電験3種の機械科目で頻出の永久磁石界磁の直流電動機。本記事では、令和元年度 A問題1で問われた、電源電圧を変えたときの回転速度を求める計算問題を解説します。
カギは「一定トルクの負荷」=電機子電流 Iₐ が一定という読み替え。永久磁石で磁束一定、\( T=K\phi I_a\propto I_a \) だからです。あとは \( E\propto n \) で比例計算します。
令和元年度 機械科目 A問題1:問題文と選択肢
一定トルクという条件を電機子電流に読み替えるところから始めます。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「令和元年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題1
電験3種 機械科目 【直流機】 令和元年度 A問題1
直流電源に接続された永久磁石界磁の直流電動機に一定トルクの負荷がつながっている。電機子抵抗が 1.00 [Ω] である。回転速度が 1000 [min⁻¹] のとき、電源電圧は 120 [V]、電流は 20 [A] であった。この電源電圧を 100 [V] に変化させたときの回転速度の値 [min⁻¹] として、最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。
ただし、電機子反作用及びブラシ、整流子における電圧降下は無視できるものとする。(1) 200 (2) 400 (3) 600 (4) 800 (5) 1000
出題のポイント:一定トルク ⇒ 電機子電流も一定
この問題の入口は「一定トルクの負荷」という一言をどう読み替えるかにあります。永久磁石界磁なので磁束は最初から一定。トルクの式 T=kφIa で φ が定数なら、トルクが一定であることと電機子電流が一定であることは同じ意味です。
つまり電源電圧を120 V から100 V に下げても、電流は20 A のまま。ここが決まれば、あとは電圧降下を引いて逆起電力を出し、比を取るだけになります。

速度は端子電圧ではなく逆起電力で決まる
この区別が本問の本質です。電源電圧の比は 100/120=0.833 ですが、逆起電力の比は 80/100=0.800。電圧降下 IaRa=20 V が両方から同じだけ引かれるため、比は等しくなりません。
直感的に言えば、電圧降下は「速度を作る仕事をしない、捨てられる電圧」です。電源電圧が下がっても捨てられる量は変わらないので、残る(=速度になる)ぶんは電源電圧よりも大きな割合で減る——だから速度の下がり方は電圧の下がり方より急になります。

問題の解説:E1=100 V、E2=80 V
STEP1 運転条件1から逆起電力を出す
端子電圧120 V のうち20 V が電機子抵抗で落ち、残り100 V が回転に対応する。
STEP2 電流が変わらないことを確認して条件2を計算する
負荷トルクが一定で磁束も一定なので、電機子電流は20 A のままです。したがって電圧降下も20 V のまま変わりません。
永久磁石で φ 一定 ⇒ T が一定なら Ia も一定。ここが問題の核心。
引く量(20 V)は同じ。電源電圧だけが20 V 下がった。
STEP3 逆起電力の比を速度の比に読み替える
φ が一定なので E=kφn より速度は E に正比例。
電源電圧は 17 % 減だが、速度は 20 % 減になる。

選択肢を検算する
| 選択肢 | その値になる計算 | 判定 |
| (1) 200 | 1000×(120−100)/100 など、電圧の差を比に使った値 | 電圧「差」と電圧「比」の取り違え |
| (2) 400 | 自然な計算からは出てこない | 選択肢を等間隔に散らすためのダミー |
| (3) 600 | 1000×80/120 = 667 に近い。E2 を V1 で割った混同 | 分母に端子電圧、分子に逆起電力を使った |
| (4) 800 | 1000×80/100 | 正解。逆起電力どうしの比 |
| (5) 1000 | 電圧を下げても速度は変わらないとした値 | 電圧を下げれば必ず遅くなるので即座に除外できる |
端子電圧の比をそのまま使うと 1000×100/120=833 min-1 となり、これも選択肢の(4)800 にいちばん近い値になります。この問題では偶然たどり着いてしまうので、正解できても「なぜ逆起電力の比なのか」を言えるかを確かめてください。抵抗がもっと大きい問題では、この2つの答えははっきり分かれます。
もし電機子抵抗が大きかったら
この問題の Ra=1.00 Ω は、120 V に対して電圧降下が20 V =約17 % と、直流機としてはかなり大きめです(実機の大形機なら数 % 程度)。あえて大きめにすることで、端子電圧の比と逆起電力の比が食い違うことを体感させる作りになっています。
| 電機子抵抗 | E1/E2 | 正しい速度 | 端子電圧比で計算した場合 |
| Ra=0.1 Ω | 118 V/98 V | 831 min-1 | 833 min-1(ほぼ一致) |
| Ra=1.0 Ω(本問) | 100 V/80 V | 800 min-1 | 833 min-1(4 % ずれる) |
| Ra=2.0 Ω | 80 V/60 V | 750 min-1 | 833 min-1(11 % ずれる) |
| Ra=3.0 Ω | 60 V/40 V | 667 min-1 | 833 min-1(25 % ずれる) |
抵抗が大きいほど、端子電圧比でごまかす近似は使えなくなります。逆に言えば、逆起電力で考えれば抵抗がいくらでも正しく解ける——この一般性が「E で考える」ことの強みです。
永久磁石界磁だと何が簡単になるのか
分巻電動機なら、端子電圧を下げたときに界磁電流も一緒に下がって磁束が減るため、話がずっと複雑になります。磁束が変われば T=kφIa の関係で同じトルクを出すのに必要な電流まで変わってしまうからです。
永久磁石界磁は「φ が絶対に動かない」ので、トルク ⇔ 電流、速度 ⇔ 逆起電力という2つの対応が問題全体を通して固定されます。この安心感が、永久磁石機が計算問題で好んで出題される理由です。「永久磁石」の4文字を見たら φ=一定と書き込む——それだけで解法が半分決まります。
⏱️ 本番での進め方
① 「永久磁石」を見たら φ=一定、「一定トルク」を見たら Ia=一定 と余白に書く。
② E=V−IaRa を2つの条件それぞれで計算する(本問は100 V と80 V)。
③ n2=n1×E2/E1。端子電圧の比ではないことを声に出して確認。
④ 検算は逆向き:出した n2 から E2 を復元して80 V に戻るか。10秒で済む。
💡 覚え方
速度に比例するのは逆起電力 E であって端子電圧 V ではない。E=V−IaRa で「捨てられる電圧」を先に引く。永久磁石=φ一定 ⇒ トルク一定なら電流一定。この2つを書き出せば、直流電動機の速度変化の問題はほぼ全部この型で解けます。
⚠️ よくある間違い
端子電圧の比 100/120 をそのまま速度比にするのが最頻の誤りです。本問では偶然(4)に着地しますが、電機子抵抗が大きい問題では確実に外します。もう一つは「電圧を下げたのだから電流も下がるはず」と考えてしまうこと。負荷トルクが一定である限り、電流は負荷が決めるのであって電源が決めるのではありません。

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