電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「理想変圧器の基本関係」は変圧器分野の出発点となる重要テーマです。本記事では、平成20年度 A問題7の穴埋め問題を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。
問われるのは最大磁束の式 \( \Phi_m = \dfrac{\sqrt{2}V_1}{2\pi f N_1} \) と、巻数比による電圧・電流の変換。E=4.44fNΦ の「4.44」の正体(\( 2\pi/\sqrt{2} \))まで理解できる良問です。
平成20年度 機械科目 A問題7:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう(平成20年度は公式PDFが公開されていないため、問題文は再構成です)。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 A問題7
電験3種 機械科目 【変圧器】 平成20年度 A問題7
図のような理想変圧器において、一次巻線の巻数を \( N_1 = 2550 \)、二次巻線の巻数を \( N_2 = 85 \) とし、一次側に周波数 \( f \) [Hz]、6 300 V の正弦波電圧を加える。このとき一次電圧は、(ア) が 6 300 V の正弦波電圧であり、鉄心内の最大磁束は \( \Phi_m = \) (イ) \( \times \dfrac{V_1}{f N_1} \) [Wb] と表される。
二次側に誘起される電圧は (ウ) [V] である。また、二次側に 7 Ωの抵抗負荷を接続したとき、一次側に流れる電流は (エ) [A]、二次側に流れる電流は (オ) [A] となる。

| (ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | (オ) | |
| (1) | 実効値 | \( \sqrt{2}/(2\pi) \) | 210 | 30 | 1.0 |
| (2) | 最大値 | \( 2\pi/\sqrt{2} \) | 105 | 1.0 | 0.25 |
| (3) | 実効値 | \( \sqrt{2}/(2\pi) \) | 210 | 1.0 | 30 |
| (4) | 最大値 | \( 1/(2\pi) \) | 105 | 15 | 30 |
| (5) | 実効値 | \( 2\pi/\sqrt{2} \) | 105 | 1.0 | 0.25 |
出題のポイント:理想変圧器の3つの関係
理想変圧器では、電圧・電流・巻数の間にきわめて単純な関係が成り立ちます。損失も漏れ磁束も励磁電流もないと考えるので、比例と反比例だけで話が済みます。
| 量 | 関係 | 本問の値 |
| 電圧 | \( V_1/V_2=N_1/N_2 \) | 6 300 V → 210 V(1/30) |
| 電流 | \( I_1/I_2=N_2/N_1 \) | 1.0 A ← 30 A(1/30) |
| 電力 | \( V_1I_1=V_2I_2 \) | 6 300×1.0=210×30=6 300 W |
巻数比 N1/N2=2 550/85=30——きれいに30倍です。電圧は1/30、電流は30倍という関係で、電力は変わりません。

| (ア) | (イ) | (ウ) | (エ) | (オ) | |
| (1) | 実効値 | \( \sqrt{2}/(2\pi) \) | 210 | 30 | 1.0 |
| (2) | 最大値 | \( 2\pi/\sqrt{2} \) | 105 | 1.0 | 0.25 |
| (3) | 実効値 | \( \sqrt{2}/(2\pi) \) | 210 | 1.0 | 30 |
| (4) | 最大値 | \( 1/(2\pi) \) | 105 | 15 | 30 |
| (5) | 実効値 | \( 2\pi/\sqrt{2} \) | 105 | 1.0 | 0.25 |

(ア)6 300 V は実効値
交流電圧を「○○ V」と表すとき、断りがなければ実効値です。家庭のコンセントが100 V というのも実効値——最大値は141 Vになります。
選択肢には「最大値」もありますが、電気の世界で電圧を言うときは実効値が既定値——最大値を指すときは必ず「最大値」と明記されるのが約束です。
☝️ ひっかけの作り方:(ア)で「最大値」を選ぶと、(イ)の係数も変わってきます。2つの空欄が連動している——実効値を前提にすれば(イ)は √2/(2π)、最大値を前提にすれば別の形になります。選択肢を見ると、実効値と √2/(2π) が組になっていることが確認できます。
(イ)最大磁束の式を導く
誘導起電力の式 E=4.44fNΦm を、Φm について解くだけです。ただし本問は 4.44 という数値ではなく、記号のままの形で答えさせています。
Φm について解く
係数を前に出す
分母の √2 を払う
1/(√2π) と √2/(2π) は同じ値です(約0.225)。選択肢は有理化した形で書かれているので、変形しないと一致に気づけません——分母の √2 を払う操作を思い出せるかがポイントです。
(ウ)(エ)(オ)電圧と電流を求める
巻数比で割る
きれいに210 V
オームの法則。抵抗負荷7 Ω
電流は巻数に反比例

⚠️ よくある間違い
(1) は(エ)と(オ)が入れ替わっています(30 と1.0)。問われているのは「一次側に流れる電流」が先、「二次側」が後——順序を取り違えると、正しく計算していても失点します。
一次側は高電圧・小電流、二次側は低電圧・大電流——降圧変圧器ならこの関係ですから、「一次が1.0 A、二次が30 A」で間違いありません。
電力が保存されていることを確かめる
入力
出力
抵抗での消費
3通りの計算がすべて6 300 W で一致——理想変圧器では損失がないので、当然そうなります。この検算をすれば、(エ)(オ)の取り違えにも気づけます。
もし(エ)を30 A としてしまえば、一次側の電力が 6 300×30=189 kW——二次側の6.3 kW と30倍も食い違います。「電力が合わない」という一点で、誤りが検出できるのです。
一次側から見た負荷インピーダンスも確かめておきましょう。\( 7\times30^{2}=6\,300\ \Omega \)——実際 6 300 V ÷ 1.0 A=6 300 Ωで一致します。インピーダンスが a2 倍になるという換算則が、ここでも確認できます。
⏱️ 本番での進め方
① 巻数比=2 550/85=30。電圧は1/30、電流は30倍。
②(イ)は 4.44=√2π から Φm=V/(√2πfN)。有理化して √2/(2π)。
③(ウ)210 V、(オ)210/7=30 A、(エ)30/30=1.0 A。
④ 電力6 300 W が一次・二次で一致するか検算する。
💡 覚え方
「電圧は巻数に比例、電流は反比例、電力は不変」——理想変圧器はこの3つだけ。そして「4.44=√2π」——係数を記号で問われても導けます。


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