えもあると知っておく。
出題履歴:計器の種類と性質は計測の必修知識
可動コイル形と可動鉄片形の違いは、計測分野でもっとも問われやすいテーマです。令和7年度下期A問題14では整流形の指示値が問われており、「どの計器が何を指示するか」を押さえておけば連鎖的に解けます。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
まとめ
| A1 | 可動コイル形=平均値応答 |
| A2 | 可動鉄片形=実効値応答 |
| (ア) | 直流100mA→A2=100mA |
| (イ) | 交流正弦波→A1=平均0mA |
| 答え | (3) |
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