電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「変圧器」は頻出かつ重要なテーマの一つです。本記事では、令和5年度上期 B問題15で出題された「単巻変圧器の直列巻線電流と自己容量」について、はじめての方でも確実に解けるように、(a)(b)の2問を一歩ずつ丁寧に解説します。
この問題は、単巻変圧器の(a)直列巻線に流れる電流、(b)自己容量を求めるB問題です。ポイントは、直列巻線を流れる電流=二次線電流 I₂であることと、自己容量=(V₂−V₁)×I₂という関係。【機械】平成30年度A問題9・【機械】平成19年度A問題6と同じ単巻変圧器の考え方です。
令和5年度上期 機械科目 B問題15:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和5年度上期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 B問題15
電験3種 機械科目 【変圧器】 令和5年度上期 B問題15
定格一次電圧 3000 V、定格二次電圧が 3300 V の単相単巻変圧器について、次の(a)及び(b)の問に答えよ。なお、巻線のインピーダンス、鉄損は無視できるものとする。
(a) この単相単巻変圧器の二次側に負荷を接続したところ、一次電圧は 3000 V、一次電流は 100 A であった。この変圧器の直列巻線に流れる電流値 [A] として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 9.09 (2) 10.0 (3) 30.9 (4) 90.9 (5) 110(b) この変圧器の自己容量 [kV·A] として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
(1) 15.8 (2) 27.3 (3) 30.0 (4) 47.3 (5) 81.9
出題のポイント:直列巻線に流れるのは二次電流
単巻変圧器では、2つの巻線に流れる電流が違います。直列巻線には二次電流がそのまま、分路巻線には一次と二次の差の電流——この区別が(a)の答えを決めます。
| 巻線 | 流れる電流 | 本問での値 |
| 直列巻線 | 二次電流 I2 | 90.9 A |
| 分路巻線 | I1−I2 | 100−90.9=9.1 A |
昇圧して使う場合、一次側の電流のほうが大きいことに注意します。3 000 V で100 A 入れて3 300 V で出すのですから、電力が保存されるなら二次電流は小さくなる——90.9 A です。

(a) 直列巻線の電流
損失を無視すれば入力=出力
一次3 000 V・100 A
これが直列巻線に流れる
⚠️ よくある間違い
(1) 9.09 Aは分路巻線に流れる差の電流(100−90.9=9.09)です。どちらの巻線を聞かれているかを取り違えると、ここに落ちます。
(5) 110 Aは比を逆にした値(100×3 300/3 000)——昇圧なら二次電流は減るはずですから、100 A より大きい答えはあり得ません。
(b) 自己容量を求める
自己容量とは、変圧器が実際に電磁誘導で受け渡している容量です。直列巻線が受け持つ電圧は、一次と二次の差の300 V だけ——だから自己容量はその300 V と二次電流の積になります。
直列巻線の電圧×直列巻線の電流
電圧差300 V
約27.3 kV・A

自己容量が小さいことの意味
| 値 | 意味 | |
| 負荷容量 | 300 kV・A | 実際に負荷へ供給している容量 |
| 自己容量 | 27.3 kV・A | 変圧器の大きさを決める容量 |
| 比 | 9.1 % | (V2−V1)/V2=300/3 300 |
300 kV・A の負荷を、27.3 kV・A の変圧器でまかなえる——これが単巻変圧器の圧倒的な強みです。普通の二巻線変圧器なら300 kV・A の機器が必要ですから、大きさも価格も10分の1近くになります。
残りの272.7 kV・A はどこへ行ったのか——変圧されずに、分路巻線を通って直接負荷へ流れています。電磁誘導を経由するのは差分だけ——だから変圧器が受け持つ仕事が小さくて済むのです。
電圧比が1に近いほど、この効果は大きくなります。本問は3 000→3 300 で比が1.1——自己容量は負荷容量の9.1 %。もし3 000→6 000(比2)なら50 %となり、利点は半減します。
降圧で使う場合はどう変わるか
本問は3 000 V を3 300 V に昇圧する使い方でした。では同じ変圧器を、3 300 V を3 000 V に降圧する向きで使ったらどうなるでしょうか。
| 昇圧(本問) | 降圧 | |
| 一次側 | 分路巻線(3 000 V) | 巻線全体(3 300 V) |
| 二次側 | 巻線全体(3 300 V) | 分路巻線(3 000 V) |
| 直列巻線に流れる電流 | 二次電流(小さいほう) | 一次電流(小さいほう) |
| 分路巻線に流れる電流 | 差の電流 | 差の電流 |
| 自己容量 | (V2−V1)×I2 | 電圧差×小さいほうの電流(同じ値) |
どちらの向きで使っても、直列巻線には「電圧の高い側の電流」が流れます。高圧側の電流のほうが小さいので、直列巻線は細くてよい——この関係は変わりません。
自己容量も同じ値になります。直列巻線が受け持つのは電圧差の300 V、流れるのは高圧側の電流——向きを変えても、この積は変わらないからです。
分路巻線の電流に注目する
本問で分路巻線に流れるのは 100−90.9=9.09 Aでした。一次電流100 A の1割にも満たない——この小ささが単巻変圧器の経済性の源です。
差の電流
自己容量/負荷容量の比と一致
分路巻線の電流の割合(9.1 %)が、自己容量と負荷容量の比(9.1 %)とぴったり一致しています。偶然ではありません——どちらも \( (V_2-V_1)/V_2 \) から来ているからです。
「電圧差の割合=自己容量の割合=分路巻線の電流の割合」——3つが同じ値になると知っておけば、どれか1つを求めれば残りも分かります。検算にも使える、便利な関係です。
⏱️ 本番での進め方
①(a) V1I1=V2I2 から I2=90.9 A。直列巻線はこの電流。
② 昇圧なら二次電流は一次より小さい。100 A 超の肢は消せる。
③(b) 自己容量=(3 300−3 000)×90.9≒27.3 kV・A。
④ 分路巻線の9.09 A が(a)の誤答に置かれている。どちらの巻線か確認。
💡 覚え方
「直列巻線は負荷と直列だから二次電流、分路巻線は差の電流」——そして「自己容量は電圧差×二次電流」。電圧差の分しか変圧器は働いていないと理解すれば、公式を忘れても組み立て直せます。
関連問題:単巻変圧器は繰り返し問われる
単巻変圧器の構造と容量は、穴埋め問題としても出題されています(変圧器47:単相単巻変圧器(分路巻線・直列巻線・負荷容量)/変圧器48:同(令和6年度下期))。そちらは用語と定義、本問は数値計算——2つの形で問われる定番テーマです。


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