自動制御12【電験3種 機械】調節計のブロック線図とCR回路(比例プラス積分要素)!平成20年度 B問題17 完全解説

電験3種 機械科目 自動制御 平成20年度 B問題17 比例プラス積分の正体!CR回路で実現する

今回は平成20年度 機械科目 B問題17を解説します。調節計の演算回路に用いられるフィードバックブロック線図とその内部のCR回路について、周波数伝達関数G1(jω)を求める(a)と、ゲインKが非常に大きいときの近似式(比例プラス積分要素)を求める(b)の問題です。★自動制御11(令和5年度下期B問題18)はこの問題と図・問題文・選択肢・正解が全く同一で、本問(平成20年度)が出題年度としては古く、自動制御11はその再出題にあたります。

解法は自動制御11と全く同じです。CR回路の分圧計算でG1(jω)=jωCR/(1+jωCR)を導き、G(jω)=K/(1+K・G1(jω))にKが非常に大きいという条件(1/K≈0)を適用して整理します。

🔁 この問題は繰り返し出題されています
ほぼ同じ問題が 【機械】令和5年度下期B問題18 でも出題されています。出題パターンが固定なので、セットで解けば確実な得点源になります。
目次

平成20年度 機械科目 B問題17:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 機械科目 自動制御 平成20年度 B問題17 問題文
平成20年度 機械科目 B問題17 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 B問題17

電験3種 機械科目 【自動制御】 平成20年度 B問題17

 図1は,調節計の演算回路などによく用いられるブロック線図を示す。次の(a)及び(b)に答えよ。

(a)図2は,図1のブロックG1(jω)の詳細を示し,静電容量C[F]と抵抗R[Ω]からなる回路を示す。この回路の入力量V1(jω)に対する出力量V2(jω)の周波数伝達関数G1(jω)=V2(jω)/V1(jω)を表す式として,正しいのは次のうちどれか。

(1)1/(CR+jω) (2)1/(1+jωCR) (3)CR/(CR+jω) (4)CR/(1+jωCR) (5)jωCR/(1+jωCR)

(b)図1のブロック線図において,閉ループ周波数伝達関数G(jω)=X(jω)/Y(jω)で,ゲインKが非常に大きな場合の近似式として,正しいのは次のうちどれか。なお,この近似式が成立する場合,この演算回路は比例プラス積分要素と呼ばれる。

(1)1+jωCR (2)1+CR/jω (3)1+1/(jωCR) (4)1/(1+jωCR) (5)(1+CR)/(jωCR)

図1 調節計のブロック線図と図2 CR回路(自作図)
図1 調節計のブロック線図と図2 CR回路(自作図)

出題のポイント:(a)はハイパスフィルタ

図2の回路は、キャパシタが直列・抵抗が出力側——これまで見てきたRC回路とは逆の配置です。だから性質も逆になります

\( G_1(j\omega)=\dfrac{R}{R+\dfrac{1}{j\omega C}} \)
分圧の式
出力は抵抗の両端
\( \phantom{G_1(j\omega)}=\dfrac{j\omega CR}{1+j\omega CR} \)
分母分子に jωC を掛ける
★分子に jωCR が現れる
出力がキャパシタ(前問まで)出力が抵抗(本問)
伝達関数\( \dfrac{1}{1+j\omega CR} \)\( \dfrac{j\omega CR}{1+j\omega CR} \)
直流(ω→0)1(通す)★0(通さない)
高周波(ω→∞)0(通さない)★1(通す)
呼び方一次遅れ/ローパス微分要素/ハイパス

直流ではキャパシタが開放になるので、抵抗には電圧が現れません——だからω→0 でゲイン0選択肢(2)や(4)は直流で1 になってしまうので誤りです。

分子に jω があるかどうか——それがハイパスの目印です。「直流を通すか通さないか」で選択肢を半分に絞れます

答え(a)の正解は (5) jωCR/(1+jωCR)です。
図1 調節計のブロック線図と図2 CR回路(自作図)
図1 調節計のブロック線図と図2 CR回路(自作図)
コンデンサ直列・抵抗接地で出力を抵抗両端から取るCR回路と、K・G1の負帰還ブロック図
CR回路の接続と出力位置を確認してから分圧式を立てます。

(b) ゲインが非常に大きいときの近似

K が非常に大きいとき、閉ループ伝達関数は帰還要素の逆数に近づく——制御工学で最も重要な近似のひとつです。

高ゲインフィードバックの近似

\( G=\dfrac{K}{1+KG_1}=\dfrac{1}{\dfrac{1}{K}+G_1}\ \xrightarrow{K\to\infty}\ \dfrac{1}{G_1} \)

