今回は平成20年度 機械科目 A問題4を解説します。三相同期発電機の特性曲線(無負荷飽和曲線・短絡曲線・外部特性曲線)を問う穴埋め問題です。
無負荷飽和曲線は界磁電流にほぼ比例して立ち上がり飽和、短絡曲線はほぼ直線、外部特性は負荷力率で形が変わります。
問題文と選択肢

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題4
次の文章は,三相同期発電機の特性曲線に関する記述である。
a. 無負荷飽和曲線は,同期発電機を(ア)で無負荷で運転し,界磁電流を零から徐々に増加させたときの端子電圧と界磁電流との関係を表したものである。端子電圧は,界磁電流が小さい範囲では界磁電流に(イ)するが,界磁電流がさらに増加すると,飽和特性を示す。
b. 短絡曲線は,電機子巻線の三相の出力端子を短絡し,定格速度で運転して,界磁電流を零から徐々に増加させたときの短絡電流と界磁電流との関係を表したものである。この曲線は(ウ)になる。
c. 外部特性曲線は,同期発電機を定格速度で運転し,(エ)を一定に保って,(オ)を一定にして負荷電流を変化させた場合の端子電圧と負荷電流との関係を表したものである。この曲線は,(オ)によって形が変わる。空白箇所(ア)〜(オ)に記入する語句として正しいものを一つ選べ。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (オ) (1) 定格速度 ほぼ比例 ほぼ双曲線 界磁電流 残留磁気 (2) 定格電圧 ほぼ比例 ほぼ直線 電機子電流 負荷力率 (3) 定格速度 ほぼ反比例 ほぼ双曲線 電機子電流 残留磁気 (4) 定格速度 ほぼ比例 ほぼ直線 界磁電流 負荷力率 (5) 定格電圧 ほぼ反比例 ほぼ双曲線 界磁電流 残留磁気
出題のポイント:3つの試験を「何を一定にするか」で区別する
同期発電機には3つの代表的な特性曲線があります。どれも「界磁電流を変えて何かを測る」という形ですが、条件と測る量が違います。
| 曲線 | 運転条件 | 横軸 | 縦軸 | 曲線の形 |
| 無負荷飽和曲線 | 定格速度・無負荷 | 界磁電流 | 端子電圧 | はじめ比例、やがて飽和 |
| 短絡曲線 | 定格速度・三相短絡 | 界磁電流 | 短絡電流 | ほぼ直線 |
| 外部特性曲線 | 定格速度・界磁電流一定・力率一定 | 負荷電流 | 端子電圧 | 力率で形が変わる |
「速度はどれも定格」——これは共通です。速度が変われば起電力も変わってしまい、比較にならないからです。(ア)=定格速度で、「定格電圧」を選ぶと(2)(5)へ逸れます。

空欄を確定する
(ア)(イ):無負荷飽和曲線
無負荷で界磁電流を上げていくと、端子電圧は最初ほぼ比例して伸びます。磁気回路が未飽和の領域では、磁束が界磁電流に比例するからです。(イ)=ほぼ比例。
やがて鉄心が飽和して曲線が寝てきます——これが「飽和特性」です。「ほぼ反比例」では、界磁を増やすほど電圧が下がることになり、意味が通りません。
(ウ):短絡曲線はほぼ直線
三相短絡した状態で界磁電流を増やすと、短絡電流はほぼ直線的に増えます。(ウ)=ほぼ直線。「双曲線」ではありません。
(エ)(オ):外部特性曲線
外部特性曲線は「負荷電流を変えたとき端子電圧がどうなるか」を見るものです。そのためには界磁電流を一定に保たなければなりません——界磁を動かしてしまったら、電圧の変化が負荷のせいか界磁のせいか分からなくなるからです。(エ)=界磁電流。
そして「この曲線は(オ)によって形が変わる」——負荷力率です。(オ)=負荷力率。「残留磁気」では形が変わる理由になりません。


