電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「変圧器の損失と効率」は鉄損・銅損の性質を総合的に問う重要テーマです。本記事では、平成23年度 A問題7の穴埋め問題を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。
a・b・c の3つの運転条件を、「鉄損は電圧の2乗、銅損は電流の2乗」という2つの比例関係だけで追いかけます。この1問で損失の性質が総まとめできる良問です。
平成23年度 機械科目 A問題7:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成23年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題7
電験3種 機械科目 【変圧器】 平成23年度 A問題7
次の文章は、変圧器の損失と効率に関する記述である。電圧一定で出力を変化させても、出力一定で電圧を変化させても、変圧器の効率の最大は鉄損と銅損とが等しいときに生じる。ただし、変圧器の損失は鉄損と銅損だけとし、負荷の力率は一定とする。
a.出力 1 000 W で運転している単相変圧器において鉄損が 40.0 W、銅損が 40.0 W 発生している場合、変圧器の効率は (ア) [%] である。
b.出力電圧一定で出力を 500 W に下げた場合の鉄損は 40.0 W、銅損は (イ) [W]、効率は (ウ) [%] となる。
c.出力電圧が 20 % 低下した状態で、出力 1 000 W の運転をしたとすると鉄損は 25.6 W、銅損は (エ) [W]、効率は (オ) [%] となる。ただし、鉄損は電圧の 2 乗に比例するものとする。
| (ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | (オ) | |
| (1) | 94 | 20.0 | 89 | 61.5 | 91 |
| (2) | 93 | 10.0 | 91 | 62.5 | 92 |
| (3) | 94 | 20.0 | 89 | 63.5 | 91 |
| (4) | 93 | 10.0 | 91 | 50.0 | 93 |
| (5) | 92 | 20.0 | 89 | 61.5 | 91 |
出題のポイント:鉄損は電圧の2乗、銅損は電流の2乗
本問は「出力を変える場合」と「電圧を変える場合」の2通りを扱います。どちらの場合も、鉄損と銅損が何に比例するかを押さえていれば追えます。
| 損失 | 比例するもの | 電圧一定で出力を変えると | 出力一定で電圧を変えると |
| 鉄損 | 電圧の2乗 | 変わらない | 電圧の2乗で変わる |
| 銅損 | 電流の2乗 | 出力の2乗で変わる | 電圧の2乗に反比例して変わる |
電圧一定なら電流は出力に比例しますから、銅損は出力の2乗に比例します。逆に出力一定で電圧を下げれば、同じ電力を送るために電流が増える——だから銅損は増えます。
| (ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | (オ) | |
| (1) | 94 | 20.0 | 89 | 61.5 | 91 |
| (2) | 93 | 10.0 | 91 | 62.5 | 92 |
| (3) | 94 | 20.0 | 89 | 63.5 | 91 |
| (4) | 93 | 10.0 | 91 | 50.0 | 93 |
| (5) | 92 | 20.0 | 89 | 61.5 | 91 |

(ア)まずは素直に効率を計算する
出力÷(出力+全損失)
四捨五入して93 %
鉄損と銅損が等しい状態ですから、この運転点がまさに最大効率です。問題文の冒頭が「効率の最大は鉄損と銅損とが等しいときに生じる」と述べているのは、この a が最大効率点であることを示すためでもあります。
(イ)(ウ)電圧一定で出力を半分にする
電圧が一定なら、出力が半分になれば電流も半分です。銅損は電流の2乗に比例しますから、1/4 になります。
出力比の2乗
鉄損40 W は変わらない
全損失は50 W
四捨五入して91 %
効率が93 %から91 %へ下がりました。最大効率点から離れたからです——鉄損40 W は変わらないのに出力が半分になったので、鉄損の割合が倍に効いてきます。
(エ)(オ)出力一定で電圧を20 %下げる
ここが本問の山場です。電圧が0.8倍になっても出力1 000 W を維持するのですから、電流は 1/0.8=1.25倍にならなければなりません。
電圧の2乗に比例(問題文の値と一致)
出力一定・電圧0.8倍
電流の2乗に比例
鉄損とは逆に増える
全損失は88.1 W
四捨五入して92 %
問題文が鉄損25.6 W を先に示しているのは、「電圧の2乗に比例」の計算例を見せて、同じ考え方を銅損にも適用させるためです。鉄損は0.64倍に減り、銅損は1.5625倍に増える——逆向きに動くのが要点になります。

3つの運転点を並べて比べる
| a(基準) | b(出力半分) | c(電圧20 %低下) | |
| 出力 | 1 000 W | 500 W | 1 000 W |
| 鉄損 | 40.0 W | 40.0 W | 25.6 W |
| 銅損 | 40.0 W | 10.0 W | 62.5 W |
| 全損失 | 80.0 W | 50.0 W | 88.1 W |
| 効率 | 93 %(最大) | 91 % | 92 % |
a が最大効率、b も c もそこから下がっている——問題文の冒頭「電圧一定で出力を変化させても、出力一定で電圧を変化させても、効率の最大は鉄損と銅損が等しいとき」が、数値で確かめられました。
c では鉄損が減ったのに効率は下がっています。銅損の増加分(22.5 W)が鉄損の減少分(14.4 W)を上回ったからです——損失の合計で見なければ、効率の増減は判断できません。
⚠️ よくある間違い
「電圧が下がれば鉄損が減るから効率は上がる」と早合点すると、(4)のような「93 %」という肢を選んでしまいます。出力を維持するために電流が増える——その分の銅損増を必ず勘定に入れてください。
逆に電圧が上がったらどうなるか
本問の c では電圧が20 %下がりました。では逆に20 %上がったら、効率はどう変わるでしょうか。
電圧の2乗に比例して増える
出力一定なら電圧に反比例
減る
やはり93 %より下がる
電圧を上げても下げても、効率は基準の93 %より下がりました。c の場合(電圧20 %低下)が91.9 %、こちら(20 %上昇)が92.1 %——どちらも最大効率点から離れたからです。
基準の a では鉄損40 W=銅損40 W でちょうど釣り合っていました。電圧を動かすと、鉄損と銅損が逆向きに動いて釣り合いが崩れる——崩れれば必ず効率は下がります。
問題文の冒頭が「電圧一定で出力を変化させても、出力一定で電圧を変化させても、効率の最大は鉄損と銅損とが等しいときに生じる」と述べているのは、この普遍性を示すためです。何を動かしても、最大効率の条件は同じ——覚えるべき関係が1本で済む、ありがたい性質だと言えます。
⏱️ 本番での進め方
① 鉄損は電圧の2乗、銅損は電流の2乗。この2本で全部追える。
② 電圧一定なら電流∝出力。銅損は出力の2乗に比例。
③ 出力一定で電圧0.8倍なら電流1.25倍、銅損は1.5625倍。
④(ア)が93 と決まれば選択肢は2つに絞れる。全部計算しなくてよい。
💡 覚え方
「鉄損は電圧しだい、銅損は電流しだい」——電圧を下げれば鉄損は減るが、出力を保つなら電流が増えて銅損が増える。2つが逆向きに動くので、合計で判断するのがこの種の問題の鉄則です。


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