同期機44【電験3種 機械】力率1から界磁電流を増やすと?平成18年 A問題4 完全解説

電験3種 機械科目 同期機 平成18年度 A問題4 界磁電流を増やしすぎると?力率はどう変わる?

今回は平成18年度 機械科目 A問題4を解説します。力率1で運転中の同期電動機の界磁電流だけを増やしたときの電機子電流と力率の変化を問う問題です。

力率1から界磁電流を増やす(過励磁)と、電機子電流は増加し、進み力率になります。V曲線の谷から右側へ移動するイメージです。

目次

問題文と選択肢

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成18年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題4

同期電動機が一定の負荷で、力率1の状態で運転されている。この状態から、負荷を一定に保って、界磁電流のみを増加させたとき、電機子電流の大きさと同期電動機の力率の変化に関する記述として、正しいのは次のうちどれか。

(1) 電機子電流は増加し、進み力率になる。

(2) 電機子電流は増加し、遅れ力率になる。

(3) 電機子電流は減少し、力率は変化しない。

(4) 電機子電流は減少し、進み力率になる。

(5) 電機子電流は変化せず、遅れ力率になる。

出題のポイント:V曲線の谷から右へ動く

「力率1で運転中」=V曲線の谷の底にいるということです。そこから界磁電流を増やせば、右(過励磁側)へ動きます——それだけの問題です。

V曲線の3つの位置

左=不足励磁(遅れ電流) 谷の底=力率1・電流最小 右=過励磁(進み電流)

谷の底が電流の最小点——そこから左右どちらへ動いても電流は増えます

操作V曲線上の動き電機子電流力率
界磁電流を増やす右へ(過励磁)増加進み
そのまま(力率1)谷の底最小1.0
界磁電流を減らす左へ(不足励磁)増加遅れ

「どちらへ動いても電流は増える」のが谷の底の特徴です。だから「電流は減少する」と書いてある(3)(4)は、その時点で消せます

同期電動機のV曲線で力率1の谷から過励磁の進み力率領域へ移動する図
界磁電流を増やすとV曲線の右側へ移り、電機子電流は増加して進み力率になります。

なぜ過励磁で進み力率になるのか

ベクトルで考えると、はっきりします。同期電動機では、端子電圧 V と内部起電力 E0 の差が同期リアクタンスに加わり、そこに電機子電流が流れます

同期電動機の電圧の関係

\( \dot{V}=\dot{E_0}+jx_s\dot{I} \;\Rightarrow\; \dot{I}=\dfrac{\dot{V}-\dot{E_0}}{jx_s} \)

電流は「V と E0 の差」で決まる——界磁を変えると E0 の大きさが変わり、電流の向きが変わります

負荷が一定なら、出力も一定です。同期電動機の出力は P=VE0sinδ/xs ですから、E0 を大きくすると負荷角 δ は小さくなります——E0sinδ が一定に保たれるのです。

界磁電流E0 の大きさ負荷角 δ電機子電流の無効分力率
少ない小さい大きい遅れ側遅れ
ちょうどほどほど中くらいゼロ1.0
多い大きい小さい進み側進み

有効分(トルクを作る成分)は出力が同じなら変わりません。変わるのは無効分だけ——過励磁では進み側の無効分が加わるので、合計の電流は大きくなります

直感的には「励磁が強すぎて、余った磁力が無効電力として外へ出ていく」と考えるとよいでしょう。系統から見れば、この電動機はコンデンサのように振る舞っています

答え電機子電流は増加し、進み力率になる ⇒ (1)
一定負荷の同期電動機で有効電流と進み無効電流を合成し電機子電流増加を示す図
有効電流成分がほぼ一定でも、進み無効電流成分が加わるため全電流は増加します。
平成18年機械A問題4で過励磁時の電機子電流増加と進み力率および正解1を示す図
界磁電流増加により電機子電流は増加し、進み力率となるため正解は(1)です。

選択肢を2段階で絞る

段階根拠消える選択肢
① 電流は増える谷の底からどちらへ動いても電流は増える(3)(4)(5)が消える
② 過励磁は進み「過剰はコンデンサ」(2)が消えて(1)に確定

