今回は平成22年度 理論科目 B問題16を解説します。(a)誘導形電力量計(アラゴの円板を利用)の原理に関する空欄、(b)回転円板の回転数から計量の誤差率を求める問題です。
誘導形電力量計は、電圧コイルと電流コイルの磁束による移動磁界が回転円板に渦電流を生じさせ、負荷電力に比例するトルクで回します。永久磁石は速度に比例する制動トルクを与え、回転数が電力量に比例します。
平成22年度 理論科目 B問題16:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成22年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 B問題16
電験3種 理論科目 【電気及び電子計測】 平成22年度 B問題16
電力量計について、次の(a)及び(b)に答えよ。
(a) 計器の指針等を駆動するトルクを発生する動作原理により計器を分類すると、図に示した構造の電力量計の場合は、(ア)に分類される。回転円板が負荷の電力に比例するトルクで回転するように、図中の端子aからfを(イ)のように接続して、負荷電圧を電圧コイルに加え、負荷電流を電流コイルに流す。その結果、コイルに生じる磁束による移動磁界と、回転円板上に生じる渦電流との電磁力の作用で回転円板は回転する。一方、永久磁石により回転円板には速度に比例する(ウ)が生じ、負荷の電力に比例する速度で回転円板は回転を続ける。
(b) 3kWの電力を消費している抵抗負荷にこの電力量計を接続し、回転円板の回転数を測定したところ1分間に61であった。計器定数(1kW・h当たりの回転数)は1200rev/kW・hとして、計量の誤差率の大きさを求める。
(a) 電力量計の原理に関する空欄(ア)(イ)(ウ)の組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (1) 誘導形 ac, de, bf 駆動トルク (2) 電流力計形 ad, bc, ef 制動トルク (3) 誘導形 ac, de, bf 制動トルク (4) 電流力計形 ad, bc, ef 駆動トルク (5) 電力計形 ac, de, bf 駆動トルク (b) 3kWの抵抗負荷に接続し、回転円板の回転数が1分間に61であった。計器定数1200rev/kW・hのとき、計量の誤差率[%]の大きさとして最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)0.2 (2)0.4 (3)1.0 (4)1.7 (5)2.1 %

出題のポイント:永久磁石が作るのは「制動」トルク
誘導形電力量計では、コイルが作る移動磁界と渦電流で【駆動】トルクが生まれます。一方、永久磁石が円板に作るのは【制動】トルク——回転を止める向きの力です。
駆動トルクは電力に比例、制動トルクは速度に比例。2つが釣り合う速度で回るので、回転速度が電力に比例します——だから回転数を数えれば電力量が分かるのです。

