同期機24【電験3種 機械】同期電動機の誘導起電力をベクトル図で!令和6年上期 A問題6 完全解説

電験3種 機械科目 同期機 令和6年度上期 A問題6 電圧と電流のベクトル和!誘導起電力は何V?

今回は令和6年度上期 機械科目 A問題6を解説します。力率1で運転する三相同期電動機の1相の誘導起電力を、ベクトル図から求める問題です。

力率1では \(E=\sqrt{V^2+(x_sI)^2}\) の直角三角形になります。Y結線なので相電圧に直すのを忘れずに。

目次

問題文と選択肢

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度上期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題6

 線間電圧 V が360 V,電機子電流 I が20 A,力率 cosθ が1.0で運転されている三相同期電動機がある。この電動機の電機子巻線はY結線,一相の同期リアクタンス xs は6 Ωである。巻線抵抗の電圧降下は無視するものとし,この運転状態における一相の誘導起電力 E [V]として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。

(1) 130 (2) 220 (3) 240 (4) 370 (5) 380

出題のポイント:線間電圧をそのまま使わない

本問の等価回路は「1相分」です。ところが与えられている電圧は「線間電圧」360 V——この食い違いを最初に解消しないと、答えが √3 倍ずれます

結線相電圧と線間電圧相電流と線電流
Y(星形)結線\( V_{\ell}=\sqrt{3}\,V_p \)(線間が √3 倍)等しい
Δ(三角)結線等しい\( I_{\ell}=\sqrt{3}\,I_p \)(線電流が √3 倍)

問題文に「電機子巻線はY結線」と明記されているのは、この換算をせよという合図です。Y結線なら電流はそのまま、電圧だけ √3 で割る——ここを機械的に処理します。

力率1のときだけは、両者の区別が計算結果に出てきません。\( \dot{V} \) と \( \dot{I} \) が同相なら \( jx_s\dot{I} \) は \( \dot{V} \) と直角——符号がプラスでもマイナスでも、直角三角形の斜辺の長さは同じだからです。だから力率1の問題は、三平方の定理ひとつで片づきます

Y結線の線間電圧360ボルトを相電圧207.8ボルトへ変換しリアクタンス降下120ボルトを求める図
線間電圧を相電圧へ直してから、一相分のベクトル計算を行います。

相電圧に直す

Y結線の相電圧

\( V_p=\dfrac{V_{\ell}}{\sqrt{3}}=\dfrac{360}{\sqrt{3}}=120\sqrt{3}\fallingdotseq 207.8\ [\mathrm{V}] \)

\( 360/\sqrt{3}=120\sqrt{3} \) と書いておくと、2乗するときに \( 43200 \) と割り切れて計算が楽になります。

√3 で割った値を小数にせず \( 120\sqrt{3} \) の形で持っておくのがコツです。2乗すれば \( 120^{2}\times3=43200 \) ときれいな整数になり、電卓のない試験で有効数字に悩まずに済みます

リアクタンス降下と三平方

\( x_s I = 6\times20 = 120\ [\mathrm{V}] \)
降下
同期リアクタンス×電機子電流
\( E=\sqrt{V_p^{2}+(x_s I)^{2}} \)
力率1
同相なので直角三角形になる
\( \phantom{E}=\sqrt{43200+14400} \)
代入
43200=(120√3)2、14400=1202
\( \phantom{E}=\sqrt{57600} \)
加算
足し合わせる
\( \phantom{E}=240\ [\mathrm{V}] \)
平方根
2402=57600 でちょうど割り切れる
令和6年上期機械A問題6で相電圧207.8ボルトとリアクタンス降下120ボルトから誘導起電力240ボルトを求める図
直角三角形からE=240 Vとなり、正解は(3)です。
答え正解は (3) 240 Vです。ぴったり240という切りのよい値になるのは、この問題が「正しい道筋なら整数で終わる」よう作られているからです。

途中で平方根が汚くなったら、どこかで換算を間違えている——これは電験の計算問題全般で使える自己チェックです本問なら √57600=240 と割り切れた時点で、線間→相の換算が正しかったと確認できます