なぜ短絡曲線だけが飽和しないのか
無負荷飽和曲線は飽和するのに、短絡曲線は直線のまま——この違いには明確な理由があります。
三相短絡したとき、電機子電流はほとんど純粋な遅れ電流になります。短絡回路には同期リアクタンスしかなく、抵抗が無視できるほど小さいからです。
| 無負荷 | 三相短絡 | |
| 電機子電流 | ゼロ | 大きい(ほぼ純遅れ) |
| 電機子反作用 | なし | 強い減磁作用 |
| 鉄心内の合成磁束 | 界磁磁束そのもの(大きい) | 打ち消されて小さい |
| 磁気飽和 | 起きる | 起きない |
| 曲線の形 | 飽和して寝る | 直線のまま |
遅れ電流は減磁作用ですから、界磁が作った磁束を電機子電流が打ち消してしまいます。鉄心の中の合成磁束は小さいまま——だから飽和する手前で使っていることになり、直線関係が保たれるのです。
「飽和するかどうかは、鉄心の中の磁束の大きさで決まる」——界磁電流の大きさではありません。この区別ができると、短絡曲線が直線である理由が腑に落ちます。
2つの曲線から短絡比が求まる
無負荷飽和曲線と短絡曲線を1枚のグラフに描くと、そこから短絡比が読み取れます。この2曲線は、短絡比を求めるためにセットで測られると言ってもよいでしょう。
短絡比が大きいということは、If1 が大きい(定格電圧を出すのに多くの界磁電流が要る)か、If2 が小さい(少ない界磁電流で定格電流が流れる)ということです。
どちらも「同期リアクタンスが小さい」ことを意味します。リアクタンスが小さければ、少ない界磁電流でも大きな短絡電流が流れる——Ks=1/xs という関係が、この図から視覚的に理解できます。
試験では図を読ませる問題も出ます。「定格電圧の水平線と無負荷飽和曲線の交点」「定格電流の水平線と短絡曲線の交点」から、それぞれ横軸へ下ろす——この作業の意味を知っていれば、図が読めます。
⏱️ 本番での進め方
① 3曲線とも「定格速度」で測る。速度が変われば比較にならない。
② 無負荷飽和=比例→飽和、短絡=ほぼ直線。
③ 外部特性は界磁電流を一定に保つ——動かしたら何のせいか分からない。
④ 短絡曲線が直線なのは、減磁作用で鉄心が飽和しないから。
💡 覚え方
「無負荷飽和=比例→飽和、短絡=ほぼ直線、外部特性=界磁一定・負荷力率で形が変わる」。3つとも定格速度。短絡曲線が飽和しないのは、ほぼ純遅れ電流の強い減磁作用で鉄心内の磁束が小さいから。2曲線から Ks=If1/If2 が読み取れる。
⚠️ よくある間違い
短絡曲線を「双曲線」とするのが典型です。ほぼ直線——減磁作用で飽和しないからだと理由まで押さえてください。もう一つは(エ)に「電機子電流」を入れること——外部特性では負荷電流(=電機子電流)を変化させるのですから、それを一定に保っては測定になりません。
外部特性曲線はなぜ力率で形が変わるのか
(オ)の「負荷力率によって形が変わる」——ここは同期機の最も重要な性質のひとつです。電機子反作用の向きが力率で変わるからです。
| 負荷力率 | 電機子反作用 | リアクタンス降下 | 外部特性曲線の形 | 電圧変動率 |
| 遅れ(誘導性) | 減磁 | 電圧を下げる向き | 大きく垂下する | 正で大きい |
| 力率1 | 交差磁化 | やや下げる | ゆるやかに垂下 | 正で小さい |
| 進み(容量性) | 増磁 | 電圧を上げる向き | 上昇することもある | 負になり得る |
遅れ力率では、電機子反作用の減磁とリアクタンス降下が同じ向きに働きます——だから電圧が大きく下がります。進み力率では逆に、増磁作用が電圧を持ち上げる——負荷をかけたのに電圧が上がるという現象すら起きます。
「電圧変動率が負になる」のは、この進み力率のときです。電圧変動率 ε=(V0−Vn)/Vn で、無負荷にしたら電圧が下がる(V0<Vn)なら ε は負になります。
直流発電機では、こういうことは起きません。直流機の電機子反作用は常に減磁方向で、力率という概念そのものがないからです——「電圧変動率が負になり得る」のは同期発電機だけの性質だと言えます。
この性質があるから、自己励磁のような現象も起こります。進み電流が増磁して電圧を上げる——外部特性が上昇する向きに動くことの、極端な形が自己励磁です。2つの現象は同じ根から出ています。
まとめ
| (ア) | 定格速度 |
| (イ) | ほぼ比例 |
| (ウ) | ほぼ直線 |
| (エ) | 界磁電流 |
| (オ) | 負荷力率 |
| 答え | (4) |
▼あわせて解きたい関連問題
・短絡比の記述:【機械】令和5年度上期A問題5
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