今回は令和6年度上期 機械科目 A問題6を解説します。力率1で運転する三相同期電動機の1相の誘導起電力を、ベクトル図から求める問題です。
力率1では \(E=\sqrt{V^2+(x_sI)^2}\) の直角三角形になります。Y結線なので相電圧に直すのを忘れずに。
問題文と選択肢

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度上期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題6
線間電圧 V が360 V,電機子電流 I が20 A,力率 cosθ が1.0で運転されている三相同期電動機がある。この電動機の電機子巻線はY結線,一相の同期リアクタンス xs は6 Ωである。巻線抵抗の電圧降下は無視するものとし,この運転状態における一相の誘導起電力 E [V]として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) 130 (2) 220 (3) 240 (4) 370 (5) 380
出題のポイント:線間電圧をそのまま使わない
本問の等価回路は「1相分」です。ところが与えられている電圧は「線間電圧」360 V——この食い違いを最初に解消しないと、答えが √3 倍ずれます。
| 結線 | 相電圧と線間電圧 | 相電流と線電流 |
| Y(星形)結線 | \( V_{\ell}=\sqrt{3}\,V_p \)(線間が √3 倍) | 等しい |
| Δ(三角)結線 | 等しい | \( I_{\ell}=\sqrt{3}\,I_p \)(線電流が √3 倍) |
問題文に「電機子巻線はY結線」と明記されているのは、この換算をせよという合図です。Y結線なら電流はそのまま、電圧だけ √3 で割る——ここを機械的に処理します。
力率1のときだけは、両者の区別が計算結果に出てきません。\( \dot{V} \) と \( \dot{I} \) が同相なら \( jx_s\dot{I} \) は \( \dot{V} \) と直角——符号がプラスでもマイナスでも、直角三角形の斜辺の長さは同じだからです。だから力率1の問題は、三平方の定理ひとつで片づきます。

相電圧に直す
√3 で割った値を小数にせず \( 120\sqrt{3} \) の形で持っておくのがコツです。2乗すれば \( 120^{2}\times3=43200 \) ときれいな整数になり、電卓のない試験で有効数字に悩まずに済みます。
リアクタンス降下と三平方
同期リアクタンス×電機子電流
同相なので直角三角形になる
43200=(120√3)2、14400=1202
足し合わせる
2402=57600 でちょうど割り切れる

途中で平方根が汚くなったら、どこかで換算を間違えている——これは電験の計算問題全般で使える自己チェックです。本問なら √57600=240 と割り切れた時点で、線間→相の換算が正しかったと確認できます。
選択肢の作られ方を読む
⚠️ よくある間違い
(5) 380 Vは、線間電圧 360 V をそのまま相電圧として計算した値(\( \sqrt{360^{2}+120^{2}}\fallingdotseq 379.5 \))です。本問で最も踏みやすい罠——「1相分の等価回路」という言葉を読み飛ばすと、ここに吸い込まれます。
(2) 220 Vは相電圧 207.8 V そのものに近い値で、リアクタンス降下を足し忘れたときの答えです。(1) 130 Vはリアクタンス降下 120 V そのもの——何を問われているかを取り違えたときに選んでしまいます。
正解の240は、相電圧207.8より大きく、線間電圧360より小さい——この位置関係を頭に入れておけば、桁違いの誤りは即座に排除できます。
⏱️ 本番での進め方
①「Y結線」「1相分」の語を見たら、真っ先に電圧を √3 で割る。
② 360/√3 は 120√3 と書く。小数にしない。
③ (120√3)2=43200、1202=14400、合計57600。
④ √57600=240。割り切れたら道筋が正しい合図。
💡 覚え方
「線間で来たら、まず √3 で割る」——この一手を反射にしてしまえば、三相の計算問題の大半は片づきます。逆にY結線の電流は割らない(線電流=相電流)——Y は電圧だけ、Δ は電流だけと対で覚えると混同しません。
出題履歴:相電圧で与えられる年もある
まったく同じ計算が、令和2年 A問題5でも出題されています(同期機25:同期電動機の等価回路から誘導起電力)。そちらは相電圧200 V が直接与えられており、√3 の換算が不要です。
つまり出題側は「√3 の換算ができるか」を、年によって入れたり外したりして試しているわけです。本問のように線間で与えられた年のほうが正答率は下がります——電圧の種類を確認する習慣が、そのまま得点差になります。

同じ三角形から負荷角も読み取れる
本問で描いた直角三角形には、もう一つの情報が入っています。\( \dot{V} \) と \( \dot{E} \) のなす角——つまり負荷角 δ です。
対辺÷斜辺
sin30°=0.5
対辺÷隣辺
tan30°=1/√3。同じ値が出る
負荷角30°は、脱出トルクを生む90°に対してまだ十分な余裕がある状態です。トルクは \( \sin\delta \) に比例するので、いまの出力は最大トルクの半分(sin30°=0.5)——あと2倍の負荷までは同期を保って耐えられると読めます。
| 負荷角 δ | sin δ | 最大トルクに対する割合 | 状態 |
| 30°(本問) | 0.5 | 50 % | 余裕のある通常運転 |
| 60° | 0.866 | 87 % | かなり重い負荷 |
| 90° | 1.0 | 100 % | 脱出トルク。これを超えると同期外れ |
計算問題を解いたあとに「この運転点はどれくらい余裕があるのか」まで読み取る癖をつけると、論説問題の理解も一緒に進みます。誘導起電力を求めるだけの1問が、負荷角・脱出トルク・安定度の話につながっている——同期機の問題はこうして横につながっています。
まとめ
| 相電圧 | \(V=360/\sqrt3\fallingdotseq207.8\,\mathrm V\) |
| 誘導起電力 | \(E=\sqrt{207.8^2+120^2}=240\,\mathrm V\) |
| 答え | (3) |
▼あわせて解きたい関連問題
・同期電動機の等価回路:【機械】令和2年度A問題5
・同期電動機のベクトル図:【機械】平成24年度B問題16

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