電子回路15【電験3種 理論】FETソース接地増幅回路の電圧増幅度(g_m・R_L)を小信号等価回路から求める!令和3年度 A問題13 完全解説

電験3種 理論科目 電子理論(電子回路) 令和3年度 A問題13 小信号等価回路で解く!FETの電圧増幅度は?

今回は令和3年度 理論科目 A問題13を解説します。電界効果トランジスタ(FET)を用いたソース接地増幅回路の簡易小信号等価回路から、電圧増幅度A_v=|v_o/v_i|を近似する式を求める問題です。

出力側は電流源g_m・v_gsが負荷r_dとR_Lの並列に電流を流します。v_gs=v_iなので、A_v=g_m×(r_d∥R_L)。r_dがR_Lより十分大きいので r_d∥R_L≒R_L となり、A_v≒g_m・R_Lと近似できます。

目次

令和3年度 理論科目 A問題13:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 理論科目 電子回路 令和3年度 A問題13 問題文
令和3年度 理論科目 A問題13 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和3年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題13

電験3種 理論科目 【電子理論(電子回路)】 令和3年度 A問題13

 図は、電界効果トランジスタ(FET)を用いたソース接地増幅回路の簡易小信号交流等価回路である。図中のS、G、Dはそれぞれソース、ゲート、ドレインであり、vi[V]、vo[V]、vgs[V]は各部の電圧、gm[S]はFETの相互コンダクタンスである。

この回路の電圧増幅度Av=|vo/vi|を近似する式として、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、抵抗rdは抵抗RLに比べて十分大きいものとする。

(1)gmRL (2)gmrd (3)gm(RL+rd) (4)gmrd/RL (5)gmRL/(RL+rd)

図 FETソース接地増幅回路の簡易小信号交流等価回路(g_m・v_gs、r_d、R_L)(問題図)
図 FETソース接地増幅回路の簡易小信号交流等価回路(g_m・v_gs、r_d、R_L)(問題図)

ポイント解説:小信号等価回路から出力抵抗を読む

GPT Image 2で作成したFETソース接地増幅回路の小信号関係と電圧増幅度の導出
v_gs=v_i、出力側はr_dとR_Lの並列合成となり、A_v=g_m(r_d∥R_L)です。

ソースが交流的に接地されているので v_gs=v_i です。FETの制御電流 g_m v_gs が、出力側で並列接続された r_d と R_L を流れるため、電圧増幅度の大きさは A_v=g_m(r_d∥R_L) となります。条件 r_d≫R_L では並列合成が R_L に近づき、A_v≈g_mR_L です。したがって正解は(1)です。

解説:\(r_d\gg R_L\) を使って電圧増幅度を求める

GPT Image 2で作成した並列合成の近似と電圧増幅度g_mR_Lの導出
r_d≫R_Lならr_d∥R_L≈R_Lとなるため、電圧増幅度はA_v≈g_mR_Lです。
$$v_{gs}=v_i$$
❶ 入力側
ゲートに電流は流れない
$$v_o=-g_mv_{gs}\times(r_d\parallel R_L)$$
❷ 出力側
電流源が並列抵抗に流れる
$$r_d\gg R_L\ \Rightarrow\ r_d\parallel R_L=\frac{r_dR_L}{r_d+R_L}\fallingdotseq R_L$$
❸ 近似
\(r_d\) が消える
$$A_v=\left|\frac{v_o}{v_i}\right|=g_mR_L$$
❹ 電圧増幅度

❸の近似が本問のすべてです。\(r_d=100\ \mathrm{k\Omega}\)、\(R_L=2\ \mathrm{k\Omega}\) なら並列合成は \(1.96\ \mathrm{k\Omega}\)——誤差わずか2 %です。

マイナス符号は「出力が入力と逆相」を意味します。問題は絶対値 \(|v_o/v_i|\) を聞いているので、符号は無視します。

答え\(A_v=g_mR_L\) → 選択肢(1)

選択肢照合:式と単位の両方から正解を確認する

GPT Image 2で作成した全5選択肢の式と単位による照合表
電圧増幅度は無次元で、導出結果と単位の両方が一致する選択肢(1)が正解です。
選択肢単位判定
(1)\(g_mR_L\)\(\mathrm{S}\times\Omega=\) 無次元 ✓
(2)\(g_mr_d\)無次元×(\(R_L\) を無視)
(3)\(g_m(R_L+r_d)\)無次元×(直列ではなく並列)
(4)\(g_mr_d/R_L\)無次元×
(5)\(g_mR_L/(R_L+r_d)\)\(\mathrm{S}\)(無次元にならない)×

(5)は次元が合いません\(\mathrm{S}\times\Omega/\Omega=\mathrm{S}\)——増幅度は無次元でなければならないので、即座に消せます

(2)は \(R_L\) がまったく出てこないのが不自然です。負荷抵抗が増幅度に関係しないはずがありません——物理的な感覚でも判定できます

(3)は \(r_d\) と \(R_L\) が直列だとした場合です。等価回路では並列——回路図の読み取りが問われています

⚠️ よくある間違い
「\(r_d\) が十分大きい」=「並列合成では無視できる」という意味です。並列では大きいほうが無視される——直列とは逆なので混同しないでください。

