今回は平成19年度 理論科目 A問題13を解説します。一様な磁界に直角に入射した電子が受ける電磁力・円運動の半径・周期を問う穴埋め問題です。
磁界に直角に入った電子は電磁力Bevを向心力として等速円運動します。電磁力と遠心力mv²/rの釣合いから半径r=mv/(Be)、周期T=2πr/v=2πm/(Be)が求まります。
平成19年度 理論科目 A問題13:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成19年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題13
電験3種 理論科目 【電子理論(電子の運動)】 平成19年度 A問題13
次の文章は、一様な磁界中における電子の運動に関する記述である。
真空中において、磁束密度B[T]の一様な磁界に対して直角に、電荷の大きさe[C]、質量m[kg]の電子が速さv[m/s]で入射した。電子は磁界から電磁力(ア)[N]を受け、この力が向心力となって速さv[m/s]の等速円運動をする。円運動の半径をr[m]とすると、電磁力と遠心力mv²/r[N]とが釣り合うことから、半径はr=(イ)[m]、円運動の周期はT=(ウ)[s]となる。
ただし、電子の速さvは光速に比べて十分小さく、重力の影響は無視できるものとする。
上記の記述中の空白箇所(ア)、(イ)及び(ウ)に当てはまる式の組合せとして、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (1) Bev Bev/m 2πm/(Be) (2) Bev mv/(Be) 2πm/(Be) (3) Bev mv/(Be) πm/(Be) (4) B²ev mv/(Be) 2πm/(Be) (5) Bev mv/(Be) 2πBe/m
出題のポイント:磁界に直角に入る電子は等速円運動する

速度vが磁界Bに直角なとき、電子が受ける電磁力の大きさはBevです。この力は常に速度と直角で向心力になるため、電子は速さを変えずに円運動します。Bev=mv²/rより半径はr=mv/(Be)です。周期は円周を速さで割り、T=2πr/v=2πm/(Be)となります。したがって(ア)Bev、(イ)mv/(Be)、(ウ)2πm/(Be)の組合せで、正解は選択肢(2)です。
ポイント解説:電磁力と向心力をつり合わせて半径を求める

\(e\)、\(v\)、\(B\) の積
\(v\) が1つ約分
\(v\) が完全に消える
❹で \(v\) が消えるのが決定的です。周期は速さによらない——速い電子は大きな円を、遅い電子は小さな円を描くが、1周にかかる時間は同じという不思議な性質です。
これがサイクロトロン(粒子加速器)の原理です。速さが変わっても周期が同じだから、一定の周波数の電圧で加速し続けられる——非常に巧妙な仕組みです。
問題の解説:円周を速さで割って周期を導き、選択肢(2)を選ぶ

