誘導機44【電験3種 機械】二次抵抗と深溝形・定速度特性とは?平成26年 A問題3 完全解説

電験3種 機械科目 誘導機 平成26年度 A問題3 深溝形かご形の秘密!始動時だけ抵抗が増える

電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「かご形の二次抵抗と深溝形回転子」は効率と始動特性の両立という設計思想を問う良問テーマです。本記事では、平成26年度 A問題3を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。

物語は一貫しています——「運転時の効率のため二次抵抗は小さく、でも始動トルクは欲しい。そこで深溝形の表皮効果(電流密度が不均一)で始動時だけ実効抵抗を上げる」。仕上げは「滑りが小さい=ほぼ定速度」の指摘です。

目次

平成26年度 機械科目 A問題3:問題文と選択肢

まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

電験3種 機械科目 平成26年度 A問題3 問題文(三相かご形誘導電動機の二次抵抗と深溝形)
平成26年度 機械科目 A問題3 問題文

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成26年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題3

電験3種 機械科目 【誘導機】 平成26年度 A問題3

定格負荷時の効率を考慮して二次抵抗値は、できるだけ(ア)する。滑り周波数が大きい始動時には、かご形回転子の導体電流密度が(イ)となるような導体構造(たとえば深溝形)にして、始動トルクを大きくする。定格負荷時は、無負荷時より(ウ)であり、その差は(エ)。このことから三相かご形誘導電動機は(オ)電動機と称することができる。

(1) 小さく・不均一・低速度・小さい・定速度 (2) 大きく・不均一・低速度・大きい・変速度 (3) 小さく・均一・低速度・小さい・定速度 (4) 大きく・均一・高速度・大きい・変速度 (5) 小さく・不均一・高速度・小さい・変速度

出題のポイント:「いつの話か」で答えが反転する

二次抵抗は大きいほうが良いのか、小さいほうが良いのか——この問いに一つの答えはありません始動の話なら大きく、運転の話なら小さくが正解です。

場面望ましい二次抵抗理由
定格運転時できるだけ小さく滑りが小さくなり、二次銅損 sP2 が減って効率が上がる
始動時できるだけ大きくsm=r2/x2 が1に近づき、始動トルクが最大に近づく

問題文の(ア)は「定格負荷時の効率を考慮して」と場面を指定しています。だから(ア)=小さく——始動トルクの話につられて「大きく」を選ばないことが本問の第一関門です。

深溝かご形誘導電動機が定格運転では高効率、始動時は高トルクとなる仕組みと速度特性の図
運転時は低抵抗、始動時は表皮効果で実効抵抗を高めます。

空欄を確定する

(イ):深溝形は電流密度を「不均一」にする

「滑り周波数が大きい始動時には」と問題文が条件を付けています。二次周波数 f2=sf1 は s=1 で最大——電源周波数と同じ50 Hzです。

深い溝に納めた導体では、この高い周波数によって電流が溝口側(外側)に偏ります(表皮効果)。電流密度が不均一になる=実効的な断面積が減る=実効抵抗が増える——(イ)=不均一

「均一」では抵抗が変わらず、始動トルクも増えません。問題文の「始動トルクを大きくする」という目的と矛盾するので、その時点で消せます。

(ウ)(エ)(オ):滑りが数 % だから定速度電動機

無負荷時はほぼ同期速度で回っており、定格負荷をかけると滑りの分だけ遅くなります(ウ)=低速度その差は定格滑り=数 % 分ですから小さい(エ)=小さい

負荷が変わっても速度がほとんど変わらない電動機を「定速度電動機」と呼びます。(オ)=定速度

答え(ア)小さく/(イ)不均一/(ウ)低速度/(エ)小さい/(オ)定速度 ⇒ (1)
深溝かご形回転子の始動時と定格時の電流密度分布、実効断面積、実効抵抗を比較する断面図
始動時は溝口側へ電流が集中し、定格時は導体全体へ分布します。
平成26年度機械A問題3の空欄を小さく、不均一、低速度、小さい、定速度で埋める表
空欄の組合せは、小さく・不均一・低速度・小さい・定速度で選択肢(1)です。

定速度電動機とは何か

「定速度」と「変速度」は、電動機を分類するときの基本的な軸です。無負荷から定格までで速度がどれだけ変わるかで分けます。

速度変動率

\( \varepsilon=\dfrac{N_0-N_n}{N_n}\times100\ [\%] \)

N0=無負荷回転速度、Nn=定格回転速度小さいほど「定速度」です。

電動機速度変動率の目安分類理由
同期電動機0 %定速度常に同期速度で回る
三相かご形誘導3〜5 %定速度定格滑りが小さい
直流分巻・他励3〜8 %定速度磁束が一定に保たれる
巻線形(外部抵抗を入れた状態)大きい変速度的滑りが大きく、負荷で速度が動く
直流直巻非常に大きい変速度負荷電流が磁束も決めるため(無負荷では暴走)

