電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目で頻出の「電気機器の損失」。本記事では、平成23年度 A問題6で出題された損失の穴埋め問題(空欄5つ)を取り上げます。渦電流損・銅損・鉄損・機械損・ヒステリシス損を正しく区別し、さらに周波数特性(ヒステリシス損 ∝ f、渦電流損 ∝ (f・t)²)まで押さえられるかがカギです。
損失は「どこで生じるか」で分類できます。鉄心で生じれば鉄損(ヒステリシス損+渦電流損)、巻線で生じれば銅損、回転で生じれば機械損。この基本に、損失低減の対策と周波数依存性を組み合わせれば、5つの空欄を確実に埋められます。
平成23年度 機械科目 A問題6:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成23年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題6
電験3種 機械科目 【変圧器・損失】 平成23年度 A問題6
次の文章は、交流電気機器の損失に関する記述である。
a 磁束が作用して鉄心の電気抵抗に発生する (ア) は、鉄心に電流が流れにくいように薄い鉄板を積層して低減する。
b コイルの電気抵抗に電流が作用して発生する (イ) は、コイルに電流が流れやすいように導体の断面積を大きくして低減する。
c 磁性材料を通る磁束が変動すると発生する (ウ) 、及び変圧器には存在しない (エ) は、機器に負荷をかけなくても存在するので無負荷損と称する。
d 最大磁束密度一定の条件で (オ) は周波数に比例する。
空白箇所(ア)〜(オ)に当てはまる組合せとして正しいものを選べ。
| (ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | (オ) | |
| (1) | 渦電流損 | 銅損 | 鉄損 | 機械損 | ヒステリシス損 |
| (2) | ヒステリシス損 | 渦電流損 | 鉄損 | 機械損 | 励磁損 |
| (3) | 渦電流損 | 銅損 | 機械損 | 鉄損 | ヒステリシス損 |
| (4) | ヒステリシス損 | 渦電流損 | 機械損 | 鉄損 | 励磁損 |
| (5) | 渦電流損 | 銅損 | 機械損 | 鉄損 | 励磁損 |
出題のポイント:5つの空欄を4段落から順に埋める
本問は a〜d の4段落があり、それぞれに損失の名前が入ります。段落ごとに「どこで生じるか」「どう減らすか」が書かれているので、読みながら順に確定できます。
| 損失 | 発生場所 | 負荷で変わるか | もう一つの呼び名 | 変圧器にあるか |
| 銅損 | 巻線 | 負荷率の2乗に比例 | 負荷損 | ある |
| ヒステリシス損 | 鉄心 | 変わらない | 無負荷損(鉄損) | ある |
| 渦電流損 | 鉄心 | 変わらない | 無負荷損(鉄損) | ある |
| 機械損 | 軸受・冷却ファン | 変わらない | 無負荷損 | ★ない(回転部分がない) |


空欄を一つずつ確定する
(ア)鉄心の電気抵抗に発生し、薄い鉄板の積層で減らす
「薄い鉄板を積層して低減する」——この対策は渦電流損のものです。ヒステリシス損は板を薄くしても減りません(板厚に依存しない)——対策から損失の種類を逆に読むことができます。
(イ)コイルの電気抵抗に電流が作用し、断面積を大きくして減らす
コイルで生じるジュール熱ですから銅損です。導体の断面積を大きくすれば抵抗が下がる——I2R の R を減らす、最も直接的な対策になります。
(ウ)(エ)無負荷損に含まれるもの
「磁性材料を通る磁束が変動すると発生する(ウ)」は鉄損、「変圧器には存在しない(エ)」は機械損です。変圧器に回転部分がないことが、そのまま決め手になります。
この2つが「無負荷損」と呼ばれる理由も押さえておきましょう。負荷をかけなくても、電源につないで運転していれば発生し続ける——だから「無負荷でも存在する損失」なのです。
☝️ ひっかけの作り方:(ウ)と(エ)を入れ替えた選択肢が用意されています。「変圧器には存在しない」のはどちらか——鉄損は変圧器の主要な損失そのものですから、存在しないのは機械損のほうだと即座に判断できます。
(オ)周波数に比例する損失
ヒステリシス損は f の1乗、渦電流損は f の2乗に比例します。「周波数に比例する」と言われたらヒステリシス損——比例(1乗)と2乗を区別するのがこの空欄のねらいです。
選択肢にある「励磁損」という語は、電験では一般的でない用語です。励磁電流による損失は鉄損として扱うのが普通——正式な用語でない語が混ざっていたら疑うのが定石です。