| 選択肢 | (ア) | (イ) | (ウ) | どこが誤りか |
| (1) | \(Bev\) | \(Bev/m\) | \(2\pi m/(Be)\) | (イ)の分子分母が逆 |
| (2) | \(Bev\) | \(mv/(Be)\) | \(2\pi m/(Be)\) | 正解 |
| (3) | \(Bev\) | \(mv/(Be)\) | \(\pi m/(Be)\) | (ウ)が半分(\(2\pi\) を \(\pi\) に) |
| (4) | \(B^{2}ev\) | \(mv/(Be)\) | \(2\pi m/(Be)\) | (ア)の \(B\) が二乗 |
| (5) | \(Bev\) | \(mv/(Be)\) | \(2\pi Be/m\) | (ウ)が逆数(周波数になっている) |
(5)の \(2\pi Be/m\) は周期ではなく角周波数です。\(\omega=\dfrac{2\pi}{T}=\dfrac{Be}{m}\)——これを「サイクロトロン角周波数」と呼びます。逆数を取り違えないよう注意してください。
(1)の \(Bev/m\) は単位を見れば消せます。\(\dfrac{\mathrm{T\cdot C\cdot m/s}}{\mathrm{kg}}\)——メートルになりません。次元チェックが効きます。
⚠️ よくある間違い
周期の式に \(v\) が入っていたら誤りです。\(T=\dfrac{2\pi m}{Be}\) は速さを含まない——この事実を知っていれば、選択肢を見ただけで絞り込めます。
☝️ ひっかけの作り方:電子の電荷は負ですが、力の「大きさ」を聞かれているので \(e\) をそのまま使います。符号が効くのは「回る向き」だけ——大きさの計算では絶対値で扱います。
深掘り①:周期が速さによらない理由
直感的には「速いほど早く1周しそう」ですが、実際は違います。なぜかを考えてみましょう。
| 速さ | 半径 | 1周の長さ | 1周の時間 |
| \(v\) | \(r=mv/(Be)\) | \(2\pi r\) | \(T\) |
| \(2v\)(2倍) | \(2r\)(2倍) | \(4\pi r\)(2倍) | \(T\)(同じ) |
速さが2倍になると、半径も2倍になります。だから走る距離も2倍——速さ2倍で距離2倍なら、時間は同じです。
「速い電子は大回りする」から、時間が相殺される——これが周期が速さによらない理由です。非常にきれいな性質で、加速器の設計に不可欠です。
覚えやすい形
\(\omega=\dfrac{Be}{m}\) は非常にシンプルです。磁束密度と電荷質量比だけで決まる——電子なら \(B=1\ \mathrm{mT}\) で約28 MHz になります。
深掘り②:電界中の運動と比べる
電界中と磁界中では、電子の動きがまったく違います。対比して整理しておきましょう。
| 電界中 | 磁界中 | |
| 力の向き | 電界と平行(または逆) | 速度と直角 |
| 力の大きさ | \(F=eE\)(速さによらない) | \(F=evB\)(速さに比例) |
| 仕事 | する(エネルギーが変わる) | しない(速さは不変) |
| 軌道 | 放物線または直線 | 円(またはらせん) |
| 用途 | 加速・偏向 | 曲げる・閉じ込める |
磁界は電子のエネルギーを変えられない——これが最も重要な違いです。力が速度と直角なので、仕事=力×距離(進行方向成分)がゼロになります。
だから加速には電界、曲げるには磁界と使い分けます。サイクロトロンは、磁界で円を描かせながら、電界で加速する——両方を組み合わせた装置です。
深掘り③:フレミングの左手則で向きを決める
力の向きはフレミングの左手の法則で決まります。ただし電子は負電荷なので、電流の向きは電子の進む向きと逆です。
| 指 | 意味 | 電子の場合 |
| 中指 | 電流の向き | 電子の進む向きの【逆】 |
| 人差し指 | 磁界の向き | そのまま |
| 親指 | 力の向き | そのまま |
電子は負電荷なので、電流の向きが逆——ここを忘れると力の向きが180°ずれます。「電子が右へ進む=電流は左向き」と読み替えてから左手を当ててください。
本問は大きさだけを聞いているので、向きの判定は不要です。ただし「どちら回りか」を問う問題も出るので、左手則は使えるようにしておきましょう。
⏱️ 本番での進め方
❶ \(evB=\dfrac{mv^{2}}{r}\) の釣り合いを書く——これが出発点。
❷ \(r=\dfrac{mv}{Be}\)、\(T=\dfrac{2\pi m}{Be}\)——周期に \(v\) は入らない。
❸ (ウ)に \(v\) が残っている選択肢は誤り——即座に消せる。
❹ 磁界は仕事をしない——速さもエネルギーも変わらない。
💡 覚え方
「速い電子は大回りするから、1周の時間は同じ」——これがサイクロトロンの原理です。\(T=\dfrac{2\pi m}{Be}\) に \(v\) がないことを、この一文で覚えてください。
出題履歴:磁界中の円運動は定番テーマ
ローレンツ力による円運動は、電子理論の必修事項です。半径・周期・周波数のどれを問われても、\(evB=\dfrac{mv^{2}}{r}\) から出発すれば導けます。公式を丸暗記するより、この釣り合いの式を覚えるほうが確実です。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
あわせて解いておきたい記事:【理論】令和3年度A問題12(電界と磁界が両方ある空間での直進)
まとめ
| (ア) | 電磁力Bev |
| (イ) | 半径r=mv/(Be) |
| (ウ) | 周期T=2πm/(Be) |
| 答え | (2) |
▼あわせて解きたい関連問題
・磁界中の電子の円運動(電子の運動15):【理論】平成24年度 A問題12

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