かご形誘導電動機が定速度に分類されるのは、(ア)で二次抵抗を小さく設計しているからにほかなりません。もし二次抵抗を大きくすれば、同じ機械が変速度的な特性になります——本問の(ア)と(オ)は、同じ設計判断の原因と結果なのです。

この「定速度」という性質は、多くの用途で長所です。ポンプや送風機は決まった速度で回ってくれればよいのですから、負荷が変動しても速度が変わらないのはありがたい——かご形誘導電動機が産業用の標準になった理由の一つです。

問題文全体が一つの設計ストーリーになっている

空欄設計上の判断その帰結
(ア) 二次抵抗を小さく運転効率を優先する始動トルクが不足する
(イ) 深溝形で不均一に始動時だけ実効抵抗を上げる始動トルクの問題を解決
(ウ)(エ) 速度差は小さい(ア)の結果滑りが数 % で済む
(オ) 定速度電動機(ウ)(エ)の結論用途の広さにつながる

5つの空欄が独立していないことに注目してください。「効率のため抵抗を小さくした」→「だから始動トルクが足りない」→「だから深溝形にした」→「抵抗が小さいから滑りも小さい」→「だから定速度電動機」——一本の因果の鎖です。

だから(ア)を「大きく」にしてしまうと、そこから後ろが全部おかしくなります。抵抗が大きければ滑りも大きく、(エ)は「大きい」、(オ)は「変速度」になるはず——選択肢(2)はまさにその整合した誤りです。問題文が「定格負荷時の効率を考慮して」と明記している一点で、(1)に決まります

⏱️ 本番での進め方
(ア)は「定格負荷時の効率」の話——始動トルクにつられない。
深溝形は電流密度が不均一になるから抵抗が増える。均一では意味がない。
定格滑りは数 %——だから速度差は小さく、定速度電動機。
5つの空欄は一本の因果の鎖。(ア)が決まれば残りは自動的に決まる。

銘板の回転速度から、その機械の効率が読める

(ウ)(エ)(オ)で確認した「滑りは数 %」という事実は、実務では非常に便利な手がかりになります。銘板に書かれた定格回転速度を見るだけで、その機械の二次側の損失が分かるのです。

例:50 Hz・4極・定格1 440 min−1 と書かれた電動機を読んでみましょう。

\( N_s=\dfrac{120\times50}{4}=1500\ \mathrm{min^{-1}} \)
❶ 同期速度
1 440 にいちばん近い同期速度は4極の1 500
\( s=\dfrac{1500-1440}{1500}=0.04 \)
❷ 定格滑り
4 %
\( \eta_2=1-s=0.96 \)
❸ 二次効率
二次入力の4 % が回転子で熱になっている

「回転速度が半端な数字である」こと自体が、滑りの存在を語っています。1 500 ちょうどなら同期電動機、1 440 なら誘導電動機で滑り4 %——銘板を見ただけで機種と特性の見当がつきます

銘板の定格回転速度(50 Hz)極数定格滑り読み取れること
2 880 min−12極(Ns=3 000)4 %高速機。ポンプ・ブロワ向け
1 440 min−14極(Ns=1 500)4 %最も一般的な汎用機
1 455 min−14極3 %より効率の高い設計(二次抵抗が小さい)
950 min−16極(Ns=1 000)5 %低速機。小容量ほど滑りが大きい傾向

同じ4極でも1 440 と1 455 では滑りが4 % と3 %——後者のほうが二次抵抗が小さく、効率の良い設計だということです。その代わり始動トルクは小さいはずで、まさに本問の(ア)が述べているトレードオフが銘板に現れています。

一般に小容量機ほど定格滑りが大きく(5 % 前後)、大容量機ほど小さい(1〜2 %)傾向があります。大形機は導体が太くて抵抗が小さくなるからで、直流機の効率が容量とともに上がるのと同じ事情です。

💡 覚え方
「運転は低抵抗(効率)、始動は表皮効果で高抵抗(トルク)——深溝形は一人二役」二次抵抗の大小は「いつの話か」で正義が変わる定格滑りが数 % だから速度変動率も小さく、かご形誘導電動機は定速度電動機——同期電動機・直流分巻と同じ仲間で、直流直巻だけが変速度

⚠️ よくある間違い
始動トルクの話につられて(ア)を「大きく」にするのが最頻の誤りです。問題文は「定格負荷時の効率を考慮して」と場面を指定しています。もう一つは滑り数 % を「大きい差」と評価して変速度を選ぶこと——3〜5 % は十分に小さいのであり、電動機の分類上は定速度です。

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