同期機38【電験3種 機械】短絡比の記述で誤りは?令和5年上期 A問題5 完全解説

電験3種 機械科目 同期機 令和5年度上期 A問題5 短絡比が大きいと何が変わる?誤りを見抜く

今回は令和5年度上期 機械科目 A問題5を解説します。三相同期発電機の短絡比に関する記述の誤りを1つ選ぶ論説問題です。

短絡比を小さくすると同期インピーダンスが大きくなり、電圧変動率は「大きく」なります。

目次

問題文と選択肢

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度上期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題5

三相同期発電機の短絡比に関する記述として,誤っているものを一つ選べ。

(1) 短絡比を小さくすると、発電機の外形寸法が小さくなる。

(2) 短絡比を小さくすると、発電機の安定度が悪くなる。

(3) 短絡比を小さくすると、電圧変動率が小さくなる。

(4) 短絡比が小さい発電機は、銅機械と呼ばれる。

(5) 短絡比が小さい発電機は、同期インピーダンスが大きい。

出題のポイント:短絡比の大小で5つの性質が決まる

短絡比は同期機を読む最重要の指標です。この1つの値から、機械のほとんどの性質が決まってしまいます表を1つ持っていれば、記述問題は照合作業になります

短絡比が大きい(鉄機械)短絡比が小さい(銅機械)
同期インピーダンス小さい大きい
電機子反作用弱い強い
電圧変動率小さい大きい
安定度良い悪い
短絡電流大きい小さい
外形・重量・価格大きい・重い・高い小さい・軽い・安い
代表例水車発電機(0.9〜1.2)タービン発電機(0.5〜0.7)
短絡比と同期インピーダンス

\( K_s=\dfrac{I_{f1}}{I_{f2}}=\dfrac{100}{\%Z_s}=\dfrac{1}{x_s\,[\mathrm{p.u.}]} \)

短絡比は、単位法で表した同期インピーダンスの逆数——「短絡比が小さい=同期インピーダンスが大きい」です。

短絡比が小さいと同期インピーダンスと電圧変動率が大きくなり安定度が悪くなる関係図
短絡比と同期インピーダンスは逆、同期インピーダンスと電圧変動率は同じ向きです。

5つの記述を判定する

記述内容判定根拠
(1)短絡比を小さくすると外形寸法が小さくなる正しい鉄心が小さくて済む=銅機械
(2)短絡比を小さくすると安定度が悪くなる正しい同期リアクタンスが大きい=最大出力が小さい
(3)短絡比を小さくすると電圧変動率が小さくなる誤り ✗内部電圧降下が増えるので大きくなる
(4)短絡比が小さい発電機は銅機械と呼ばれる正しい銅(巻線)の割合が大きい
(5)短絡比が小さい発電機は同期インピーダンスが大きい正しいKs=1/xs の関係そのもの
答え誤っているものは (3)(短絡比を小さくすると電圧変動率は大きくなる)
短絡比が大きい同期発電機と小さい同期発電機の同期インピーダンス、電圧変動率、安定度などを比較する表
短絡比を小さくすると電圧変動率は大きくなります。
令和5年上期機械A問題5で選択肢3の電圧変動率が小さくなるという記述を誤りと判定する図
選択肢(3)は向きが逆で、正しくは電圧変動率が大きくなるため、正解は(3)です。

なぜ電圧変動率が大きくなるのか

電圧変動率は「無負荷にしたとき端子電圧がどれだけ跳ね上がるか」を表します。その原因は、負荷時に生じていた内部の電圧降下です。

電圧変動率

\( \varepsilon=\dfrac{V_0-V_n}{V_n}\times100\ [\%] \)

内部降下 \( \fallingdotseq x_sI \) が大きいほど V0 と Vn の差が開く

同期リアクタンスが大きいほど内部降下が大きく、電圧変動率も大きい——単純な比例関係です。

短絡比が小さい=同期リアクタンスが大きいのですから、電圧変動率も大きくなります(3)は向きが逆です。

「小さくすると小さくなる」と、同じ向きの言葉を並べているのが引っかけです。短絡比とほとんどの性能指標は逆向きに動く——「短絡比が大きいほど良い性能(電圧変動率も安定度も)」と覚えておけば、間違えません。

なぜ「銅機械」「鉄機械」と呼ぶのか

この呼び名の由来を知っておくと、(1)と(4)がつながって記憶に残ります

銅機械(短絡比小)鉄機械(短絡比大)
設計方針巻線の巻数を多くして起電力を稼ぐ鉄心を大きくして磁束を多くする
多く使う材料銅(巻線)鉄(鉄心)
同期リアクタンス大きい(巻数が多いから)小さい
外形小さい大きい
価格安い高い

