今回は平成30年度 機械科目 A問題13を解説します。内側に単位フィードバックループ「1/(jωT2)」を持ち、外側に並列経路「T1/T2」が加わるブロック線図から、出力C(jω)と入力R(jω)の比を求める問題です。
まず内側のフィードバックループだけを閉ループ伝達関数の公式でまとめ、次に並列のフィードフォワード経路を足し合わせるという2段階の等価変換で解きます。
平成30年度 機械科目 A問題13:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成30年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題13
電験3種 機械科目 【自動制御】 平成30年度 A問題13
図のようなブロック線図で示す制御系がある。出力信号C(jω)の入力信号R(jω)に対する比,すなわちC(jω)/R(jω)を示す式として,正しいものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)(T1+jω)/(T2+jω)
(2)(T2+jω)/(T1+jω)
(3)jωT1/(1+jωT2)
(4)(1+jωT1)/(1+jωT2)
(5)(1+jω(T1/T2))/(1+jωT2)

出題のポイント:内側から順にまとめる
ブロック線図が入れ子になっているときは、内側のループから片づける——これが鉄則です。外側を先に見ようとすると混乱します。
分母分子に jωT2 を掛けた
1/(jωT2) を単位フィードバックで囲むと、1/(1+jωT2)——一次遅れ要素になります。積分要素を負帰還で囲むと一次遅れになる——制御工学ではよく出てくる形です。


外側の並列経路を足す
内側をまとめたら、外側は並列(フィードフォワード)経路です。並列は足し算——2つの経路を通った信号が合流するのですから当然です。
並列経路は加算点で合流する
分子の T2 が約分される

この伝達関数は何をする回路か
(1+jωT1)/(1+jωT2) という形は、T1 と T2 の大小で性質が変わります。
| T1 > T2 | T1 < T2 | |
| 名称 | 位相進み要素 | 位相遅れ要素 |
| 位相 | 進む | 遅れる |
| 高周波でのゲイン | T1/T2(>1) | T1/T2(<1) |
| 用途 | ★安定性の改善(位相余裕を増やす) | 定常特性の改善(低周波ゲインを稼ぐ) |
位相進み補償は、遅れて不安定になりがちな制御系に位相の余裕を与えます——微分動作に近い働き。位相遅れ補償は低周波のゲインを上げて定常偏差を減らします——積分動作に近い働きです。
ω→0 では両方とも1、ω→∞ では T1/T2——低周波と高周波で異なるゲインをもつのが特徴です。その間の周波数で位相が動く——そこを狙って制御系に組み込むわけです。
極限で検算する
選択肢を絞るには、ω→0 と ω→∞ の極限を見るのが速い方法です。計算しなくても答えが絞れることがあります。
| 選択肢 | ω→0 | 妥当か |
| (1) (T1+jω)/(T2+jω) | T1/T2 | — |
| (3) jωT1/(1+jωT2) | 0 | ★直流が通らないのはおかしい |
| (4)(正解) | 1 | 妥当 |
ω→0(直流)では、内側のループが 1/(1+0)=1——並列経路のほうは jωT2 の項があるので0。だから全体は1 になるはずです。
(3)は ω→0 で0 になってしまうので、この時点で誤りだと分かります。極限値を確かめる習慣をつけておくと、計算ミスにも気づけます。
⏱️ 本番での進め方
① 内側のループから片づける。1/(jωT2) の単位帰還は 1/(1+jωT2)。
② 外側は並列経路なので足し算。
③ 通分して整理すると (1+jωT1)/(1+jωT2)。
④ ω→0 で1 になるかを確認。ならない選択肢は落ちる。
💡 覚え方
「内側から順に、直列は掛け算・並列は足し算・帰還は G/(1+GH)」——この3つですべて解けます。そして「積分を単位帰還で囲むと一次遅れ」——覚えておくと計算が速くなる形です。

周波数伝達関数という考え方
本問の伝達関数には jω が現れます。これは「正弦波を入れたら、振幅と位相がどう変わるか」を表す量——周波数伝達関数と呼ばれます。
| 表し方 | 変数 | 意味 | 使う場面 |
| 伝達関数 G(s) | s(ラプラス変換) | 系の一般的な特性 | 過渡応答・安定判別 |
| 周波数伝達関数 G(jω) | jω | 正弦波に対する応答 | ★ボード線図・ベクトル軌跡 |
G(s) の s に jω を代入したものが G(jω)——別物ではありません。電験3種では jω の形で出題されることが多いので、複素数として扱えるのが利点です。
|G(jω)| が振幅比(ゲイン)、∠G(jω) が位相差——交流回路のインピーダンスとまったく同じ扱いです。理論科目で身につけた複素数の計算がそのまま使えるのは大きな強みになります。
本問の (1+jωT1)/(1+jωT2) も、分子と分母それぞれの大きさと偏角を求めれば、ゲインと位相が出ます——ω=0 で1(0 dB・0°)、ω→∞ で T1/T2。その間の変化が、この要素の働きを決めているのです。
ボード線図で見るとどうなるか
(1+jωT1)/(1+jωT2) のボード線図は、2つの折れ点をもつ形になります。
| 角周波数 | ゲイン | 何が起きているか |
| ω ≪ 1/T1, 1/T2 | 0 dB | 分子も分母も1 |
| 2つの折れ点の間 | ±20 dB/dec で変化 | 片方だけが効いている |
| ω ≫ 両方 | 20log(T1/T2) dB(一定) | 分子分母がともに jω に比例 |
低周波と高周波で異なる一定値をとり、その間で移り変わる——階段のような形になります。そして移り変わる区間で位相が動くのです。
T1>T2 なら高域のゲインが上がり、位相は進みます——位相進み補償。制御系の位相余裕を増やして安定化するのに使われます。
逆に T1<T2 なら高域のゲインが下がり、位相は遅れます——位相遅れ補償。低周波のゲインを相対的に上げて定常特性を改善する働きです。
まとめ
| 内側ループ | 1/(1+jωT2) |
| 並列経路加味後 | (1+jωT1)/(1+jωT2) |
| 答え | (4) |
▼あわせて解きたい関連問題
・フィードバック制御ブロック線図を等価変換:【機械】平成25年度A問題13
・T,K付きブロック線図から周波数伝達関数とボード線図を求める:【機械】平成27年度B問題17

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