今回は令和4年度上期 理論科目 B問題16を解説します。すべり抵抗器Rabと分圧抵抗Rd・Re、直流電源Es=12Vを使って、端子H・G間に接続した未知の直流電圧を測る電位差計型の回路の問題です。
検流計の電流が零(平衡)のとき、接触子Cの電位と端子Hの電位が等しくなります。端子Gを0Vの基準として、Rd・Reの分圧とすべり抵抗器の分圧から各点の電位を求めるのがポイントです。
令和4年度上期 理論科目 B問題16:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度上期 第三種電気主任技術者試験」理論科目 B問題16
電験3種 理論科目 【電気及び電子計測】 令和4年度上期 B問題16
図は、抵抗Rab[kΩ]のすべり抵抗器、抵抗Rd[kΩ]、抵抗Re[kΩ]と直流電圧Es=12Vの電源を用いて、端子H・G間に接続した未知の直流電圧[V]を測るための回路である。次の(a)及び(b)の問に答えよ。ただし、端子Gを電位の基準(0V)とする。
(a) Rd=5kΩ、Re=5kΩとし、直流電圧3Vの正極を端子H・負極を端子Gに接続し、Rbc=18kΩで検流計が零になった。すべり抵抗器Rab[kΩ]の値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)18 (2)24 (3)36 (4)42 (5)50 kΩ
(b) 3Vの電源を外し未知電源Ex[V]を端子H・G間に接続。Rd=2kΩ、Re=22kΩとしてRbc=12kΩで検流計が零になった。Ex[V]の値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)-5 (2)-3 (3)0 (4)3 (5)5 V

出題のポイント:G が 0 V 基準なので下端は「負」の電位
電源 \(E_s\) に「すべり抵抗器」と「\(R_d+R_e\) の直列」が並列につながり、\(R_d\) と \(R_e\) の接点 G が 0 V 基準(接地)です。
だから回路の上端は正、下端は負の電位になります。\(R_d=R_e\) なら上端 \(+6\ \mathrm{V}\)、下端 \(-6\ \mathrm{V}\)——ここを見落とすと符号を外します。

