電験3種(第三種電気主任技術者試験)の機械科目において、「出力とトルクから回転速度を逆算する」問題は \( P = \omega T \) の理解を試す定番テーマです。本記事では、平成20年度 B問題15「回転速度と回転子電流の周波数」を、はじめての方でも確実に解けるように丁寧に解説します。
(a)は \( \omega = P/T \) の一発計算。(b)は「回転子に流れる電流の周波数=滑り周波数 \( f_2 = sf \)」という知識問題です。(a)の結果から滑りを出せば、掛け算1回で終わります。
平成20年度 機械科目 B問題15:問題文と選択肢
まずは、実際の試験問題を確認してみましょう。

出典:一般財団法人 電気技術者試験センター「平成20年度 第三種電気主任技術者試験」機械科目 B問題15
電験3種 機械科目 【誘導機】 平成20年度 B問題15
定格出力 7.5 kW、定格電圧 220 V、定格周波数 60 Hz、8 極の三相巻線形誘導電動機がある。この電動機を定格電圧、定格周波数の三相電源に接続して定格出力で運転すると、82 N・m のトルクが発生する。この運転状態のとき、次の(a)及び(b)に答えよ。
(a) 回転速度 [min⁻¹] の値として、最も近いのは次のうちどれか。
(1) 575 (2) 683 (3) 724 (4) 874 (5) 924
(b) 回転子巻線に流れる電流の周波数 [Hz] の値として、最も近いのは次のうちどれか。
(1) 1.74 (2) 4.85 (3) 8.25 (4) 12.4 (5) 15.5
出題のポイント:P=ωT を逆向きに使う
トルクを求める式として覚えている P=ωTですが、この問題では出力とトルクが与えられていて、速度を聞かれています。3つの量のうち2つが分かれば残りが出る——公式は双方向に使えると意識しておくと、初見の問題に強くなります。

(a):角速度を出してから毎分回転数へ
kW を W に直してから割る。
rad/s から min−1 へは 60/(2π) を掛ける。
(b):滑りを出して周波数に掛ける
8極・60 Hz。
約2.9 %——定格として自然な値。
「回れば s 倍」——電源周波数の s 倍。


選択肢を吟味して検算する
この問題は、選択肢を見るだけで大きく絞れます。物理的にあり得ない値が混ざっているからです。
| 設問 | 選択肢 | 判定の根拠 |
| (a) | (5) 924 | 同期速度900 を超えている ⇒ 電動機ではあり得ない |
| (a) | (1) 575・(2) 683 | 滑りが36 %・24 % になる ⇒ 定格運転としてあり得ない |
| (b) | (4) 12.4・(5) 15.5 | 滑り21 %・26 % に相当 ⇒ 定格では大きすぎる |
定格運転の滑りは数 % というのが常識ですから、(a)なら860〜890、(b)なら1〜3 Hz あたりに答えがあるはず——この見当だけで、計算する前から答えの範囲が分かります。
B問題は(a)と(b)がつながっているので、(a)を間違えると(b)も連鎖的に外れます。だからこそ(a)の段階で妥当性を確かめておく価値がある——「同期速度を超えていないか」「滑りは数 % か」の2点を確認する習慣をつけてください。
二次周波数1.74 Hz という値が意味すること
電源は60 Hz なのに、回転子の中を流れている電流はわずか1.74 Hz——ほとんど直流と言ってよい低さです。この事実が、誘導機の設計にいくつもの影響を与えています。
まず、回転子の鉄損がほとんど出ません。鉄損はヒステリシス損が周波数に比例、渦電流損が周波数の2乗に比例して増えるものですから、1.74 Hz では60 Hz のときの数十分の一以下になります。誘導機の損失計算で「鉄損」といえば固定子側だけを指すのが普通なのは、この理由によります。
次に、表皮効果も起きません。表皮効果は周波数が高いほど強く現れる現象ですから、1.74 Hz ではまったく無視できます。回転子導体の断面全体に電流が均一に流れるので、抵抗は直流のときと同じ値です。
ところが始動の瞬間は滑りが1 なので、二次周波数は60 Hz そのものになります。このときは表皮効果が強く働き、電流が導体の外側に偏る——深溝かご形や二重かご形は、まさにこの差を利用した構造です。「始動時だけ抵抗が大きくなる」という一人二役は、二次周波数が滑りに比例するからこそ成立しています。
本問の1.74 Hz と、始動時の60 Hz——同じ機械の中で、こんなに周波数が変わるのです。「回れば s 倍」という一言の裏には、こうした設計上の帰結が詰まっています。
7.5 kW・8極という機械の姿
問題文の数値から、この電動機の姿を思い浮かべてみましょう。8極・60 Hz で同期速度900 min−1——汎用の4極機(1 800 min−1)の半分の速度で回る、低速の機械です。
同じ7.5 kW でも、4極機ならトルクは約41 N·m で済みます。ところが8極機では82 N·m——ちょうど2倍です。速度が半分なら、同じ出力を出すのにトルクは2倍要るのですから当然ですが、その分だけ軸も回転子も太くしなければなりません。
低速で大きなトルクが必要な用途——攪拌機、コンベヤ、低速の送風機などでは、減速機を使わずに済むこの種の多極機が選ばれます。「極数を増やす」のは、機械的な減速機の代わりを電磁的に果たしていると考えることもできます。
また、巻線形であるという点にも意味があります。低速大トルクの用途は、たいてい始動も重い——二次抵抗を入れて始動トルクを稼ぎたい場面が多いのです。問題文の「8極・巻線形」という組み合わせは、実務的にも自然な設定だと言えます。
⏱️ 本番での進め方
① P=ωT は双方向に使う。2つ分かれば残り1つが出る。
② rad/s ⇔ min−1 は 2π/60。掛けるか割るかを毎回確認。
③ (a)で同期速度を超える選択肢は即除外。定格滑りは数 %。
④ (b)は「回れば s 倍」。電源周波数の s 倍が回転子電流の周波数。
💡 覚え方
「T=P/ω、f2=sf」の2本。定格滑りは数 % なので、答えの範囲は計算前に見当がつく。二次周波数が数Hz と低いから回転子鉄損も表皮効果もほぼゼロ——始動時(60 Hz)との差が深溝・二重かご形の原理。極数が2倍なら同じ出力でトルクも2倍。
⚠️ よくある間違い
(b)で電源周波数60 Hz をそのまま答えるのが典型です。回転子に流れるのは滑り周波数 sf——固定子側とは別の周波数です。もう一つはrad/s への変換を忘れて N をそのまま使うこと。P=ωT の ω は rad/s であって min−1 ではありません。

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