解説(a):3つの空欄を埋める
| 空欄 | 答え | 理由 |
| (ア) | 誘導形 | 移動磁界と渦電流の電磁力で回る=誘導形 |
| (イ) | ac, de, bf | 電圧コイルを負荷と並列、電流コイルを直列にする接続 |
| (ウ) | 制動トルク | 永久磁石は渦電流ブレーキとして働く |
(ア)で「電流力計形」を選ぶと誤りです。電流力計形は2つのコイルの電流の積で動く計器(電力計)——回転円板も永久磁石も使いません。
(ウ)で「駆動トルク」を選ぶのも誤りです。駆動トルクを作るのはコイル側——永久磁石は「速度に比例する」と書かれている時点で制動だと分かります。
解説(b):真の回転数と比べる
1分=1/60時間
1 kW·h あたり 1200 回転
分母は真値
「1分間に61回転」の 61 という数字は、真値 60 に対して 1 回転多いだけです。\(1/60=1.67\ \%\)——この計算がそのまま答えになります。
誤答の正体:分母の取り方と単位換算
| 選択肢 | 値 | どう計算すると出るか |
| (1) | 0.2 % | 桁の取り違え |
| (2) | 0.4 % | — |
| (3) | 1.0 % | \(1/100\) など、真値を100と考えた |
| (4) | 1.7 % | ◎ \(1/60\) |
| (5) | 2.1 % | 分母を 61 の測定値にせず別の値にした等 |
測定値 61 で割ると \(1/61=1.64\ \%\)——やはり(4)になります。誤差が小さいので分母の違いは効きません。
⚠️ よくある間違い
「1時間あたり」と「1分間あたり」の換算を落とさないでください。計器定数は \(\mathrm{rev/kW\cdot h}\)(1時間あたり)、測定は1分間——60で割る操作が必要です。
深掘り①:なぜ回転数が電力量になるのか
電圧コイルと電流コイルの積
渦電流ブレーキ:速度に比例
速度が電力に比例
総回転数が電力量
回転数を積算すれば、電力を時間で積分したもの=電力量になります。アナログの積分器です。
制動トルクがなければ、駆動トルクで加速し続けて速度が定まりません。「速度に比例する制動」があるからこそ、速度が電力に比例して落ち着く——永久磁石が主役の1つです。
深掘り②:計器定数という考え方
1 kW·h で何回転するか
\(t\) は時間 [h]
家庭の電力メーターにも「〇〇 rev/kW·h」と書かれています。円板の回転を数えれば、電力計がなくても消費電力が分かります——実務でよく使う技です。
本問の逆算:\(P=61/(1200\times1/60)=3.05\ \mathrm{kW}\)——真値 3 kW に対して 1.7 %高く計量していることになります。
深掘り③:電力計と電力量計の違い
| 電力計 | 電力量計 | |
| 測るもの | 電力 \([\mathrm{W}]\) | 電力量 \([\mathrm{kW\cdot h}]\) |
| 方式 | 電流力計形 | 誘導形 |
| 表示 | 指針の振れ | 回転数の積算 |
| 使える電源 | 交流・直流 | 交流のみ |
| 身近な例 | 実験室の電力計 | 家庭の電力メーター |
誘導形が交流専用なのは、移動磁界を作るのに交流が必要だからです。直流では磁界が変化せず、渦電流も生じません。
近年はスマートメーター(電子式)に置き換わっていますが、「回転円板の電力量計」は試験の定番題材として残っています。
💡 覚え方
コイル=駆動トルク(電力に比例)、永久磁石=制動トルク(速度に比例)。釣り合うから速度が電力に比例し、回転数の積算が電力量になる——この因果を一息で言えれば(a)は即答できます。
深掘り④:渦電流ブレーキの原理
永久磁石の磁界の中で円板が回ると、円板に渦電流が流れます(ファラデーの電磁誘導)。その渦電流と磁界の間に、回転を妨げる向きの力が働きます(レンツの法則)。
渦電流の大きさは速度に比例するので、制動トルクも速度に比例します。速く回るほど強くブレーキがかかる——自然に速度が定まる仕組みです。
同じ原理が電車の渦電流ブレーキやアナログ計器の制動にも使われています。指針が振動せずに止まるのも渦電流制動のおかげです。
⏱️ 本番での進め方
❶ 「速度に比例する」と書いてあれば制動トルク——駆動は電力に比例。
❷ 回転円板+永久磁石=誘導形——電流力計形ではない。
❸ 計器定数は1時間あたり——1分なら60で割る。
❹ 誤差率=(測定-真値)/真値——本問は \(1/60\)。
出題履歴:電力量計は計測分野の定番
誘導形電力量計の原理と計器定数を使った計算は、繰り返し出題されています。「駆動と制動」「計器定数から電力を逆算」の2点を押さえておけば確実に取れます。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
まとめ
| (a) | 誘導形/ac,de,bf/制動トルク→(3) |
| 真値 | 3kW×1200×1h=3600rev/時 |
| 測定値 | 61×60=3660rev/時 |
| (b)誤差率 | 60/3600×100≒1.7%→(4) |
▼あわせて解きたい関連問題
・多重範囲電流計の分流器(電気及び電子計測34):【理論】平成22年度 A問題14

コメント