同じ電圧を出すのに、巻線をたくさん巻くか、磁束をたくさん通すか——この設計の選択が「銅機械か鉄機械か」を決めます

巻数を増やせば鉄心は小さくて済みますが、巻数が多いほどリアクタンスも大きくなる——だから短絡比が小さくなり、性能面では不利になります。安く小さく作れる代わりに、電圧変動も安定度も悪いということです。

タービン発電機が銅機械寄りなのは、高速回転のため細長い形にせざるを得ないからです。水車発電機は低速で極数が多く、直径の大きい円盤状——自然に鉄が多くなり、鉄機械になります形が性能を決めていると言ってもよいでしょう。

短絡比が大きいことの唯一の欠点

表を見ると、短絡比が大きいほうが良いことばかりに見えます。しかし1つだけ不利な点があります。

短絡電流が大きくなることです。同期リアクタンスが小さいのですから、事故で短絡したときに流れる電流も大きくなります——遮断器の遮断容量を大きくしなければなりません

\( I_s=\dfrac{E}{x_s}\propto K_s \)
短絡電流
短絡比に比例して大きくなる

「安定で電圧が動きにくい代わりに、事故電流が大きい」——これが鉄機械の性格です。設備全体としては、遮断器の容量まで含めて検討することになります

短絡比の記述問題では、この「短絡電流だけが逆向き」という点がしばしば狙われます。他の項目とは向きが違うので、表を作るときは必ず含めておいてください

⏱️ 本番での進め方
「短絡比が大きいほど良い性能」——電圧変動率も安定度も。ただし短絡電流だけは逆。
Ks=1/xs[p.u.]——短絡比と同期インピーダンスは逆数の関係。
銅機械=巻数を増やす(小さく安い・性能は劣る)/鉄機械=鉄心を大きく
水車0.9〜1.2、タービン0.5〜0.7

💡 覚え方
「短絡比小=同期インピーダンス大=内部電圧降下大 → 電圧変動率は大きい」短絡比が大きいほど良い性能(電圧変動率小・安定度良)だが、短絡電流だけは大きくなる銅機械=巻数で稼ぐ(小さく安い)/鉄機械=磁束で稼ぐ(大きく高い)

⚠️ よくある間違い
電圧変動率の増減を逆にするのが本問の唯一の落とし穴です。「小さくすると小さくなる」と同じ向きの言葉が並んでいるので、つい読み流してしまいます。短絡比とほとんどの性能指標は逆向き——この原則で判定してください

短絡比は計算問題でどう使うか

本問は記述問題ですが、短絡比は計算問題にも頻繁に登場します使い方は3通りあります。

短絡比を使う3つの式

\( K_s=\dfrac{I_{f1}}{I_{f2}}=\dfrac{100}{\%Z_s}=\dfrac{I_s}{I_n} \)

界磁電流の比・パーセントインピーダンスの逆数・短絡電流と定格電流の比——どれも同じ値です。

与えられるもの求まるもの使う式
2つの界磁電流短絡比Ks=If1/If2
%Zs短絡比Ks=100/%Zs
短絡比と定格電流三相短絡電流Is=KsIn

3番目の使い方が特に重要です。短絡比が0.8 なら、三相短絡したときに流れる持続短絡電流は定格電流の0.8倍——意外に小さいと感じるかもしれません。

\( \%Z_s=125\ \% \;\Rightarrow\; K_s=\dfrac{100}{125}=0.8 \)
❶ %Z から短絡比
タービン発電機の典型的な値
\( I_s=0.8\,I_n \)
❷ 持続短絡電流
定格電流より小さい——同期リアクタンスが大きいから。

「短絡したのに定格より小さい電流しか流れない」——これは持続短絡電流(定常状態)の話です。短絡した瞬間には、はるかに大きな突発短絡電流が流れます(過渡リアクタンスが小さいため)。遮断器の選定では、この過渡的な値のほうが問題になります

短絡比が大きい機械ほど持続短絡電流も大きくなる——これが「短絡比が大きいと短絡電流が大きい」という記述の中身です。他の性能指標とは向きが逆になる唯一の項目なので、表に含めて覚えておいてください。

まとめ

誤り選択肢(3)
理由短絡比小→Zs大→電圧変動率は大
関係式\(K_s=100/\%Z_s\)
答え(3)

▼あわせて解きたい関連問題
・特性曲線の穴埋め:【機械】平成20年度A問題4
・短絡比の計算:【機械】平成25年度A問題6

📚 次に解くべき関連問題
【機械】平成20年度A問題4(同期機39)
【機械】平成24年度A問題6(同期機40)
【機械】令和4年度下期A問題4(同期機41)
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