今回は令和7年度下期 機械科目 A問題1を解説します。直流分巻電動機の速度特性(回転速度 n)とトルク特性(トルク T)を表すグラフとして正しいものを、5つの図から選ぶ問題です。
分巻電動機は界磁巻線が電機子と並列で、端子電圧と界磁調整器の抵抗が一定なら界磁電流も一定=磁束φが一定になります。この「φ一定」を出発点にすると、T と n の形はすぐに決まります。
令和7年度下期 機械科目 A問題1:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和7年度下期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題1
電験3種 機械科目 【直流機】 令和7年度下期 A問題1
直流電動機などの原動機では,負荷の増減によって,回転速度やトルクが変化する.直流分巻電動機の速度特性とトルク特性を示す正しい図に最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ.
ただし,図の負荷電流は電機子電流と界磁電流の和であり,I0は無負荷電流の値である.端子電圧と界磁調整器の抵抗値は一定であるとする.
直流電動機などの原動機では、負荷の増減によって、回転速度やトルクが変化する。直流分巻電動機の速度特性とトルク特性を示す正しい図に最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
ただし、図の負荷電流は電機子電流と界磁電流の和であり、I0は無負荷電流の値である。端子電圧と界磁調整器の抵抗値は一定であるとする。

出題のポイント:グラフ問題は「式の形」を先に決める
特性図を選ぶ問題では、グラフを眺めて選ぶのではなく、式から形を先に決めてしまうのが確実です。分巻電動機なら、出発点は「磁束 φ が一定」のただ1点です。
問題文の「端子電圧と界磁調整器の抵抗値は一定である」という条件が、そのまま界磁電流 If=V/rf が一定 ⇒ 磁束 φ が一定を意味します。分巻は界磁巻線が端子に並列なので、負荷電流がいくら変わっても界磁側には影響しません。

速度が「わずかに」しか下がらない理由を数字で確かめる
速度の式 n=(V−IaRa)/(kEφ) で、分母は一定。動くのは分子の IaRa だけです。電機子抵抗 Ra は小さいので、この項は端子電圧のごく一部にしかなりません。
| 負荷の状態 | 電機子電流 | IaRa(Ra=0.2 Ω、V=200 V の例) | 分子 V−IaRa | 速度(無負荷比) |
| 無負荷 | 5 A | 1 V | 199 V | 100.0 % |
| 半負荷 | 25 A | 5 V | 195 V | 98.0 % |
| 全負荷 | 50 A | 10 V | 190 V | 95.5 % |
| 過負荷(1.5倍) | 75 A | 15 V | 185 V | 93.0 % |
無負荷から全負荷まで動かしても、速度の低下はわずか4.5 %。グラフに描けばほとんど水平にしか見えません。これが「分巻=定速度電動機」と呼ばれる中身です。
一方トルクは電機子電流に正比例するので、負荷電流が2倍になればトルクも2倍。グラフでは原点付近から右上へ伸びるまっすぐな直線になります。問題文が「I0は無負荷電流の値である」と断っているのは、直線が原点ではなく I0 から始まることを示すためです(無負荷でも摩擦や鉄損に打ち勝つだけのトルクが要るため、わずかな電流が流れています)。
直巻との対比で形を確定させる
誤答の多くは直巻電動機の特性図です。両者を並べておけば、取り違えることはありません。
| 分巻(本問) | 直巻 | |
| 磁束 φ | 一定(界磁は端子に並列) | φ ∝ I(界磁は電機子と直列) |
| トルク T | T ∝ I ⇒ 直線 | T ∝ I2 ⇒ 下に凸の曲線 |
| 速度 n | ほぼ水平でわずかに垂下 | 1/I に近い形で大きく低下(無負荷で発散) |
| 呼び名 | 定速度電動機 | 可変速度電動機 |
| 向く用途 | 工作機械・送風機(速度を保ちたい) | 電車・クレーン(始動トルクが要る) |
見分け方は「n が大きく落ちているかどうか」が最も速いです。分巻の n はほぼ水平、直巻の n は急激に落ちる双曲線状——形がまったく違うので一目で区別できます。
グラフ選択問題を速く解くコツ
この種の問題は「2つの曲線のうち、どちらか片方だけを見て絞る」と時間が節約できます。
| チェック項目 | 分巻なら | これで消える誤答の型 |
| ①n の形 | ほぼ水平(わずかに右下がり) | n が大きく落ちている図=直巻の特性 |
| ②T の形 | 直線 | T が急カーブで立ち上がる図=直巻の特性 |
