今回は平成30年度 理論科目 A問題10を解説します。1F・初期電荷0のコンデンサを、起電力10V・内部抵抗0.5Ωの直流電源で充電するときの充電電流の時定数を求める問題です。
充電回路の時定数はτ=RC。ここでRは電源の内部抵抗0.5Ωです。起電力の値は時定数に関係しません。
平成30年度 理論科目 A問題10:問題文と選択肢
式は τ=RC の一行。それでも間違えるのは、与えられた4つの数値のうち使うのが2つだけだからです。「使わない数値がある」と見抜けるかが分かれ目になります。まずは問題文を確認しましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成30年度 第三種電気主任技術者試験」理論科目 A問題10
電験3種 理論科目 【電気回路(過渡現象)】 平成30年度 A問題10
静電容量が1Fで初期電荷が0Cのコンデンサがある。起電力が10Vで内部抵抗が0.5Ωの直流電源を接続してこのコンデンサを充電するとき、充電電流の時定数の値〔s〕として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)0.5 (2)1 (3)2 (4)5 (5)10〔s〕
出題のポイント:時定数に「電源の電圧」は入らない
この問題は式が \(\tau=RC\) の一行で終わります。にもかかわらず正答率が上がらないのは、問題文に与えられた4つの数値のうち、時定数に使うのは2つだけだからです。
| 与えられた値 | 時定数に使うか | 何を決める値か |
| 内部抵抗 0.5 Ω | 使う | 充電の速さ |
| 静電容量 1 F | 使う | 充電の速さ |
| 起電力 10 V | 使わない | 波形の高さ(最終電圧) |
| 初期電荷 0 C | 使わない | 波形の出発点 |
速さと高さは別の話——これが過渡現象の第一原則です。電源を10 Vから100 Vに変えても、コンデンサが最終値の63 %に達するまでの時間は0.5秒のまま変わりません。曲線が縦に10倍引き伸ばされるだけで、横軸(時間)の目盛りは動かないのです。
この性質は、回路が線形であることから来ています。入力を2倍にすれば出力も2倍——形は相似のまま。だから時間の尺度である時定数は入力に依存しません。

なぜ「抵抗×静電容量」が秒になるのか
τ=RCという式を初めて見ると「なぜ抵抗と容量を掛けたら時間になるのか」と引っかかります。単位を分解すると納得できます。
オームの法則 \(R=V/I\)、容量の定義 \(C=Q/V\)
Vが約分で消え、秒だけが残る
意味も見えてきます。τ=RCは「蓄えるべき電荷の量」÷「流せる電流の勢い」です。容量が大きいほど詰めるべき電荷が多くて時間がかかり、抵抗が大きいほど電流が細くて時間がかかる——式の形がそのまま物理を語っています。
問題の解説:数値を入れるだけ、ただし単位を確認する
STEP1 コンデンサから見た抵抗を確認する
回路は「起電力10 V+内部抵抗0.5 Ω」の電源にコンデンサを直結した形です。外付けの抵抗はありませんが、内部抵抗0.5 Ωが充電経路にそのまま入っています。理想電源(内部抵抗0)なら瞬時に充電されてしまい、時定数は0になります。
STEP2 時定数を計算する
F(ファラド)はSI基本単位なので換算不要
STEP3 値の妥当性を確かめる
空のコンデンサは短絡と同じ
最終値10 Vの63.2 %
初期値の36.8 %



誤答の正体:4つとも「起電力を混ぜた」か「割ってしまった」
残り4つの選択肢を逆算すると、すべてが与えられた数値の別の組合せとしてぴったり再現できました。偶然の数字は一つもありません。
| 選択肢 | τ [s] | その値が出る計算 | 誤りの種類 | 判定 |
| (1) | 0.5 | \(R\times C=0.5\times1\) | 正解 | ○ |
| (2) | 1 | \(C=1\) をそのまま書いた | 抵抗を掛け忘れ | × |
| (3) | 2 | \(C\div R=1\div0.5\) | 掛け算と割り算の取り違え | × |
