電動機応用10【電験3種 機械】巻上機で質量物を巻き上げる際の電動機出力計算!令和3年 A問題10 完全解説

電験3種 機械科目 電動機応用 令和3年度 A問題10 重い荷物を巻き上げる!必要な出力は何kW?

今回は令和3年度 機械科目 A問題10を解説します。質量1000kgの物体を毎秒0.5mの一定速度で巻き上げる巻上機の電動機出力を、機械効率90%の条件で求める計算問題です。

巻き上げに要する動力P=9.8×質量×速度〔W〕をまず求め、機械効率ηで割って電動機出力Pm=P/ηを求めます。

目次

令和3年度 機械科目 A問題10:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 機械科目 令和3年度 A問題10 問題文(巻上機で質量物を巻き上げる際の電動機出力計算)
令和3年度 機械科目 A問題10 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和3年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題10

電験3種 機械科目 【電動機応用】 令和3年度 A問題10

 巻上機によって質量1000kgの物体を毎秒0.5mの一定速度で巻き上げているときの電動機出力の値〔kW〕として,最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

 ただし,機械効率は90〔%〕,ロープの質量及び加減速に要する動力については考慮しないものとする。

(1)0.6 (2)4.4 (3)4.9 (4)5.5 (5)6.0〔kW〕

出題のポイント:効率は「掛ける」ではなく「割る」

巻上機の問題で最も多い失敗が、効率の使い方です。電動機出力を求めるなら効率で割る——掛けてはいけません

理由は単純です。電動機が出した力の一部は摩擦などで失われ、荷に届くのはその一部だけ——だから電動機は、荷が必要とする以上の出力を出さなければならないのです。

荷を持ち上げる動力電動機出力
記号P=MgvPm=P/η
本問の値4.9 kW5.44 kW
大小関係小さい★必ず大きい

「電動機のほうが大きい」——この当たり前の確認が最良の検算です。4.9×0.9=4.41 kW という答えが出たら、掛け算と割り算が逆——選択肢(2) 4.4 はまさにその誤答として置かれています。

電動機から巻上ドラムへ動力を伝え、質量1000kgの荷を毎秒0.5mで引き上げる巻上機の力とエネルギーの流れ図
荷の機械出力を求め、機械効率0.90で割って電動機出力へ戻します。

公式の意味を理解する

巻上機の電動機出力

\( P=\dfrac{9.8Mv}{\eta}\times10^{-3}\ [\mathrm{kW}] \)

9.8Mv が荷を持ち上げるのに必要な動力〔W〕——それを機械効率ηで割ると、電動機が出さなければならない出力になります。

なぜ 9.8Mv なのか——力×速度=動力だからです。質量M〔kg〕の物体を持ち上げるのに必要な力は Mg=9.8M〔N〕——それを速度v〔m/s〕で動かすので、動力は 9.8Mv〔W〕になります。

\( F=Mg=1000\times9.8=9800\ [\mathrm{N}] \)
必要な力
重力に逆らって持ち上げる
\( P=Fv=9800\times0.5=4900\ [\mathrm{W}]=4.9\ [\mathrm{kW}] \)
荷の動力
力×速度
\( P_m=\dfrac{P}{\eta}=\dfrac{4.9}{0.90}\fallingdotseq 5.44\ [\mathrm{kW}] \)
電動機出力
★効率で割る
令和3年度A問題10で荷の出力4.9キロワット、電動機出力約5.44キロワット、最も近い5.5キロワットから答え4とする図
Pm≒5.44kWなので、最も近い5.5kWの(4)が正解です。
答え正解は (4) 5.5 kWです。計算値5.44 kW に最も近いのが5.5——選択肢(3) 4.9 は効率を考慮する前の値です。

⚠️ よくある間違い
(3) 4.9 kW荷の動力そのもの——効率を反映し忘れた値です。
(2) 4.4 kW効率を掛けてしまった値(4.9×0.9)。
(1) 0.6 kWgを掛け忘れた場合——1000×0.5=500 W という質量と速度だけの積です。3つの典型的な誤りが、すべて選択肢に用意されていると考えてください。

