電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「V-V結線」は独特の√3が絡む頻出テーマです。本記事では、令和6年度下期 A問題9「V-V結線した変圧器の負荷損」を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。
カギは2つ。V-V結線のバンク容量は√3×(1台の容量)であること、そして負荷損(銅損)は負荷率の2乗に比例すること。この2つで負荷率 0.52 → 銅損 432 W/台 → 2台で 864 W と一気に解けます。
令和6年度下期 機械科目 A問題9:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和6年度下期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題9
電験3種 機械科目 【変圧器】 令和6年度下期 A問題9
定格容量 100 kV・A、定格一次電圧 6.3 kV で特性の等しい単相変圧器が 2 台あり、各変圧器の定格負荷時の負荷損は 1 600 W である。この変圧器 2 台を V-V 結線し、一次電圧 6.3 kV にて 90 kW の三相平衡負荷をかけたとき、2 台の変圧器の負荷損の合計値 [W] として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
ただし、負荷の力率は 1 とする。
(1) 324 (2) 432 (3) 648 (4) 864 (5) 1 440
出題のポイント:V結線の容量は √3 倍であって2倍ではない
単相変圧器2台をV結線したときに送れる三相容量は、2台分の合計ではありません。√3 倍にとどまる——ここが本問の分かれ道です。
V結線では、変圧器の巻線に流れる電流がそのまま線電流になります。Δ結線なら線電流は巻線電流の √3 倍ですが、1相分が欠けているV結線ではその関係が成り立たない——だから容量が伸びません。
本問はこの容量を使って負荷率を求め、銅損を計算させる問題です。「2台だから200 kV・A」と考えてしまうと、負荷率がずれて答えが変わります。

負荷率を求める
2台合計200 kV・A ではない
力率1なので有効=皮相
V結線の容量に対する割合
負荷率は約0.52——V結線の能力の半分ほどしか使っていない状態です。この負荷率は、各変圧器が自分の定格に対してどれだけ働いているかとも一致します。V結線では2台が同じ電流を分担するからです。
銅損は負荷率の2乗に比例する
定格負荷損×負荷率の2乗
0.5202≒0.270
1台あたりの負荷損
選択肢の864に一致

選択肢の作られ方を読む
| 選択肢 | どんな計算をしたか | 誤りの種類 |
| (1) 324 | α=90/200=0.45 として1台分 | 容量を2倍と誤り、かつ1台分で答えた |
| (2) 432 | 正しい α で1台分 | 「2台の合計」を読み落とした |
| (3) 648 | α=0.45 として2台分 | V結線の容量を2倍(200 kV・A)と誤った |
| (4) 864 ← 正解 | α=0.520 で2台分 | なし |
| (5) 1 440 | 1 600×0.45×2 | 2乗を忘れ、かつ容量も誤った |
「V結線の容量を √3 倍と見るか2倍と見るか」と「1台分か2台分か」の2つの軸で、4通りの誤答が作られています。さらに(5)には「2乗を忘れる」誤りまで重ねてある——この単元の代表的な誤りが総ざらいされた問題です。
☝️ ひっかけの作り方:(2) 432 W は「1台分としては正しい値」です。計算過程がすべて正しくても、最後に2倍し忘れれば失点——問題文が「2台の変圧器の負荷損の合計値」とわざわざ書いているのは、そこを見落とす受験者が多いことを知っているからでしょう。
V結線は、どんな場面で選ばれるのか
V結線は「3台のうち1台が壊れたときの応急措置」として説明されることが多いのですが、最初から積極的に選ばれる場面もあります。
| 場面 | ねらい | V結線が向く理由 |
| Δ-Δの1台が故障 | 復旧までの間、給電を続ける | 残る2台だけで三相を送れる |
| 将来の増設を見込んだ初期設置 | 負荷が増えたら3台目を足してΔ-Δにする | 初期投資を2台分に抑えられる |
| 小容量の三相負荷への供給 | 三相動力と単相電灯の両方を1つの設備でまかなう | 異容量V結線にすれば単相負荷も取れる |
3つ目の「異容量V結線」は、日本の配電では非常によく使われています。片方の変圧器を大きくして中間タップを設け、そこから単相100/200 V を取り出す——電柱の上で大小2台の変圧器が並んでいるのを見かけたら、たいていこの構成です。
三相動力と単相電灯を1組の設備でまかなえるので、店舗や小規模工場への供給に適しています。Δ-Δで3台置くより設備が小さく、経済的——利用率0.866 という不利を、設備の簡素さが上回る場面だと言えます。
Δ-Δから1台外すと、送れる電力は6割に落ちる
本問とは逆に、Δ-Δで運転していた設備の1台が故障した場合を考えましょう。残る2台でV結線にすると、送れる三相容量は √3 P——元の 3P に対して57.7 %です。
つまり負荷を約6割まで落とさないと、残った2台が過負荷になります。「2台残っているから2/3は送れる」と考えると危険——実際には0.577倍です。
この0.577 は、変圧器1台あたりで見ると 1.732/2=0.866——残った2台はそれぞれ定格の86.6 %までしか使えないことになります。2つの数字は同じ事実の別の見方で、「元の設備に対して0.577、残った変圧器に対して0.866」と整理しておくと混同しません。
⏱️ 本番での進め方
① V結線の三相容量は √3×(1台の容量)。2倍ではない。
② α=90/173.2≒0.52。この値を2乗すると0.27。
③ 1 600×0.27=432 W(1台)→ 2倍して864 W。
④ 最後に「合計値か1台分か」を問題文で確認する。
💡 覚え方
「V結線は √3 倍、利用率0.866、出力比0.577」——3つの数字をセットで覚えておきましょう。そして「銅損は負荷率の2乗」——この2つの掛け合わせが本問です。


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