今回は令和5年度下期 機械科目 A問題5を解説します。遅れ力率で運転する同期電動機のベクトル図として正しいものを5択から選ぶ問題です。
キーは \(\dot V=\dot E+jx_s\dot I_M\)。電圧降下 \(jx_s\dot I_M\) は電流 \(\dot I_M\) より90°進むことを押さえます。
問題文と選択肢

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度下期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題5
円筒形三相同期電動機において,電動機の励磁電流を調整して,遅れ力率θで運転しているものとする。このとき,供給電圧 V̇ [V],電機子電流 İM [A]としたとき,誘導起電力 Ė [V],並びに同期リアクタンスによる電圧降下 jxsİM [V]の関係を示すベクトル図として,正しいものを次の(1)~(5)のうちから一つ選べ。なお,同期リアクタンスの大きさに対して巻線抵抗は十分小さいとみなせるものとする。
※ 選択肢(1)〜(5)のベクトル図は上の問題画像を参照してください。
出題のポイント:3つの条件を順に当てはめる
ベクトル図を選ぶ問題は、図を「眺めて」選ぶと必ず迷います。満たすべき条件を先に3つ書き出し、選択肢を機械的に落としていくのが確実です。
| 条件 | 内容 | 図での見え方 |
| ① 遅れ力率 | \( \dot{I}_M \) は \( \dot{V} \) より θ 遅れる | 電流が電圧より時計回りにずれている |
| ② j による90°回転 | \( jx_s\dot{I}_M \) は \( \dot{I}_M \) より90°進む | \( jx_s\dot{I}_M \) と \( \dot{I}_M \) が直角 |
| ③ 電動機の電圧式 | \( \dot{V}=\dot{E}+jx_s\dot{I}_M \) | \( \dot{E} \) と \( jx_s\dot{I}_M \) をつなぐと \( \dot{V} \) の先端で閉じる |
このうち②が最も判定しやすいです。直角記号が「電流と電圧降下の間」にあるか、それとも別の場所にあるかを見るだけ——これで多くの選択肢が落ちます。

電動機の電圧式が発電機と逆になる理由
発電機は内部で起電力を作り、電機子巻線のリアクタンスで電圧を落としてから端子に出します——だから端子電圧は誘導起電力より小さく、E=V+jxsI。
電動機は外から電圧をかけ、リアクタンスで電圧を落とした残りが誘導起電力と釣り合います——だから V=E+jxsIM。電流の向きが逆なので、式の形も入れ替わるわけです。
⚠️ よくある間違い
発電機の式をそのまま電動機に持ち込むのが最も多い誤りです。発電機の図では \( \dot{E} \) が \( \dot{V} \) より長く、電動機の図では \( \dot{E} \) が \( \dot{V} \) より短い——矢印の長さの大小を見るだけでも、電動機の図かどうかの当たりがつきます。
選択肢を落としていく
まず②の直角条件で見ます。\( jx_s\dot{I}_M \) が \( \dot{I}_M \) と直角になっていない図——たとえば \( \dot{E} \) と直角になっている図は、その時点で誤りです。
次に③の閉じ方を見ます。\( \dot{E} \) の先端から \( jx_s\dot{I}_M \) を継ぎ足したとき、\( \dot{V} \) の先端にぴたりと届く——これが電動機の図です。逆に \( \dot{V} \) の先端から継ぎ足して \( \dot{E} \) に届く図は発電機の図で、本問では誤りになります。

図から読み取れる追加情報
正しいベクトル図が描ければ、そこから多くの量が読み取れます。図を選ぶ問題は「図が描けるか」を問うているので、描いたあとに何が読めるかまで確認しておくと理解が深まります。
| 読み取れる量 | 図のどこを見るか |
| 力率 cos θ | \( \dot{V} \) と \( \dot{I}_M \) のなす角 |
| 負荷角 δ | \( \dot{V} \) と \( \dot{E} \) のなす角 |
| 電機子反作用の向き | 遅れ電流なので減磁作用 |
| 励磁の状態 | 遅れ力率=不足励磁(\( E \) が小さい) |
問題文の「励磁電流を調整して、遅れ力率θで運転している」という一文は、不足励磁の状態を作ったという意味です。励磁を強めていけば力率1を経て進み力率になり、そのときは E が V より長くなります——V曲線の左半分にいる状態が本問の図だと分かります。
⏱️ 本番での進め方
① 直角記号がどこに付いているかを最初に見る。電流と電圧降下の間なら残す。
② 電動機は V=E+jxsIM。E に継ぎ足して V に届く図を選ぶ。
③ 電動機なら E は V より短い。長さの大小も手がかりになる。
④ 図を選ぶ問題は「消去法」。条件を1つずつ当てて落とす。
💡 覚え方
「j は反時計回りに90°回す記号」——だから \( jx_s\dot{I}_M \) は必ず \( \dot{I}_M \) と直角。そして「電動機は V が親玉(V=E+jxsIM)」——この2つを覚えておけば、どんな配置の図でも判定できます。

励磁を変えると、この図はどう動くか
問題文は「励磁電流を調整して、遅れ力率θで運転している」と書いています。では励磁を変えると、いま選んだ図はどう変形するのでしょうか。
| 励磁の状態 | 誘導起電力 E | 電機子電流の位相 | 図の見え方 |
| 不足励磁 | 小さい | 遅れ | \( \dot{I}_M \) が \( \dot{V} \) より下(本問の図) |
| 適正励磁 | 中くらい | 同相(力率1) | \( \dot{I}_M \) が \( \dot{V} \) と重なる |
| 過励磁 | 大きい | 進み | \( \dot{I}_M \) が \( \dot{V} \) より上 |
機械的な出力が同じなら、どの励磁でも有効電力は同じです。つまり \( I\cos\theta \) は一定——ベクトル図では \( \dot{I}_M \) の先端が水平な直線上を動くことになります。
力率1のときに電流の大きさが最小になり、遅れ側にも進み側にも離れるほど電流が増えます——この様子を励磁電流の関数として描いたものがV曲線です。本問の図は、そのV曲線の左側(不足励磁側)にいる状態を切り取ったものだと分かります。
実務では、同期電動機をあえて過励磁で運転して進み無効電力を供給し、工場全体の力率を改善する使い方があります。負荷を回しながら力率改善もこなす——コンデンサと違って連続的に調整できるのが同期電動機の強みです。ベクトル図が読めると、こうした運用の意味まで見通せるようになります。
まとめ
| 関係式 | \(\dot V=\dot E+jx_s\dot I_M\) |
| 直角条件 | \(jx_s\dot I_M\perp\dot I_M\)(90°進み) |
| 答え | (3) |
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