今回は平成28年度 理論科目 B問題16を解説します。電圧降下法(電流計と電圧計の指示から抵抗を求める方法)で得た測定値と、真の値との差から(a)絶対誤差、(b)百分率誤差(誤差率)を求める問題です。
電圧降下法では、抵抗Rの測定値M=V/Iで計算します。絶対誤差=測定値−真値、誤差率(相対誤差)=絶対誤差÷真値×100[%]。有効数字4桁で丁寧に計算するのがポイントです。
平成28年度 理論科目 B問題16:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成28年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 B問題16
電験3種 理論科目 【電気及び電子計測】 平成28年度 B問題16
図のような回路において、抵抗Rの値[Ω]を電圧降下法によって測定した。この測定で得られた値は、電流計I=1.600A、電圧計V=50.00Vであった。次の(a)及び(b)の問に答えよ。ただし、抵抗Rの真の値は31.21Ωとし、直流電源・電圧計及び電流計の内部抵抗の影響は無視できるものである。また、抵抗Rの測定値は有効数字4桁で計算せよ。
(a) 抵抗Rの絶対誤差[Ω]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)0.004 (2)0.04 (3)0.14 (4)0.4 (5)1.4 Ω
(b) 絶対誤差の真の値に対する比率を百分率で示した抵抗Rの百分率誤差(誤差率)[%]として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)0.0013 (2)0.03 (3)0.13 (4)0.3 (5)1.3 %

出題のポイント:誤差率の分母は「真値」
絶対誤差=測定値−真値、誤差率=絶対誤差÷真値——この2つの定義だけで解ける問題です。難しいのは計算ではなく、定義を正確に覚えているかどうか。
測定値は \(R=V/I=50.00/1.600=31.25\ \Omega\)。真値 \(31.21\ \Omega\) との差が \(0.04\ \Omega\)——これがそのまま(a)の答えです。

