今回は令和7年度下期 機械科目 A問題6を解説します。無負荷試験と短絡試験の結果から同期インピーダンス Zs を求める計算問題です。
落とし穴は2つ。①短絡試験の界磁電流が100Aと、無負荷試験の500Aとは違う——短絡特性は直線なので比例させて500A相当に直す必要があります。②Zsは1相分なので、線間電圧を√3で割って相電圧にすること。
令和7年度下期 機械科目 A問題6:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度下期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題6
電験3種 機械科目 【同期機】 令和7年度下期 A問題6
三相同期発電機があり,無負荷で端子電圧(線間)15.2kVを発生させるのに必要な界磁電流は500Aである.この界磁電流を100Aにして短絡試験を行ったとき,短絡電流860Aが流れた.界磁電流が500Aのとき,この発電機の同期インピーダンス[Ω]の値として,最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ.
三相同期発電機があり、無負荷で端子電圧(線間)15.2kVを発生させるのに必要な界磁電流は500Aである。この界磁電流を100Aにして短絡試験を行ったとき、短絡電流860Aが流れた。界磁電流が500Aのとき、この発電機の同期インピーダンス[Ω]の値として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1)10.2 (2)6.86 (3)3.53 (4)2.04 (5)0.55 Ω

出題のポイント:界磁電流をそろえてから割る
同期インピーダンスは「無負荷電圧÷短絡電流」で求まりますが、両者は同じ界磁電流での値でなければなりません。本問は500 A と100 A でばらばらに与えられているので、そろえる一手間が必要です。
そろえる根拠は、短絡曲線が直線であることです。短絡電流は界磁電流に比例するので、100 A で860 A なら、500 A では5倍の4 300 A——この比例計算が本問の核心になります。
短絡電流を500 A の界磁にそろえる
界磁電流が5倍なら短絡電流も5倍
界磁500 A のときの値
500÷100=5 ときれいに割り切れるのは、この比例計算をさせるための出題側の設定です。与えられた2つの界磁電流が整数比になっていたら、比例計算を求められていると考えてよいでしょう。
相電圧に直して割る
無負荷「線間」電圧を √3 で割る
15200÷1.732
1相分の電圧÷短絡電流
選択肢の2.04に一致
選択肢の作られ方を読む
⚠️ よくある間違い
(1) 10.2 Ωは短絡電流を界磁500 A にそろえずに、860 A のまま割った値(8 776÷860≒10.2)です。問題文が「界磁電流が500 A のとき」と明記しているのを読み落とすと、ここに落ちます。
(3) 3.53 Ωは線間電圧のまま割った値(15 200÷4 300≒3.53)です。正解の √3 倍——相電圧への換算を忘れた典型です。
2つの前処理それぞれの「やり忘れ」が、選択肢として用意されている——(1)が界磁そろえ忘れ、(3)が相電圧換算忘れです。どちらの値も「それらしい」ので、前処理を2つとも踏んだかを答える前に確認してください。
☝️ ひっかけの作り方:比例の向きにも注意が要ります。界磁電流を100 A から500 A へ増やすのですから、短絡電流も増える——860 A より大きい4 300 A になるのが正しい方向です。逆にすると172 A となり、同期インピーダンスが51 Ω という桁違いの値になります。「増やしたら増える」という当たり前の確認が、そのまま検算になります。
この値が意味するもの
求めた2.04 Ω は、この発電機の1相当たりの同期インピーダンスです。定格容量が与えられていれば %Z にも直せますが、本問では与えられていないのでオーム値のまま答えます。
15.2 kV という電圧階級は、比較的大きな発電機のものです。界磁電流が500 A というのも大形機の値——火力・原子力のタービン発電機や、大規模水力の発電機が想定されています。
短絡電流4 300 A に対して、この機械の定格電流がどれくらいか——もし %Z が80 %程度なら、定格電流は短絡電流の0.8倍で約3 400 Aとなり、容量は √3×15.2 kV×3.4 kA≒90 MV・A と見積もれます。与えられていない量も、他の量から桁を推定できる——この感覚があると、計算結果の妥当性をすぐ判断できます。
⏱️ 本番での進め方
① 界磁電流をそろえる。500/100=5倍 → 短絡電流も5倍の4 300 A。
② 無負荷電圧は「線間」。√3 で割って8 776 V。
③ Zs=8 776/4 300≒2.04 Ω。
④ 選択肢に2.04 と3.53(√3倍)が並ぶ。相電圧への換算を確認する合図。
💡 覚え方
「同じ界磁電流での、相電圧÷短絡電流」——「同じ界磁電流で」と「相電圧で」の2語を口に出してから計算に入ると、前処理を飛ばしません。
出題履歴:平成19年にも同じ型が出ている
まったく同じ型が、平成19年 A問題5でも出題されています(同期機10:無負荷試験と短絡試験から同期インピーダンスを求める)。そちらは励磁480 A で12 600 V、96 A で820 A という数値で、やはり界磁電流の比が5倍になっています。
18年隔てて同じ設定で出題される——それだけ基本的で、かつ落としてはいけない問題だということです。2問を並べて解けば、手順が完全に定着します。
界磁電流500 A は、どうやって作っているのか
本問の発電機は界磁電流が500 Aです。これだけの直流電流を回転する回転子に流し込むには、専用の仕組みが要ります——それが励磁方式です。
| 方式 | 直流の作り方 | 回転子への渡し方 | 特徴 |
| 直流励磁機方式 | 同軸の直流発電機 | スリップリングとブラシ | 古くからの方式。整流子とブラシの保守が要る |
| ブラシレス励磁方式 | 同軸の交流発電機+回転整流器 | 接触なし(回転体上で整流) | ブラシがなく保守が軽い。応答はやや遅い |
| 静止形励磁方式 | サイリスタ整流器(発電機出力から取る) | スリップリングとブラシ | 応答が速く、系統安定度の向上に有利 |
大形機ほど界磁電流が大きくなるので、ブラシで数百アンペアを流し続けるのは負担になります——だからブラシレス方式が広く使われるようになりました。
一方、系統事故のときに素早く界磁を強めて安定度を保つには、応答の速さが要ります。静止形励磁方式(サイリスタ励磁)なら数十ミリ秒で界磁を変えられる——これを速応励磁と呼び、過渡安定度の向上策として挙げられます。
本問で扱った「界磁電流を変えて特性を測る」という操作も、こうした励磁装置があってこそです。試験のときは界磁電流を0から徐々に上げていき、そのときの端子電圧や短絡電流を記録していく——2本の曲線は、そうやって1点ずつ測った結果なのです。
まとめ
| 同期インピーダンスの定義 | Z_s=(無負荷の相電圧)/(同じ界磁電流の短絡電流) |
| 短絡特性 | 直線(減磁作用が強く鉄心が飽和しない)⇒ 短絡電流は界磁電流に比例 |
| 無負荷飽和曲線 | 飽和して曲がる(こちらは比例しない) |
| 短絡電流の換算 | I_s=860×500/100=4300 A |
| 相電圧 | E=15 200/√3=8 776 V |
| 同期インピーダンス | Z_s=8 776/4 300=2.04 Ω |
| 答え | (4) |
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