今回は令和7年度上期 機械科目 A問題6を解説します。三相短絡事故時に流れる持続短絡電流を、無負荷飽和曲線と三相短絡曲線の関係から求める問題です。
定格電流と界磁電流の比例関係を使えば、電卓一つで解ける典型問題です。
問題文と選択肢

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題6
定格出力7 500 kV・A,定格電圧(線間電圧)3 300 Vの星形結線三相同期発電機がある。また,定格電流に等しい持続短絡電流を流すのに必要な界磁電流は200 A,無負荷で定格電圧を発生するのに必要な界磁電流は240 Aであった。発電機の出力端で三相短絡事故が発生したときに発電機の巻線に流れる持続短絡電流の実効値[A]として,最も近いものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。
(1) 1 100 (2) 1 600 (3) 1 900 (4) 2 700 (5) 3 400
出題のポイント:界磁電流の比が、そのまま電流の比になる
本問は2つの界磁電流が与えられ、短絡電流を答えさせる問題です。短絡曲線が直線であることを使えば、界磁電流の比=短絡電流の比——比例計算だけで答えが出ます。
| 記号 | どちらの曲線から読むか | 意味 |
| If1 | 無負荷飽和曲線(A) | 無負荷で定格電圧 Vn を発生させる界磁電流 |
| If2 | 三相短絡曲線(B) | 定格電流 In に等しい短絡電流を流す界磁電流 |
| 短絡比 Ks | 2つの比 | \( K_s=I_{f1}/I_{f2} \)(大きいほうが分子) |
本問では If1=240 A、If2=200 Aです。短絡事故が起きたとき、界磁電流は事故前の値(定格電圧を出していた If1=240 A)のまま——だから短絡電流は、If2 のときの定格電流を240/200 倍した値になります。

定格電流を求める
7 500 kV・A を V・A に直す
√3×3300≒5 716
If2=200 A のときの短絡電流でもある
短絡比を出して掛ける
界磁電流の比
界磁が1.2倍なら短絡電流も1.2倍
選択肢の1 600に最も近い

選択肢の作られ方を読む
⚠️ よくある間違い
(1) 1 100 Aは界磁電流の比を逆にしたときの答え(1 312×200/240≒1 093)です。「大きいほうが分子」を取り違えると、1を下回る比になってしまいます。
(4) 2 700 Aは定格電流の計算で √3 を忘れたときの値(7 500×103÷3 300=2 273 → ×1.2≒2 727)です。(3) 1 900 Aは1.2 を2回掛けてしまったときの値(1 312×1.44≒1 889)にあたります。
☝️ ひっかけの作り方:短絡電流が定格電流より小さくなる答え(本問なら(1))は、物理的におかしいと気づけます。短絡は最も電流が流れる状態ですから、定格電流1 312 A を下回る1 100 A はあり得ません——計算の前に「答えは1 312 より大きいはず」と当たりをつけておくと、選択肢が半分に減ります。
「持続」短絡電流という言い方の意味
問題文がわざわざ「持続短絡電流」と書いているのには理由があります。短絡した瞬間の電流は、これよりずっと大きいからです。
| 時間帯 | 呼び名 | 効くリアクタンス | 大きさの目安 |
| 短絡直後(数サイクル) | 初期突入短絡電流 | 初期過渡リアクタンス xd″ | 定格の10倍以上になることも |
| 数十サイクル後 | 過渡短絡電流 | 過渡リアクタンス xd′ | 定格の数倍 |
| 十分時間が経った後 | 持続短絡電流 | 同期リアクタンス xd | 定格の1倍前後(本問) |
短絡直後は電機子反作用がまだ十分に効いておらず、電流を抑える力が弱い——だから最初は大きな電流が流れます。時間が経つにつれて減磁作用が効いてきて、電流は落ち着いていきます。
遮断器の選定には初期の大きな電流が効き、発電機の熱的な耐量には持続短絡電流が効く——どの時間帯の話をしているのかで、使うリアクタンスも答えも変わるのです。本問が「持続」と明記しているのは、同期リアクタンスで考えてよいという合図です。
⏱️ 本番での進め方
① In=S/(√3Vn)。7500kVA・3300V なら約1 312 A。
② 短絡比=240/200=1.2(大きいほうが分子)。
③ Is=1.2×1 312≒1 570 → 1 600。
④ 答えは必ず定格電流より大きい。小さい肢は最初に消す。
💡 覚え方
「短絡比は、界磁電流なら大きいほうが分子」。無負荷で定格電圧を出すには強い界磁が要り、短絡なら弱い界磁で定格電流が流れる——だから分子(定格電圧側)のほうが大きい、と理屈で押さえておけば逆にしません。
関連問題:同じ短絡比を別の角度から
短絡比は、与えられる量を変えて繰り返し出題されます(同期機4:短絡比の求め方/同期機8:同期インピーダンスから短絡比を求める)。本問は「界磁電流の比から短絡電流を出す」型——短絡比を求めるのではなく、短絡比を使う側の問題です。

求めた短絡電流は、遮断器を選ぶための数字
持続短絡電流を求める意味は、機器の選定にあります。この電流に電圧を掛けたものが短絡容量で、遮断器の遮断容量を決める基礎になります。
線間電圧と短絡電流から
約9 MV・A
%Z=100/1.2≒83.3 %から求めても同じ
定格容量7 500 kV・A の機械に対して、短絡容量は9 000 kV・A——1.2倍にすぎません。変圧器なら %Z が5 %程度で短絡容量が定格の20倍にもなることと比べると、同期発電機がいかに「短絡に強い(電流が伸びない)」機器かが分かります。
ただしこれは持続値の話です。短絡直後は初期過渡リアクタンス xd″ で決まり、定格の10倍近い電流が流れます——遮断器はその瞬時値に耐えられるものを選ばなければなりません。
「持続短絡電流は発電機自身の熱的耐量、初期短絡電流は遮断器の選定」——用途が違うから、別々の値として定義されているのです。問題文がどの時間帯を指しているかを読み分けるのが、この分野の要点になります。
まとめ
| 定格電流 | \(I_n=P/(\sqrt3 V)\fallingdotseq1\,312\,\mathrm{A}\) |
| 比例式 | \(200:1\,312=240:I_s\) |
| 持続短絡電流 | \(I_s=(240/200)\times1\,312\fallingdotseq1\,574\,\mathrm{A}\) |
| 答え | (2) 1 600 A |
▼あわせて解きたい関連問題
・短絡比の計算:【機械】平成21年度A問題5
・短絡電流の界磁比例:【機械】令和6年度下期A問題6

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