同期機52【電験3種 機械】永久磁石同期モータ(IPMSM・SPMSM)の穴埋め!令和4年下期 A問題6 完全解説

電験3種 機械科目 同期機 令和4年度下期 A問題6 磁石を埋め込むか表面か!IPMSMとSPMSM

今回は令和4年度下期 機械科目 A問題6を解説します。小形交流モータ(永久磁石同期モータ)の分類とリラクタンストルクを問う穴埋め問題です。

永久磁石同期モータは回転磁界と同じ速度で回転し、埋込磁石形(IPMSM)と表面磁石形(SPMSM)に分類。埋込形はリラクタンストルクも利用できます。

目次

問題文と選択肢

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和4年度下期 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題6

 次の文章は,小形交流モータに関する記述である。

 モータの固定子がつくる回転磁界中に,永久磁石を付けた回転子を入れると,回転子は回転磁界(ア)で回転する。これが永久磁石同期モータの回転原理である。

 永久磁石形同期モータは,回転子の構造により,(イ)磁石形同期モータと(ウ)磁石形同期モータに分類される。(イ)磁石形同期モータは,構造的に小型化・高速化に適しており,さらに(エ)トルクが利用できる特徴がある。(エ)トルクは,固定子と回転子の鉄心(電磁鋼板)との間に働く回転力のことである。この回転力のみを利用したモータは,永久磁石形同期モータに比べて,材料コストが(オ)という特徴がある。空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして正しいものを一つ選べ。

(ア)(イ)(ウ)(エ)(オ)
(1)より低い速度表面埋込リラクタンス低い
(2)より低い速度埋込表面コギング低い
(3)と同じ速度埋込表面リラクタンス高い
(4)と同じ速度埋込表面リラクタンス低い
(5)と同じ速度表面埋込コギング高い

出題のポイント:磁石の位置で名前が変わる

永久磁石同期モータ(PMSM)は、回転子に永久磁石を貼るか埋めるかで2種類に分かれますそしてこの構造の違いが、そのまま使えるトルクの種類の違いになります

表面磁石形(SPMSM)埋込磁石形(IPMSM)
磁石の位置回転子の表面に貼り付ける回転子鉄心の内部に埋め込む
遠心力への強さ弱い(飛散のおそれ)強い(鉄心が押さえる)
高速回転不向き向く
突極性なし(磁気的に一様)あり
使えるトルクマグネットトルクのみマグネットトルク+リラクタンストルク
主な用途サーボモータなど電気自動車・エアコン圧縮機など

埋め込むと、磁石のある方向とない方向で磁気抵抗が変わります——これが突極性です。突極性があると、鉄心が「磁気抵抗の小さい向きに揃おうとする力」を利用できる——これがリラクタンストルクです。

永久磁石同期モータの同期速度、IPMSM、SPMSM、リラクタンストルク、材料コストを示す図
同期速度、磁石の位置、利用するトルク、磁石の有無を順に対応させます。

空欄を一つずつ確定する

(ア)永久磁石の回転子は何速で回るか

回転磁界の中に永久磁石を置くと、磁石はN極とS極の引き合いで回転磁界に引きずられます磁石自体が磁極なので、すべりは生じません——回転磁界と同じ速度(同期速度)で回ります

誘導電動機なら「回転磁界より少し遅い速度」です。誘導機は回転磁界との相対速度がなければ回転子に電流が流れず、トルクが出ないからです。永久磁石はもともと磁力を持っているので、その必要がありません——だから同期速度で回れるのです。

(イ)(ウ)小型化・高速化に適するのはどちら

表面に貼った磁石は、高速回転すると遠心力で剥がれる危険があります実際、表面磁石形では磁石の外側を保護管で締める必要があり、その分だけ空隙が広がって性能が落ちます

埋込磁石形なら回転子鉄心そのものが磁石を保持するので、高速回転させても飛散しません——だから(イ)が埋込、(ウ)が表面です。

(エ)鉄心どうしに働く回転力

問題文が「固定子と回転子の鉄心(電磁鋼板)との間に働く回転力」と定義してくれています磁石ではなく鉄心が主役のトルク——これがリラクタンストルクです。

☝️ ひっかけの作り方:選択肢にある「コギングトルク」も鉄心が関わる現象ですが、こちらはスロットと磁石の位置関係で生じる脈動トルクで、むしろ抑えたい厄介者です。「利用できる特徴がある」という問題文の書きぶりから、積極的に使えるトルク=リラクタンストルクだと判断できます。

