今回は令和3年度 理論科目 A問題11を解説します。半導体の性質に関する5つの記述のうち、正しいものを選ぶ問題です。
拡散電流・ドリフト電流、単元素/化合物半導体、不純物と抵抗率、光や熱によるキャリヤの生成など、半導体の基本を押さえれば判別できます。
令和3年度 理論科目 A問題11:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和3年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題11
電験3種 理論科目 【電子理論(半導体等)】 令和3年度 A問題11
半導体に関する記述として、正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)ゲルマニウム(Ge)やインジウムリン(InP)は単元素の半導体であり、シリコン(Si)やガリウムヒ素(GaAs)は化合物半導体である。
(2)半導体内でキャリヤの濃度が一様でない場合、拡散電流の大きさはそのキャリヤの濃度勾配にほぼ比例する。
(3)真性半導体に不純物を加えるとキャリヤの濃度は変わるが、抵抗率は変化しない。
(4)真性半導体に光を当てたり熱を加えたりしても電子や正孔は発生しない。
(5)半導体に電界を加えると流れる電流はドリフト電流と呼ばれ、その大きさは電界の大きさに反比例する。
出題のポイント:半導体の基本を5つの角度から問う
正しいものを1つ選ぶ形式です。元素の分類、拡散電流、抵抗率、キャリヤの生成、ドリフト電流——半導体の基礎が5つ並んでいます。
正解は(2)の拡散電流です。「濃度が高いほうから低いほうへ、濃度の傾きに比例して流れる」——気体や液体の拡散とまったく同じ考え方です。
ドリフト電流は電界に押されて流れる電流、拡散電流は濃度差によって自然に広がる電流——半導体にはこの2種類しかありません。

解説:5つの選択肢を1つずつ検証する
| 選択肢 | 内容 | 判定 | 正しくは |
| (1) | GeとInPが単元素、SiとGaAsが化合物 | × | SiとGeが単元素、GaAsとInPが化合物(逆) |
| (2) | 拡散電流は濃度勾配に比例 | ◎ | 正しい |
| (3) | 不純物を加えても抵抗率は変化しない | × | キャリヤが増えるので抵抗率は大きく下がる |
| (4) | 真性半導体に光や熱を加えても電子や正孔は発生しない | × | 電子正孔対が発生する(光導電効果・熱励起) |
| (5) | ドリフト電流は電界に反比例 | × | 比例する |
(1)は「単元素」と「化合物」が完全に逆です。SiとGeは1種類の元素だけでできた半導体、GaAsとInPは2種類の元素が結合した化合物半導体です。
(3)が半導体の存在意義そのものを否定しています。不純物を加えて抵抗率を制御できるからこそ、半導体は役に立つ——変化しないなら使い道がありません。
(4)も明らかな誤りです。光を当てて電子正孔対を作るのが太陽電池やフォトダイオード——「発生しない」なら、これらの素子は成り立ちません。



誤答の正体:「比例」を「反比例」にすり替える
(5)は最も気づきにくい誤りかもしれません。用語(ドリフト電流)は正しいのに、比例関係だけ逆——読み飛ばすと正しく見えます。
| 電流の種類 | 駆動力 | 式 | 比例関係 |
| ドリフト電流 | 電界 | \(J=\sigma E=qn\mu E\) | \(E\) に【比例】 |
| 拡散電流 | 濃度勾配 | \(J=qD\dfrac{dn}{dx}\) | 濃度勾配に【比例】 |
ドリフト電流の式はオームの法則そのものです。\(J=\sigma E\)——電界が強いほど電流が大きいのは当然です。
拡散電流の式は「フィックの法則」と呼ばれます。\(D\) は拡散係数で、キャリヤの動きやすさを表します。
⚠️ よくある間違い
選択肢の文で「比例」「反比例」を必ず確認してください。用語が正しくても、比例関係が逆なら誤り——電験の正誤問題でよく使われる手口です。
☝️ ひっかけの作り方:「単元素半導体」と「化合物半導体」の区別は、元素記号を見れば一目瞭然です。Si、Geは1文字(1種類)、GaAs、InPは2つの元素記号——見た目で判断できます。
深掘り①:ドリフト電流と拡散電流
