今回は平成25年度 理論科目 B問題15を解説します。周波数50Hz・電圧200Vの対称三相電源に、L=7.96mHのコイルと6Ωの抵抗からなるY接続平衡三相負荷を接続した回路で、(a)三相負荷が消費する有効電力Pと、(b)Δ接続コンデンサで力率を1にするコンデンサCの容量を求めるB問題です。
(a)は1相分のY等価回路でZ=R+jωLを求め、P=3I²R。(b)は負荷の遅れ無効電力Q_Lと、Δ接続コンデンサの進み無効電力Q_C=3V_line²ωCを等しくして力率1にします。
平成25年度 理論科目 B問題15:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成25年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 B問題15
電験3種 理論科目 【電気回路(三相交流)】 平成25年度 B問題15
図1のように、周波数50Hz、電圧200Vの対称三相交流電源に、インダクタンス7.96mHのコイルと6Ωの抵抗からなる平衡三相負荷を接続した交流回路がある。次の(a)及び(b)の問に答えよ。
(a)図1において、三相負荷が消費する有効電力Pの値〔W〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)1 890 (2)3 280 (3)4 020 (4)5 680 (5)9 840〔W〕
(b)図2のように、静電容量C〔F〕のコンデンサをΔ結線し、その端子a′、b′及びc′をそれぞれ図1の端子a、b及びcに接続した。その結果、三相交流電源からみた負荷の力率が1になった。静電容量C〔F〕の値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)6.28×10⁻⁵ (2)8.88×10⁻⁵ (3)1.08×10⁻⁴ (4)1.26×10⁻⁴ (5)1.88×10⁻⁴

出題のポイント:インダクタンスをリアクタンスに直すところから
与えられているのはインダクタンス \(L=7.96\ \mathrm{mH}\)です。これはリアクタンスではありません——周波数を使って \(X_L=2\pi fL\) に直すのが最初の一歩です。
\(7.96\ \mathrm{mH}\) という半端な値には意味があります。\(2\pi\times50\times7.96\times10^{-3}=2.5\ \Omega\)——きれいな2.5 Ωになるよう逆算された値です。
\(6+j2.5\) は \(12:5:13\) の直角三角形です。\(|\dot Z|=\sqrt{36+6.25}=\sqrt{42.25}=6.5\)——3:4:5 に次いでよく使われるピタゴラス数です。

(a) の解説:Y結線として1相分を計算して3倍
\(12:5:13\)
❹では抵抗6 Ωだけを使います。コイルは有効電力を消費しないので、\(|\dot Z|\) ではなく \(R\) を掛ける——ここを間違えると大きくずれます。
別式でも確かめられます。力率は \(6/6.5=0.923\) なので、\(P=\sqrt3\times200\times17.76\times0.923\fallingdotseq5680\ \mathrm{W}\)——一致します。

(b) の解説:コイルの無効電力を打ち消す
線間電圧200 V
\(=62.8\ \mu\mathrm{F}\)
コンデンサはΔ結線(図2)です。各コンデンサに線間電圧200 Vがまるごとかかるので、\(V_l\) を使います。Y結線なら3倍の容量が必要です。
有効電力5680 Wは、コンデンサを入れても変わりません。コンデンサは無効電力しか出さないためで、変わるのは電流と力率だけです。