選択肢の作られ方を読む

⚠️ よくある間違い
(5) 380 Vは、線間電圧 360 V をそのまま相電圧として計算した値(\( \sqrt{360^{2}+120^{2}}\fallingdotseq 379.5 \))です。本問で最も踏みやすい罠——「1相分の等価回路」という言葉を読み飛ばすと、ここに吸い込まれます
(2) 220 V相電圧 207.8 V そのものに近い値で、リアクタンス降下を足し忘れたときの答えです。(1) 130 Vリアクタンス降下 120 V そのもの——何を問われているかを取り違えたときに選んでしまいます。

正解の240は、相電圧207.8より大きく、線間電圧360より小さい——この位置関係を頭に入れておけば、桁違いの誤りは即座に排除できます

⏱️ 本番での進め方
①「Y結線」「1相分」の語を見たら、真っ先に電圧を √3 で割る。
② 360/√3 は 120√3 と書く。小数にしない。
③ (120√3)2=43200、1202=14400、合計57600。
④ √57600=240。割り切れたら道筋が正しい合図。

💡 覚え方
「線間で来たら、まず √3 で割る」——この一手を反射にしてしまえば、三相の計算問題の大半は片づきます逆にY結線の電流は割らない(線電流=相電流)——Y は電圧だけ、Δ は電流だけと対で覚えると混同しません。

出題履歴:相電圧で与えられる年もある

まったく同じ計算が、令和2年 A問題5でも出題されています同期機25:同期電動機の等価回路から誘導起電力)。そちらは相電圧200 V が直接与えられており、√3 の換算が不要です。

つまり出題側は「√3 の換算ができるか」を、年によって入れたり外したりして試しているわけです。本問のように線間で与えられた年のほうが正答率は下がります——電圧の種類を確認する習慣が、そのまま得点差になります

同期電動機で誘導起電力が端子電圧より遅れ、リアクタンス降下を加えると端子電圧になるベクトル三角形
電動機ではV=E+jXsIとなり、EはVより遅れます。

同じ三角形から負荷角も読み取れる

本問で描いた直角三角形には、もう一つの情報が入っています\( \dot{V} \) と \( \dot{E} \) のなす角——つまり負荷角 δ です。

力率1のときの負荷角

\( \sin\delta=\dfrac{x_s I}{E}\quad\text{または}\quad \tan\delta=\dfrac{x_s I}{V_p} \)

直角三角形の辺の比を取るだけ——新しい公式ではありません

\( \sin\delta=\dfrac{120}{240}=0.5 \)
正弦
対辺÷斜辺
\( \delta=30^{\circ} \)
負荷角
sin30°=0.5
\( \tan\delta=\dfrac{120}{120\sqrt{3}}=\dfrac{1}{\sqrt{3}} \)
正接で検算
対辺÷隣辺
\( \delta=30^{\circ} \)
一致
tan30°=1/√3。同じ値が出る

負荷角30°は、脱出トルクを生む90°に対してまだ十分な余裕がある状態です。トルクは \( \sin\delta \) に比例するので、いまの出力は最大トルクの半分(sin30°=0.5)——あと2倍の負荷までは同期を保って耐えられると読めます。

負荷角 δsin δ最大トルクに対する割合状態
30°(本問)0.550 %余裕のある通常運転
60°0.86687 %かなり重い負荷
90°1.0100 %脱出トルク。これを超えると同期外れ

計算問題を解いたあとに「この運転点はどれくらい余裕があるのか」まで読み取る癖をつけると、論説問題の理解も一緒に進みます誘導起電力を求めるだけの1問が、負荷角・脱出トルク・安定度の話につながっている——同期機の問題はこうして横につながっています

まとめ

相電圧\(V=360/\sqrt3\fallingdotseq207.8\,\mathrm V\)
誘導起電力\(E=\sqrt{207.8^2+120^2}=240\,\mathrm V\)
答え(3)

▼あわせて解きたい関連問題
・同期電動機の等価回路:【機械】令和2年度A問題5
・同期電動機のベクトル図:【機械】平成24年度B問題16

📚 次に解くべき関連問題
【機械】平成24年度B問題16(同期機23)
【機械】令和2年度A問題5(同期機25)
【機械】平成30年度A問題5(同期機31)
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