半導体を流れる電流は、この2つしかありません。どちらも重要で、pn接合の動作はこの2つのせめぎ合いで説明されます。
| ドリフト電流 | 拡散電流 | |
| 原因 | 電界による力 | 濃度の偏り |
| 金属でも起きるか | 起きる(普通の電流) | ほぼ起きない |
| 向き | 電界の向き(正孔)/逆(電子) | 濃い→薄い |
| 関わる係数 | 移動度 \(\mu\) | 拡散係数 \(D\) |
移動度 \(\mu\) と拡散係数 \(D\) は無関係ではありません。アインシュタインの関係式 \(D/\mu=kT/q\) で結ばれています——どちらもキャリヤの動きやすさを表しているからです。
pn接合では、この2つがちょうど釣り合って平衡しています。拡散でキャリヤが移動しようとし、それによってできた電界がドリフトで引き戻す——その結果、空乏層ができます。
深掘り②:単元素半導体と化合物半導体
半導体材料は、1種類の元素からなるものと、複数の元素が結合したものに分かれます。
| 分類 | 材料 | 特徴 | 用途 |
| 単元素 | Si(シリコン) | 安価・技術が成熟 | IC・パワー半導体の主流 |
| 単元素 | Ge(ゲルマニウム) | 初期の半導体・低電圧で動く | 現在は限定的 |
| 化合物 | GaAs(ガリウムヒ素) | 電子移動度が大きい・高速 | 高周波・LED |
| 化合物 | InP(インジウムリン) | 光通信の波長に適する | レーザ・受光素子 |
| 化合物 | SiC・GaN | バンドギャップが広い・高耐圧 | 次世代パワー半導体 |
化合物半導体は13族と15族の組合せが多いです。GaAs(13族+15族)、InP(13族+15族)——平均すると4価になり、Siと似た結晶構造をとります。
SiCやGaNは「ワイドバンドギャップ半導体」と呼ばれ、高電圧・高温に強いのが特徴です。電気自動車のインバータや電力変換で急速に普及しています——機械科目でも登場します。
深掘り③:真性半導体と不純物半導体
選択肢(3)(4)は真性半導体の性質を問うています。不純物半導体との違いを整理しておきましょう。
| 真性半導体 | 不純物半導体 | |
| 組成 | 純粋なSiやGe | 微量の不純物を加えたもの |
| キャリヤ | 電子と正孔が同数 | どちらかが圧倒的に多い |
| キャリヤ濃度 | 低い(熱励起のみ) | 高い |
| 抵抗率 | 高い | 低い(制御できる) |
| 温度依存性 | 強い(温度で急変) | 比較的弱い |
真性半導体でも、熱や光でキャリヤは発生します。常温でも熱エネルギーで共有結合が切れ、電子正孔対ができる——だから完全な絶縁体ではありません。
この性質を利用したのが光導電素子(CdSセルなど)です。光が当たると抵抗が下がる——街灯の自動点灯やカメラの露出計に使われてきました。
温度が上がると半導体の抵抗は下がります——金属とは逆です。熱でキャリヤが増えるからで、サーミスタはこの性質を利用しています。
⏱️ 本番での進め方
❶ 「比例」「反比例」を必ず確認——用語が正しくても関係が逆なら誤り。
❷ Si・Geが単元素、GaAs・InPが化合物——元素記号の数で判断。
❸ 不純物を加えれば抵抗率は変わる——変わらなければ半導体の意味がない。
❹ 真性半導体でも光・熱でキャリヤが発生——太陽電池の原理。
💡 覚え方
「ドリフトは電界に、拡散は濃度勾配に、どちらも比例」——比例でない選択肢は誤りです。この一言で(5)が消えます。
出題履歴:半導体の正誤問題は毎年出る
「正しいものを1つ選べ」形式の半導体問題は、頻出中の頻出です。用語の意味だけでなく、比例関係や大小関係まで正確に——細部を問う出題が多いので、教科書的な理解が必要です。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
あわせて解いておきたい記事:【理論】平成25年度A問題11(n形半導体とドナー)/【理論】平成20年度A問題11(太陽電池)
まとめ
| 拡散電流 | 濃度勾配に比例((2)正) |
| ドリフト電流 | 電界に比例 |
| 単元素/化合物 | Si・Ge/GaAs・InP |
| 答え | (2) |
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