変圧器14【電験3種 機械】変圧器の最大効率とは?令和5年上期 A問題9 完全解説

電験3種 機械科目 変圧器 令和5年度上期 A問題9 効率が最大になるのはいつ?鉄損=銅損の瞬間

電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「変圧器の最大効率」は最頻出の計算パターンです。本記事では、令和5年度上期 A問題9を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。

覚えることは一つだけ。「効率が最大になるのは銅損=鉄損のとき」。銅損は負荷率の2乗に比例するので、\( a^2 \times 1000 = 250 \) から負荷率 \( a=1/2 \) が出て、あとは効率の定義式に入れるだけです。

目次

令和5年度上期 機械科目 A問題9:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 機械科目 令和5年度上期 A問題9 問題文(変圧器の最大効率)
令和5年度上期 機械科目 A問題9 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度上期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題9

電験3種 機械科目 【変圧器】 令和5年度上期 A問題9

定格容量 50 kV・A の単相変圧器において、力率 1 の負荷で全負荷運転したときに、銅損が 1 000 W、鉄損が 250 W となった。力率 1 を維持したまま負荷を調整し、最大効率となる条件で運転した。銅損と鉄損以外の損失は無視できるものとし、この最大効率となる条件での効率の値 [%] として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1) 95.2  (2) 96.0  (3) 97.6  (4) 98.0  (5) 99.0

出題のポイント:最大効率の負荷率を先に求める

最大効率になるのは鉄損と銅損が等しくなる負荷率です。本問は全負荷時の銅損1 000 W と鉄損250 W が与えられているので、その負荷率がすぐ求まります

最大効率になる負荷率

\( \alpha^{2}P_c=P_i\quad\Longrightarrow\quad \alpha=\sqrt{\dfrac{P_i}{P_c}} \)

銅損は負荷率の2乗に比例、鉄損は一定——両者が等しくなる点を探します

\( \alpha=\sqrt{\dfrac{250}{1\,000}}=\sqrt{0.25} \)
負荷率
鉄損÷全負荷銅損
\( \phantom{\alpha}=0.5 \)
半負荷
定格の半分の負荷で最大効率

0.25 の平方根で0.5——きれいな値になるよう数値が選ばれています「1 000と250 なら比が4:1、平方根を取って2:1、つまり半負荷」と暗算できると速いでしょう。

変圧器の最大効率を銅損と鉄損の一致から98パーセントまで求める流れ
銅損=鉄損から負荷率1/2、出力25 kW、総損失500 Wを求めると、最大効率は約98.0 %です。

そのときの損失と出力を出す

\( \text{出力}=50\times10^{3}\times0.5\times1.0=25\,000\ [\mathrm{W}] \)
出力
定格容量×負荷率×力率
\( \text{銅損}=0.5^{2}\times1\,000=250\ [\mathrm{W}] \)
銅損
負荷率の2乗に比例
\( \text{鉄損}=250\ [\mathrm{W}] \)
鉄損
負荷によらず一定
\( \eta=\dfrac{25\,000}{25\,000+250+250}\times100 \)
効率
規約効率
\( \phantom{\eta}=\dfrac{25\,000}{25\,500}\times100\fallingdotseq 98.0\ [\%] \)
最大効率
選択肢の98.0に一致
変圧器の負荷率と出力と損失から最大効率98パーセントを求める三段計算
負荷率1/2では出力25 kW、銅損と鉄損の合計500 Wとなり、効率は約98.0 %、正解は(4)です。
答え正解は (4) 98.0 %です。銅損が250 W まで下がり、鉄損250 W と等しくなった——この状態が最も効率のよい運転点です。

選択肢の作られ方を読む

⚠️ よくある間違い
(3) 97.6 %全負荷のまま効率を計算した値です(50 000/(50 000+1 000+250)≒97.6 %)。問題文の「負荷を調整し、最大効率となる条件で運転した」を読み飛ばすと、ここに落ちます

興味深いのは、全負荷97.6 %に対して最大効率が98.0 %と、差が0.4ポイントしかないことです。負荷を半分にしても効率はほとんど変わらない——ここでも効率曲線の平坦さが確認できます

負荷率鉄損銅損出力効率
0.25250 W63 W12 500 W97.6 %
0.5(最大効率)250 W250 W25 000 W98.0 %
0.75250 W563 W37 500 W97.9 %
1.0250 W1 000 W50 000 W97.6 %