☝️ ひっかけの作り方:電圧増幅度は無次元です。\(g_m\) の単位がジーメンス(\(\Omega^{-1}\))なので、抵抗を1つだけ掛ければ無次元になります。この関係で選択肢がふるいにかけられます

深掘り①:相互コンダクタンス \(g_m\) とは

\(g_m\) はFETの性能を表す最も重要なパラメータです。「ゲート電圧をどれだけ効率よくドレーン電流に変えられるか」を表します。

相互コンダクタンスの定義
$$g_m=\frac{\Delta i_d}{\Delta v_{gs}}\ \mathrm{[S]}$$

入力が電圧、出力が電流——だから単位はコンダクタンス(S)です。「相互」は入出力をまたぐという意味

素子\(g_m\) の目安備考
接合形FET1〜10 mS比較的小さい
MOSFET(小信号)1〜50 mS
バイポーラ(換算)\(g_m=I_C/V_T\fallingdotseq40I_C\)\(I_C=1\ \mathrm{mA}\) で 40 mS

バイポーラトランジスタのほうが \(g_m\) が大きいのが一般的です。同じ電流なら、バイポーラのほうが大きな増幅度が得られます——アナログ増幅でバイポーラが好まれる理由です。

FETの利点は入力インピーダンスの高さです。\(g_m\) では劣っても、前段に負担をかけない——用途によって使い分けられます

深掘り②:バイポーラとFETの増幅度の式を比べる

エミッタ接地とソース接地——形はよく似ていますが、パラメータが違います

エミッタ接地(バイポーラ)ソース接地(FET)
電圧増幅度\(A_v=\dfrac{h_{fe}R_L’}{h_{ie}}\)\(A_v=g_mR_L\)
入力ベース電流ゲート電圧
出力\(h_{fe}i_b\)(電流源)\(g_mv_{gs}\)(電流源)
位相逆相逆相

どちらも「出力は電流源」という点は同じです。違うのは、その電流源を何が制御するか——バイポーラは電流(\(i_b\))、FETは電圧(\(v_{gs}\))です。

\(h_{fe}/h_{ie}\) は \(g_m\) に相当します。「入力に対する出力電流の比」——どちらも同じ役割のパラメータです。

深掘り③:並列合成の近似を使いこなす

「一方が十分大きい」ときの並列合成は、電験のあらゆる分野で使う近似です。

$$R_1\parallel R_2=\frac{R_1R_2}{R_1+R_2}$$
❶ 正確な式
$$R_1\gg R_2\ \Rightarrow\ R_1+R_2\fallingdotseq R_1\ \Rightarrow\ \frac{R_1R_2}{R_1}=R_2$$
❷ 近似
小さいほうが残る
\(r_d\)\(R_L\)正確な並列合成近似誤差
100 kΩ2 kΩ1.96 kΩ2 kΩ2 %
100 kΩ10 kΩ9.09 kΩ10 kΩ10 %
1 MΩ2 kΩ1.996 kΩ2 kΩ0.2 %

差が大きいほど近似の精度が上がります10倍以上の差があれば、誤差10 %以内——試験問題としては十分です。

直列では逆に「大きいほうが残る」ことも押さえておきましょう。並列は小さいほう、直列は大きいほうが支配的——混同しやすいところです。

深掘り④:ソース接地増幅回路の全体像

等価回路だけでなく、実際の回路がどうなっているかも知っておくと理解が深まります。

部品役割
ゲートのバイアス抵抗動作点を決める
ソース抵抗動作点の安定化(負帰還)
ソースバイパスコンデンサ交流的にソースを接地して増幅度を保つ
ドレーン抵抗(負荷)電流を電圧に変換
結合コンデンサ直流を切って信号だけ通す

小信号等価回路には、これらの直流用部品は現れません交流信号から見た姿だけを描く——だから電流源と抵抗だけのシンプルな形になります。

ソースバイパスコンデンサがないと、ソース抵抗による負帰還がかかって増幅度が下がります\(A_v=g_mR_L/(1+g_mR_S)\)——その代わり安定性は向上します。

⏱️ 本番での進め方
❶ 並列合成は小さいほうが残る——\(r_d\gg R_L\) なら \(R_L\)。
❷ 増幅度は無次元——\(\mathrm{S}\times\Omega\) で1つだけ抵抗を掛ける。
❸ \(A_v=g_mR_L\)——ソース接地の基本式。
❹ (5)は次元が合わない——単位チェックで即消し。

💡 覚え方
「\(g_m\) は電圧を電流に変える係数、\(R_L\) は電流を電圧に戻す係数」——掛け合わせれば電圧比(無次元)になります。単位の流れを追えば式が作れます

出題履歴:FETの等価回路は定番

ソース接地増幅回路の電圧増幅度は、電子回路分野で繰り返し問われるテーマです。\(A_v=g_mR_L\) という基本式と、並列合成の近似を押さえておけば確実です。

この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。

あわせて解いておきたい記事:【理論】平成28年度A問題13(エミッタ接地の等価回路)【理論】令和4年度上期A問題11(接合形FETの動作)

まとめ

入力v_gs=v_i
出力v_o=-g_m・v_gs(r_d∥R_L)
近似r_d≫R_L→r_d∥R_L≒R_L
A_vg_m・R_L→(1)

▼あわせて解きたい関連問題
・接合形FET増幅回路(電子回路9):【理論】令和5年度下期 B問題18

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