変圧器38【電験3種 機械】変圧器の構造(鉄心・巻線・冷却・呼吸作用)とは?令和2年度 A問題8 完全解説

電験3種 機械科目 令和2年度 A問題8 変圧器の構造

電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目では、変圧器の構造に関する論説問題も出題されます。本記事では、令和2年度 A問題8で問われた「鉄心・巻線・冷却方式・変圧器油・呼吸作用」に関する記述から誤っているものを選ぶ問題を、構造図を交えて丁寧に解説します。

この問題のカギは、鉄心(けい素鋼板)における「けい素」と「絶縁被膜」の役割を正しく押さえること。けい素はヒステリシス損を、薄板の積層+表面の絶縁被膜は渦電流損を低減します。この対応を逆にした選択肢が誤りになります。

出題のポイント:けい素=ヒステリシス損、絶縁被膜=渦電流損

変圧器の鉄心には、鉄に数%のけい素を加えた電磁鋼板(けい素鋼板)が使われます。けい素は鉄の磁気特性を改善してヒステリシス損を低減し、薄い鋼板を積層して表面を絶縁被膜で覆うことで渦電流の経路を断ち渦電流損を低減します。この2つの対応を入れ替えた記述が「誤り」です。

目次

令和2年度 機械科目 A問題8:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 機械科目 令和2年度 A問題8 問題文(変圧器の構造の論説)
令和2年度 機械科目 A問題8 問題文

電験3種 機械科目 【変圧器】 令和2年度 A問題8

変圧器の構造に関する記述として、誤っているものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。

(1) 変圧器の巻線には軟銅線が用いられる。巻線の方法としては、鉄心に絶縁を施し、その上に巻線を直接巻きつける方法、円筒巻線や板状巻線としてこれを鉄心にはめ込む方法などがある。
(2) 変圧器の鉄心には、飽和磁束密度と比透磁率が大きい電磁鋼板が用いられる。この鋼板は、渦電流損を低減するためケイ素が数%含有され、さらにヒステリシス損を低減して表面が絶縁皮膜で覆われている。
(3) 変圧器の冷却方式には用いる冷媒によって、絶縁油を使用する油入式と空気を使用する乾式、さらにガス冷却式などがある。
(4) 変圧器油には、冷却によって本体の温度上昇を防ぐために用いられる。また、化学的に安定で、引火点が高く、流動性に富み比熱が大きくて冷却効果が大きいような性質を備えることが必要となる。
(5) 大型の油入変圧器では、負荷変動に伴い油の温度が変動し、油が膨張・収縮を繰り返すため、外気が変圧器内部に出入りを繰り返す。これを油の呼吸作用といい、油の劣化の原因となる。この劣化を防止するため、本体の外にコンサベータやブリーザを設ける。

問題の解説:各記述を一つずつ確認する

変圧器の構造図と各記述を照らし合わせて、正誤を確認します。誤りは(2)で、けい素と絶縁被膜の役割が逆になっています。

令和2年度 A問題8 解説1/2 油入変圧器の構造(鉄心・巻線・タンク・コンサベータ)
解説(1/2):油入変圧器の構造
令和2年度 A問題8 解説2/2 各記述の正誤と(2)が誤りの理由
解説(2/2):各記述の正誤と(2)が誤りの理由

(1) 巻線 — 正しい

巻線には導電率の高い軟銅線が用いられます。鉄心に絶縁を施して直接巻きつける方法のほか、円筒巻線・板状巻線として鉄心にはめ込む方法もあります((1) 正)。

(2) 鉄心 — 誤り

正しくは、けい素を含有させて「ヒステリシス損」を低減し、薄い鋼板を積層して表面を絶縁被膜で覆うことで「渦電流損」を低減します。選択肢(2)は「けい素=渦電流損」「絶縁被膜=ヒステリシス損」と2つの対応を逆にしているため誤りです。けい素は鉄の磁気特性を改善し、絶縁被膜は鋼板間の渦電流の経路を断つ役割を持ちます。

(3) 冷却方式 — 正しい

冷却方式は冷媒によって、絶縁油を使う油入式、空気を使う乾式、さらにガス冷却式などに分類されます((3) 正)。

(4) 変圧器油 — 正しい

変圧器油は冷却と絶縁を兼ねます。化学的に安定・引火点が高い・流動性に富む・比熱が大きいといった性質が求められます((4) 正)。

(5) 呼吸作用とコンサベータ — 正しい

負荷変動で油が膨張・収縮し、外気が出入りする現象が呼吸作用です。これは油の劣化原因になるため、本体の外にコンサベータ(油の膨張を吸収する補助タンク)やブリーザ(吸気中の水分を除去)を設けます((5) 正)。

したがって、誤っているものは (2) です。

ポイント解説:変圧器の構造を整理する

1. けい素鋼板の損失低減(対応を逆にしない)

けい素 → ヒステリシス損を低減薄板の積層+絶縁被膜 → 渦電流損を低減。この対応はそのまま頻出の引っかけポイントです。「けい素は磁気特性、被膜は電流経路」と役割で覚えると、逆にした記述に気づけます。

2. 変圧器油の役割と必要な性質

変圧器油は冷却と絶縁を兼ねます。必要な性質は「化学的に安定・引火点が高い・流動性が高い・比熱が大きい」。引火点が高いほど安全で、比熱が大きく流動性が高いほど冷却効果が高まります。

3. 呼吸作用・コンサベータ・ブリーザ

温度変化で油が膨張・収縮し外気が出入りするのが呼吸作用。これによる油の酸化・吸湿(劣化)を防ぐため、油面の上にコンサベータを、空気の取り入れ口に乾燥剤入りのブリーザを設けます。構造名と役割をセットで覚えましょう。

まとめ:各記述の正誤

記述内容正誤
(1)巻線は軟銅線・円筒巻線/板状巻線
(2)けい素で渦電流損/絶縁被膜でヒステリシス損を低減誤(対応が逆)
(3)冷却方式:油入式・乾式・ガス冷却式
(4)変圧器油:安定・高引火点・流動性・大比熱
(5)呼吸作用・コンサベータ・ブリーザ

構造の論説は、「けい素=ヒステリシス損、絶縁被膜=渦電流損」の対応を正確に覚えておくことが得点のカギです。鉄損の内訳を扱う変圧器37や、損失と効率の論説変圧器34もあわせて確認しておきましょう。

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