今回は平成21年度 機械科目 A問題10を解説します。誘導電動機で駆動する送風機システムの風量制御について、ダンパ制御とインバータ(V/f一定)制御による消費電力の違いを問う空欄補充問題です。
ダンパ制御では回転速度はほとんど変わらず省エネ効果は小さいのに対し、インバータ制御では風量Q∝速度n、消費電力L∝n3となるため、風量を50%に絞ると消費電力は理論上12.5%まで減少します。
平成21年度 機械科目 A問題10:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成21年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題10
電験3種 機械科目 【電動機応用】 平成21年度 A問題10
誘導電動機によって回転する送風機のシステムで消費される電力を考える。
誘導電動機が商用交流電源で駆動されているときに送風機の風量を下げようとする場合,通風路にダンパなどを追加して流路抵抗を上げる方法が一般的である。ダンパの種類などによって消費される電力の減少量は異なるが,流路抵抗を上げ風量を下げるに従って消費される電力は若干減少する。このとき,例えば風量を最初の50〔%〕に下げた場合に,誘導電動機の回転速度は〔(ア)〕。
一方,商用交流電源で直接駆動するのではなく,出力の交流の電圧Vと周波数fとの比(V/f)をほぼ一定とするインバータを用いて,誘導電動機を駆動する周波数を変化させて風量を調整する方法もある。この方法では,ダンパなどの流路抵抗を調整する手段は用いないものとする。このとき,機械的・電気的な損失などが無視できるとすれば,風量は回転速度の〔(イ)〕乗に比例し,消費される電力は回転速度の〔(ウ)〕乗に比例する。したがって,周波数を変化させて風量を最初の50〔%〕に下げた場合に消費される電力は,計算上で〔(エ)〕〔%〕まで減少する。
商用交流電源で駆動し,ダンパなどを追加して風量を下げた場合に消費される電力の減少量はこれほど大きくなく,インバータを用いると大きな省エネルギー効果が得られる。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる語句又は数値として,正しいものを組み合わせたものは次のうちどれか。
上記の記述中の空白箇所(ア),(イ),(ウ)及び(エ)に当てはまる語句又は数値として,正しいものを組み合わせたものは次のうちどれか。
(ア) (イ) (ウ) (エ) (1) トルク変動に相当する滑り周波数分だけ変動する 1 3 12.5 (2) 風量に比例して減少する 1/2 3 12.5 (3) 風量に比例して減少する 1 3 12.5 (4) トルク変動に相当する滑り周波数分だけ変動する 1/2 2 25 (5) 風量に比例して減少する 1 2 25
出題のポイント:ダンパ制御では回転速度が変わらない
(ア)が本問の第一関門です。ダンパで風量を50 %に絞ったとき、電動機の回転速度はどうなるか——答えは「ほとんど変わらない」です。
誘導電動機は商用電源で直接駆動されているので、回転速度は電源周波数と極数でほぼ決まってしまいます——負荷が軽くなればすべりが少し減る程度。
| ダンパ制御 | インバータ制御 | |
| 電源 | 商用(周波数固定) | インバータ(周波数可変) |
| 回転速度 | ★すべり分だけわずかに変動 | 周波数に応じて下がる |
| 風量を下げる仕組み | 流路抵抗を上げる | 送風機の回転を落とす |
| 消費電力 | 若干減るだけ | ★n3 で激減 |
(ア)の正しい記述は「トルク変動に相当する滑り周波数分だけ変動する」。「風量に比例して減少する」ではありません——商用電源につながっている限り、回転速度は自由に変えられないからです。
ここで(2)(3)(5)が落ちます——選択肢を3つ消せる強力な設問です。誘導電動機の速度が電源周波数で決まるという基本が問われています。