| (4) | 5 | \(E\times R=10\times0.5\) | 無関係な起電力を使った | × |
| (5) | 10 | \(E\times C=10\times1\) または \(E\) そのまま | 無関係な起電力を使った | × |
(4)と(5)は「10 Vという目立つ数字を使わないと落ち着かない」という心理を突いています。問題文に出てくる数値を全部使う必要はありません——むしろ「使わない数値がある」と気づくことが解答の一部です。
(3)は単位で見破れます。\(C\div R\) の単位は \([\mathrm{F}/\Omega]=[\mathrm{s}/\Omega^2]\) となり秒になりません。迷ったら単位を書いてみる——それだけで掛けるか割るかが確定します。
1 F・0.5 Ωという値をどう受け止めるか
実は本問の数値はかなり極端です。1 Fという容量は、一般的な電子回路で使う0.1 μF(=\(10^{-7}\) F)の1000万倍。これは電気二重層キャパシタ(スーパーキャパシタ)の領域で、瞬間的な電力補償や停電時のバックアップに使われる部品です。
そして投入直後の電流は20 A。空のコンデンサは短絡と同じなので、電源の内部抵抗だけが電流を制限します。実際の設計では、この突入電流(インラッシュカレント)が電源や配線を壊さないよう、直列に抵抗を入れたりソフトスタート回路を設けたりします。
充電完了後にコンデンサが蓄えるエネルギーは \(\frac12CE^2=\frac12\times1\times10^2=50\;\mathrm{J}\)。そして同じ50 Jが内部抵抗で熱になっています(これはRの値によらない普遍的な性質で、令和元年度A問題10のテーマでもあります)。効率50 %——コンデンサを抵抗経由で充電する限り避けられない損失です。
時定数の「読み方」:何秒待てば終わるのか
時定数が分かると、「いつ終わるか」が即座に言えます。指数関数は理論上いつまでも終わりませんが、実用上の目安があります。
| 経過時間 | 最終値に対する到達率 | 初期値からの残り | 覚え方 |
| t=τ | 63.2 % | 36.8 % | 「約63 %」が時定数の定義 |
| t=2τ | 86.5 % | 13.5 % | 残りがさらに36.8 %に |
| t=3τ | 95.0 % | 5.0 % | 実用上ほぼ到達 |
| t=5τ | 99.3 % | 0.7 % | 「5τで定常」が実務の目安 |
本問ならτ=0.5秒、5τ=2.5秒で充電完了と判断できます。この「5τで定常」は電験の他の問題でも頻繁に問われるので、表ごと覚える価値があります。
本番で使える時間短縮テクニック
⏱️ 本番での進め方
① 時定数を聞かれたら「起電力・初期電荷は無視」と即断する
② Rはコンデンサから見た抵抗。内部抵抗も忘れずに数える
③ 迷ったら単位を書く。\([\Omega]\times[\mathrm{F}]=[\mathrm{s}]\) で掛け算だと確定
④ 検算は初期電流 \(E/R\) を出してみる。桁が異常なら読み違えている
⑤ 5τで定常——「何秒で充電完了か」を聞く出題にもそのまま使える
💡 覚え方
「速さはRC、高さはE」。時定数の式に電圧は絶対に入りません。逆に、最終電圧を聞かれたらRとCは関係ありません。聞かれているのが「速さ」か「高さ」かを最初に判定してください。
⚠️ よくある間違い
最も多いのは起電力10 Vを式に入れてしまうミスで、選択肢(4)(5)がそれを待ち構えています。次に\(C/R\) と割ってしまうミス(選択肢(3))。また「内部抵抗だから無視してよい」と考えるのも誤りで、本問では内部抵抗こそが唯一の抵抗です。
まとめ
| 時定数 | τ=RC |
| R | 内部抵抗0.5Ω |
| C | 1F |
| 答え | τ=0.5s …(1) |
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