周波数を変えると損失はどう変わるか
(オ)で問われた周波数依存性は、実務でも意味を持ちます。60 Hz 用の変圧器を50 Hz で使うとどうなるか——この問いに答えるには、磁束密度の変化まで考える必要があります。
同じ電圧のまま周波数を60 Hz から50 Hz に下げると、磁束密度は 60/50=1.2倍になります。鉄心が飽和に近づき、励磁電流が急増する——うなりが大きくなり、鉄損も増えます。
| 60 Hz 機を50 Hz で使う | 50 Hz 機を60 Hz で使う | |
| 磁束密度 | 1.2倍に増える | 0.83倍に減る |
| 鉄心の飽和 | 飽和に近づき危険 | 余裕ができる |
| 可否 | 原則として使えない | 使えることが多い |
「50 Hz 機は60 Hz で使えるが、60 Hz 機は50 Hz で使えない」——これが実務での原則です。周波数が下がると磁束密度が上がるから——本問の(オ)で問われた周波数依存性が、こうした判断につながっています。
鉄損はどうやって測るのか — W/kg という単位
鉄損は、鉄心材料そのものの性質として「単位質量あたりの損失」で表されます。単位は W/kg——材料のカタログにはこの値が載っています。
測定にはエプスタイン試験器という装置が使われます。短冊状に切った鋼板を正方形に組み、コイルを巻いて磁化する——そのときの電力から鉄損を求めます。
| 材料の呼称 | 意味 | 例 |
| 35A300 | 板厚0.35 mm、無方向性(A)、鉄損3.00 W/kg | 回転機用 |
| 30P110 | 板厚0.30 mm、方向性(P)、鉄損1.10 W/kg | 変圧器用 |
数字の意味が分かると、材料の性能が読めます。最初の2桁が板厚(1/100 mm 単位)、次の記号が方向性の有無、最後の3桁が鉄損(1/100 W/kg 単位)——同じ板厚なら、後ろの数字が小さいほど優れた材料です。
変圧器用の方向性けい素鋼板は、回転機用の無方向性に比べて鉄損が3分の1程度。磁束の向きが決まっている変圧器だからこそ使える——本問の(ウ)で問われた鉄損を、材料の側から減らす工夫です。
測定条件を統一しないと比べられない
鉄損は周波数と磁束密度で変わりますから、W/kg の値には測定条件が必ず付いています。一般には「50 Hz、1.7 T」や「50 Hz、1.5 T」といった条件です。
本問の d が「最大磁束密度一定の条件で」とわざわざ断っているのも同じ理由——磁束密度が変われば、周波数との関係だけを取り出せないからです。
条件をそろえて初めて、「ヒステリシス損は f に比例」という関係が意味を持ちます。問題文の但し書きは、式が成り立つ前提を示している——読み飛ばさずに、なぜその条件が要るのかまで考えると理解が深まります。
⏱️ 本番での進め方
① 対策から損失を逆に読む。「薄板積層」なら渦電流損。
②「変圧器には存在しない」=機械損。回転部分がないから。
③「周波数に比例」=ヒステリシス損。渦電流損は2乗。
④「励磁損」は正式な用語でない。混ざっていたら消す。
💡 覚え方
「ヒステリシスは f の1乗、渦電流は (ft) の2乗」——板厚 t が入るのは渦電流だけ。この式1本で、(ア)と(オ)の両方が決まります。
関連問題:同じテーマが繰り返し出ている
損失の分類は、令和元年度と令和5年度下期でも出題されています(変圧器36:電気機器の損失/変圧器35:電気機器の損失の分類)。本問は周波数特性まで踏み込んでいる分、やや踏み込んだ内容です。


コメント
コメント一覧 (2件)
[…] この問題は変圧器35(令和5年度下期 A問題7)と同一問題で、損失の分類は頻出テーマです。さらに5つの空欄で損失と周波数特性を問う変圧器37(平成23年度 A問題6)、損失と効率の論説変圧器34もあわせて確認しておきましょう。 […]
[…] 構造の論説は、「けい素=ヒステリシス損、絶縁被膜=渦電流損」の対応を正確に覚えておくことが得点のカギです。鉄損の内訳を扱う変圧器37や、損失と効率の論説変圧器34もあわせて確認しておきましょう。 […]