誤答の正体:\(|\dot Z|\) と \(R\) の取り違え
(a) の誤答は、どこで \(|\dot Z|\) を使ってしまうかで分かれます。
| 計算のしかた | 値〔W〕 | 選択肢 | 判定 |
| \(3I^{2}R=3\times315.6\times6\) | 5680 | (4) | ◎ 正解 |
| \(3I^{2}|\dot Z|=3\times315.6\times6.5\) | 6154 | — | × |
| \(\sqrt3V_lI\)(力率を掛け忘れ) | 6153 | — | × |
| 相電圧を線間と誤る | 17040 | — | × |
選択肢(5)9840は、相電圧の扱いを誤った場合の受け皿です。(1)1890や(2)3280も、途中でリアクタンスの計算を誤ると出てくる値になります。
(3)4020は \(2/3\) 倍に近い値——3相分にするのを2相分にしてしまったようなミスの受け皿でしょう。
⚠️ よくある間違い
有効電力は必ず抵抗成分で計算します。\(P=3I^{2}R\) の \(R\) は「抵抗」であって「インピーダンス」ではありません。\(P=\sqrt3V_lI\cos\phi\) の \(\cos\phi\) を掛け忘れるのも同じ誤りです。
☝️ ひっかけの作り方:\(7.96\ \mathrm{mH}\) をそのままリアクタンスとして使わないでください。単位がH(ヘンリー)ならインダクタンス、Ω(オーム)ならリアクタンス——単位を見れば区別できます。
深掘り①:\(7.96\ \mathrm{mH}\) という数字の意味
試験問題の素子値は、計算結果がきれいになるよう逆算されています。本問の \(7.96\ \mathrm{mH}\) もその一例です。
\(=7.96\ \mathrm{mH}\)
| よく出る値 | 50 Hzでの \(X_L\) | 備考 |
| \(3.18\ \mathrm{mH}\) | 1 Ω | \(1/\pi\ \mathrm{mH}\) 相当 |
| \(7.96\ \mathrm{mH}\) | 2.5 Ω | 本問 |
| \(12.7\ \mathrm{mH}\) | 4 Ω | 3:4:5 用 |
| \(25.5\ \mathrm{mH}\) | 8 Ω | 6:8:10 用 |
半端な数値を見たら「きれいなリアクタンスになるはず」と予想してください。計算結果が \(2.4987\ldots\) のようになったら、\(2.5\) と読んでよい——作問者の意図です。
深掘り②:力率改善前後を比べる
コンデンサを入れる前後で、何がどう変わるかを数字で確認しておきましょう。
| 改善前 | 改善後(力率1) | |
| 有効電力 \(P\) | 5680 W | 5680 W(不変) |
| 無効電力 \(Q\) | 2367 var | 0 var |
| 皮相電力 \(S\) | 6154 V·A | 5680 V·A |
| 力率 | 0.923 | 1.000 |
| 線電流 | 17.76 A | 16.40 A |
もともとの力率が0.923と高いので、改善の効果は控えめです。電流の減少は約8 %——力率0.6の負荷なら4割減ったことと比べると差があります。
力率が良いほど、改善の余地は小さい——これは当然のことです。実務でも、力率が0.95以上ならコンデンサの追加投資は見合わないことが多くなります。
深掘り③:12:5:13 も覚えておく
3:4:5 に次いでよく使われるのが 5:12:13 です。本問の \(6:2.5:6.5\) は \(12:5:13\) の \(0.5\) 倍になっています。
| \(R\) | \(X\) | \(|\dot Z|\) | 力率 | 備考 |
| 3 | 4 | 5 | 0.600 | 最頻出 |
| 4 | 3 | 5 | 0.800 | 最頻出 |
| 12 | 5 | 13 | 0.923 | 本問 |
| 5 | 12 | 13 | 0.385 | 低力率の例 |
| 8 | 15 | 17 | 0.471 | たまに出る |
\(\sqrt{42.25}\) を筆算する必要はありません。\(6\) と \(2.5\) の比が \(12:5\) だと気づけば、\(|\dot Z|=6.5\)——数秒で出ます。
ピタゴラス数を覚えておくと、電験の交流計算は劇的に速くなります。\((3,4,5)\)、\((5,12,13)\)、\((8,15,17)\)、\((7,24,25)\)——上の2つは必修です。
⏱️ 本番での進め方
❶ \(L\)〔H〕を見たら \(X_L=2\pi fL\) に直す——単位で判別。
❷ 有効電力は \(R\)、無効電力は \(X\)——\(|\dot Z|\) を掛けない。
❸ \(6:2.5:6.5\) は \(12:5:13\)——ピタゴラス数を覚える。
❹ Δコンデンサは線間電圧——Y結線なら3倍の容量。
💡 覚え方
「有効電力は抵抗、無効電力はリアクタンス」——電力の三角形とインピーダンスの三角形は相似です。\(P:Q:S=R:X:|\dot Z|\)——どちらか一方を描けば、もう一方も分かります。
出題履歴:力率改善の計算は必修
「インダクタンスをリアクタンスに直す → 電力を求める → コンデンサで打ち消す」——この3段階は三相交流B問題の王道です。数値が変わっても手順は同じなので、型として体に入れておきましょう。
この分野はほぼ毎年どこかで出題されます。手を動かして解ける状態にしておけば、本番で確実に得点できます。
あわせて解いておきたい記事:【理論】平成19年度B問題15(電力の三角形から電流とコンデンサ)
まとめ
| ωL | 314×7.96m≒2.5Ω |
| |Z| | √(6²+2.5²)=6.5Ω |
| (a)P | 3×17.8²×6≒5680W …(4) |
| (b)C | Q_C=Q_L→C≒6.28×10⁻⁵F …(1) |
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