(オ)リラクタンストルクだけを使うモータの材料コスト

リラクタンストルクだけで回すモータには、永久磁石が要りません永久磁石にはネオジムやジスプロシウムといった希土類が使われ、価格が高く供給も不安定です——それを使わずに済むのですから、材料コストは低くなります

令和4年下期機械A問題6の空欄を同じ速度、埋込、表面、リラクタンス、低いと確定する図
5空欄の組合せは、と同じ速度・埋込・表面・リラクタンス・低いとなり、正解は(4)です。
答え(ア)と同じ速度 (イ)埋込 (ウ)表面 (エ)リラクタンス (オ)低い——正解は (4)です。

リラクタンストルクだけで回すモータ

(オ)で触れられている「この回転力のみを利用したモータ」には、実際にいくつかの種類がありますいずれも永久磁石を使わないのが特徴です。

名前回転子の構造特徴
シンクロナスリラクタンスモータ(SynRM)鉄心に空隙(フラックスバリア)を設ける正弦波駆動で静かに回る。効率も高い
スイッチトリラクタンスモータ(SRM)固定子・回転子とも突極、巻線は集中巻構造が頑丈で安価。騒音・トルク脈動が大きい
VR形ステッピングモータ歯車状の鉄心のみ無通電時の保持力(ディテントトルク)を持たない

希土類の価格高騰と供給リスクを受けて、磁石を使わないモータの重要性が高まっています電験の出題でも、この分野は近年になって登場した比較的新しいテーマです——用語と構造の対応を押さえておけば得点源になります

⏱️ 本番での進め方
①(ア)は「永久磁石=すべりなし=同期速度」。ここで2肢が消える。
②(エ)は問題文の定義文(鉄心どうしに働く力)から即リラクタンス。
③(オ)は「磁石が要らない=希土類が要らない=安い」。
④ 残るのは(イ)(ウ)の順序だけ。埋込のほうが丈夫=高速向き。

💡 覚え方
「貼るのが表面、埋めるのが埋込。埋めると突極性が出てリラクタンストルクが使える」そして「磁石を使わなければ安い」——この2文で5つの空欄すべてが決まります

IPMSM、SPMSM、同期リラクタンスモータの回転子構造とトルクを比較する図
IPMSMは埋込磁石、SPMSMは表面磁石、SynRMは磁石なしでリラクタンストルクを利用します。

2種類のトルクは、どう足し合わさるのか

埋込磁石形が「リラクタンストルクも利用できる」というとき、2つのトルクは単純に足されるわけではありませんそれぞれ最大になる電流の位相が違うからです。

マグネットトルクリラクタンストルク
発生源永久磁石と電機子電流の吸引・反発鉄心が磁気抵抗の小さい向きへ揃おうとする力
電流に対する依存電流に比例電流の2乗に比例
最大になる電流位相磁石軸と直角のときそこから45°ずれたとき
表面磁石形での大きさこれだけほぼ0

2つの山の頂点がずれているので、合成トルクが最大になるのは両者の中間の位相になります。だから埋込磁石形の駆動では、電流の位相を意図的に進めて運転します——これが「最大トルク制御」と呼ばれる制御です。

この位相調整はインバータが行います逆に言えば、埋込磁石形はインバータでの可変速駆動を前提とした構造——商用電源に直接つないで使うモータではありません電気自動車やエアコンの圧縮機で採用されているのは、そもそもインバータ駆動だからです。

もう一つの利点が弱め界磁制御です。高速回転では誘導起電力が電源電圧に近づき、それ以上回せなくなりますそこで電流位相をさらに進めて磁石の磁束を打ち消し、見かけの起電力を下げる——埋込磁石形は突極性があるためこの制御が効きやすく、広い速度範囲で使えます問題文の「小型化・高速化に適しており」の背後には、この制御性の高さもあるのです。

まとめ

(ア)と同じ速度
(イ)埋込
(ウ)表面
(エ)リラクタンス
(オ)低い
答え(4)

▼あわせて解きたい関連問題
・スイッチトリラクタンスモータ:【機械】令和7年度上期A問題7
・ステッピングモータ:【機械】令和4年度上期A問題6

📚 次に解くべき関連問題
【機械】令和7年度上期A問題7(同期機51)
【機械】令和4年度上期A問題6(同期機50)
【機械】令和6年度下期A問題7(同期機53)
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