解説(a):測定値を出して真値を引く
有効数字4桁の指定どおり
測定値から真値を引く
\(50.00\div1.600\) は、\(50\div1.6=31.25\) と計算できます。\(1.6\times31=49.6\)、残り \(0.4\) を \(1.6\) で割って \(0.25\)——電卓なしでも出せます。
解説(b):真値で割って百分率に
分母は真値
\(0.04/31.21\) は、\(0.04/31\fallingdotseq0.00129\) と概算できます。選択肢が10倍刻みなので、桁さえ合えば正解できます。
誤答の正体:百分率にし忘れる/桁を1つずらす
| 選択肢 | 値 | どう間違えると出るか |
| (1) | 0.0013 % | ★百分率にし忘れた(\(0.0013\) は比のまま) |
| (2) | 0.03 % | \(0.04/31.21\) の計算ミス |
| (3) | 0.13 % | ◎ 正解 |
| (4) | 0.3 % | 桁を1つ大きく読んだ |
| (5) | 1.3 % | 桁を2つ大きく読んだ |
(1)の 0.0013 は「比のまま」の値です。\(\times100\) を忘れるとこうなります——問題が「百分率で」と明記しているので、必ず100倍してください。
⚠️ よくある間違い
誤差率の分母は【真値】です。測定値で割ると \(0.04/31.25=0.128\ \%\) でほぼ同じ値になりますが、それは「補正率」の定義です。誤差が小さいときは差が出ませんが、定義は区別してください。
深掘り①:誤差・補正・それぞれの率
| 用語 | 定義 | 式 |
| 絶対誤差 | 測定値と真値の差 | \(\Delta M=M-T\) |
| 誤差率(百分率誤差) | 絶対誤差 ÷ 真値 | \(\varepsilon=\dfrac{\Delta M}{T}\times100\ \%\) |
| 補正 | 真値と測定値の差 | \(\alpha=T-M=-\Delta M\) |
| 補正率 | 補正 ÷ 測定値 | \(\dfrac{\alpha}{M}\times100\ \%\) |
誤差と補正は符号が逆です。「測りすぎたら引く」——補正は誤差を打ち消すために足す量だと考えれば混同しません。
分母も違います。誤差率の分母は真値、補正率の分母は測定値——本問のように誤差が 0.1 %程度なら差は無視できますが、大きな誤差では効いてきます。
実務では真値が分からないので、より精度の高い標準器の値を「真値」とみなします。本問が真値を与えているのは、そういう標準器で測ったという設定です。
深掘り②:電圧降下法の2つのつなぎ方
電圧降下法は「電圧計と電流計で測って \(R=V/I\) を計算する」方法です。ただし、計器のつなぎ方に2通りあり、それぞれ誤差の出方が違います。
| 接続 | 電圧計の位置 | 誤差の原因 | 向いている抵抗 |
| 電圧計を \(R\) だけに | \(R\) と並列 | 電圧計に流れる電流が余分 | 低い抵抗 |
| 電圧計を \(R\)+電流計に | 電流計も含めて並列 | 電流計の内部抵抗が余分 | 高い抵抗 |
本問は「計器の内部抵抗の影響は無視できる」と明記されているので、この使い分けは考えなくてよい設定です。残る誤差は目盛りの読み取り誤差だけになります。
実際には、測る抵抗が小さいなら電圧計を \(R\) だけに、大きいなら電流計も含めて——「誤差の原因になる計器を、影響の小さい側に置く」のが原則です。
深掘り③:有効数字の扱い
問題文が「有効数字4桁で計算せよ」と指定しています。\(50.00\) も \(1.600\) も4桁で与えられているので、答えも4桁の \(31.25\) にします。
もし \(31.2\) と3桁で丸めると、絶対誤差が \(31.2-31.21=-0.01\) となり、符号まで変わってしまいます——丸めのタイミングが結果を左右する例です。
掛け算・割り算では「桁数の少ないほうに合わせる」のが原則です。足し算・引き算では「小数点以下の桁数の少ないほうに合わせる」——ルールが違うので注意してください。
💡 覚え方
絶対誤差=測定値−真値(引き算)、誤差率=絶対誤差÷真値(割り算して×100)。分母が真値であることと、百分率にすること——この2点だけ落とさなければ確実に取れます。
深掘り④:誤差の種類
| 種類 | 原因 | 特徴 | 対策 |
| 系統誤差 | 計器の狂い・接続方法 | いつも同じ向きにずれる | 校正・補正で除ける |
| 偶然誤差 | 読み取りのばらつき・雑音 | 向きが定まらない | 何度も測って平均する |
| 過失誤差 | 読み間違い・記録ミス | 大きく外れる | 注意深く測る・捨てる |
系統誤差は平均しても消えません。いつも同じ向きにずれているからです——校正して補正値を求めるしかありません。
偶然誤差は何度も測って平均すると小さくなります。\(n\) 回測れば標準偏差が \(1/\sqrt n\) になる——4回測れば半分です。
⏱️ 本番での進め方
❶ 測定値を出す:\(R=V/I\)。有効数字の指定を守る。
❷ 絶対誤差=測定値−真値(引き算するだけ)。
❸ 誤差率=絶対誤差÷【真値】×100。分母と ×100 を忘れない。
★選択肢が10倍刻みなら、桁だけ合わせれば正解できる。
出題履歴:誤差の定義は計測分野の必修
絶対誤差・誤差率・補正は、計測分野でもっとも基本的な用語です。令和3年度A問題14では誤差率の合成、平成20年度A問題14では階級(確度)と、切り口を変えて繰り返し出題されています。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
まとめ
| 測定値M | V/I=50.00/1.600=31.25Ω |
| 真値T | 31.21Ω |
| (a)絶対誤差 | M−T=0.04Ω→(2) |
| (b)誤差率 | 0.04/31.21×100≒0.13%→(3) |
▼あわせて解きたい関連問題
・ディジタル計器の正誤(電気及び電子計測24):【理論】平成28年度 A問題14

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