電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「電圧変動率の近似式」は毎年のように顔を出す定番テーマです。本記事では、令和3年度 A問題9を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。
この問題の気づきポイントは、力率 1.0 なら近似式が \( \varepsilon = p \) だけになること、そして百分率抵抗降下 p は「全負荷銅損÷定格容量」そのものだということ。計算は割り算1回です。
令和3年度 機械科目 A問題9:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和3年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題9
電験3種 機械科目 【変圧器】 令和3年度 A問題9
定格容量 500 kV・A の三相変圧器がある。負荷力率が 1.0 のときの全負荷銅損が 6 kW であった。このときの電圧変動率の値 [%] として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし、鉄損及び励磁電流は小さく無視できるものとし、簡単のために用いられる電圧変動率の近似式を利用して解答すること。
(1) 0.7 (2) 1.0 (3) 1.2 (4) 2.5 (5) 3.6
出題のポイント:力率1.0 なので %リアクタンス降下が要らない
電圧変動率の近似式には、%抵抗降下 p と %リアクタンス降下 q の2つが登場します。本問では q が与えられていません——それでも解けるのは、力率が1.0 だからです。
力率1.0 なら cos θ=1、sin θ=0——q の項がまるごと消えます。だから ε=pとなり、%抵抗降下さえ求めれば答えが出ます。
問題文が「鉄損及び励磁電流は小さく無視できる」と断っているのは、等価回路を簡単な直列回路として扱ってよいという意味です。近似式そのものが、この前提のうえに立っています。

%抵抗降下は「銅損÷定格容量」
なぜ「銅損÷定格容量」になるのか——全負荷銅損は \( I_n^{2}r \)(三相なら3倍)、定格容量は \( V_n I_n \)(三相なら3倍)です。比を取ると3も In も約分されて \( rI_n/V_n \) が残ります。
全負荷銅損6 kW、定格容量500 kV・A
単位をそろえて割るだけ
力率1.0 なので p がそのまま答え

選択肢の作られ方を読む
⚠️ よくある間違い
(5) 3.6 %は1.2 に3を掛けた値です。「三相だから3倍」と考えてしまうと、ここに落ちます。
(1) 0.7 %は1.2 を √3 で割った値——やはり三相の係数を余計に入れたケースです。
「銅損÷定格容量」はどちらも三相分の値ですから、3も √3 も入れる必要がありません。比を取る計算では、両方に同じ係数が掛かっていれば約分される——この感覚があると、余計な係数を入れずに済みます。
☝️ ひっかけの作り方:力率1.0 なのに q を探そうとして手が止まるのも、この問題のねらいです。「与えられていない量は使わない」——問題文に q の情報がないということは、q が要らない条件になっているはず。そう考えれば、力率1.0 の意味に気づけます。
力率が1でないときはどうなるか
もし力率が0.8(遅れ)で、%リアクタンス降下 q が5 %だったとしましょう。ε=1.2×0.8+5×0.6=0.96+3.0=3.96 %——いっきに3倍以上になります。
| 力率 | cos θ | sin θ | ε(p=1.2、q=5 と仮定) |
| 1.0 | 1.0 | 0 | 1.2 % |
| 0.8 遅れ | 0.8 | 0.6 | 3.96 % |
| 0.8 進み | 0.8 | −0.6 | −2.04 %(電圧が上がる) |
変圧器では p より q のほうが大きいのが普通ですから、電圧変動率は力率に強く左右されます。進み力率では ε が負になり、負荷をかけたほうが電圧が上がる——これは同期発電機の電圧変動率が力率で符号を変えるのと同じ現象です。
本問が力率1.0 を指定しているのは、q を与えずに済ませるための設定であると同時に、「p=銅損÷容量」という関係を確実に問うためでもあります。
近似式はどこから来るのか
電圧変動率の近似式 ε≒p cos θ+q sin θ は、どこから出てきたのでしょうか。ベクトル図をたどると、その正体が見えてきます。
変圧器の等価回路は、抵抗 r とリアクタンス x が直列に入った形です。二次側の端子電圧を基準にすると、無負荷電圧 E は
ここで、虚部(第2項)は実部に比べてとても小さいのがポイントです。変圧器の %Z はせいぜい数%ですから、rI や xI は V に比べて1桁以上小さい——その差をさらに2乗するので、虚部の寄与はほとんど無視できます。
虚部を捨てる
電圧変動率
V で割る
%抵抗降下と%リアクタンス降下
つまり近似式は「三平方の斜辺を、長いほうの辺で代用した」ものです。%Z が小さい変圧器だからこそ許される近似——同期発電機のように %Z が80 %もある機器では、この近似は使えません。
問題文が「簡単のために用いられる電圧変動率の近似式を利用して」とわざわざ指定しているのは、厳密式で解いても答えが微妙に変わるからです。指定に素直に従うのが正解——電験では「近似式を使え」という指示は、計算を簡単にする親切だと受け取ってよいでしょう。
より精度を上げたい場合は、捨てた虚部を2次の項として加えた式ε≒p cos θ+q sin θ+(q cos θ−p sin θ)2/200が使われます。電験3種で必要になることはまずありませんが、「近似には次の項がある」と知っておくと、近似式の位置づけが正しくつかめます。
⏱️ 本番での進め方
① ε=p cosθ+q sinθ。力率1.0 なら ε=p。
② p=全負荷銅損÷定格容量×100。6/500×100=1.2 %。
③ 三相でも3や √3 は入らない。比を取るので約分される。
④ 選択肢に3倍・1/√3 倍の値があれば、係数の罠を疑う。
💡 覚え方
「%抵抗降下=銅損÷容量」——この関係は電力科目の %Z 計算でもそのまま使えます。そして「力率1なら電圧変動率=%抵抗降下」——2文で本問は終わりです。


コメント