解説(a):\(R_{ab}\) を求める
G が 0 V 基準
すべり抵抗器の分圧
点C は下端から \(R_{bc}\) だけ上がった位置です。すべり抵抗器全体に 12 V がかかっているので、\(R_{bc}/R_{ab}\) の割合だけ電位が上がります。
解説(b):未知電圧 \(E_x\) を求める
\(R_e\) が大きいので大きく下がる
\(R_{ab}\) は(a)の 24 kΩ
\(R_d\) と \(R_e\) の比を変えることで、測れる電圧の範囲をずらせます。(a)は \(-6\sim+6\ \mathrm{V}\)、(b)は \(-11\sim+1\ \mathrm{V}\)——負の電圧も測れるようになりました。
誤答の正体:符号と基準点
| よくある誤り | 考え方 | 出る値 |
| 下端を 0 V とする | \(V_C=12\times12/24=6\) | \(+6\ \mathrm{V}\)(選択肢になし) |
| 上端を基準にする | \(V_C=1-6=-5\) | 偶然 \(-5\) になる |
| ◎ G を 0 V とする | \(V_C=-11+6\) | \(-5\ \mathrm{V}\) |
| \(R_{ab}\) を再計算しない | (a)の 24 kΩ を使わない | 解けない |
(b)では \(R_{ab}=24\ \mathrm{k\Omega}\) をそのまま使います。すべり抵抗器は同じものだから——変わったのは \(R_d\)、\(R_e\)、\(R_{bc}\) の3つだけです。
選択肢に \(-5\)・\(-3\)・\(0\)・\(3\)・\(5\) と正負が並んでいるのは、符号を落とす誤りを狙ったものです。基準点を明示して計算すれば迷いません。
⚠️ よくある間違い
「G を電位の基準(0 V)とする」という問題文の指示を必ず使ってください。基準を決めずに電位を計算すると、符号が定まりません。まず基準点に 0 を書き込み、そこから上下に符号付きで電位を書く——これが確実な手順です。
深掘り①:この回路は電位差計の応用
検流計が零になるまですべり抵抗器のタップを動かし、そのときの位置から電圧を知る——これは電位差計そのものです。
零位法なので、測定対象(未知電源)から電流を取りません。内部抵抗があっても電圧降下が起きないので、起電力がそのまま測れます。
普通の電位差計と違うのは、\(R_d\)・\(R_e\) で基準点をずらしている点です。これで負の電圧も測れるようになります——本問の(b)がまさにその例です。
| 設定 | 下端の電位 | 上端の電位 | 測れる範囲 |
| \(R_d=R_e=5\ \mathrm{k\Omega}\) | \(-6\ \mathrm{V}\) | \(+6\ \mathrm{V}\) | \(-6\sim+6\ \mathrm{V}\) |
| \(R_d=2,\ R_e=22\ \mathrm{k\Omega}\) | \(-11\ \mathrm{V}\) | \(+1\ \mathrm{V}\) | \(-11\sim+1\ \mathrm{V}\) |
深掘り②:分圧で基準点をずらす発想
\(R_d\) が小さいほど上端が低い
幅は 12 V で固定、位置だけが \(R_d:R_e\) の比で決まります。窓の大きさは同じで、上下にスライドさせるイメージです。
電子回路の「単電源で負の信号を扱う」テクニックと同じ発想です。令和4年度上期A問題13のシュミットトリガや平成26年度A問題13の基準電圧つき反転増幅でも、基準をずらして扱える範囲を移していました。
深掘り③:すべり抵抗器の使い方
| 使い方 | 端子の使用 | 働き | 例 |
| 可変抵抗器(レオスタット) | 2端子(片端とタップ) | 抵抗値を変える | 電流調整 |
| 分圧器(ポテンショメータ) | 3端子すべて | 電圧を分圧する | 本問・電位差計 |
本問は3端子すべてを使う分圧器としての使い方です。A-B 間に電源をかけ、タップ C から電圧を取り出します。
分圧器として使うと、タップを動かしても全体を流れる電流は変わりません(負荷を取らなければ)。だから \(R_{bc}/R_{ab}\) の比だけで電位が決まります。
💡 覚え方
まず基準点(G)に 0 V を書き込む。次に上端と下端の電位を符号付きで求める。最後にタップの位置(\(R_{bc}/R_{ab}\))だけ下端から持ち上げる——この3ステップで確実に解けます。
深掘り④:検流計が零という条件の意味
検流計が零=その枝に電流が流れていないということです。だから点C と点H の電位が等しい——それが平衡条件です。
電流が流れないので、未知電源の内部抵抗による電圧降下もゼロ。起電力そのものが測れます——これが零位法の最大の利点です。
また、すべり抵抗器側の電流も乱されません。検流計の枝に電流が流れないので、\(R_{ab}\) を流れる電流は \(E_s/R_{ab}\) のまま——計算が単純になります。
⏱️ 本番での進め方
❶ 基準点(G=0 V)を書き込む——ここを飛ばすと符号を外す。
❷ 上端・下端の電位を分圧で求める——下端は負になる。
❸ \(V_C=V_{\text{下端}}+E_s\times R_{bc}/R_{ab}\)。
❹ 検流計が零 → \(V_C=\) 測定電圧。
★(b)では(a)で求めた \(R_{ab}\) を使う——すべり抵抗器は同じもの。
出題履歴:電位差計の応用は計測の良問
すべり抵抗器と検流計を使う零位法の測定は、平成27年度B問題15でも出題されています。本問は「基準点をずらして負の電圧も測る」という発展形——基準点の扱いに慣れておくと確実です。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
まとめ
| 平衡条件 | V_C=V_H(検流計零) |
| (a)VB | −12Re/(Rd+Re)=−6V |
| (a)Rab | −6+12×18/Rab=3→Rab=24kΩ→(2) |
| (b)VB | −12×22/24=−11V |
| (b)Ex | −11+(12/24)×12=−5V→(1) |
▼あわせて解きたい関連問題
・偏位法と零位法(電気及び電子計測12):【理論】令和4年度上期 A問題14

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