1/K が0 に近づくので、残るのは 1/G1——前向き要素の特性によらず、帰還要素だけで決まるようになります。

\( G\fallingdotseq\dfrac{1}{G_1}=\dfrac{1+j\omega CR}{j\omega CR} \)
逆数を取る
\( \phantom{G}=\dfrac{j\omega CR}{j\omega CR}+\dfrac{1}{j\omega CR} \)
項ごとに分ける
\( \phantom{G}=1+\dfrac{1}{j\omega CR} \)
整理
★比例項1 + 積分項

「1」が比例動作、「1/(jωCR)」が積分動作——これが問題文の「比例プラス積分要素」の意味です。PI制御器がこの回路で実現できることになります。

平成20年度機械B問題17でCR回路は選択肢5、閉ループの大ゲイン近似は選択肢3と示す図
(a)は(5)、(b)は(3)です。
答え(b)の正解は (3) 1+1/(jωCR)です。1/(jω) は積分を表す——周波数領域で jω を掛けるのが微分、割るのが積分だからです。

⚠️ よくある間違い
(1) 1+jωCR比例プラス微分——jω が分子にあるので微分です。問題文が「比例プラス積分」と明言しているので、jω は分母になければなりません
逆数を取り忘れて G1 のままにすると(4)や(5)に着地します。K→∞ の近似は「帰還要素の逆数」——逆数であることを忘れないでください

なぜ高ゲインだと帰還要素で決まるのか

この性質は、制御にも増幅回路にも共通する重要な考え方です。意味を押さえておくと応用が利きます

K の値1/KG の近似前向き要素の影響
100.1やや影響あり残る
10000.001ほぼ 1/G1★ほとんど消える

前向き要素の特性がばらついても、K さえ十分大きければ出力は変わらない——これがフィードバックの最大の価値です。

オペアンプの増幅回路もまったく同じオペアンプ自体の増幅度は個体差が大きく温度でも変わる——それでも増幅度が抵抗比だけで決まるのは、この近似が成り立っているからです。

だから「精度が必要な部分は帰還側に置く」のが設計の定石になります。本問なら CR という受動素子だけで PI 特性が決まる——安定で正確な演算回路になるわけです。

⏱️ 本番での進め方
①(a) 出力が抵抗ならハイパス。分子に jωCR。
② 直流で0 になるか確認すれば半分に絞れる。
③(b) K→∞ なら G≒1/G1。★逆数を取る。
④ (1+jωCR)/(jωCR)=1+1/(jωCR)。jω が分母=積分。

💡 覚え方
「高ゲインなら帰還要素の逆数」——オペアンプ回路と同じ原理そして「jω が分子なら微分、分母なら積分」——これで比例プラス積分だと確認できます

本問は令和5年度下期 B問題18と図・問題文・選択肢・正解がすべて同一です(自動制御:調節計の比例プラス積分要素)。15年ぶりの完全再出題でした。

G1=jωCR/(1+jωCR)を帰還に持つ閉ループをKが非常に大きい条件で1+1/(jωCR)へ近似する図
1/Kを零とみなすと、全体は比例要素と積分要素の和になります。

微分要素と積分要素の見分け方

本問では jω が分子か分母かで、微分か積分かが決まりましたこの対応は制御工学の基本です。

要素伝達関数ボード線図の傾き位相
微分\( j\omega T \)+20 dB/dec+90°(進み)
比例\( K \)0(水平)
積分\( \dfrac{1}{j\omega T} \)−20 dB/dec−90°(遅れ)

jω を掛けるのが微分、割るのが積分——時間領域の d/dt が周波数領域では jω になるからです。積分はその逆なので 1/(jω) になります。

本問の答え 1+1/(jωCR) は、比例項「1」と積分項「1/(jωCR)」の和——まさにPI制御器の伝達関数です。

PI制御器のボード線図

1+1/(jωT) のボード線図は、低周波で積分特性、高周波で比例特性という形になります。

角周波数支配的な項ゲイン
ω ≪ 1/T積分項★−20 dB/dec で右下がり
ω = 1/T同じ大きさ折れ点
ω ≫ 1/T比例項0 dB で水平

低周波でゲインが無限大に近づく——これが定常偏差を0 にする理由です。直流(ω=0)でのゲインが無限大なら、どんな小さな偏差も増幅されて操作量になる——偏差が残る余地がないのです。

高周波では単なる比例動作——速い変化に対しては素直に応答する「定常はしっかり、過渡は素直に」という、よくできた組合せだと言えます。

まとめ

G1(jω)jωCR/(1+jωCR)
G(jω)(Kが大のとき近似)1+1/(jωCR)
答え(a)-(5),(b)-(3)

▼あわせて解きたい関連問題
・調節計のブロック線図とCR回路(令和5年度下期の再出題):【機械】令和5年度下期B問題18
・進み-遅れ補償回路の時定数を求める:【機械】平成19年度B問題17

📚 次に解くべき関連問題
【機械】平成19年度B問題17(自動制御13)
【機械】平成22年度A問題13(自動制御15)
【機械】令和4年度上期B問題15(自動制御10)
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