今回は平成23年度 機械科目 A問題5を解説します。交流電動機(同期機・誘導機)に関する記述の誤りを1つ選ぶ論説問題です。
V曲線に沿って界磁電流を減らすと電機子電流は増加しますが、力率100%で電機子電流は「最小」になります(最大ではない)。
問題文と選択肢

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成23年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題5
交流電動機に関する記述として,誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 同期機と誘導機は、どちらも三相電源に接続された固定子巻線(同期機の場合は電機子巻線、誘導機の場合は一次側巻線)が、同期速度の回転磁界を発生している。発生するトルクが回転磁界と回転子との相対位置の関数であれば同期電動機であり、回転磁界と回転子との相対速度の関数であれば誘導電動機である。
(2) 同期電動機の電機子端子電圧をV〔V〕(相電圧実効値)、この電圧から電機子電流の影響を除いた電圧(内部誘導起電力)をE₀〔V〕(相電圧実効値)、VとE₀との位相角をδ〔rad〕、同期リアクタンスをX〔Ω〕とすれば、三相同期電動機の出力は、\(3\times\left(E_0\cdot\dfrac{V}{X}\right)\sin\delta\)〔W〕となる。
(3) 同期電動機では、界磁電流を増減することによって、入力電力の力率を変えることができる。電圧一定の電源に接続した出力一定の同期電動機の界磁電流を減少していくと、V曲線に沿って電機子電流が増加し、力率100〔%〕で電機子電流が最大になる。
(4) 同期調相機は無負荷運転の同期電動機であり、界磁電流が作る磁束に対する電機子反作用による増磁作用や減磁作用を積極的に活用するものである。
(5) 同期電動機では、回転子の磁極面に設けた制動巻線を利用して停止状態からの始動ができる。
出題のポイント:V曲線の谷は「最小」
(3)の「力率100 % で電機子電流が最大になる」——ここだけが誤りです。V曲線の谷の底が力率1なのですから、そこは最小点です。
「V曲線に沿って電機子電流が増加し」という前半は正しいのです。界磁電流を減らしていけば、谷から左へ離れて電流は増えます——問題は「力率100 % で最大」という結びです。

5つの記述を判定する
| 記述 | 内容 | 判定 | 根拠 |
| (1) | 同期機はトルクが相対位置の関数、誘導機は相対速度の関数 | 正しい | 負荷角と滑りの違いそのもの |
| (2) | 同期電動機の出力は 3E0V sinδ/X | 正しい | 同期機の基本式(3相分) |
| (3) | 力率100 % で電機子電流が最大 | 誤り ✗ | V曲線の谷=最小 |
| (4) | 同期調相機は無負荷運転の同期電動機 | 正しい | 電機子反作用の増磁・減磁を利用する |
| (5) | 制動巻線で停止状態から始動できる | 正しい | 自己始動法 |