「一定速度」という条件の意味

問題文の「一定速度で」「加減速に要する動力については考慮しない」——この但し書きにも意味があります。

状態必要な力理由
一定速度(本問)Mg のみ加速度が0なので慣性力が不要
加速中Mg + Ma慣性に打ち勝つ力が追加で要る
減速中Mg − Ma慣性が助けてくれる

加速中は、重力に加えて慣性力にも打ち勝つ必要があります——だから起動時に最も大きな出力が要る実際の巻上機では、この起動時のピークで電動機容量が決まることも多いのです。

減速中は逆に、荷の位置エネルギーと運動エネルギーが電動機を回そうとします——回生制動の出番です。下降時には荷が電動機を回すので、発電機として働かせてブレーキをかける——エレベータやクレーンで実際に使われている技術です。

⏱️ 本番での進め方
① 荷の動力=9.8×質量×速度。単位はW。
② 電動機出力=荷の動力÷効率。★掛けるのではなく割る。
③ 4.9÷0.9=5.44 →最も近い5.5。
④ 検算は「電動機出力>荷の動力」。逆なら計算違い。

💡 覚え方
「9.8Mv を η で割る」——巻上機の問題はこれだけそして「電動機のほうが必ず大きい」——損失を補うぶん余分に出す必要があるからです。

同じ公式を速度について解く問題が令和7年度上期 A問題11にあります(電動機応用:巻上機の巻上速度を逆算する)。同じ式を、どの文字について解くかが違うだけ——セットで解いておくと式変形に強くなります

荷の機械出力PイコールMgvと電動機出力PmイコールP割るηを示し、PmがPより大きいことを示す図
損失を補うため、必要な電動機出力は荷の出力より大きくなります。

巻上機のトルクと電動機の選定

電動機出力が5.44 kW と分かりましたが、実際にはトルクも重要です。出力=トルク×角速度なので、回転速度が決まればトルクも決まります

回転体の出力とトルク

\( P=\omega T=\dfrac{2\pi N}{60}T\ [\mathrm{W}] \)

N は回転速度〔min-1〕、T はトルク〔N·m〕——同じ出力なら、回転が遅いほど大きなトルクが要ることになります。

回転速度必要なトルク(5.44 kW のとき)電動機の大きさ
1500 min-1約34.6 N·m小さくて済む
750 min-1約69.3 N·m大きくなる
100 min-1約520 N·m非常に大きい

だから巻上機では、高速で回る電動機と減速機を組み合わせるのが一般的です。電動機は1500 min-1 で回し、減速機で回転を落としてトルクを増やす——そのほうが装置全体が小さく安くなるからです。

本問の「機械効率90 %」には、この減速機やドラムの損失が含まれます歯車のかみ合い、軸受の摩擦、ロープの曲げ抵抗——それらをまとめて10 % の損失として扱っているわけです。

下降時は効率の掛け方が逆になる

荷を下ろすときは、荷が電動機を回そうとします——電動機は発電機として働き、ブレーキをかける側になります。

このとき損失は、荷が出したエネルギーから差し引かれます電動機側で回収できるのは 9.8Mv×η——上昇時は割り、下降時は掛けるという違いが生じるのです。

上昇(巻上げ)下降(巻下げ)
エネルギーの向き電動機 → 荷荷 → 電動機
電動機の役割電動機発電機(制動)
効率の扱い9.8Mv ÷ η★9.8Mv × η

損失は必ず「もらう側」を減らす方向に働きます——この考え方さえ押さえておけば、上昇でも下降でも間違えません下降時の出力を問う問題も出題されるので、区別しておいてください。

まとめ

P=9.8Mv4.9kW
Pm=P/η≒5.5kW
答え(4)

▼あわせて解きたい関連問題
・巻上機の電動機出力(令和6年度上期):【機械】令和6年度上期A問題11
・巻上機の巻上速度を逆算(令和7年度上期):【機械】令和7年度上期A問題11

📚 次に解くべき関連問題
【機械】令和6年度上期A問題11(電動機応用11)
【機械】令和7年度上期A問題11(電動機応用12)
【機械】令和5年度下期A問題11(電動機応用15)
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