0.25 と1.0 で効率が同じ97.6 %になっているのが面白いところです。効率曲線は最大効率点を挟んで、ほぼ対称な形——軽すぎても重すぎても、同じだけ効率が落ちるということになります。

なぜ半負荷で最大効率になる設計なのか

この変圧器は鉄損250 W に対して全負荷銅損1 000 W——銅損のほうが4倍大きい設計です。その結果、最大効率点が半負荷という軽めの位置に来ています

配電用変圧器はこうした設計が一般的です。需要家の負荷は昼と夜で大きく変わり、平均すると定格の半分前後——その帯域で最も効率がよくなるよう、鉄損を小さめに抑えます

鉄損を小さくするには、良質な鉄心材料を使うか、鉄心を大きくして磁束密度を下げる——どちらもコストが上がります逆に銅損を小さくするには電線を太くする——こちらもコストが上がりますどちらにどれだけ投資するかが、変圧器の設計思想そのものです。

24時間つなぎっぱなしの配電用変圧器では、鉄損は24時間発生し続けますだから鉄損を減らすほうが、年間の損失電力量には効きます——アモルファス鉄心が採用される理由もここにあります。

負荷率が変わっても効率が落ちにくい理由

本問の変圧器は、負荷率0.25 でも1.0 でも効率97.6 %でした。最大効率の98.0 %との差はわずか0.4ポイント——なぜこれほど平坦なのでしょうか

理由は、損失の合計が負荷率に対して緩やかにしか変わらないからです。鉄損は一定、銅損は2乗で増える——合計は下に凸の曲線になり、最小点の付近では変化がとても小さくなります

損失率(出力に対する損失の割合)

\( \dfrac{\text{損失}}{\text{出力}}=\dfrac{P_i+\alpha^{2}P_c}{\alpha S\cos\theta}=\dfrac{1}{S\cos\theta}\left(\dfrac{P_i}{\alpha}+\alpha P_c\right) \)

\( P_i/\alpha \) と \( \alpha P_c \) の和——相加平均と相乗平均の関係から、両者が等しいときに最小になります。

これが「鉄損=銅損で最大効率」の数学的な根拠です。\( P_i/\alpha+\alpha P_c\ge 2\sqrt{P_i P_c} \)で、等号は \( P_i/\alpha=\alpha P_c \)、つまり \( \alpha^{2}P_c=P_i \) のとき——まさに鉄損と銅損が等しい条件です。

そして相加相乗の不等式が示すとおり、この関数は最小点の近くで平坦になります。だから負荷率が最適値から多少ずれても、効率はほとんど落ちません——変圧器が幅広い負荷で使える理由が、この式に表れています

トップランナー基準という制度

変圧器の効率は、法律でも規制されています省エネ法のトップランナー制度により、変圧器には基準エネルギー消費効率が定められているのです。

その基準は「全負荷の効率」ではなく、実際の使われ方を想定した負荷率で評価されます。油入変圧器なら負荷率40 %、モールド変圧器なら50 %——実運用に近い条件で効率を競わせる仕組みです。

だからメーカーは、その負荷率で最大効率になるよう設計します本問の変圧器が半負荷(50 %)で最大効率になっているのも、まさにこの考え方に沿った設定だと言えます。試験問題の数値が、現実の設計思想を反映している——そう気づくと、計算の意味が違って見えてきます

⏱️ 本番での進め方
① 最大効率の負荷率 α=√(鉄損/全負荷銅損)。250/1000=0.25 → α=0.5。
② そのときの銅損は鉄損と等しい。損失は250×2=500 W。
③ 出力は50 kV・A×0.5=25 kW。η=25 000/25 500≒98.0 %。
④ 全負荷のまま計算した97.6 %が選択肢にある。問題文の「負荷を調整し」を見落とさない。

💡 覚え方
「最大効率は鉄損=銅損。その負荷率は比の平方根」——比が4:1 なら平方根で2:1、つまり半負荷平方根が暗算しやすい数値になるよう問題は作られているので、きれいな値が出たら道筋が正しい合図です。

負荷率に対して一定の鉄損と二乗で増える銅損が0.5で交わるグラフ
鉄損250 Wと銅損1000a²の交点はa=0.5です。この銅損=鉄損の点で効率が最大になります。
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