今回は平成20年度 機械科目 B問題17を解説します。調節計の演算回路に用いられるフィードバックブロック線図とその内部のCR回路について、周波数伝達関数G1(jω)を求める(a)と、ゲインKが非常に大きいときの近似式(比例プラス積分要素)を求める(b)の問題です。★自動制御11(令和5年度下期B問題18)はこの問題と図・問題文・選択肢・正解が全く同一で、本問(平成20年度)が出題年度としては古く、自動制御11はその再出題にあたります。
解法は自動制御11と全く同じです。CR回路の分圧計算でG1(jω)=jωCR/(1+jωCR)を導き、G(jω)=K/(1+K・G1(jω))にKが非常に大きいという条件(1/K≈0)を適用して整理します。
ほぼ同じ問題が 【機械】令和5年度下期B問題18 でも出題されています。出題パターンが固定なので、セットで解けば確実な得点源になります。
平成20年度 機械科目 B問題17:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 B問題17
電験3種 機械科目 【自動制御】 平成20年度 B問題17
図1は,調節計の演算回路などによく用いられるブロック線図を示す。次の(a)及び(b)に答えよ。
(a)図2は,図1のブロックG1(jω)の詳細を示し,静電容量C[F]と抵抗R[Ω]からなる回路を示す。この回路の入力量V1(jω)に対する出力量V2(jω)の周波数伝達関数G1(jω)=V2(jω)/V1(jω)を表す式として,正しいのは次のうちどれか。
(1)1/(CR+jω) (2)1/(1+jωCR) (3)CR/(CR+jω) (4)CR/(1+jωCR) (5)jωCR/(1+jωCR)
(b)図1のブロック線図において,閉ループ周波数伝達関数G(jω)=X(jω)/Y(jω)で,ゲインKが非常に大きな場合の近似式として,正しいのは次のうちどれか。なお,この近似式が成立する場合,この演算回路は比例プラス積分要素と呼ばれる。
(1)1+jωCR (2)1+CR/jω (3)1+1/(jωCR) (4)1/(1+jωCR) (5)(1+CR)/(jωCR)

出題のポイント:(a)はハイパスフィルタ
図2の回路は、キャパシタが直列・抵抗が出力側——これまで見てきたRC回路とは逆の配置です。だから性質も逆になります。
出力は抵抗の両端
★分子に jωCR が現れる
| 出力がキャパシタ(前問まで) | 出力が抵抗(本問) | |
| 伝達関数 | \( \dfrac{1}{1+j\omega CR} \) | \( \dfrac{j\omega CR}{1+j\omega CR} \) |
| 直流(ω→0) | 1(通す) | ★0(通さない) |
| 高周波(ω→∞) | 0(通さない) | ★1(通す) |
| 呼び方 | 一次遅れ/ローパス | 微分要素/ハイパス |
直流ではキャパシタが開放になるので、抵抗には電圧が現れません——だからω→0 でゲイン0。選択肢(2)や(4)は直流で1 になってしまうので誤りです。
分子に jω があるかどうか——それがハイパスの目印です。「直流を通すか通さないか」で選択肢を半分に絞れます。


(b) ゲインが非常に大きいときの近似
K が非常に大きいとき、閉ループ伝達関数は帰還要素の逆数に近づく——制御工学で最も重要な近似のひとつです。
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★比例項1 + 積分項
「1」が比例動作、「1/(jωCR)」が積分動作——これが問題文の「比例プラス積分要素」の意味です。PI制御器がこの回路で実現できることになります。

⚠️ よくある間違い
(1) 1+jωCRは比例プラス微分——jω が分子にあるので微分です。問題文が「比例プラス積分」と明言しているので、jω は分母になければなりません。
逆数を取り忘れて G1 のままにすると(4)や(5)に着地します。K→∞ の近似は「帰還要素の逆数」——逆数であることを忘れないでください。
なぜ高ゲインだと帰還要素で決まるのか
この性質は、制御にも増幅回路にも共通する重要な考え方です。意味を押さえておくと応用が利きます。
| K の値 | 1/K | G の近似 | 前向き要素の影響 |
| 10 | 0.1 | やや影響あり | 残る |
| 1000 | 0.001 | ほぼ 1/G1 | ★ほとんど消える |
前向き要素の特性がばらついても、K さえ十分大きければ出力は変わらない——これがフィードバックの最大の価値です。
オペアンプの増幅回路もまったく同じ。オペアンプ自体の増幅度は個体差が大きく温度でも変わる——それでも増幅度が抵抗比だけで決まるのは、この近似が成り立っているからです。
だから「精度が必要な部分は帰還側に置く」のが設計の定石になります。本問なら CR という受動素子だけで PI 特性が決まる——安定で正確な演算回路になるわけです。
⏱️ 本番での進め方
①(a) 出力が抵抗ならハイパス。分子に jωCR。
② 直流で0 になるか確認すれば半分に絞れる。
③(b) K→∞ なら G≒1/G1。★逆数を取る。
④ (1+jωCR)/(jωCR)=1+1/(jωCR)。jω が分母=積分。
💡 覚え方
「高ゲインなら帰還要素の逆数」——オペアンプ回路と同じ原理。そして「jω が分子なら微分、分母なら積分」——これで比例プラス積分だと確認できます。
本問は令和5年度下期 B問題18と図・問題文・選択肢・正解がすべて同一です(自動制御:調節計の比例プラス積分要素)。15年ぶりの完全再出題でした。

微分要素と積分要素の見分け方
本問では jω が分子か分母かで、微分か積分かが決まりました。この対応は制御工学の基本です。
| 要素 | 伝達関数 | ボード線図の傾き | 位相 |
| 微分 | \( j\omega T \) | +20 dB/dec | +90°(進み) |
| 比例 | \( K \) | 0(水平) | 0° |
| 積分 | \( \dfrac{1}{j\omega T} \) | −20 dB/dec | −90°(遅れ) |
jω を掛けるのが微分、割るのが積分——時間領域の d/dt が周波数領域では jω になるからです。積分はその逆なので 1/(jω) になります。
本問の答え 1+1/(jωCR) は、比例項「1」と積分項「1/(jωCR)」の和——まさにPI制御器の伝達関数です。
PI制御器のボード線図
1+1/(jωT) のボード線図は、低周波で積分特性、高周波で比例特性という形になります。
| 角周波数 | 支配的な項 | ゲイン |
| ω ≪ 1/T | 積分項 | ★−20 dB/dec で右下がり |
| ω = 1/T | 同じ大きさ | 折れ点 |
| ω ≫ 1/T | 比例項 | 0 dB で水平 |
低周波でゲインが無限大に近づく——これが定常偏差を0 にする理由です。直流(ω=0)でのゲインが無限大なら、どんな小さな偏差も増幅されて操作量になる——偏差が残る余地がないのです。
高周波では単なる比例動作——速い変化に対しては素直に応答する。「定常はしっかり、過渡は素直に」という、よくできた組合せだと言えます。
まとめ
| G1(jω) | jωCR/(1+jωCR) |
| G(jω)(Kが大のとき近似) | 1+1/(jωCR) |
| 答え | (a)-(5),(b)-(3) |
▼あわせて解きたい関連問題
・調節計のブロック線図とCR回路(令和5年度下期の再出題):【機械】令和5年度下期B問題18
・進み-遅れ補償回路の時定数を求める:【機械】平成19年度B問題17

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