1つ目の判定だけで3つ消せます。「力率1は電流が最小の点」という一言を知っていれば、力率の向きが分からなくても2択まで絞れるということです。

(5)の「電機子電流は変化せず」も物理的にあり得ません。界磁を変えれば必ず電機子電流の無効分が変わる——変化しないのは有効分だけです。

この性質が実務で使われる場面

同期電動機を過励磁で運転すると、進み無効電力を系統に供給できます。工場の遅れ力率を打ち消す働き——実質的にコンデンサの代わりになります。

電力用コンデンサ過励磁の同期電動機
調整段階的(入/切)連続的(界磁電流で)
進み・遅れ進みだけどちらも出せる
本業なし(無効電力専用)機械を回す仕事もしている
損失・保守少ない回転機なので必要

「仕事をしながら力率も改善する」——これが同期電動機の隠れた長所です。大形のコンプレッサやポンプに同期電動機を使えば、その工場の力率改善も同時にできることになります。

誘導電動機ではこれができません。誘導機は常に遅れ力率で、系統から無効電力をもらう側——力率を悪化させる要因です。「同期機は力率を選べる」という違いが、ここでも効いてきます。

⏱️ 本番での進め方
力率1=V曲線の谷=電流最小。どちらへ動いても電流は増える。
過励磁=進み(過剰はコンデンサ)、不足励磁=遅れ(不足はリアクトル)
負荷一定なら有効分は変わらない。変わるのは無効分だけ。
①だけで3肢消せる——力率の向きが不安でも2択に絞れる。

💡 覚え方
「力率1から界磁↑(過励磁)→ 進み力率・電機子電流↑。界磁↓(不足励磁)→ 遅れ力率・電機子電流↑」谷の底が電流最小なのでどちらへ動いても電流は増える負荷一定なら E0sinδ が一定で、界磁を強めると δ が小さくなり無効分が進み側へ

⚠️ よくある間違い
過励磁で「遅れ」にしてしまうのが典型です。「過剰はコンデンサ=進み」と結びつけてください。もう一つは「電流は減少する」と考えること——力率1がすでに電流最小の点なので、そこから減ることはありません

電流の増え方を数値で追う

「電機子電流は増加する」——どれくらい増えるのかを数値で見ておくと、V曲線の形が実感できます。

力率1で100 A 流れていたとしましょう。この100 A はすべて有効分(トルクを作る成分)です。ここから界磁を増やして、力率が0.8(進み)になったとします

\( I\cos\theta=100\ \mathrm{A}\ \text{(一定)} \)
❶ 有効分は変わらない
負荷が同じなら出力も同じ
\( I=\dfrac{100}{0.8}=125\ \mathrm{A} \)
❷ 全電流
25 % 増える
\( I\sin\theta=\sqrt{125^2-100^2}=75\ \mathrm{A} \)
❸ 無効分(進み)
これが系統へ供給される進み無効電流
力率有効分無効分全電流V曲線上の位置
0.8 遅れ100 A75 A(遅れ)125 A左(不足励磁)
1.0100 A0100 A谷の底
0.8 進み100 A75 A(進み)125 A右(過励磁)

力率0.8 の遅れと進みで、電流の大きさは同じ125 Aです。V曲線が谷を挟んでほぼ対称な形になるのは、このためです。

無効分が75 A も流れているのに、仕事は何も増えていない——だから電機子巻線の銅損だけが増えます1252/1002=1.56銅損は56 % 増加——力率1から離れるのは、電動機にとっては損だということです。

それでも過励磁で運転することがあるのは、系統全体の力率改善という別の利益があるからです。電動機1台の銅損が増えても、工場全体の力率が上がれば配電線の損失が減る——どちらが得かは設備全体で判断します

まとめ

界磁電流増加(過励磁)
電機子電流増加
力率進み
答え(1)

▼あわせて解きたい関連問題
・同期電動機のV曲線:【機械】平成28年度A問題5
・V曲線と同期調相機:【機械】令和4年度下期A問題4

📚 次に解くべき関連問題
【機械】平成23年度A問題5(同期機43)
【機械】平成28年度A問題5(同期機42)
【機械】令和3年度A問題7(同期機45)
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