変圧器15【電験3種 機械科目】令和6年下期 A問題9 解説|V-V結線の変圧器 負荷損計算

電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「変圧器」は頻出かつ重要なテーマです。今回は、令和6年(2024年)下期 A問題9を題材に、V-V結線における変圧器の負荷損計算について詳しく解説します。

単相変圧器2台を用いたV-V結線の仕組みや、三相負荷をかけた際の各変圧器の負荷率の求め方、そして負荷損が電流の2乗に比例するという重要な公式の使い方まで、ステップ・バイ・ステップで丁寧に紐解いていきます。

目次

令和6年下期 機械科目 A問題9:問題文と選択肢

まずは、実際に出題された問題を確認してみましょう。

電験3種 機械科目 令和6年下期 A問題9の問題文と選択肢
令和6年下期 機械科目 A問題9 問題

問題文

定格容量 \( 100 \text{ kV}\cdot\text{A} \)、定格一次電圧 \( 6.3 \text{ kV} \) で特性の等しい単相変圧器が2台あり、各変圧器の定格負荷時の負荷損は \( 1{,}600 \text{ W} \) である。この変圧器2台をV-V結線し、一次電圧 \( 6.3 \text{ kV} \) にて \( 90 \text{ kW} \) の三相平衡負荷をかけたとき、2台の変圧器の負荷損の合計値 \( [\text{W}] \) として、最も近いものを次の①~⑤のうちから一つ選べ。

ただし、負荷の力率は1とする。

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問題の解説と解答の導き方

この問題の正解は ④ 864 W です。どのようにしてこの解答を導き出すのか、順を追って解説します。

電験3種 機械科目 令和6年下期 A問題9の解説スライド。V-V結線の基礎知識・回路図・解法の手順(ステップ1〜6)・重要公式・理解のポイントがまとめられている。
令和6年下期 機械科目 A問題9 解説

V-V結線とは?(基礎知識)

V-V結線とは、単相変圧器を2台使って三相電力を供給する結線方法です。通常、三相変圧には3台の単相変圧器(Δ結線やY結線)を使用しますが、そのうちの1台を省略した形(V字型)になります。Δ結線の1台を省略した形とも言えます。

V-V結線の利用率は次の式で表されます。

$$\text{利用率} = \frac{\sqrt{3}}{2} \approx 86.6 \%$$

これは、2台の変圧器の容量の合計に対して、実際に三相として出力できる容量の割合を示しています。3台使うΔ結線と比べると効率は下がりますが、1台が故障した場合の応急措置としても活用されます。

V-V結線の回路構成

V-V結線の回路構成は以下のようになります。一次側(6.3 kV)の3本の線(A, B, C)から、2台の変圧器の一次巻線に接続されます。二次側では2台の変圧器の二次巻線から3本の線(a, b, c)が引き出され、三相負荷に接続されます。今回の問題では、三相平衡負荷 \( 90 \text{ kW} \)、力率 \( \cos\theta = 1 \) が接続されています。

【ステップ1】与えられた条件を整理する

問題文から、以下の条件を整理します。

項目
単相変圧器の定格容量\( P_1 = 100 \text{ kV}\cdot\text{A} = 100{,}000 \text{ VA} \)
定格一次電圧\( V_{1n} = 6.3 \text{ kV} = 6{,}300 \text{ V} \)
定格負荷損(1台あたり)\( 1{,}600 \text{ W} \)
三相負荷\( P_3 = 90 \text{ kW} = 90{,}000 \text{ W} \)
力率\( \cos\theta = 1 \)

【ステップ2】定格一次電流を計算する

まず、変圧器1台あたりの定格一次電流 \( I_{1n} \) を求めます。定格容量 \( P_1 \) を定格一次電圧 \( V_{1n} \) で割ることで算出できます。

$$I_{1n} = \frac{P_1}{V_{1n}} = \frac{100{,}000}{6{,}300} \approx 15.87 \text{ A}$$

【ステップ3】V-V結線時の負荷電流を計算する

次に、\( 90 \text{ kW} \) の三相負荷をかけたときに、各変圧器に流れる電流 \( I_2 \) を求めます。三相電力の公式 \( P_3 = \sqrt{3} \times V_{1n} \times I_2 \times \cos\theta \) を用います(今回は力率1)。

$$I_2 = \frac{P_3}{\sqrt{3} \times V_{1n}} = \frac{90{,}000}{\sqrt{3} \times 6{,}300} = \frac{90{,}000}{1.732 \times 6{,}300} = \frac{90{,}000}{10{,}911} \approx 8.25 \text{ A}$$