| ③ラベル | 上がっているほうが T、水平なほうが n | T と n を入れ替えた図 |
| ④出発点 | I0 から始まる | 原点から始まる図(無負荷電流を無視) |
③のラベル取り違えは要注意です。曲線の形は正しくてもT と n の名前が逆という選択肢が用意されていることがあります。「右上がりの直線が T」と確認する一手間を惜しまないでください。
なぜ分巻は「わずかに」下がるだけで済むのか
実は分巻電動機の速度には、下げる要因と上げる要因の両方が働いています。
| 要因 | 働き | 効果 |
| 抵抗降下 IaRa の増加 | 逆起電力 E が下がる | 速度を下げる |
| 電機子反作用による磁束の減少 | 分母の φ が小さくなる | 速度を上げる |
この2つが部分的に打ち消し合うため、実機の速度変動はさらに小さくなります。設計によっては負荷が増えると逆に速度が上がってしまうこともあり、これは運転が不安定になるので望ましくありません。補償巻線や補極で電機子反作用を抑えるのは、整流のためだけでなく、こうした特性の安定のためでもあります。
⏱️ 本番での進め方
① グラフを見る前に式で形を決める:分巻なら φ 一定 ⇒ T は直線、n はほぼ水平。
② n の形だけで大半が絞れる。大きく落ちている図は直巻。
③ T と n のラベルを必ず確認。形が正しくても入れ替えてある選択肢がある。
④ 迷ったら「分巻=定速度電動機」という呼び名を思い出す。定速度なら n は水平。
💡 覚え方
分巻は φ 一定がすべての出発点。T=kφIa ⇒ 直線、n=(V−IaRa)/(kφ) ⇒ ほぼ水平でわずかに垂下。直巻は φ∝I なので T は2乗の曲線、n は大きく低下。「分巻=定速度」「直巻=可変速度・大始動トルク」と対で覚える。
⚠️ よくある間違い
直巻の特性図を選ぶのが最頻です。n が大きく落ちている図は直巻——分巻は「ほぼ水平」でなければなりません。もう一つはT と n のラベルの取り違え。右上がりの直線がトルクだと必ず確認してください。
負荷特性・速度特性・トルク特性という3つの呼び名
直流電動機の特性図にはいくつかの呼び名があり、横軸に何を取るかで区別されています。本問は横軸が負荷電流の図なので、速度特性とトルク特性を1枚に重ねたものです。
| 呼び名 | 横軸 | 縦軸 | 何が読めるか |
| 速度特性 | 負荷電流 | 回転速度 n | 負荷が増えたとき速度がどう変わるか |
| トルク特性 | 負荷電流 | トルク T | 電流とトルクの関係(分巻なら直線) |
| 速度・トルク曲線 | 回転速度 | トルク T | 負荷曲線と重ねて安定な運転点を調べる |
3つ目の「速度・トルク曲線」は横軸が違うので混同しないでください。安定な動作点の議論(電動機と負荷の2曲線の交点)はこちらの図で行います。本問のように横軸が電流の図では、交点の話は出てきません。
無負荷電流 I0 は何のために流れているのか
問題文がわざわざ「I0は無負荷電流の値である」と断っているのは、グラフが原点から始まっていないことを示すためです。軸につながっている負荷が何もなくても、電動機はいくらかの電流を消費します。
| 無負荷でも消費されるもの | 中身 | 打ち勝つのに必要なトルク |
| 機械損 | 軸受の摩擦、ブラシと整流子の摩擦、風損 | 回り続けるために必要 |
| 鉄損 | 電機子鉄心のヒステリシス損・渦電流損 | 同上 |
| 界磁回路の電流 | 分巻なので If=V/rf が常に流れている | (トルクとは無関係だが負荷電流には含まれる) |
問題文の「図の負荷電流は電機子電流と界磁電流の和」という但し書きも重要です。横軸は Ia ではなく Ia+If なので、電機子電流がゼロでも横軸の値は If だけ残ります。I0 はこの界磁電流と、機械損・鉄損に打ち勝つための電機子電流を合わせた値です。
したがってトルクの直線は I0 のところで横軸と交わります(負荷トルクがゼロになる点)。原点から立ち上がっている図は、この無負荷電流を無視した誤りということになります。細かい点ですが、問題文が明示している以上、出題者はここも見ていると考えるべきです。
まとめ
| 前提 | 端子電圧・界磁抵抗一定 ⇒ 界磁電流一定 ⇒ φ一定 |
| トルク特性 | T=kφIa ⇒ 負荷電流に比例(右上がりの直線) |
| 速度特性 | n=(V−IaRa)/(kφ) ⇒ ほぼ一定でわずかに垂下 |
| 分巻の呼び名 | 定速度電動機 |
| 直巻との違い | 直巻は T∝Ia2・n は大きく低下 |
| 答え | (5) |
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