(1)が示す、同期機と誘導機の本質的な違い
記述(1)は、2つの交流電動機を最も根本から区別しています。「相対位置の関数か、相対速度の関数か」——この一言に、両者の性格がすべて含まれています。
| 同期電動機 | 誘導電動機 | |
| トルクを決めるもの | 回転磁界と回転子の相対「位置」(負荷角 δ) | 回転磁界と回転子の相対「速度」(滑り s) |
| トルクの式 | T∝sinδ | T∝s(安定域) |
| 回転速度 | 常に同期速度(ずれない) | 同期速度より遅い(必ずずれる) |
| 負荷が増えると | 角度が開く(速度は同じ) | 速度が落ちる(滑りが増える) |
| 限界を超えると | 脱調(同期を失う) | 停動(止まる) |
「位置でトルクを出す」機械は、速度がずれてはいけません。ずれ続けたら位置関係も変わり続け、トルクの向きが交互に変わってしまう——だから同期速度に固定されるのです。
「速度でトルクを出す」機械は、ずれていなければトルクが出ません。だから必ず滑りが残る——非同期機と呼ばれる所以です。
この一点から、両者のほぼすべての違いが導けます。始動できるかどうか(誘導機は滑り1でもトルクが出る/同期機は位置関係が回り続けて平均ゼロ)、速度が一定かどうか、脱調か停動か——すべて「位置か速度か」の帰結です。
(2)の出力式を読む
記述(2)の式は、同期機を扱ううえで最も重要な関係です。形と意味を押さえておきましょう。
| 変えるもの | 出力への効き方 | 実際の操作 |
| 負荷角 δ | sinδ に比例(δ=90°で最大) | 負荷が決める(操作するものではない) |
| 内部起電力 E0 | 比例 | 界磁電流で変えられる |
| 端子電圧 V | 比例 | 系統が決める |
| 同期リアクタンス X | 反比例 | 機械の設計で決まる |
δ=90°で出力が最大になり、それを超えると sinδ が減り始めてトルクが足りなくなります——これが脱調です。実運転では δ=30〜40°程度に留め、余裕を残します。
E0 を大きくすれば、同じ出力を小さい δ で出せます——だから過励磁のほうが安定度の余裕が大きいのです。V曲線で「過励磁側のほうが安全」と言われるのは、この式から来ています。
X が小さいほど出力を大きくできる——短絡比が大きい(X が小さい)機械ほど安定度が良いという関係も、この式が根拠です。1本の式が、同期機の性質をいくつも説明してくれます。
⏱️ 本番での進め方
① V曲線の谷は「最小」。力率1で電流が最小になる。
② 同期機=相対位置(負荷角)、誘導機=相対速度(滑り)。
③ P=3E0V sinδ/X——δ=90°で最大、それを超えると脱調。
④ 同期調相機は無負荷運転の同期電動機。
💡 覚え方
「V曲線の最低点(力率1)で電機子電流は最小」——同じ有効電力なら I∝1/cosθ だから。同期機はトルクが相対位置(負荷角)の関数、誘導機は相対速度(滑り)の関数——この一点から両者のすべての違いが導ける。P=3E0V sinδ/X で δ=90°が限界。
⚠️ よくある間違い
力率100 % で電機子電流が「最大」とする(3)を見落とすのが本問です。V曲線は谷の形——底が最小です。「V曲線に沿って増加し」という前半が正しいので、つい全体を正しいと判定してしまう——結論まで読み切ることが大切です。
脱調するとどうなるのか
記述(2)の出力式 P=3E0V sinδ/X で δ=90°が限界だと述べました。それを超えたら実際に何が起きるのかを押さえておきましょう。
| 段階 | 何が起きるか |
| ① 負荷が増える | 負荷角 δ が開いてトルクを増やす |
| ② δ が90°に近づく | まだ釣り合っているが余裕がない |
| ③ δ が90°を超える | sinδ が減り始め、トルクが足りなくなる |
| ④ 脱調 | 回転子が遅れ続け、同期が外れる |
| ⑤ 結果 | 大きな電流が流れ、トルクが脈動する。保護装置が動作して遮断 |
③がこの現象の意地の悪いところです。普通なら「負荷が増えたらトルクも増える」はずなのに、90°を超えると逆に減り始める——不足がさらに不足を呼ぶので、いったん超えたら戻れません。
脱調すると、回転磁界と回転子の位置関係が回り続けます。トルクは正負に振れ、電流も大きく脈動——放置すれば巻線も軸も損傷します。だから脱調を検出して遮断する保護が必ず設けられます。
復帰は自力ではできません。いったん止めて、始動からやり直す——誘導電動機なら負荷を軽くすれば自然に回り出すのと対照的です。「脱調は停動より厄介」と言われるのは、この点によります。
だから実運転では δ=30〜40°程度に留めます。90°まで余裕を残しておかないと、負荷の急変や系統電圧の低下に耐えられない——誘導電動機が最大トルクの手前で運転するのと、まったく同じ発想です。
同期化力——脱調しない範囲では強く踏みとどまる
δ が90°以内であれば、同期機は非常に安定しています。ずれを戻そうとする力が働くからです——これを同期化力といいます。
| 負荷角 δ | cosδ | 同期化力 | 状態 |
| 0°(無負荷) | 1.0 | 最大 | 非常に安定 |
| 30° | 0.87 | 強い | 実運転の目安 |
| 60° | 0.50 | 弱い | 余裕が少ない |
| 90° | 0 | ゼロ | 安定限界 |
同期化力がゼロになる点が、まさに安定限界です。ずれても戻す力がないのですから、そこから先は脱調するしかありません。
逆に言えば、δ が小さいうちは非常に強い復元力が働きます。圧延機のような衝撃負荷でも、瞬間的に δ が開いてすぐ戻る——速度は一切変わらないのです。同期機が衝撃負荷に強い理由が、この式に表れています。
まとめ
| 誤り選択肢 | (3) |
| 理由 | 力率100%で電機子電流は最小(最大ではない) |
| 正しい出力式 | \(P=3\frac{E_0V}{X}\sin\delta\) |
| 答え | (3) |
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