【ステップ4】負荷率を計算する

負荷率 \( a \) は、実際に流れている電流 \( I_2 \) と定格電流 \( I_{1n} \) の比です。この値が計算の核心となります。

$$a = \frac{I_2}{I_{1n}} = \frac{8.25}{15.87} \approx 0.52 \text{(約52%)}$$

【ステップ5】各変圧器の負荷損を計算する

負荷損は電流の2乗に比例するという性質を利用して、現在の負荷状態での負荷損を計算します。

$$P_{\text{負荷損}} = P_{\text{定格負荷損}} \times \left( \frac{I_2}{I_{1n}} \right)^2$$

$$P_{\text{負荷損}} = 1{,}600 \times \left( \frac{8.25}{15.87} \right)^2 = 1{,}600 \times (0.52)^2 = 1{,}600 \times 0.27 = 432 \text{ W}$$

これにより、変圧器1台あたりの負荷損が \( 432 \text{ W} \) であることがわかりました。

【ステップ6】2台の合計を計算する

問題で求められているのは「2台の変圧器の負荷損の合計値」です。V-V結線では2台の変圧器が同じ電流を流すため、1台分の負荷損を2倍します。

$$\text{合計} = 432 \times 2 = 864 \text{ W}$$

したがって、正解は ④ 864 となります。

覚えておきたい!重要公式と理解のポイント

この問題を解く上で必須となる公式と、理解を深めるためのポイントをまとめました。

重要公式:負荷損の比例関係

変圧器の負荷損(銅損)は、流れる電流の2乗に比例します。これは変圧器の損失計算において最も基本的かつ重要な公式です。

$$\text{負荷損} \propto \text{電流}^2$$

$$P_{\text{負荷損}} = P_{\text{定格負荷損}} \times (a)^2 \quad \text{(a = 負荷率)}$$

また、V-V結線に関する公式も確認しておきましょう。

公式内容
V-V結線の容量\( \sqrt{3} \times V \times I \)
V-V結線の利用率\( \frac{\sqrt{3}}{2} \approx 86.6\% \)
負荷損(任意の負荷率)\( P_{\text{定格負荷損}} \times a^2 \)

理解のポイント:よくある誤りと注意事項

この問題を解く際に陥りやすいミスと、理解を深めるためのポイントを4点にまとめます。

① V-V結線の役割を正確に把握する
単相変圧器2台で三相負荷に対応できる結線方式です。3台使うΔ結線の1台を省略した形であることをイメージしましょう。

② 負荷損の特性を理解する
負荷損(主に銅損)は電流の2乗に比例して増加します。電流が半分になれば、負荷損は \( (1/2)^2 = 1/4 \) になるという二次関数的な変化を意識しましょう。

③ 負荷率の算出が鍵
各変圧器の負荷率 \( a = I_2 / I_{1n} \) を正確に求めることが、計算の核心です。定格電流の計算を丁寧に行いましょう。

④ 「2台分の合計」を忘れない
ステップ5で求めた432 Wは1台分の負荷損です。選択肢に「② 432」があるため、1台分で答えを出してしまう引っかけに注意してください。必ず2台分の合計(864 W)を計算しましょう。

まとめ:V-V結線の負荷損計算を攻略するための3ステップ

今回は、令和6年下期 機械科目 A問題9を通して、V-V結線の変圧器における負荷損の計算方法を解説しました。解法の流れを最後に整理します。

ステップ内容計算結果
1定格一次電流を求める\( I_{1n} \approx 15.87 \text{ A} \)
2三相負荷時の電流を求める\( I_2 \approx 8.25 \text{ A} \)
3負荷率を求める\( a \approx 0.52 \)
41台の負荷損を求める(\( a^2 \) 倍)\( 432 \text{ W} \)
52台分の合計を求める\( 864 \text{ W} \)

定格電流と実際の負荷電流から負荷率を求め、負荷損が負荷率(電流)の2乗に比例することを利用して計算し、最後に2台分の合計を算出する——この3つのポイントを確実にマスターすれば、類似問題にも自信を持って対応できるようになります。電験3種の機械科目では変圧器の効率・損失に関する問題が繰り返し出題されていますので、ぜひ過去問演習を通してしっかりと身につけておきましょう。

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