(イ)(ウ)(エ)相似則で計算する
回転速度も50 %にする
3乗に比例
—

0.53=0.125——風量を半分にすると電力は8分の1。87.5 %も削減できるという、劇的な省エネ効果です。
⚠️ よくある間違い
(4)は(ウ)を2乗、(エ)を25 %としている——0.52=0.25 とした場合です。「トルクが2乗だから電力も2乗」と早合点すると、ここに落ちます。
電力=トルク×角速度——角速度のぶん、もうひとつ n が掛かることを忘れないでください。
ダンパ制御はなぜあまり減らないのか
ダンパで絞ると、送風機の動作点が変わります。風量は減りますが、風圧は上がる——その積である動力はあまり減らないのです。
| 風量Q | 風圧H | 動力∝QH | |
| 絞る前 | 100 % | 100 % | 100 % |
| ダンパで50 %に | 50 % | ★上がる(130〜150 %) | 70〜75 %程度 |
| 回転を50 %に | 50 % | 25 % | 12.5 % |
ダンパで絞ったぶんは、そこで圧力損失(熱)になって捨てられます——送風機は相変わらず高い圧力を作り続けているのです。問題文の「若干減少する」という表現は、この事情を正確に表しています。
回転速度を落とせば、送風機がそもそも高い圧力を作らなくなります——無駄が発生しない。「絞って捨てる」か「最初から作らない」か——これが両者の本質的な違いです。
⏱️ 本番での進め方
①(ア)商用電源なので回転速度は変えられない。すべり分だけ変動。
② この1点で(2)(3)(5)が落ちる。
③(イ)風量は1乗、(ウ)電力は3乗。
④(エ)0.53=0.125=12.5 %。
💡 覚え方
「絞って捨てるダンパ、最初から作らないインバータ」——省エネの差はここから生まれます。そして「0.53=12.5 %」——この数字は覚えておくと即答できます。
同じ相似則を語句で問う問題が平成29年度 A問題12にあります(電動機応用:定トルク負荷と二乗トルク負荷)。本問はそれを数値にした設問——2問セットで解けば確実に得点できます。

V/f一定制御が必要な理由
問題文の「電圧Vと周波数fとの比(V/f)をほぼ一定とする」——この条件にも意味があります。
| 制御 | V/f | 磁束 | 結果 |
| V/f 一定 | 一定 | 一定 | ★トルクを保てる |
| 電圧そのまま・周波数だけ下げる | 増える | 増える | 磁気飽和・過電流で焼損 |
| 周波数そのまま・電圧だけ下げる | 減る | 減る | トルク不足 |
周波数だけ下げると磁束が増えて鉄心が磁気飽和します。飽和すれば励磁電流が急増し、巻線が焼ける——だから電圧も比例して下げなければならないのです。
ただし低周波では、巻線抵抗の電圧降下が無視できなくなります。そのままでは磁束が不足してトルクが出ない——だから低周波域では電圧を少し持ち上げる(トルクブースト)という補正が入ります。
送風機は低速でトルクをあまり必要としないので、この補正が少なくて済む——V/f 一定制御と相性のよい負荷だと言えます。だから汎用インバータの標準的な用途になっているのです。
実際の省エネ効果は12.5 %ほど劇的ではない
計算上は12.5 %まで減りますが、実際にはそこまでいきません——いくつか理由があります。
| 要因 | 影響 |
| インバータ自身の損失 | 2〜5 %程度が失われる |
| 低速時の電動機効率低下 | 定格から外れると効率が落ちる |
| 系の静圧(実揚程に相当) | ★風量に関係なく必要な圧力がある |
最も効くのが3つめです。ダクトの抵抗だけなら相似則どおりですが、実際には一定の静圧が必要な場合が多い——そのぶん、動力は3乗ほどきれいには減りません。
それでもダンパ制御に比べれば圧倒的に有利です。実測でも30〜50 %の削減が得られることが多く、投資回収も数年で済む——だから広く普及したのです。
試験では理論値の12.5 %を答えれば正解ですが、実務では「理論値ほどは減らない」ことを知っておくと、数字の意味が立体的に見えてきます。
まとめ
| (ア)ダンパ制御 | 滑り周波数分だけ変動する |
| (イ)風量 | 1乗に比例 |
| (ウ)電力 | 3乗に比例 |
| (エ)50%風量時の電力 | 12.5% |
| 答え | (1) |
▼あわせて解きたい関連問題
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